63話 ドワーフの娘
最近背が高い女性の方増えてますよね。稀に小生と同じぐらいの背丈の方と、すれ違ったりしますが、明らかにスポーツしていらっしゃるんだろうなって体格で、感心します。
文字だ!
バルログの魔結晶が、回転しながら空中に浮かび、あちこちに表示している。
何? 何? とアリーが叫んでいるが、無視して光の表示を読む
古代文字……正確に言えば神代文字だ。
ਭਮਡਥਠ ਕਦਖਲਞਡਙ ਵਚਅਣਫਧਜਅਛ ਣਛਛ ਲਵਟਕਰਞਮਪ ਕਗਥਦਗ ਕਭਫਵਲਡਕਤਕਣਢਫਠਹਖਸਲਝਚਢਗਫ ਣਦਢਜਣ ਥਭਙਫ ਪਟਝਫਰਦਏਟਉ ਖਭਲ ਟਵਠਠਟਧ
選ばれし者よ 玉座の間にて 我を祭壇へ捧げよ さらば 道を開かん
とでも訳すべきか。
文章が理解できた頃、魔石は発光を止めた。音もなく落ち始めたので、そのまま魔収納に入れる。
この結晶を、玉座の間に持って行って、祭壇に捧げると……前途が開くらしい。
問題は、玉座の間がどこで、祭壇が何を意味するかが分からないことだ。
ギルド公認地図には、玉座の間など記載がなかったし、第4階層より下か?
「なぁに、その派手な魔結晶! あれって文字?」
「ああ」
何が気に入らなかったのか、ぷいっと横を向いた。
「あっ、あのう!」
ん?
さっきセレナが引き摺っていったドワーフだ。俺と背丈が変わらないが、声は高い。
「危ないところを助けて戴き、ありがとうございます」
胸に手を当てて、俺とアリーに感謝を示してきた。
「礼は要らないが……無事でよかった」
魔獣と戦いたかっただけだしな、俺は。そうだ!
「ああ。この剣、勝手に使わせて貰った。悪かったな」
ブロードソードを差し出す。
「ああ、いえ」
戦士は、恐縮して受け取った。
「そうだ! できれば、こいつに礼を言ってやってくれ。あんたを広間の外まで運んだのは、こいつだからな」
従魔を指す。
「そのウォーグが! ありがとうね」
しゃがんで、セレナに目線を合わせている。
隣に並んで喉と首筋を撫でてやる。
「よくやったな! セレナ」
「ワフッ【モット ナデテ】!」
「それにしても、珍しいよね。ラルちゃんが、男を助けてやれって言うの」
「男?」
「えっ? この人……」
アリーが慌てる。
ヘルムを取ると、中から長い黒髪が現れた。
「申し遅れました。サラスヴァーダと申します。こう見えても女です」
「あぁっ、ご、ごめんなさい」
「いえ。よく間違えられるので、気にしないで下さい」
「ラルちゃん、知ってて黙ってたのね!」
性別は知っていたが、アリーが誤解してるとは知るよしもない。
理不尽な怒りだ。
サラスヴァーダと名乗った女性は、対照的に隣で笑っている。
肌は浅黒いが、目鼻立ちが精悍だ。しかも整っている。露わになったって気が付いたが……。
「……ドワーフにしては細面で、なかなかの美人だ」
「アリー。俺が言ったみたいに喋るんじゃない」
「ふん! ラルちゃんの女好き! スケベ! それはともかく。私はアリシア、アリーでいいわ。でぇ、こっちはラルフェウス・ラングレン。通称ラルちゃん!」
雑な紹介だな。
「きっ、貴族様でしたか」
「貴族と言っても、准男爵の一族に過ぎないから、謙る必要はない。俺のことはラルフでいい」
「はっ、はい。ラルフ様。私のことはサラとお呼び下さい」
「うーん。サラちゃんか。ここまで1人で来たの?」
言葉も、体勢も、俺とサラの間に割り込ませる
「はい。第5階層に、希少な薬草が自生していると聞いたので」
「戦士が薬草採集? ああギルドの依頼なの?」
アリーは、遠慮という物とは無縁だ。
しかし、あれだけの剣の実力がありながら、採集というのは、どういうことなのか?
「いえ、薬師なんです」
「「薬師??」」
「ああ、いえ。まだ駆け出しなので……あっ」
少しフラつく。
「大丈夫? 飛ばされたとき、頭打ってたよね?!」
そのように見えたな。
「いっ、いえ。大丈夫です。でも、あっ、あそこに転層陣がありますので、今日は帰ります」
部屋の奥に、腰高の石柱が見える。
「アリーちゃん達も一緒に帰ろうよ。ここの探索は、明日ここに飛んで来ればいいわけでしょう?」
それはその通りだが。今はまだ4時前だ。
アリーの魂胆は読めている。
明後日もこの迷宮に来たいのだ。このままサクサク進むと、明日で終わってしまうかも知れない。それが嫌なのだろう。随分迷宮を気に入っているようだしな。
それに乗ってやるのもどうかと思うが……。
「分かった。この部屋をざっと探索したら。帰るとしよう」
できれば、日の有る内にローザと合流したいしな。
丸い広間をアリーとサラは真っ直ぐ、俺とセレナは右回りと左回りに分かれて壁沿いを探索した。
それにしても……。
俺は上を見上げる。
この広間は、天井が光っている。目に眩しい程ではないが。十分明るさだ。ここは特別な場所なのか?
一応壁に目を走らせつつも、考えがまとまらぬうちに転層陣まで来てしまった。
「抜け道あった?」
「ないな」
「ワッフ!」
この部屋で行き止まりのようだ。
「へえ、この子賢いなあ」
サラが、セレナを見ながら眼を細めている。
「これ以上、ここに居ても仕方ないし、帰るとしよう。皆、陣の中に入って」
俺は、第1階層を思い浮かべ、転層石を石柱の上端に翳す。
転層石が光り、石柱が呼応して輝くと、陣の輪郭から光の壁が立ち上がり、頭上まで覆われた。まるで天幕だ。
「わぁぁぁ、綺麗!」
光の天幕がすうっと下がって消えると、そこは違う場所だ。
無論見覚えのある第1階層、入ってすぐのところの転層陣だ。
初めてなので、こんなものかと感心はしていたが。しきりにアリーが感動しているので、なんだか醒めた。
「あの、転層陣は初めてだったのですか?」
「そうなのよ。そもそも、まともな迷宮は初めてだし」
確かに廃墟っぽいのに行ったことはあるが、こんな規模の大きい迷宮は初めてだ。
「へえ。そうなんですね」
サラは、少し不審そうな顔をした。
地上に続く階段まで来たが、時間帯のせいか入って来た頃と違って閑散としている。
そのまま外に出て、歩こうとしたら、サラがまた少しフラついた。
「身体的には治っているけど、精神的な物っぽいね。宿は?」
最近ギルド経由で救命救急法の無料講習を受けたそうだ。加持系巫女さん、まっしぐら! と言っていたが、ある程度の知見を貰ったようだな。
「アルデス亭です」
「どっちにあるの?」
「この先の街道を、右に行ったところです」
坂を下り、午前中来た道を辿る。大通りを歩いて5分で着いた。
ここか……ん?
「ラルちゃん?」
玄関を開けてどんどん進む俺の背中に、声が掛かったが無視だ。
「ローザ!」
栗毛の美女が振り返る。
「ご主人様!」
「あっ! お姉ちゃん! そう言うことか……」
「ご主人様に、お姉ちゃん?」
アリーとサラが追い付いてきた。
「こちらは?」
「ああ、サラスヴァーダと申します。迷宮でラルフ様とアリー様に、危ないところを助けて戴きました」
「そうでしたか。私はラルフェウス様のメイドです。立ち話も如何かと思います。こちらの宿に部屋を取りましたので、そちらへ参りましょう」
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訂正履歴
2018/04/24 ローザの発言の記載ミス(Knight2Kさん,ありがとうございます)
2021/09/03 誤字脱字訂正(ID:442694さん ありがとうございます)




