93話 切り札!
本日2話目の投稿です!
切り札、伝家の宝刀……使うとき逆に結構不安になります。
大富豪の時の2を切るときとかですけど。平和主義なんで。
ローザの昨日からの状態の切っ掛けは分かったが、もっと深い何かがありそうだ。
今少し、この探査を続けよう。
「また、3つ数えたら、ローザは7歳になるぞ!」
1、2、3!
「ローザは、シュテルン村の館に来た。まだ淋しいか?」
表情が少し引き締まった気がする。どこか、俺が見た最初のローザみたいだ。
「私はお姉ちゃんです。だから……だから淋しがったら駄目! そしてラルフェウス様をしっかりお育てしなければならないの!」
「お父さんは?」
「お父さんは、もう居ないわ」
凛々しい。
「淋しくはないか?」
毅然とした面差しから大粒の涙がこぼれた。淋しさを、押し殺して過ごしてきたのか。
「ラルフェウスは、どうだ?」
「しっかりしたお子様で、ほとんど泣かれないし。全然手が掛かりません。妹の方が……」
「そうか」
もう少し新しい時期へ行ってみよう。
「……どうだ? ローザは12歳になったぞ」
「はい」
少し意地悪な質問をしてみるか。
「みんなが綺麗だ、可愛いと言ってくれるだろう。自分ではどう思っているんだ?」
「何を仰られても気にはなりません」
そうなのか。
「言ってくれて嬉しい人は居ないのか?」
「…………」
【居ないのか?】
「ら……」
「ら?」
「ラルフェウス様に……嬉しかったです」
そうかあ……
「私は、あの方のために生きていきます」
「大事なのか?」
「ラルフェウス様は、この世で一番大切な方です!」
むう。
「好きなのか?」
「そっ、好きとか嫌いとかそういうことではなく……」
まだ心に枷が残っている。
【好きなのか?】
「好きになったら、駄目です」
なんだと?
「ラルフェウス様を……しっかりお育てすることが。私が生きていく意味です」
「なぜ、そこまで」
「ラルフェウス様は、天使様なのです! 私の、みんなの希望なのです。だからお父さんを……」
やっぱり俺の所為なのか……悩むのは後だ。なぜ、俺とお父さんを関連付ける?
「ラルフェウスとお父さんは、関係なくないか?」
「好きになったら、お父さんを。忘れちゃう……本当に居なくなっちゃうから。駄目なのです!」
なんだ、その理屈?
「ラルフェウスを好きになると、なぜお父さんを忘れるんだ?」
回答が来ない。
【なぜだ!】
「ラルフェウス様をどうしても好きに……なりそう……好きなの。でもそれを知られてはいけないから……」
「いけないから?」
「代わりに……口にしたら、お父さんを忘れてしまうんだと、10歳の時に決めたの」
はぁ?
どう言うことだ?
ローザの姿に、文字が被る。
代償行為──
防衛機制──
次々知らない用語と概念が浮かんでくる。
ああ、鬱陶しい!
頭を振って消す。
「何だか、わからないが。何かと何かを無理矢理両竦みにして、心に枷を掛けたのか?」
「一昨日に戻れ!」
「放っておくとラルフェウスは、ディアナと結婚してしまうぞ! いいのか?」
「それは……仕方ありま……せん」
「嬉しいか?」
「はっ、はい。お慶びしなければ……」
言葉と裏腹に表情が悲痛だ。
嫌らしい。
「なぜ、仕方ないんだ?」
「好きになっては駄目……なんです!」
【俺とお前の父親は無関係だ! 俺は人間だ! 天使なんかじゃない!!】
「でも!」
「俺はできると言ったらできる!」
「ああ」
【俺を好きになっても、お父さんのことは決して忘れない!!】
ローザの躯が痙攣し、10数える頃落ち着いた。
「今、言ったことを忘れずに、目が覚めるぞ!」
【解除:催眠!】
ローザは、何度か瞬いた。
「もっ、もうしわけありません」
俺から抱き締め直す。
「いいんだ」
「はい」
「俺のこと、好きか?」
「ラルフェウス様が、基礎学校に上がられた時に、お慕い申し上げていることを……ああ、なんてことを……」
「好きならなんら問題はない。ローザ。結婚しよう!」
俺の顔が映る眼から、涙が零れた。
「嬉しいです。そう仰っていただけで。ですが……私にその資格など」
まだだめなのか。
俺の言葉は、ローザの心の壁を開けることはできないのか?
瞑目したとき、ある言葉が渦巻いた。
『ラルフは切り札を持って居るのだから。使える物は、全部使いなさい』
くぅ……癪だ。
癪だが、おふくろ手の上で踊るしか手が残っていない。
「ラルフェウスが、ローザンヌに命ずる……」
大きく目を見開いた。
「俺の妻に成れ!」
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訂正履歴
2018/07/14 誤字脱字(Knight2Kさん,ありがとうございます)




