4話 小さな理解者
序章まとめ投稿4話目です。
「ラルフ様、お乳飲んで下さい」
「ウゥゥンンン」
「奥様は、お出かけされてますから、このマルタのお乳を飲んで下さいませ……そうだわ。ローザ、ローザ!」
……ロー?
「なあに? おかあさん」
「ああ、ローザ。あなたからラルフ様に言って差し上げて、お乳を飲んで下さいと! あなたの言うことなら良くきいて下さるから」
「……はい」
……ロー。
「ラルフェウス様。よしよし。奥様がいらっしゃらないから淋しいのですよね。ローザが付いてますから、心配ありません。お乳を飲んで下さい。」
「アブアブ……マンマ? マンマァ」
……ウマウマ。
「ああ、やっと飲んでくれた。ふう。2ヶ月もお乳を差し上げているのに、なかなか慣れてくれないわ」
「ラルフェウス様は、本当に賢くていらっしゃるから。奥様か、おかあさんかお分かりになります」
「うーん。アリーは、すぐに飲んでくれるけどねえ。ラルフ様は、なかなか……ローザが居てくれると、ご機嫌で助かるわ」
「お母さん……ああ、空が紅くなってる。夕食の準備は……」
「そうね。そろそろ始めないとね」
「アブブブ……ハァァ。ゲッフ」
「ラルフ様? もうよろしゅうございますか? ふむ。アリーは寝ているし」
「お母さん。ラルフェウス様は私が付いてますから」
「そう? じゃあ、台所に居ますからね」
「はい」
「ラルフェウス様ぁ。いつもお可愛らしい。この真っ赤なほっぺの柔らかいこと」
「アブアブ」
「まあ指を? ニギニギですか?? うふふふ……」
「……ロ……」
「ロ?」
「……ロー」
「ロー……ロー……ロ……」
「えっ、えぇぇ」
「ロードゥ………ローズゥ」
「まさか。ラルフェウス様?」
「ロ・ロ……ローダァ」
「…………あっ、あああ……そうです。ローザです。ラルフェウス様」
「ローダァ」
「はい。でも、ローザです」
「ウウーーー?」
「ちょっと違ってます」
「ウウウウウ……ロー」
「ああ、正しくはローザです。さあ、仰って下さい。ラルフェウス様ならできるはずです」
「ロー……ダ」
「惜しい! ローザです」
「ウゥゥゥウ……ローズァ」
「もう一回!」
「ロ、ロー、ローザ」
「はい! ラルフェウスさまぁぁぁあああ」
「ビェエエエエエエ!!」
「ああ、ごめんねえ。アリー! お姉ちゃん、大きな声出しちゃったわ」
「ローザ……ローザ……」
†
「だだいま」
「お帰りなさいませ。奥様」
「あら、どうしたの? ローザ。目が真っ赤よ!」
「ええ。ちょっと。でも大丈夫です」
「そう……?」
「アブブブブ……」
「ああラルフちゃんたら。それよりローザ、何か有ったら言うのよ、私はあなたの叔母ちゃんでもあるんだからね」
「ありがとうございます」
「ふふふ。ママが帰って来ましたよ。ゴメンねぇ。でもローザお姉ちゃんが一緒に居てくれたからいいかあ」
「ロー……」
「アヘン、ゴホッ!」
「ローザ、風邪?」
「いいえ。大丈夫です、奥様」
「それなら良いけど? ウチは赤子が2人も居るからねえ。お互い気を付けないとね」
「はい。奥様」
「淋しくなかった? ラルフ。ママは淋しかったわよ」
「……マ」
「マ?」
「……ママ」
「えっ?」
「ママ!」
「奥様!」
「……呼んだの……かしら? 私を?」
「ママ!」
「わぁぁあ。呼んだわ! ちゃんと喋って。私のことをママって、ママって呼んだわ!」
「おめでとうございます。奥様」
「うっ、うん。ありがとう。ローザ」
「ローザ!」
「ローザって」
「はい。私も呼んで貰いました。凄いです、ラルフェウス様!」
†
「まさか、まだこの子が生まれて半年だぞ! 本当にお前のことを呼んだのか?」
「本当よ! ママって! ローザも聞いてたし」
「それは凄い……けどなあ。でもな、マンマじゃないのか? ママとマンマはよく似てるし」
「もう。あなたったら。そうだわ、ママの他にもローザとも呼んだのよ!」
「そうなのか。そうだ、ローザちゃんは? ローザちゃんは、どのくらいで喋ったって?」
「1年位だそうです」
「だろう……大体そんな物じゃないかぁ。私の弟もそんな感じだったぞ、ホレホレェー」
「ウギャ」
【タイタイ!】
「あなた、痛いって。手をそんなに振らないでって」
「ごめん、ごめん……でもなあ。この子は泣かないし、大人しいから、大丈夫かな?」
「なんです? 大丈夫って」
「ああ役所で、やっぱり数ヶ月前に赤ん坊が生まれたやつが居てな、毎日夜泣いて困ってるって言ってたぞ」
「それで?」
「うーん。なんていうか、ラルフは元気が無いのかなあって。アリーちゃんは、元気良く泣くしな」
「ラルフは元気だわ! ちゃんと大きく育って居るし。何て言うか、うるさいのが嫌いみたい」
「だから自分でも泣かないってか? あははは。ラルフのことがそこまで理解できる、お前の方が凄いんじゃ無いのか?」
「ローザも分かるって」
「へえ。そりゃあ……また。そうかローザのことも呼んだって言ってなあ」
「そうよ。私も聞いていたわ」
「そうかあ。ラルフは天才かも知れないな……ママって呼んでみ、ラルフ!」
「ンンン」
「嫌がってるかな?」
「ママ」
「おおぉう! 本当だ……本当に呼んだぞ。そうだ! 次は、パパ! パパって呼んでくれ!」
「あなた!」
「パパだ! パパだぞー」
「……パ」
「おっ! パパだ!」
「……パッパ! アブゥ!」
「てっ、天才だ!」
† † †
「ラルフ、お誕生日。おめでとう。お前も今日から1歳だぞ!」
ごしごしっと頭を撫でられた。
「パパ、ママ。ありあと」
「うん。よく言えたな!」
「ラルフ、おめでとう!」
「おめでとう」
白髪に白髭、顔中もじゃもじゃが居る。その隣には優しそうな、女の人も。2人ともたまに見る人だ。
「ジージ、バーバ、ありあと!」
「それから、アリーちゃんもおめでとう!」
「……」
僕の横に、女の子が座っている。
「アリー、大旦那様にお礼を申し上げなさい」
「あい! マンマ」
「ははは。マンマか、もう食べても良いぞ」
「食べましょう」
「あい!」
「でも、ごめんな。アリーちゃんの誕生日は、4日前だったのだろう」
「いいえぇ。旦那様。ラルフ様と並んで祝って戴けるだけで」
「いや。アリーちゃんは。ラルフの又従姉だしな。ああ、ローザちゃんも、来月で5歳になるんだったな。おじさんは忘れてないぞ!」
「ありがとうございます。旦那様」
この子はローザ姉ちゃん。茶色い髪に、茶色の眼でとてもかわいい。大好き!
いつもは、別々に食べているのに、今日は一緒。楽しい。
「この子達の父親が亡くなった時。私達親子を、引き取って戴いて、いつも感謝しています」
ん?
ローザ姉ちゃんが、泣きそうな顔になった。
おなかでも痛いのかな?
「まあ、まあ。マルタさん。今日はお祝いだし、和やかにね」
「ああ、申し訳ありません。奥様」
「うむ。一族助け合って生きて行くというのは大事だ。なあ、ディラン」
「はい。父上」
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訂正履歴
2018/01/06 「もうこんな時間」→「空が紅くなってる」