表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
69/472

67話 なぜ大混雑?

混雑好きですか? そんな人ほとんど居ませんよね。都会で混雑は余り気にならないけど。観光地ではちょっと。だから連休時期は、出不精になってしまいます。

 ギルド公認地図の記載通り、下り階段を見付けた。

 地下第4階層だ。


 降りたって進むと、上層と同じように、近い場所に広間と転層陣があった。

 奥まったところに、魔導鞄から出した敷物を敷いて一服だ。もうすぐ10時だしな。

 皆まだそんなに疲れてなさそうだが、定期的に休憩を取るのが良いらしい。そうギルドの初級冒険者心得という冊子に書いてあった。


 陣に集る冒険者達が、2人の女子見たさに時々こちらに視線を送ってくる。そもそも、アリーの装備というか衣装って、露出が多すぎるんだよな。完全に膝が出ていて太股が覗けてるし。そんな不躾な視線も、間に寝そべるセレナを見付けると目を逸らす。


 時々、俺を粘つくような目で見てくるヤツも居るのだが、なんでだ?

 俺はセレナの傍らに腰を下ろして、時々通行人を威嚇する彼女の背中を撫でながら魔力を与える。魔力を攻撃に使うのは初めてだったからな、少し疲れているかも知れない。


 さっきから、ぼうっと歩いて行く冒険者を鑑定しているが、正直セレナに勝てそうな能力を持っている者は見当たらない。

 

 3階層では、(とげ)が多くて硬い甲羅持つ小竜亀(タクラス)を、右腕一旋で切り刻んでたからな。人間なんか……凄惨な光景しか思い浮かばない。これまでも、人間相手には威嚇しかしたことはないから大丈夫だろうけど。


「このお茶、おいしいですね」

「でしょ。お姉ちゃんが淹れたんだよ」

「はあ……すっごくお綺麗だし、剣術もラルフ様に教える程だし、それでいてお料理もお上手なんですよね。敵いませんねえ」

「敵わない敵わない。おっぱいも凄いし、お腹なんてキュっと締まって、お尻もボーンでしょ……」


 何の話をしてるんだ!

 でも、反応したら負けな気がする。


「……ほんとに、お姉ちゃん、とっととお嫁に行けば良いのに。メイドやってるなんて、気が知れない」

「ああいやぁ、そういう話ではなくてですね」

 サラがあたふたする。


「そうだね。お姉ちゃんが4つ年上で良かったよ」

 なんでだ?


「はあ。でさあ、ラルちゃん」

 今度は俺か。

「ん?」

「ん、じゃなくて。セレナの爪って何なの?」


 まったく! こんな往来が有るところで訊く話題じゃないだろ。


音響(ソノ)結界(シーマ)


「光魔術を紋章として、セレナの爪に刻んだんだ。魔力(マナ)を込めれば自動発動するようにな」

「ふわぁ。それってまるで魔剣とか魔刃みたい……って」


 サラは、口を押さえて周りを見回した。


「ああ。大丈夫、大丈夫。サラ、叫んでみ」

 こともなげにアリーは、目の前で手を振った。


「はい?」

「いいから、叫んでみ」


「はあ……わぁぁぁあああ!!」

「ああ、うるさい。もう良い!もう良い……。でも、わかったでしょ!」

「何がです?」

「あれだけ、サラっちが大声出しても、歩いてる人誰も振り返ってないでしょ!」

「ああ、そう言えば!」

「ラルちゃんが、偉そうに小難しい能書き垂れるときは、他に聞かせないように、結界張ってるのよ!」

「そういうことでしたか」


 俺の行動だけは、よく読むよな。


「しっかし、ラルちゃんが朝眠そうにしてたのは、昨夜それをやってたのね。まったく見上げたものだわ」

「まあな」

「セレナの為ってところが、気に入らないけど!」


「いえ、素晴らしいと思います! あれだけの魔力と魔術の才能を持ちながら、努力も怠らないんですね。ますます尊敬しました」

 尊敬……ね。


「ぶぅーーー。努力じゃなぁい。ラルちゃんって人は、やりたいことやってるだぁけ」


 むかつくが、一理ある。

 魔導具に興味はあったが、武器にはほとんどなかった。あるのは持ち易い木刀とか、振りやすい木刀とかか。でも、魔術研究に役立つかも知れないな。

 

「魔剣かあ。今度調べてみるか」

「えっ! まさか、ご存じなくてされたとか? 信じられません、天才……」

「違う違う。ただの魔術バカよ! 子供の頃はアリーちゃんとか、セレナとか。随分実験台にされたし」

「うわぁぁ。それは、流石に……」

 サラが眉を顰めて俺を見てる。早くも尊敬度半減したな。


「さて、休憩はもう良いだろう。いくぞ」

「ああ、誤魔化した!」


 ブツブツ言いながらも、通路を進んでいく。


「うーむ」

「混み合ってますね」

「てか、人が多過ぎでしょ」

 アリー、お前もこの状況を作っている1人だ。

 

 最初は前の冒険者パーティと間隔を開けるように歩いてきたつもりだったが、今では10ヤーデンも開いてない。後ろもそんな感じで、次のパーティが見えてる。


 さらに5分も歩くと。

「あぁ、駄目だ。完全に詰まった」

 こうなると探索じゃなくて、待ち行列に並んでる状態だ。

 大混雑と言って良い。


 いやあ。どっちかというと寂れた迷宮じゃないのか? ここ。

 どうしてなんだ。


「ちょっと行ってくる」


 そう言ったアリーは、あっという間に透けて壁に溶け込み、気配が消えた。

 迂闊だぞと言いたかったが、周りの冒険者達は、気が付かなかったようだ。


 次の角まで……見える範囲では数十人は待っている。詰まってから3分ぐらい経ったが、1ヤーデンたりとも進んでいない。


「あのう。お尋ねします」

 失礼のないように、ある程度は顔が見えるようにフードを引き上げる。


「おおぅ、なんだ男か!」

 はっ?


「いやあ。フードからのぞく顔は端正だし。てっきり女子3人組かと……って、今は2人しか居ないが」


 後ろで、クスクス笑ってる声が聞こえる。サラだ。

 沸き上がる怒りを抑えつつ訊く。


「ああ。で、この行列は、何の列なんですか?」

「なんだ、この階層は初めてか。地下第5階層に降りる前に、関門が有るんだ」


「関門というと?」

「ああ、1回1パーティしか入れない広間が有ってな。守護魔獣を斃せた場合は、第5階層に繋がる扉が開くんだ」

 ほう……。


「で、一定時間内に斃せないと強制的に別の部屋に飛ばされてしまう。そこは、この階層の最初の方にある広間にしか通じてない」


「要するに出て来た魔獣を斃せば良いんですね」

「そういうことだ。なーに心配するな。守護魔獣は何種類か居るが、どいつもそんなに強くない。俺達のパーティーは、何周もしてるが、負けたのは最初だけだ」


「それにしても、ここは混みすぎじゃないですか?」


「ああ、上層は面倒臭い魔獣が出て来るので、この層へ直接転層してくる者が多いんだ。この関門部屋の守護魔獣は結構良い物を落とすことが多いしな。俺達もそうだが、ここを勝って通って、下に行き、ここに戻るんだよ。だから、ここの通路が混雑している」


「へえ。そうなんですね」

「ああ、だけど、3時間空けないと問答無用で戻されるから、気を付けるんだぞ」


 良い人らしい。訊いてないことまで教えてくれた。


「ありがとうございます。助かりました」

「何、いいってことよ。ああ、列が若干進んだ。じゃあな」


 進んだ仲間達に追い付くよう進んでいった。


「サラ!」

「あっ、あの。ラルフ様を初めて見たとき、少女と間違えてませんよ……あっ!」


「サラも間違えていたんだな……華奢で済まんな」

「済みません。でっ、でも私より、力持ちなんですから……あっ! あれも魔術なんですか?」

「いや。ガキの頃、強化魔術を使いまくってたら、戻らなくなった」

「へっ、へえ。そうなんですね」


 感心半分、呆れ半分だ!


 ん? 待てよ!

 さっき、俺を見ていたヤツ……キモチワル!

「ああ、ラルちゃんと、サラっちが仲良くしてる」

「どこ行ってんだ?」

「ぶーー。まあいいや。この行列は、何を隠そう……」

「魔獣部屋の順番待ちなんだろ」


「なっ、なんで知ってるの?」

「前のパーティーに訊いた。それで、どれぐらい掛かりそうだ?」


「もう! そうね、1組3分が持ち時間らしいから、入れ替えで1分掛かるとして……ええぇ、1時間も掛かるのぅ?!」

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2018/04/24 誤字(Knight2Kさん,ありがとうございます)

2022/09/24 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アリーとかジャガーマンとか定期的にお仕置きしてくれたらスッキリ読めるのでご検討よろしくです!多分多くの人もそうね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ