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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
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79話 パーティ登録と報酬分配

団体での人事評定って難しいすよね。成果、能力、どっちに寄っても駄目でしょうし。

 ギルマスの部屋にサーシャさんも呼ばれ、手続きが引き継がれた。


 部屋を辞して、受付に向かう。

 階段を下る。


「やっぱりねえ。ラルフ君は凄いよねえ。私が見込んだだけのことはあるよ」

「はあ……」


「きゃっ!」

「危ない!」

 フラッとしたので、思わずサーシャさんの手を取る。


「ありがとう。このまま下までお願いね」

 手を持ったまま、階段を降りる。そっち側に、手摺り有るんだけどな。


「私、足下が見え難いから。階段苦手なのよね!」 

 この隆起じゃあなぁ……事実なのだろう、見え難いのは。段に足が着く度に、揺れまくってる。


 サーシャさんは、そんなに背が高くないし、着てる服の襟刳りが広いんで、近付くと目の毒だ。そっち見ないようにしないとな。既に後ろから、殺意が籠もった視線が突き刺さってるし。


「ありがとう。ラルフ君」

 一階に着いて、玄関ホールに入る。


「じゃあ、そこで待っていてね」

 言い残してサーシャさんは、窓口の中に入っていった。3人のギルドカードは既に渡してあるので、俺達は長椅子に座る。


 女子2人がひそひそ話を始める。

「あの女。何かと言えば、ラルちゃんを籠絡しようとして!」

「たしかに、さっきのは少しあざとかったですね」

「そうそう、まったく。ラルちゃんも、ラルちゃんよ」

 聞こえてるぞ。


「でも、殿方というのは、あれに惹かれるのが本能と聞きましたが」

「大きさだったら、サラの方が大きいのにね」

「ああ、でもサーシャさんは小柄ですからねえ。目立ちますよね。揺れますし」

 認めるのか。


「アリーちゃんが、あの女の歳になったら、ぶっちぎってやるんだから!」

 サーシャさんの年齢を知っているのか。


 数分して、窓口に呼ばれる。


「皆さん、おめでとう。これで晴れて、中級冒険者(ランカー)に昇級よ! それから、パーティ登録もしておいたから」

 受け取ったギルドカードを見る。


 上から名前のラルフェウス・ラングレン、15歳、魔術師、冒険者ギルド登録番号124041、ミストリア王都東支部所属とあって、その下のギルドランク欄が、中級冒険者に変わっている。

 さらに団体欄は、今まで空白だったが117-0073と書いてあった。

 この番号が、俺達のパーティを示すのか。


「ラルちゃん。見て見て!」

 アリーは、ギルドカードを突きつける。

 いや! カードは一緒だから、見なくても。わかった、見るから!


 アリシア、15歳、巫女、冒険者ギルド登録番号2128423……ちゃんと中級冒険者と書いてある。団体欄も同じ番号だ。

 ちなみに、同じ日に登録した俺達の登録番号が大きく異なっているのは、職位(クラス)で分けられているからだそうだ。


「じゃあ、あとは、支払窓口にすぐ行ってねえ。報酬分配の説明をお願いしてあるから」

「はい。ありがとうございます」


 にこやかに手を振るサーシャさんに見送られて、事務所の奥に行く。


「ラルちゃん!」

「なんだ?」

「鼻の下が伸びてる!」


「なんで、アリーはそんなにサーシャさんを目の敵にするんだ? ギルマスがああ言ったからか?」

「だって、ラルちゃんは、年上好きだし!」

「えっ! そうなんですか?」

「はい、そこ(サラ)! 嬉しそうにしない!」

「ああ、すみません」


「まだ、基礎学校の時の話をしてるのか」

「人間の好き嫌いなんて、そう変わるものではないわ!」

「そんなことはない。アリーだって随分野菜食べるようになったじゃないか!」


「食べられるけど、好きになったわけじゃない。嫌いでなくなっただけ。そういうものなのよ」

「はぁ……この話は、またいつかな」


 整理券の発券器の横に、小柄な年配男性が立っている。


「ラルフェウス殿ですか?」

「はい」

「では、こちらへどうぞ」


 俺達を待っていてくれたようだ。


 警備員詰め所の横を通って、行ったことのない区画に入る。

 廊下を歩いて、小部屋に案内された。


「所長から、報酬のお支払い前に、分配方法の推奨案を説明するよう命じられておりますが。よろしいでしょうか?」

 向かい合うと真面目そうな人相してる。

「はい。お願いします」


「分かりました。小職は出納担当主任のアンシャと申します。よろしく」

「こちらこそ」


「では、皆さんの、ギルドカードを拝見……」

 3人が差し出す。

 それを眺めて、返された。


「確かに。パーティ登録もされていましたので、早速説明を……」


 曰く。

 できるだけ大勢の同意を得て、明文化する。

 新たに加入する者を受け入れる場合は、最初に同意させる。

 報酬は、全て分けるのではなく、1割から2割程度共有分を取り、必要経費や不意の出費に備える。

 指揮者と責任者役は、負担が大きい。絶対無報酬にしない。

 経験年数、冒険者の等級、実力は大事だが、重視し過ぎない。働きに応じる分も多く取る。

 複数人で携わった場合は、固定報酬と、働きに見合った比例報酬分を組み合わせる。


 その上で……。

 魔術師、特に複数の敵を同時に攻撃できる術を持つ者は希少である。高く評価すべき。

 回復系はそれに次ぐが、戦士系が多いパーティでは高く評価すべき。

 戦士系は存在として大勢というか、大多数である。希少性としては劣るが、武具防具を常時必要とするため、報酬としては低くとも、別途補填の必要がある。

 従魔を使う場合は、その分も分配すること。


「それって、貢献度は毎回見直すのぅ……じゃなかった、見直すんですか?」

「それが理想ですね」

「うわぁ。面倒臭い……ですね」

 アリーは少し遠慮した。

「そうですよね」

 えっ?

 説明していたアンシャさんが肯いた。


「そこで!」

 ん?

「何かいい手が?」

「あります! ギルドカードです! パーティ設定して、さっきの基本方針が幾例か用意されていますから。それを元に、変更点を入力すれば、戦闘ごとに報酬が計算できます」

 いい話だが。


「じゃあ、それは次回から有効ってことですね?!」

 つまり、今回の報酬分配には使えないだろうな。まだ設定していないし。


「ええ、そういう話が多くてですね。100時間までなら遡ることができます。どうです、優れものでしょう!?」

「確かに、良いですね!」


 アンシャさんとみんなで打ち合わせ、ギルドカードに入力が終わった。


「では、みなさん。今回の買い取り金ですが。現金で受け取られますか? 中級者の方からは、ギルドで資金のお預かりもできますが?」


「へえ……預かって貰うと何か良いことが?」

 アリーが身を乗り出す。


「はい。まずは現金を持ち歩かなくて済みますので。落としたり盗まれたりしません。第一に安全です。ギルドカードを盗んでも、本人以外の方では通用しませんし、あと……」

「まだあるの?」

「少しですが利子が付きますし、ギルドの提携店では、ギルドカードでお買い物などの支払いが割引ありでできます。王都だけでなくミストリアの中でしたら有効です」


 ふむ。冒険者ギルドは、ちょっとした町なら大体あるしな。意外と便利だ。


「へえ。良いかも……でも、やっぱりお姉ちゃんがうるさいから、今回は現金で」

「私は、全部預けておくでも良いですか?」

 サラが前のめりになる。


「もちろん構いませんよ」

「えーと、じゃあ、別に追加で預けることも?」

「できます」

「よかったぁ」


「では、少々お待ち下さい。お金を取って参ります」

 アンシャさんは、部屋を出て行った。


「はあぁ」

「何? サラっちは現金持たないの?」

「いえ、持ちますけど、程度問題です。大金貨なんて普通の店では使えませんし、かと言って、今借りてる部屋に置いておくのは危険だし。持って歩いてると恐くって。50スリングも持っておけば、十分です」


 確かに、一昨日の臨時収入で、突然その百倍も持ってるわけだものな。落ち着かないよな。


 5分ぐらい経って、布が被ったお盆を戻ってきた。


「では、今回の魔結晶2つの買い取り代金をお支払い致します。買い取り金額100ミストから、税の源泉徴収5分と、ギルドの手数料1割を差し引きまして、都合85ミストです。ここにはサラさんの分は持ってきておりませんが」


 お盆の布を外すと、目映い金貨の小山が見えた。


「では、ラルフェウス様。42ミスト50スリングを。その中には従魔の分も入っております。アリー様とサラ様には、それぞれ17ミストずつ、残る8ミスト50スリングは、このパーティの共有資金としますが。如何しましょうか。ラルフェウス様にお支払いでよろしいでしょうか」


「ああ、すみません。共有資金分だけ、やはりギルドで預かって貰えませんか?」

「それは結構ですが」

「賛成!」

「私も賛成します」

「はい。分かりました、お預かり致します。手続きがございますので、ラルフェウス様とサラ様のギルドカードを……」


 皆で、支払窓口へ回り、2人は手続きが終わったギルドカードを返して貰う。

 カードの金色の部分を触ると、預金額と8ミスト50スリング0メニーと表示された。


「じゃあ、帰るか」


「ラルちゃん」

「なんだ?」

「今までラルちゃんにいろいろ強請(ねだ)り過ぎてたなあと……反省した。単独の仕事も、もう少し真面目にやるよ」


 珍しく殊勝だった。

 まあ、報酬以外の面で、いろいろ買ってやったりしていたからな。だが、今後はサラのこともある。身贔屓にならないようにしないと。


「じゃあ、明日。また、お昼1時にここで」

「はい。では失礼します」


 ギルド前で、サラと別れた。

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2018/05/17 誤字脱字(Knight2Kさん,ありがとうございます)

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