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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
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68話 地下第4階層 関門の闘い

お待たせ致しました(?)。戦闘回です!

 アリーの予想より少し早く、俺たちの順番が目前となった。いくつかのパーティーが、周回の時間稼ぎのために先を譲ってくれたからだ。3時間以内に再び関門の間に入ると強制退場だと言っていたからな。


 前も後ろも冒険者達は、のほほんとしたもので緊張感がない。

 何とも気楽で良いのだが、そうなると疑問が湧いてくる。

 この関門の意味は、何だろう?


 ここに来ている冒険者にとっては、都合が良いのは自明だ。

 勝ち取った魔結晶を換金すれば、それなりには儲かる。それに余程のことがなければ、死ぬことはない。

 当然ながら、他の迷宮は下手をすれば命はない。


 この迷宮が、そんな都合良くできあがっている理由はなんだろう。


 魔獣は繁殖の他に、とある魔導具に魔力を与えることで召喚できる。普通の迷宮は哀れな冒険者な骸を吸収して、魔力の源泉としているらしい。


 この迷宮は、その原則から大いに逸脱している。


 そんなことを考えていると、俺達の番になり扉が開いた。


「よし行ってくれ。健闘を祈る」


 促され3人と1頭が広間へ侵入すると、後で扉が閉まった。

 なんだか天井が高い。

 それに明るいな……この広間もか。

 昨日バルログが出てきた広間も魔石灯ではなく、天井が光っていたが、ここもそうだ。何の共通点が……。

 今はそれどころじゃなかった。

 

 丸い広間の中央、床に描かれた紋章が輝く。


 紋章の円縁に沿って黄金の光障壁が屹立し、その中に魔獣が3つ迫り上がってくる。


 体長5ヤーデン、双角牛頭。

 まるで象が立ち上がったが如き、隆々たる人型巨体──

 フンババだ!


 上級魔獣に臨した戦慄が、鑑定魔術を無意識に立ち上げる。

総合戦闘級(レベル)157!


 何が、大した魔獣じゃないだ!!

 さっきのバルログですら100未満だったというのに。


 両脇に従えた、小者にしか見えない牛頭人身のミノタウロスとて、体長は3ヤーデンはある。しかし、それらを見下ろすフンババの暗褐色の巨躯は圧倒的で、見る者を本能的に脅えさせる。


 その上──既に口腔に溢れるばかりの火焔を頬張っていやがる。障壁が薄くなっていく中、仰け反りつつ喉を見せた。消えると同時に噴き出す積もりだ。


 前方にいるセレナとサラが目に入る。


地壁(マウアー)!!】

 石床を突き破ったのと、火炎が放たれたのが同時。


「伏せろ!」

 魔圧を上げつつ叫ぶ。

 高速に隆起した土壁が、伸びて来た焔を辛うじて遮った。間一髪だ!

 やってくれるじゃないか!


「お前達は、ミノを殺れ!」


 俺は跳躍──自分で築いた土壁を足下に置いて、フンババを見据える。

 あの火炎は、続けては撃てないようだ。ならば。


萬礫(ズァヘイル)!!】


 白く霞み無数の散弾が、守護魔獣に殺到──


「なんだと?」

 しかし、フンババの直前、微かに光った透明の壁が立ちはだかった。

 礫が当たる度、波紋が水面の如く浮かび、だが奥には通さず消滅していく。


 ほう!

 正直舌を巻いたが、直前に鈍く輝いたヤツの角を見逃してはいない。


 中級障壁魔術……光属性──

光盾(スペクトラ)の上位互換か。


 その向こう、こちらへ向けて焔を口腔内蓄え、またもや吐き出す。


 ふん!


(ਠਛਞਗਙ)(ਅਮਅਡਢ)七眷属(ਜਲਮਲਭਤਧਠਞ)が第一(ਗਨ ਨਦਸਕਣਖਵ) 蒼き(ਝਭਗਅਚਨ)マヅダー(ਮਅਜਦਅ)の名に依りて命ず 我に何者も突き通すこと適わぬ 盾を与え給え 光壁(ਅਉਰਅ)


 敵魔獣が張った障壁と同じ、俺の目前に無色の壁が現れ、紅き焔を堰き止める──しかし。効果を現したのは片時。

光盾(スペクトラ)より劣るか。我が障壁魔術は脆くも割れるように崩れ、突き抜けた奔流が押し寄せる。


光壁(オーラ)!!】


 2度目の光壁は、火焔を物ともせず完全に阻んだ。

 障壁は、焔の粗密が流れゆくのを透かし見せる。


 ふふふ……流石は中級、されど無疵たり得ず!

 盾の強度を決めるは術者の力量、魔力。貫けぬ障壁などないと言うことだ。


 爽快だ!


 比してフンババは、自らの火焔を延々と押し留めて歩み寄る、()に驚愕を禁じ得ないらしい。牛面を歪めている。


 その頃。

 右横では光の筋を引いたセレナが、ミノタウロスの胴を切り刻み屠った。

 左では、五分以上で、サラが押し込んでいる。

 

 負けていられないな!


 指呼の距離まで、フンババに仕寄る。

 1歩退いた──小さき人間に気圧され。


 俺は、さらに1歩踏み出す。

 怖気たのか、フンババは自らの前面に7枚あった障壁を重ねた。


閃光(ゼノン)


 俺の眉間を発し、何物よりもただ真っ直ぐな輝線は──敵の光壁を割り砕き、貫いて、全ての抵抗を撲ち破った。


 魔術対魔術の正面からの殴り合い。負けられないよな。

 閃光はヤツの眉間に吸い込まれていく、が!


 ちっ。気合いを入れすぎたか。

 閃光はヤツの脳を穿ったが、貫通力のあまり素通りして遙か後方の石壁を赤く溶かす。


 ○


 俺は、その軌跡で首を動かした。

 フンババの眉間へ円が刻み込まれた直後、痙攣していたヤツの頭蓋が下顎を残して弾け飛んだ。


 吹き飛んだ脳漿や体液は、床を染める前に光と化し、遅れて全身が輝いて砕ける。

 数秒の後、巨大な魔結晶が、高い音を立てつつ床を転がった。


 僅かに時を置いて、左から断末魔が聞こえると、大斧が床に落ちた。最後に残ったミノタウロスを葬ったのだ。


「たっ、斃せました……」


「ああ。俺達の勝利だ!」


 寄ってきたセレナの頭を撫で、喉元を擽る。

 セレナが首を曲げこちらを向く


 ん? これは?


「よくやったねえ、サラ!」

 いつの間にか姿を現したアリーが、サラの頭を撫でている。


「はい。でもアリーさんのお陰です。支援魔術(バフ)を掛けてくれて助かりました。それにラルフ様にフンババが斃されたので、向き合っていたミノが気を取られて……」


 なぜか、サラは焦っている。


「それでも、ミノタウルスは強い。サラの手柄だ!」

「あっ、ありがとうございます。あっ、あのう。やっぱり私、皆さんのパーティーに加わりたいです!」


 敵を斃したというのに、強張っている顔。

 可愛いじゃないか。


「ああ、歓迎する。サラスヴァーダ!」

「ああ!」

「よかったね! サラっち! アリーちゃんも歓迎するよ。っていうか、一緒にパーティー作っていこう!」


「ありがとうございます。ラルフ様、アリーさん」


 視界の端に土壁が目に入る。俺が盾に使ったヤツだ。

 このまま放置は迷惑だよな。

 隆起させた地壁を、魔収納(インベントリ)へ入れる。


 振り返ると、サラとアリーが抱き合っている。

「あーー。盛り上がっているところ悪いが、話はここを出てからにしよう。次のパーティーが待ってる」

「ああ、そうでした!」


 開いた扉を通って外へ出る。

 全員が通り抜けると、見計らったように閉まった。

 ふむ。よくできてるな。


「あれ? ラルちゃん。何持ってるの?」

「ああ、フンババが落としたヤツだ」


 古い錫の持ち手と枠に、楕円の鏡が填まっている。

 金メッキの装飾が施されて居る。鏡面はややくすんでいるし。古い物なのだろうが……。

「手鏡? 見せて!」 

「俺も、まだあんまり見てないんだが……」

 アリーに渡す。


「小さくて可愛いい……けど、なんだか古ぼけてるね。サラっちどう」

 可愛いかどうか知らないが、確かに鏡面は片手程の大きさだ。


「はあ。あっ、ここに何か文字が。擦れてよく見えませんけど……エスパルダ文字じゃないのかな」

 鏡面の反対側を見ている。

「ああ、ラルちゃんに任せておいて」


 手鏡が帰って来た。

「ラウシアの文字だな……」

 解読に掛かる。


「ほらね。ラルちゃんは専門家だから」

「はあ」


「愛しき我が……マー……に捧ぐ。部分的に抉れたり擦れていて、それ以上は読めないな」

「贈り物ですかね?」

「そうだろうな。ラウシアは、今はなくなってしまった国だが。ミストリアと親交のあった国だったはずだ。分かるのはそこまでだな。アリーとサラ、これ欲しいか?」


「換金、換金!」

「いえ、私が言うことでは、でも……やっぱり換金ですかね」

「わかった。じゃあ。ギルドの鑑定家に見せよう。一応預かっておく」


皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya



訂正履歴

2018/04/24 誤字,我が眉間→俺の眉間(Knight2Kさん,ありがとうございます)

2018/05/01 魔術名被り訂正のため、光壁の記述を加筆修正。

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