表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
79/472

77話 縁

連休のお休みを戴きました。

投稿を再開致します。


それで、予告をしていましたが、投稿のペースの件です。

恐縮ながら、今後は、水曜日、土曜日の週2回の投稿にさせて頂きます。

よろしくお願い致します。



 出張所を出た時には、日は大きく傾いていた。もうすぐ日暮れだ

 宿の部屋でしばらく休んでいると、サラがやって来た。


「もう良いのか?」

「はい。お陰で、アスフォデスの下処理は終わりましたし。ありがとうございます」


 嬉しそうだ。


「ラルフ様とアリーさん、なんだか大変だったそうで……お任せして、すみません。」

 ギルドでの事務手続きのことだ。


「ああ、まあな。でも、サラもいくつか署名させられたろ?」

「ええ。でも大したことはありませんでした。」


「じゃあ、一段落だな」

「はい。まあ、私の方は、納品が有りますけど。明日向かいますので」



「それでだ。こちらとしては、サラは俺達のパーティに入ってもらいたい。どうだ?」


「いいえ! あっ……」

「えっ?」

 アリーは、大きく目を見開いて、サラに詰め寄る。

「どうして?」

「最後まで聞こう。アリー!」


「そんな、困ります。私が……私の方が、入れて貰うんです!」

「はぁ?」


「わかった。それでいい!」

「はい、お願いします」

「まあ、どっちでも良いけど……リーダーは、ラルちゃんだよ。いい?」

「もちろんです」


「そういうわけだ、ローザ。しばらくしたら、王都館にサラにも住んでもらう」


「承りました」

 ローザは、大きく肯く。


「あっ。あのう。発見者に私も加えて戴くなんて、よろしかったんでしょうか? なんだか申し訳なくて……」


「いいんだ。フンババ戦では貢献して貰ったし、サラがその薬草を探したいと言わなければ、あの広間にも行ってないしな」

「そうかも知れませんが」

「サラっち! パーティって言うのは、そう言うものなんだよ。だけどアリーちゃんの分け前は、お姉ちゃんに握られてるけどね」

「はい?」


「それは、アリーがすぐ無駄遣いするからでしょ。あなたの装備、普段の衣食住。足りてるとでも?」

「うう……すみません。もう言いません」

 

「ああ。私も、入居させて戴いたら、お家賃を支払わさせて……」

 サラがあたふた答える。


「その話は、いずれまただな」


    †


「はあぁぁ、お腹一杯」


 夕食の店を出て歩いているアリーが、自分の腹を(さす)っている。うら若き乙女には似つかわしくない。容姿は抜群なので残念すぎる。

 ただ、そう言う表裏のない性格が良いのか、アリーは女子に人気があるんだよな。男子は……まあそれは良いか。


「ラルちゃん、なんか失礼なこと考えてるでしょ」

 よく分かるな。

 そんな会話をしていると、宿のアルデス亭に着いた。


「ラングレン様」

 玄関に入り鍵を貰い部屋に行こうとすると、膝丈まであるコートを着込んだ年配紳士に声を掛けられた。衣装の品は良いが、余り個性のない仕立てだ。貴族の執事というところか。


「確かに、ラルフェウス・ラングレンと申しますが。あなたは?」

「私は、さる貴族に仕える者でございます。主人より、こちらをお渡しするよう下知を受けました」


 さる……ねえ。

 封書を差し出された。


「こちらは?」

「大変恐縮ながら、こちらの名を明かすことができませぬが、御礼状でございます」

「礼状……」


 会釈して受け取る。


 重!

 絶対に紙だけじゃない。なんか金属が入っている。多分これは……。

 表には何も書かれていない。裏返したがこちらにも署名はない。


 ん?

 封書の裏、暗紅色の封蝋(シール)がされているが、紋章が押してある。


「それでは、失礼致します」

 片脚を引き、胸に手を当て礼をした紳士は踵を返した。


「少々お待ち下さい」

 立ち止まると、微笑して振り返った。


「なんでございましょう?」

「こちらの紋章は、ご主人の物でしょうか?」

 俺が、紋章を手掛かりに、彼の主人の身元を詮索していると思ったのであろう、一瞬眉間に皺が寄った。


「いえ。仕える家の物ではございません。それが如何(いかが)致しましたか?」

 大貴族は、誇りに掛けて他者とは被らない意匠紋章であったり、装飾の図案を使う。

 家の物でなければ、彼の主人と個人的に縁のある紋章ということだ。


「引き留めて申し訳ないが、こちらを見て下さい」

 肯いたので、俺は魔収納からフンババが落とした手鏡を取り出した。


 紳士に渡すと、鏡面を一通り眺めて裏返した。金メッキの紋様に、紋章が(ちちば)められている。それは、封蝋と同じ意匠だ。

 明らかに驚いた表情だ。


「これをどちらで?」

「ここの迷宮で、斃した魔獣が落としました」

「そうでしたか、分かりました。帰って主人に申し伝えます」

 紳士は、俺に手鏡を返そうと、差し出した。


「いえ。それは、お持ち帰り下さい。もしご不要であれば、棄てて戴いても構いません」

「本当によろしいので?」

「はい」

「屹度、主人に見せます。ありがとうございました」


 紳士は玄関から出て行った。


「ラルちゃん。なんだって?」

「ああ、なんか手紙を貰った」

「へえぇ」

「ああ、あと。拾った手鏡が関係のある品のようだったので、渡した」


「ああ、あれ。まあいいか、それほど値打ちがあるようには思えなかったし」

 そう言って、サラを見た。


「わっ、私はラルフ様さえ良ければ……」

「はぁ。サラ、なんか怪しい……ああ、嘘、嘘!」


     †


 サラを呼んで、俺達の部屋に4人が集まる。


「その手紙が何なの。ラルちゃん宛なんでしょ」

「まあ、そう言われたけどな」


 封書を開ける。

 中に入った便箋を持ち上げると金属がぶつかった音がした。

 便箋を横に置き、封筒を大きく開く。


「なっ!」

 俺は、ずしりと重い硬貨を取り出した。

「大金貨じゃない! ど、どど、どうして?」

「さあな、何か手紙に書いてあるとは思うが」


 結局、大金貨は3枚入っていた。


「うわぁ、始めてみたよ、大金貨!」

「私もですぅ。3枚って、こっ、これで30ミストもあるんですよね」

 ごくっとサラは生唾を飲み込む。


「そ、そ、そうだね。ああ、そう言えば、タバサちゃんの家の年収50とか60ミストって言ってたから、半年分かあ」


「タバサちゃんと申しますと?」

「ああ、ラルちゃん家の畑で麦作ってた家の子」

 そう言えば、同級生にいたな。

「はあ……」


 会話しながらも、2人は山吹色の硬貨を顔を寄せて見ている。

 俺は、便箋を読む。


 ラルフェウス・ラングレン様

 並びにパーティ御一同様


 この度は、古代エルフ遺跡の真髄を発見頂き、感謝に堪えぬ。

 些少ながら、感謝の意を同封致す。


 文章短いな。

 大金貨3枚ということは、あの金はみんなで分けろってことだな。

 2人の間に手を伸ばす。


「あっあん」


 1枚を持ち上げると、サラの前に置く。

 数秒意味が分からなかったようだが、突然狼狽し始めた。辺りをきょろきょろ見始める。


 もう1枚は、アリーの前に置いた。

 口を開けたままだ。


「ローザ。家計に入れておいてくれ」

 立ち上がってこちらにやってきた。


 最後の1枚をローザに渡す。

「承りました」


 翌日。サラと分かれた俺たちは、土産を買って王都へ戻った。

 帰り道では、多くの馬車とすれ違った。

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/10/07 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

2025/04/24 誤字訂正 (イテリキエンビリキさん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ