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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
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72話 姿なき依頼人

お化け、幽霊、疑わしいのすら、その類いは見たことないですね。いや見たいわけではないんですが。

 辺りを確認しながら、光膜の際まで歩み寄る。

 アリーは向こう側だ。触ってみると硬質のガラスのようだ。

 バルログの魔結晶は置いてきたから、俺も通り抜けることはできない。


「大丈夫か? アリー」

「うん。大丈夫! どこも痛くない」


 まずは良かった。


「もう! 早く開けてよ。これ!」


 ダンダンと光の壁を叩く。やはり通れないようだ。


────同行者の生命は保証する!


「誰だ!」


 振り返ってみたが、人影も反応もない。


「えっ、何? 誰か居たの?」

「ああ、声は聞こえたが、姿は見えないな」


 俺の頭の中に響いた声らしい。


「ちょーーっと! やめてよ」

 半泣きだ。だけど、いつものアリーって、それだろう。


「ああ……アリー、そこで見てろ」

「はっ?」


「そこなら安全らしい」

「はぁぁあああ! らしいって何よ! ラルちゃん、後でひどいからね!!」


 いやいや、俺のせいじゃないだろ。


 透過した光の壁が、普通の石壁に変わった。

 どうやら声の主は、俺1人に奥へ来て欲しいようだ。


 祭壇を通り抜け、壁があったところも問題なく通った。

 ここからは灯りがない。


 20ヤーデンも通路を進むと部屋があった。

 大分暗くなったなあ。


 【光輝(ルーメン)!!】


 うわっ。

 天井から、樹の根が貫いていて、床までその先を張っている。


 部屋の中央に、箱が2つ並んでいる。長手方向は2ヤーデンと少し(2m)。

 

 棺──


 一方はどこも壊れていないが、もう一方は箱に根が取り付き蔓延(はびこ)っている。ああ、一部割れて大きく穴が開いてしまっている


────待っていたぞ 選ばれし者よ。


 頭の中に直接、声が響いた。


「お前は誰だ!」


────我が名はガルガミシュ9世、君から見て左の棺に葬られし者の現し身だ!


 左……根が蔓延っていない方の棺だ。

 名前の感じと、これほどの科学力から考えて、千年程過去にこの地に栄えたという、古代エルフ部族か。突然この地を去ったと歴史書にはあったが。


「エルフの亡者が、どうやって俺と話す?」

 もっと聞くべきことがあるはずだが。


────魔術だ。我が思考体系と記憶を一部格納してある。


 ほう……そこまで高等なことが魔導具でできるのか。

 あと、エルフだったことは否定しなかったな。


「道具と話すほど暇ではないが。一応聞こうか。なんの用だ!」


────頼みがある。貴公にしかできないことだ。


「俺しか?」


────高魔力保持者の選抜結果だ。貴公は試練魔獣を高い魔力を用いて斃した。


「バルログとフンババのことか?」


────そうだ。前者の試練では手違いがあったが、特段問題はなかった。


 やはり、そうか。

 俺達が闘うべきバルログと、先にサラが闘ってしまったということか。


 大した魔獣が出ないと言われていた第4階層終わりの関門でも、かなり強力なフンババが出現したのはそういうことか。先にバルログで試しておいて、駄目押しにさらに強力な魔獣をぶつけてきたわけだ。


 俺達をずーと監視していたわけだ。

 むかつく……が、まあ実害はない。いや、なければ良いという物でもないが。

 いくつか魔術の手掛かりも貰ったしな。


「俺は、冒険者だ。仕事の中身と報酬が見合えば考えなくもない」


────報酬は……

 先に報酬か。まあいいが。


────エルフの秘術ではどうか?


 秘術……。

 どちらかというと。現金は流石に無理だろうが、換金性の高い貴金属とかが良いんだが。


「どういったものだ。魔術か?」


────回復・治癒系の知識だ。薬学と、魔術もある。


 希望とは遠いが、知識ならば使い方次第だな。


「報酬は理解したが、受けるかどうかは、依頼の内容を聞いてから判断させてもらえないか?」


────依頼内容は、この迷宮の破壊だ。


「破壊?」


────貴公の頭上にある最終処分弁を解放することで破壊される。


 なにやら、ぶら下がられる位の取っ手が、天井から生えている。


 変だ。

 難度が高いとは思えない。


「自分でやれば良いだろう。ご大層に人間を選抜する必要もない」


────理由は2つある。1つは、弁が機構とは連動していない。


「もう1つは?」


────弁の解放には、大量の魔力を短期間に投入する必要がある。


 そういうことか。

 ガルガミシュとやらは、余程疑い深い人物だったようだな

 選抜の必要性は分かったが。


「えらく面倒臭い手順にしたものだな。ならば廃棄は、創造主とやらの最も意に反することではないのか?


────その通り、禁忌と設定されている。だが、現在の状況は、唯一の例外事項に合致する。


 もう一度足下を見遣る。


「右の棺が例外事項か?」


────正解だ!


 ガルガミシュの物ではない棺。

 樹の根が真上から伸びてきており、蓋が壊されている。

 よく見ると、なぜか棺なのに床から生えた管が複数刺さっている。


 それを見たとき、例の現象が起きた。


 人工(コールド)冬眠(スリープ)──


 知り得るはずのない記憶。もたらされる概念の理解。本来驚愕すべきことなのだろうが、慣れた。


「仮死状態で保存させていたのか。しかし、この様子だと……」


────とこしえの眠りに移行した。この樹の根の所為でな。


 人工冬眠が継続できなくなった。死んだ……のだな。


「要するに、迷宮を維持していく動機が、(うしな)われたということか」


────生還が叶わぬならば、妃の骸を衆目に晒すわけには行かぬ。貴公もそちらを見ないでくれ。


 それで破壊か。


「創造主は所有権を持っていると思っているだろうが。この迷宮は、現時点では冒険者ギルドの物ということになっている。勝手に破壊する訳はいかないな」


────不承知か?!


「断るとは言ってない。要はこの部屋を余人に見られなければ、良いのだろう?」

 俺だって、近しい人の屍を他人に見せたくはない。気持ちはわからないでもない。


────その通りだ。


「俺としては、この部屋以外をこれまで通り、迷宮の機能を……そうだな、できれば10年程は変わらぬようにして貰いたい」


────玄室が隠されるのであれば、システムの一部を活かしても良い。


 システム?

 初めて聞いた言葉だが、一瞬で意味が通じた。


「では……例えば、俺が跡形残さず、この部屋……玄室を焼き尽くすと言うのはどうだ? それならば、ギルドとも折り合いを付けさせる」


────その手段では貴公の意向は実現されぬ。玄室を燃やし尽くすような焔ならば、すぐ上にある中枢部は持たぬ。それでは迷宮機能は途絶される。


「駄目か……」


 一応訊いてみるか、何か手掛かりが有るかも知れない。


「元々の破壊方法……弁を解放すると、どうやって迷宮を破壊する?」


────弁を開くと、とあるゲル(半液体)が、玄室に流れ込むが……。


 要約しよう。

 そのゲルは、広間からの下、つまり、今、俺が居る第6階層を満たす。

 弁を通る段階で、ゲルは魔力により活性化されて止まった段階で石化が始まる。

 石化は数分で完了する。

 術者は、広間まで退避すれば害は無い。


「それでは、迷宮全体が破壊されるような気はしないが?」


────複数の経路から、流れ込むゲルが魔力導波管を塞ぎ、魔力で支える耐力構造体が数週間を経て構造崩壊する。


 ふむ。

 迷宮とは、やはり魔力によって動作する装置だったか。

 思い当たることがいくつかある。

 それはそれとして……。


「ゲルが流れて行く複数の経路とは、どこにある?」


────それを訊いてどうする?


「良いから、教えろ!」


────その情報は持ち合わせていないが……玉座の間より下流だ。


「なぜそう言える」


────魔力を印加する弁が、玄室のすぐ上にあるからだ。間には何も無い。そして玄室から流出する経路は、玉座の間に通じる経路しかない。


 そういうことか。

「いいだろう。依頼を受けよう!」


皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya

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