表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
63/472

61話 試練の間(1)

新しい主要キャラクタが登場します。

拙作としては長くなったので分けます。後半は今日中に投稿します。


登場人物と用語解説を第1部分に移動しました。ご迷惑を掛けます。

 「4階、4階~」

 アリーが鼻歌交じりで、長く続く階段を降りていく。

 俺は、セレナの脇腹辺りを撫でながら歩く。手触りがとても良い。


 この前、セレナは最近一段と毛並みが良いなと褒めた。すると、1日おきに、ローザがブラシを掛けてくれてると、セレナから聞いた。家事の他にも、館周りの付き合いとかも、やっていてくれる。働き者だよなローザは。

 今頃は、ゆっくり観光でもしてくれていると良いが……。


 おっと。地下第4階層に着いた。

 むう。階層の初期位置にある転層陣が見当たらない。やはり……まあ、主経路以外でも面白いところはあるだろうしな。

 一本道を100ヤーデン余り進むと、分岐があった。アリーは右に曲がる。5分余り歩いたが。


「あらぁ……行き止まりぃぃ……って何だ、あれ?」

 小走りに寄っていくので追う。


「見た目は宝箱だな。あからさまに怪しいが」

「開けてみて!」

 おい。聞いてたか?


「仰せのままに」

 金具に手を掛けた刹那──

 ガァァアアア!!!


 勝手に箱が開いた!

 箱の蓋が牙が生え揃った顎門と化し、俺を食い千切らんと、箱ごと飛んで来る。


「ガァァフ!!」

 一瞬早くセレナが体当たりし、擬態狸(ミミック)が、箱の格好のまま壁にぶち当たる。


衝撃(エンペルス)

 光と砕け散った。


「ラルちゃん。魔獣って、わかってた?」

「ああセレナもな」

「ふーんだ。あれ? 何か落としてる。短刀(ダガー)だ!」

 喜んだアリーが拾いに行った。


「はい! 魔結晶。こっちはアリーちゃんが貰って良い?」

 反射的に発動した鑑定魔法が、ミスリル・ダガーと伝えてくる。


「アリーが使うならいいが」

「使う、アリーちゃんが使うの!」


 ん?


「ちょっと待て、1回見せてみろ」

 受け取ったダガーをしげしげと眺める。

「柄に凹みが有るな」

「ああ、あるねぇ。ちょっと持ちにくそう」

「ここ魔石を入れるのだろう。魔剣になるのか……」

「へぇぇ。ああ……返さないからね!」


 俺から取り返して、ぎゅっと胸元に抱く。取上げたりしないって!

 来た道を戻り、分岐まで辿り着いた。


「変だな……」

「何が?」

さっきの(ミミック)以外、この階層で魔獣が出てこない」

「うーーむ」


 右に曲がって先に進む。

 その先は、ずーっと真っ直ぐだが、奥の方が明るくなっている。やや早足で進むと、奥から、ガチガチと甲高い打撃音が聞こえてくる。


「ラルちゃん!」

 アリーが、少し顔を引き攣らせて俺を見る。

 なかなかデカい魔獣の反応だからな。


「ああ、戦闘だな。セレナ、俺が良いと言うまで手を出すな!」

「ワフッ!」


 駆け足で通路を進むと、差し渡し20ヤーデン程の丸い広間に出た。


 これは……大物だ。


 バルログ──


 牛頭の巨人が濃灰の巨体を躍らせて、広間中央で大刀を打ち付けている。

 相手の戦士も、2ヤーデンを越す身体に(ヘルム)板金(プレート)(メイル)を着けている。


 一騎討ちか。

 

 戦士は、ブロードソードを(ふる)いながら、戦っている。鎧の隙間から見えている筋肉の付き方からして、ドワーフらしい。剣筋も通っているし、なかなかの膂力、手練れだ。


 手を貸してやりたいところだが。他パーティーの戦闘は、協力要請がない限り、助太刀しないのが慣例だ。やられそうになったら、その限りではないが。


 2合、3合と視たが、より有効打を入れているのは戦士だ。大したものだが、力でも防御力でもバルログが上回る。

 身体に刃が当たっても、対刃防御魔術が作用しているのか、さほど傷つかない。

 逆に、戦士が盾できちんと防御しても、剣圧と衝撃が身体に届いている。

 ゆえに、この拮抗状態は長く続かないと見た。


 数分後、やはり戦士は次第に壁際へと追い詰められていく。


 バルログの体重がよく乗った水平切りの一閃で、戦士がぶっ飛ばされた。

 さらに追撃──

 まずい! 

衝撃(エンペルス)


 バルログと、戦士の間に着弾した衝撃波は床石を粉々に砕き、1ヤーデンの穴を穿った。結果的に、ヤツと戦士を遮った格好になったが、俺には警告の意図はなかった。


 追撃する気が緩かったのか。


 ともかくも、大きく開いた鼻腔から湯気を上げながら、バルログはこちらを振り返った。

 次の挑戦者を認めたようだ、のっしのっしとこちらに向かってくる。


「セレナ、そいつを下がらせろ。後は……」

「任せて!」


 虚空から声がした。アリーも非常時は良く気が回る。

 さて。こっちはこっちのやるべきことをしないとな。


 大きく振り降ろした蛮刀が、空を斬って唸りを上げる。刃渡りがアリーの身長ぐらい、刀身だけで10ダパルダ(7.3kg)ぐらい有りそうだ

 当たったら……痛そうだな。


 ふぅと息を吐き、軽く吸って止める。下腹が熱くなり、躯が活性化していく。


 さっきの戦士はこれと撃ち合っていたのか、やるな。

 そう思ったとき、目の端にブロードソードが眼に入った。


     †


「ううっ……」

「あっ、気が付いた?」


 慈母のように見える少女が、私に手を翳して、金色の雨を降らしている。


「じっとしてて。もうすぐで終わるわ」

「うう。バルログは?」

「ああ、羽根つき牛頭巨人のことね。ラルちゃんが相手してる」


 ラルちゃん?


「はい、終わり! 半分ぐらい回復できてるから。あとは自分のポーションでね。持ってるでしょ!?」


 私が肯くと、凛々しい美少女は微笑んだ。

 こうしていると、私より若くも見える。


「じゃあね」

 囁いて数歩離れると、すっと空気へ溶け込むように消えていった。


「あっ、あのう」


 呼びかけてみたが、返事はなかった。

 あれは……幻? そんなわけは……。

 そうだ! あの少女が言った通り、私は回復している。

 吹っ飛ばされて、戦闘不能の寸前までいって失神したはずなのに。

 やはり、これは夢じゃない。現実だ!


 ところで、ここは?

 ああ、広間に続く通路か。


 ゆっくり起き上がる。

 すると剣を打ち合う音が聞こえてきた。

 頭では、ここを離れた方が良いと浮かんでいるが、我知らず足は広間へ向かっていた。


 大きな狼……こちらを振り返った。

 はっとなって、私は腰を探る。剣を持って居ないことに気付いた。

 背筋を寒気が駆け上がるが、なぜか狼は向こう……広間の方を向いた。


「ああ、大丈夫。セレナは従魔よ。あなたをあそこまで運んだのだからね」


 一瞬人影が見え、声がした。


「ああ。あなたは、ありがとうございます」


「くくくっ、あっはっはっは……」

 嗤い声だ。共鳴して分かりづらいが、多分奥の広間からだ。

 私は数歩前に出て、広間の縁まで来た。


「なっ!」


皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2018/04/24 ミミックの記載ミス(Knight2Kさん,ありがとうございます)

2019/08/27 誤字訂正

2020/03/20 誤字訂正(ID:881838 様 ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ