表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
80/472

78話 中級冒険者昇級!

昇級とか昇格ってのは、やはり嬉しいことですね。増収もそうですが、認めて貰っていることが第三者にも明らかになるし。トントン拍子でってのは経験ないので、妄想で書きます。

 ターセルの町から帰って来た俺達は、昼過ぎに大家であるダンケルク家館に向かった。


 なおアリーは。

『今日は別行動で。ちゃんと15時にはギルドへ行くから!』

 そう言って、どこかへ消えていった。

 おそらく、買い物だ。昨日金を渡したからな。今日は狩りに行くつもりはないので問題はない。


 夫人の居る応接に通された。

 普通に挨拶して、勧められたソファに座る。なにやら興奮している様子だ。


「ローザから聞かれていると思いますが、ターセルに行っていました。それで、今日伺いましたのは、お土産をお渡ししようと思いまして」

「まあ! 私にですの?」

「はい。いつも何かとお心遣い頂きますので」


 ローザが選んでくれた観葉植物。ベンガレンシスという楕円の葉を付けた鉢植えを、魔収納から出して、床に置く。


 まあぁと唸って、しげしげと鉢植えを眺めている。

「大きな葉が青々としていて、清々しい気持ちになります。とても気に入りました」

「それはなによりです」

「ありがとう。ラルフさん。そしてローザさん」


「ええ、お気に召したようで光栄です」


 ん? 反応がない。

「ローザ?」

「あっ、済みません。光栄です」


 はっとして応えたとは言え、俺と被った。ローザが少しまずい状態かも知れない。


 ターセルへ連れ出したのは、王都に来て色々館のことを任せきりになり、疲れが溜まっているかと思ったからだ。出先では、気分転換できていたと思ったのだが。要注意だ。


 マーサさんが、お茶を出してくれたので頂く。


「時に……」

 ん?

 夫人は振り返ると、余り質の良くない紙を取り出して、テーブルに広げた。

「こちらの記事、ターセルの迷宮で、未発見の区画が発見された! そう書いてありますが」


 新聞だ。王都(スパイラス)新報ね。

 シュテルン村では見たことがないが、スワレス伯爵領都では見たことがある。発行から4日遅れだったが……流石は王都、昨日発行だ。 


 夫人が指差したところの記事を読む。

 世紀の大発見か!? 若い冒険者パーティの大手柄!


 ターセルの迷宮で、未発見の区画が発見された!

 中には迷宮を建造した者の遺品が、盗掘されることなく残っており、その中には金色に光る玉座や、少なくとも500年以上昔の文化的価値が高い物も見つかっている。ターセルの迷宮は、特別史跡指定は確実。遺品も国宝となる可能性もあり。


 情報早いなというか、思いっきり扇情的な文章だ。

 まず間違いなくギルドが情報を流したんだろう。


「それでですね。ここ! 発見者は、まだ若い3人の冒険者の男女。3人は強い魔獣を斃して手掛かりを掴んだ。中でも、男性は光神教会宗立ミストリア修学院神学科の学生であり、そこで培われた古代語学力を駆使し、隠された区画の発見につながる謎を解いたとあります。ほら、こちらにも」


 別の新聞も見せられる。

 いずれも、名前は出ていないが修学院という段階で完全バレている。言い逃れできそうもない。


「この冒険者とは、あなた方ですわよね」

「その通りです」


 夫人の目は、何十歳か若返ったように、大きく見開いた

「まあ! やっぱり。マーサ! 私の言った通りだったでしょ!」

「はい、奥様。ようございました。ラルフ様。おめでとうございます」

「そうよ! おめでとう」


「ありがとうございます」


「では、詳しくご活躍の話を訊きたいわ。夕食も食べていってね」


 その後、結構長く引き留められたが、次の予定がと申し上げて、なんとか館を辞した。


     †


 冒険者ギルド王都東支部の2階。ギルマスの部屋。


「失礼します。ただいま戻りました」

「おお、バルサム。ご苦労だった。わるかったな。魔術師担当のお前を駆り出して」


「いえ。カステル殿を行かせるわけにも行かないですし。それに私こそ、眼福であったと思います」

「そうか、それなら良いが」


「では報告します。文化省との金の話以外の交渉は終わりました。3日間で通称玉座の間の調査を終了予定です。(ワイズ)晶片(クオーツ)の運び出しの後は、柵を設ければ、玉座の間の手前まで、一般公開を可とするとのことでした」

「そうか。それなら冒険者以外の好事家達の観覧も望めるな」


「玉座の間の占有料金は、初年度1000ミスト。それから、知晶片の貸出料金は、一時金で250ミスト、以降は月額で24ミストの線で交渉中です」

「格安だな」

「相手は、行政機関ですから」

「民間なら3倍は行くがな……まあそれより」


「閣下はなんと?」

「ああ、ご視察戴いたが、大層喜んで居られたよ」

 バルサムは、緩やかに肯いた。


「で、もうひとつ聞きたいんだがな、ラルフのことだ」

「はあ……」

「俺の見るところ……経験はともかく冒険者としては、中級者(ランカー)の首位あるいは、上級者(ハイランカー)でも行けると思うが……。魔術師としての腕はどうなんだ?」


「そうですね。魔獣と闘っているところを見たわけではないので、推測に過ぎませんが。既に現役時の私の域は超えているでしょう」

「そんなにか?」


「受けられるなら、上級(アーク)魔術師(ウイザード)試験でもいいところに行くでしょうねえ」

「ふーむ」


     †


 2時間後。ギルマスの部屋は、別の客を迎えていた。


「迷宮の件はともかく、俺の素性を明かすことはないんじゃないですか?」

 新聞のことだ。何社か書いていたので、取材の成果ではなく、公表に違いない。

 それほど怒ってはいないが、今後のこともあるから釘を差しておこうと思って言っている。


「まあ、そう言うな」


 対面のソファに座ったギルマスは悠然と受け流した。

 隣にはアリーとサラも座っている。

 アリーは見たことがない小綺麗な服を着て、なにやら髪も綺麗に整っている。


「修学院には借りもあるしな。大体だ! ギルドに1ヶ月ちょっと前に加入した若い冒険者が、あっと言う間に大発見! となったら、他のヤツ等の立場がないだろう。だからな、お前は特別な人間ということにしておかないとだな」


 どうして、俺が特別な人間になると良いんだ?


「釈然としていないようだな、ラルフ」

「ああ、ラルちゃんは、生まれてこの方、ずっと特別だったから。他の人が劣等感を持つと言う発想が分からないのよ」

「なるほどな」

 不本意だが、ギルマスは納得したようだ。


「でも今回のことで、ならば自分達もと張り切る人達も居るかと思いますが?」

「ああ、居るだろうが、そっちは何もしなくても奮起するから問題ない」

 アリーがしたり顔で肯いている。


「さて、本題に入ろう。ああ、冷める前に飲んでくれ」

 勧められたので、一口茶を喫する。秘書の人が淹れてくれたが、なかなかおいしい部類だ。


「それでだ。君達は揃って、中級冒険者(ランカー)に昇級だ。通常3年の実務経験が要るが、特別措置だ。といっても、実力者にはままあることだがな。それに2人は討伐系以外の貢献待ちだったからな。ああ、サラで良いか? サラも今回の貢献で2階級昇格だ。序列(ランク)については、来月になったら受付で聞いてくれ」


「序列って?」

 アリーが気軽に聞く。

「アリーさん。それはですね……」

 サラが解説始めた。楽で良いな。


「中級者は白、灰、黒の3段階に別れていて、それぞれの順序が付いているんです。黒の1番が1番序列が高くて、白の番号が大きい場合が序列が低くなります」


「へえ、その序列が高いと、どんな良いことがあるの?」

「ええとそれは……」

「ああ、アリー。もう少し勉強してくれよ。基本的には指名依頼が来る頻度が高くなる。あと単価も高くなる。場合によっては備品を貸し出したりとかな、扱いもよくなる」

 ギルマスが呆れた顔で補足してくれた。


「へえ。要するに儲かるってこと!?」

「まあ。端折るとそう言うことだ」

「ふーん、儲かるんだぁ……」


「あとは、上級冒険者に推薦される可能性が高くなる」

「ああ、それは大事だね」

「そう言うことだ」


「本題だ。今回の報酬の件だが……」

「はい」


「まず動産だ。玉座の間で見つかった、古代の物品は、とある行政機関に貸すことになった。まだ交渉中だが、一時金は250ミスト……」


「にっ、250!!」

「そうだ。後は月々24ミスト位になる予定だ。決まったら、正式に報告する。君達のパーティには、ギルドの手数料と税を1割5分を差し引いて支払うことになるが、まだ先だ。当座はフンババとバルログの買い取り金の100ミストから同じように経費と税を差し引いて支払う」

「おおぅ!」


「ああ、当然玉座の間に至る鍵としての付加価値は足されている。だから両方での金額だ。言うまでもないが、別に入手しても、これだけの買い取りはできないからな」


 肯く。


「それから、不動産だが。基本的に君達に権利はない。ないがギルドには入金がある。よって礼金という形で還元させて貰う。地下の秘密区画と玉座の間の発見の功績に対しては、額は言えんが同区画の占有料金に対して、比率を掛けた礼金を授与する。さらに、前例に依れば3ヵ年になるが、ターセル迷宮の入場料等利益の増益分からなにがしかの比率で礼金を支払う」


 ふむ。かなり良心的だな冒険者ギルド。

 全体がそうなのか、この支部が特にそうなのかまでは分からないが。


「分かりました……」


 アリーもにこやかに肯いた……が。サラが、口を開いたまま固まっている。


「サラっち、大丈夫?」

「大丈夫じゃありません。私はミノタウロスを斃しただけなのに……やっぱり私の歩合は低くしましょう」


「ああ、大きな収入があると、パーティはその分配で揉めて、喧嘩別れする場合が多いからな。慎重に決めるんだぞ。報酬分配基本則を決めておくと良いんだがな。何なら講義させるぞ」


「是非!」

 乗り気だなサラ。礼状に入っていた大金貨1枚も貰ったことに引け目があるようだ。まあ、駆け出しの冒険者としては、月収以上の収入だからな。

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2018/05/17 誤字脱字(Knight2Kさん,ありがとうございます)

2019/08/04 サラが斃した魔獣 オーク→ミノタウロス(ずんずくさん ありがとうございます)

2019/09/07 誤字訂正(ID:512799 さんありがとうございます)

2021/05/08 誤字訂正(ID:737891さん ありがとうございます)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ