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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
4章 青年期I 上京編
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56話 お見合い

お見合い……したことないんですけど。と言うか、今時世の中でもあるのかな?どうなんだろう。

 翌日。

 初めての授業も大過なく終わり、ダンケルク子爵の館へ伺った。昼時に行くのはどうかと思うが、先様のご指定だ。仕方ない。

 

「えっ、何? ラルちゃん。お昼の料理は何かなあ。楽しみだね」

「そうだな」

 アリーが、厚かましく同行しないのであれば、もっと良いのだが。


 うちの館から、さらなる高級住宅街を10分程歩き、子爵様の館に辿り着いた。門まで行くと、マーサさんが出迎えてくれた。


「こんにちは」

「ラルフェウス様、アリーさん、ようこそ。奥様がお待ちですよ」


 秋になっても、青々とした芝が綺麗な庭園を抜けていく。庭木もしっかりと刈り込んであるので気分が良い。


「そだ! マーサさん、マーサさん。教えてくれた、煮込み料理がとてもうまくいったって、お姉ちゃんが伝えてくれって。ありがとうございます!」

 この通り言えと、言われたのだろう。

 

「ああ、昨夜戴きました。おいしかったです。ありがとうございます」

 慌てて俺も礼を言う。


「おいしかったのであれば、ローザさんが丁寧にアクを取って、じっくり仕上げたからですよ。あれはそういう料理なのです」

「ああぁ。お姉ちゃんは執念深いから」

 おいおい、けなすんじゃない。

 華やかな能力を持ちながらも、黙々と粘り強く仕事を仕上げるのがローザの美点なんだぞ。


「そうなの。お料理には大事なことだわ。でもね、それは執念じゃなくて、愛情って言うのよ」

「愛情……ねぇ」

 なんで俺の方を向くんだ? アリー。

 それにしてもマーサさん。良いこと言うなあ。

 館に入り、美しく装飾された廊下を歩いて行く。豪華なのだが、品が良くて感じが良い。


「ラルフェウス様、こちらです」

 そんな会話をしている間に、夫人がいらっしゃる部屋に着いた。


 奥様失礼しますと言って、マーサさんが扉を開けた。

 ああ……。


「こんにちは。ドロテア夫人」

 ソファセットの端に座っていたが、俺を見てにこやかに微笑んだ。


「よく来てくれました。ラルフさん。今日が来るのを楽しみにしていましたよ」

 大袈裟だな。

 1週間前に会ったばっかりだろうと思いつつ、差し出された手の甲にキスした。


「アリーさんも良く来てくれました」

「こんにちは。奥様」


「それでこちらが、この前言っていた姪です。ご挨拶なさい」

 白いドレスを来た少女が立ち上がり、こちらに歩み寄ってきた。

 おっ。なかなか可愛らしい子だな。金髪が綺羅綺羅と美しい。


「でかい(ぼそっ)」

 横でアリー呟いた。


「はい、伯母様。ラルフェウス様、ディアナ・トルーエンと申します」

 立ち上がってスカートをつまみ、愛らしく挨拶してくれた。

 おおぅ。確かに。

 見下ろす形になって、呟きの意味を実感した。

 襟刳りが大きいのは、狙いなのかな……。


「初めまして。ディアナ様」

 胸に手を当て会釈する。


 顔は幼い感じだが、それ以外は大人相当だ。

 眼が大きく、にこっと笑った皓い歯が印象的だ。

 むう。誰かに似てる! 誰だっけ?


 そう思いながら、ソファに腰掛ける。


「この子は、亡き主人の一番下の弟トルーエン男爵の長女なのよ」

「……はっ、はい。そうです」



「だから姪と言っても、年齢的には孫のようなものでね。とても可愛がっているの。だから、私が気に入ったラルフさんに会わせたくてねえ」


 ああ、夫人の魂胆は、アリーが言っていた通りかも知れない。

 俺を、この子の婿にして、男爵家の跡継ぎにさせようってことだ。とはいえ、そう簡単に、この娘がその気にはならないだろうし。

 

「ディアナさん。ラルフさんはねえ、今年修学院に入学された、とても優秀な……ディアナさん、ディアナさん?」

 ん? 変な感じだ。

 俺の顔をじぃーと見ていて、反応がない。


「はっ、ああ。済みません、伯母様」

 どうしたんだ?


「そっ、それで、こちらは?」

「アリシアです。ラルちゃんの……」

 俺が睨んでいるのに気が付いたらしい。


「……ラルちゃんの又従姉(はとこ)です」

「はとこ……?」

「ああ、父と彼女の母親が従兄妹なんです」


「はあ……。伯母さまの御館に……もしかして、ご一緒にお住まいとか?」

「はい。スワレス伯爵領から、ラルちゃんに付いて来ました。残念ながら、姉も居ますけど……」

 残念って……。


 気の所為か、アリーとディアナさん、睨み合っているような。


「アリーさんのお姉さん。と言うことは、御館には何人でお住まいですか?」

「3人と1頭ですね」

「1頭?」


「ええ。従魔の魔狼(ウォーグ)が居ます」

「そうなんですね。是非見てみたいです。従魔……と言うことは、ラル、ラルフェウス様は、魔術師なのですか?」

 身を乗り出した。


「はい」

「そうなのですね」

「魔術師が、どうかしましたか?」

「ああ、いえ。何でもないです」

 はにかんだ。


 この表情。そうか……ふふっ。


「どうかされましたか?」

「いや、デイアナ様は、誰かに似てると思ったのですが。似ているのは妹でした!」

「はっ、えっ?」

「あぁぁ。そう言えば少し似てるね、ソフィーちゃんに」


「あのう。私ですか?」

「あっああ……失礼。目の感じが……ね」

「そうそう」


 ディアナさんの眉がピクッと動いた。

 

「あのう。そのソフィーさんは、何歳でいらっしゃいますか?」

 あっ! まずい。


「いや、そのう……」

「7歳だよね」

 アリー、サクッとばらすなよ。

 

「やはり……いつも童顔だと言われます」

 ディアナさんが項垂れる。


「そうかなあ。愛らしくて良いと思うけど」

 ソフィーに似てるし。


「本当ですか?」

 がばっと顔が上がり、眼がキラキラっと輝いた。

 ディアナさんは、眼を閉じると、一度大きく肯いた。


「あの。ラル……」

「ラルフで結構です。ディアナ様」

「では、私はディアナとだけお呼び下さい、私の方が年下なのですから」

「はあ……では、ディアナ」


 夫人を窺うが、にこやかなままだ。


「ラルフ様。もっとお近づきになりたいです」


 はっ?

 やばい方向へ行っていないか?


「ぇぇぇえええ!」

 うるさいな、アリー。


「王都で、友人を増やしていくのは嬉しいことです。喜んで」


「ほら言った通りになった」

 老婦人が、嬉しそうに眼を細める。


 晴れやかな良い笑顔だ。

 隣のアリーはしらっとしているが。


「さてさて、マーサさん。お腹が空いたわ」


「ご用意できております。お昼になさって下さい


 食堂に移って、たっぷり時間を掛けてお昼を戴き、子爵様の館を出た時には3時を回っていた。

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/07/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/10/07 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

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