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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
5章 青年期II 迷宮編
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60話 お告げと骸骨

骸骨。理科室とかにあった骨格標本のイメージが……

 魔導鞄から移してあった魔収納から、丸めてあった敷物を出して通路の一角に広げる。座布団に水筒と茶器を出す。


「お茶は、アリーちゃんがやるし」

「ああ、頼む」

 俺は、館から持ってきた、深めの皿と別の水筒を出して水を注ぐ。


 セレナが、ゆっくり寄ってきて、顔を埋めて飲み始めた。

 頭を撫でてやると、グルグルっと喉を鳴らした。

 本来魔獣は水がなくとも死なないようだが、飲みたいだろうからな。


「はい!」

「ああ、ありがとう」

 皿に乗ったカップを受け取る。


「注いだだけだけどね」


 3時間前に館で作った、淹れ立て(・・・・)のお茶を喫する。

 美味い。

 さすが、ローザ。絶妙だ。


「このカップとか。どこから出したの? さっき、鞄から出さなかったよね」

 目敏いヤツ。


「魔術で同じことができるようになったんだ。鞄はローザに渡した」

「まぁた、お姉ちゃんか。ぶう」

 ご不満のようだが、無視する。


「そうだ! ラルちゃん。このままお昼にしない?」

「まだ、11時過ぎたところだぞ」

「いいじゃん。お腹空いたぁ」

 朝、俺の倍は食っていただろう。


「……あと今食べておけってお告げが!」

 お告げって。

 最近ギルドの研修に行ってるそうだからな。それに食い物のことで機嫌損ねると長引くんだよな、アリーは。


「仕方ない」


 少し早いが昼食にした。

 長い黒パンに縦に切れ目を入れ、肉の燻製(ハム)やら葉野菜を挟んだサンデルス風、略してハムサンドを食べた。辛子バターが効いていてなかなか美味かった。

 セレナに魔力を補給するか。

 手招きして、呼び寄せる。

 毛足の長い背を撫でたり梳いたりしながら、魔力を注ぎ込む。

 セレナの目が細くなって心地よさそうだ。


 休憩の後、迷宮探索を再開した。


 野獣系魔獣はセレナが斃し、スペクターは俺が始末した。

 昼過ぎに2階層を終わり、長い階段を降りて地下3階層へ達した。


「うわっ、人が一杯居るね」

「そうだな」


 転層陣の周りは、広間ぽくなっていて天井も高い。そこに敷物を敷いて座っている者が、20人程。4パーティーが休んでいるようだ。時刻も有るのだろう、炊さんしながら食事をしている者が多い。まあここなら、煙も気にならないしな。


「良かったねえ。お告げの通り、さっき食べておいて」

「はっ?」

「だって、ここで食べたら、今みたいに美少女アリーちゃんに注目が集まって、ラルちゃんも食べ辛いよ」

 確かに、こちらへ向けられた視線が多い。

 俺はフードを目深に被っているし、見られているのはアリーだろう。


「どこまで本気で言ってるのかわからんが、偶然だ」

「お告げを信じなさい!」


 うーむ。食事を早めた言い訳にしか聞こえない。あと、それに周りの冒険者達、その視線の先は、概ね別のところにあるようだけど。

 とは、口にせず、広間と転送門を後にする。

 100ヤーデン程進むと分岐に差し掛かった。


「そっちで良いのか?」

 何の迷いもなく、アリーが左に曲がったので、気になった。


「えっ、間違ってる?」

「間違っては居ないが……お告げか?」


 どちらに行っても、第4階層に続く階段がある。だから、あの地図だけでは、どっちが合っているかはわからない。まあ、左の方が大分暗いけどな。


「勘よ、勘! 女の勘!? そう都合良くお告げは来ないって」

「今まで通り勘か……」

 長い付き合いだ。アリーが勘や閃きを重視することは良く分かっている。


「勘なら訊きたいことがある。アリーの勘はどう言う基準なんだ?」

「はあ? 勘に基準?」


「要するにアリーにとってどういう道が、選びたい道なんだ?」

「ああ、そういうこと?! 進んだら直ぐに行き止まりとか論外だけど、それ以外は、行ったら面白そうな道かな」

「やっぱりな」


「ぇぇええ! じゃあ、右に行く?」

「いや。左で良い。任せた以上、明らかに間違っていることが分かっているとき以外は、アリーの選択に従うことにする」

 ギルドが推奨しない道が、間違った道とは限らない。


「ふんだ!」

 アリーは斜め後ろから見てもふくれっ面で左にそのまま進んでいく。

 石の壁が、白い石灰岩から、黒っぽい玄武岩に変わった。


 5分も経った頃。

「なんか臭うよね」

 ぼそっとアリーが呟く。セレナも、落ち着かないのか、絶えず首を回している。


 饐えた匂いは……。

「奥の方が強いな」


 うんと頷くと。前方に壁が見えてきた。

 右への曲がり角。


 何か灯りが揺れている。カシャカシャと鎧が擦れるような音が、聞こえてくる。

 人間?


 いや魔獣だ。

 感知魔術に依れば、生命反応の薄い魔獣の中でも、かなり低い。


「うわぁ、嫌いなヤツだ。消えまーす」

 アリーはすうっと薄くなっていき、姿が見えなくなった。


 どんどんと騒がしくなり、角を曲がって現れた。

 兜に付け、盾と剣を構えた歩兵──

 だが、鎧は着けていない、不自然さ。第一肉もなく、全身白骨だ。


 初めて見る、確か……骸骨戦士(スパルトイ)

 顎をかち鳴らして、2体が突進してきた。


 俺の前に音も無くセレナが回り込んだ。

 そして素晴らしい瞬発で襲いかかる。

 寸前に跳躍、(かいな)の一閃で頭蓋を飛ばし、残る1体には盾の上から体当たりだ。脆くも全身バラバラになった。


「グォッーーーーッフ」

 勝ち誇った。


 しかし、おぞましい光景が

 まるで時間が戻るように骨格が組み上がり、最後に頭蓋が乗った。

 虚ろな眼窩に燐光が甦り、再び剣を振り上げる。


 それに角の向こうから、またもや耳障りな音がやってくる。増援だ。

 10体程に増えた。


「セレナ、下がれ!」

 喉を鳴らしていた、セレナが口角を憎々しく上げながら、俺の言に従う。

 一斉に突進が始まる。こちらへと。


 腕を構え──


萬礫(ズァヘイル)!!】


 構えの先。

 虚空が一面に白く煙った刹那、轟音と共に幾万の散弾が対壁を穿つ。

 俺に殺到したスパルトイの姿はなく、(ことごと)く打ち砕かれた骨片を晒していた。数瞬遅れて床一面が、金粉に覆われるように綺羅光って、瞬くように消えた。


 後方に居たアリーが姿を現し、前へと歩いて行く。

「うわぁ、凶悪……。見て見てラルちゃん。壁の石が蜂の巣みたい」

 指で触っている。


 氷礫(ヘイル)の互換中級魔術。閉空間ゆえ、さほど魔力を込めなかったが、この威力。なかなか使えそうな魔術だ。


「先へ行くぞ」

 通路の角を曲がり、しばらく行くと、壁に白い部分がある。

 そこだけ、周りの岩と感触が違う。一辺が2ヤーデンもある艶やかな三角の曲面が象られている。


「どうしたの? ラルちゃん」

「牙? いや骨か……」

 そう言う感触だ。深奥から、魔力が染み出して来る。


「骨? 気持ち悪いよ」


 無視だ。

 指先で触ると、微かな凹凸を感じた。

 縦、そして放射状の溝。

 目立たないが紋章だ。

 その間に、呪文が刻まれている。

 ほう……。


「どうやら、ここから、さっきの骸骨戦士が生まれるようだ」


 それにしても。この大きさは何の骨だ?

 魔獣ではないし、巨大な海獣がいると聞いたことがあるが……しかし、この魔力は……もしや!

 聞いたことがある、超獣は稀に死骸を遺すと。古にはそれを魔導器に加工して使われることがあったと。


「はあ?」

「大丈夫だ。魔力が満ちるまで、しばらく時間が掛かる」

「いや、そういうことじゃ、ないんだけど」


 一瞬、これを打ち壊すべきかと思ったが……。

「やめておこう」

「はあ?」


 まあ何かの役に立つかも知れない。

 手で触って、紋章の形と呪文を憶えた。宿に泊まったら、何かに書き写しておこう。


「まだぁ、もう行こうよ……」

「そうだな」


 さらにしばらく進むと、下へ伸びる階段があった。


 未知の第4階層だ。

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2018/03/25 冒頭部分の表現を変更

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