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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
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75話 通報

然るべき時に、然るべき通報ってのは簡単なようで、結構難しい場合がありますよね。

幸せなことに110番も119番も掛けたことないです……ああ、昔、架空請求をウェブかメールで警察に報告したことはあったかなあ。今となっては日常茶飯事ですが。

 不要になったバルログの魔結晶を祭壇から持ち上げると、部屋の灯りが消えた。通路の灯りが差し込んで、ようやく見通せる程度の明るさに目の中で落ち着く。


 玉座の間に現れた第2光膜はなくなっていたが、通路を戻ったところの第1光膜は存在していた。


「アリー。戻ってきた時も、この光の膜は無かったんだよな?」

「ラルちゃんにしては、非論理的だね。無かったから通られたんでしょ!」


 ニヤッと相好崩している。

 俺にもっと論理的に話せと普段言われている意趣返しだな。どっちかというと、命令通り広間まで戻ったのかと、疑い半分だったのだが。


「そうか。なら良い」

 アリーの手を取り、光膜を通り抜け、廃墟と呼ばれた広間に戻った。


「サラっち! ただいま」

 床に座って項垂れていたサラと、直ぐ横に寝そべっていたセレナがこっちを向いた。

 間髪容れず立ち上がり、駆け寄って来る。

 

「ラルフ様、アリーさん。よくご無事で……お帰りなさい。良かった。本当に良かった!」


「ああ悪い。心配掛けたようだな」

 アリーはともかく、なぜサラまで心配してるんだ? 何かアリーが言ったのか。

 

「ワフ、ワフ……」

「あぁ、セレナにも心配掛けたな。もう大丈夫だ!」

 喉元を弄ると、嬉しそうに眼を細めた……が。


「グルルゥゥゥゥゥ……」

 セレナは眼を開き唸った!


「どうしたのセレナ?」

 アリーが訊く。まもなく再び地響きがして、床が揺れて動き出す。


「いやあ、やっぱり恐いね。どうやって動いてるんだろう」

「そうですねぇ」


 そう言いつつも動く範囲は分かっているので、その外に出て見守っていると、10秒程で、玉座の間に通じる秘密通路の扉が閉まった。


「これ、見たら何が起きたか分かっちゃうね」

「アリーもそう思うか?」

 

 蔓草は引き千切られ、瓦礫も全体的に扉が動いた先へずらされ、積もった土砂には引き摺らされた痕跡がありありと残っている。


「どうする? このままにしておくの?」

「ああ、俺達が偽装しても仕方ない」


「ラルちゃんがそう言うなら……そうだ! アリーちゃんだけ、お礼言われてないよ!」

 びっと指を突きつける。

 

「そうだったか?」

「そうだよ!」


「ラルフ様!」

「ああ、サラ。なんだ?」

「差し出がましいことかも知れませんが。アリーさんにきちんとお礼を仰って下さい!」

「どうしたの? サラっち」

 確かにサラの顔が強張っている。


「アリーさんが。この穴から1度出て来た時の表情は、それはもう悲壮でした。眉に皺を寄せ、眼は落ち着きなく動いていて」

「ちょっと!」


「いいえ、言わせて下さい。小さい声で、ラルちゃんに何か有ったら、生きていられないって、仰った時の頬の痙攣。短いお付き合いですが、胸が塞がる思いでした。穴から大きな音がして、震える脚でまた戻って行かれて……」

 さっき言ったことは、本気だったのか。


「もういい! もういいよ。サラ!」

「すっ、済みません。言い過ぎました」


「心配かけて、済まなかった。アリー」

 俺は、左胸に掌を当てた。


「かっ、勘違いしないで。お姉ちゃんが何時も言っているでしょ。男の子は皆に心配を掛ける位活発じゃないとって。だからね、ラルちゃんは悪くない。次に……そう次に何か有ったら、ありがとうって言えば良いの!」


「ああ。ありがとう!」


「うん! いっ、いや。次って言ったのに……はっ、はい……おしまい。何時までもウジウジしているの、アリーちゃんは嫌いなんだからね……ああぁ。お腹空いた!」


「ああ、そうですね」

 もう1時を回ったか。

 敷物と持たせて貰った食料を出して昼食にした。


     †


 少し食休みしてから、転層陣で地下第1層に戻り、迷宮を出る。もう探す物はなくなったからな。


「ラルちゃん。まだ日は高いけど、宿に戻る?」

「ああ、悪いが、ギルドの出張所に行くぞ」

「ギルド?」

「さっきの発見を黙っておく訳にはいかないからな」


 街道を西に向かい、出張所の前まで来た。俺はセレナを厩に繋ぎに横手の厩舎に向かう。


「悪いが。ここで待っていてくれ」

「ワフッ!」


 セレナの声に驚いたのか、奥から(いなな)きが聞こえる。そっちを見ると2頭の駿馬が繋がれていた。まだ駐まって間もないのか、白い汗を掻き湯気を上げている。


 跳ね扉を押して中に入る。


「あれ? ギルマスにバルサムさん……こんにちは」

 どんな偶然なのか、壮年男性2人が、アリーとサラと一緒に居た。


「ぎっ、ギルマス?」

 サラが、高い声で聞き返す。


「ああ、冒険者ギルド王都東支部所長(ギルマス)のジョルジだ」

 あっ、名前は初めて聞いたなって、俺が来るまでに紹介しておけよ、アリー。


「じゃあ、上へ行くぞ!」

 何だか恐い顔をしている。まあ、こちらとしても都合が良いが。どう切り出すか。


 出張所の2階。特別応接と書かれた部屋に入る。


「まあ座れ!」


 それっきり黙り込んだ。ソファの奥を勧められる。アリーと俺は遠慮なく座るが、恐縮しながらサラが続いた。

 ギルマスの横にバルサムさん。対面にアリー、俺、サラの順だ。

 女性がお茶を持って来てくれて、下がっていくとようやくギルマスが口火を切る。


「この戦士を、パーティに入れたのか?」

「ああ、い……」

「はい。サラスヴァーダ嬢です」


 サラを遮って俺が答える。

「そうか。それは良い。冒険者登録はしてあるんだろうな?」

「はっ、はい! 王都東支部所属です!」

「知ってるか?」

 バルサムさんの方を向いたが。

「いえ。私は、魔術師担当なので」


 2人とも知らないのか。まあ数多い戦士でかつ初級者だしな。


「それで、本題だが。今日、4階層の関門の間に入ったろう」


 確信を持っている口ぶりだ。まあ隠す必要もない。


「はい」

「そうか、やっぱりな。ここの迷宮には……ああいや。で、何を斃した?」

 ギルマスは何か言い淀んだ。


 あれを見せるか。だけどこのテーブル高そうなだな。

 敷物を出すと、ギルマスが眉を顰める。

「なんだ?」

 フンババの魔結晶をその上に出庫して、敷物の上に置く。


「どうやって出したかも気になるが……これは何の魔結晶だ」

「フンババだよ! あとは、ミノタウルス2頭もあるよ」


「フンババだと」

 バルサムさんが、前傾して手を翳した。

 鑑定魔術か。


「確かに、フンババ──これなら、紋章が反応するはずだ」

 紋章?

 あれか。関門の間を出たところで感じた、魔術の気配。


「まさかと思いますが。その紋章の魔術が発報して、このターセルまで来られたとか?」

「そう言うことだ。それでだ。その後、何かなかったか?」

「何か……とは? まあ、ありましたが」


 ギルマスとバルサムさんが顔を見合わせる。


「何があった!」

「ある場所。多分百年以上は、誰も入ったことがないであろう場所を見付けました」


「うーむ……ターセルだったとはな」

 なにやら事前に情報を持って居たようだ。


「と、言うと?」

「機密だが。まあいい。古文書で、王都付近の迷宮のどこかに、隠し部屋あると書かれてあってな」


「そうですか。確かに見事な部屋でしたよ」

「よし!」

 ギルマスが、小太りの体躯ながら、すっくと立ち上がる。


「今すぐ行くぞ!!」


「ああ、それなんですが」

「なんだ?」

 ギルマスがうずうずしている。


「俺達、3人で見付けました。それを、この場で認定して戴き、2人は宿へ返したいと思いますが」

「ラルちゃん!」

「ローザに誰が知らせるんだ?」

「そうだけどさぁ……わかったわよ。そんな恐い顔しないでよ」


「私は……助かります」

 サラは薬の下処理をやりたいと言ってたからな。


「しかし。そうなると。今回に限ってだが、君達の全権利をこのラルフに委任して貰うことになるが、いいのか?」


「私は構いません」

 サラは即答した。それを見たアリーが少し驚いている。

「ああ、私は。もちろんラルちゃんを信頼してます!」


 ギルマスは肯いた。

「わかった。こちらとしても少人数の方が都合が良いからな」


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訂正履歴

2022/07/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] はぁ、スッキリしない。何故?な部分がが多過ぎる。そしてアリーよ。やっぱりちゃん付けとビックリマークがウザいです。
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