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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
4章 青年期I 上京編
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47話 天界バイト再び

えーと、投稿できました。超田舎に来ていますが、携帯電話の電波が届いてました。一昨年は届いてなかったのに。

さて、昔は成人の時期が早かったですよねえ。結婚も早かったし。

実感として、余り大人に成り切れてないけど。

 ハッ! ハッ! ハッ……

 口から鋭利な牙が覗く魔犬(ヘルハウンド)が、吐息を荒げて追って来る。

 巨大な顎門は、人の腕はおろか胴すら一噛みにするヤツだ!


 厄介なことにヤツらは群で狩りをする。

 赤茶けた土が所々盛り上がった起伏のある荒れ地、そこに低草が生い茂っている。

 脚にまとわり付くそいつらを蹴立てて疾駆しつつ、視線を後方へ。

 ひざ丈まで伸びた葉が、彼らの姿を隠す。……右に1! 左に2! 前にも。


 追い付いてきた。なかなか良い機動だ

 指呼の距離。真後ろに迫った一頭の気配が跳んだ。


気尖(スピアー)!!】


 水平に飛びながら、身を捩り放った魔術──風の槍は、狙い違わず魔獣の喉笛を貫いた。確認を省略、腕を振るって半回転すると、そのまま走り出す。


 むっ?!


【気尖!! 】【気尖!!】


 ズザァァアーー。

 片膝を地に付き止まると、ヤツらの姿そのままの光塊が俺の脇を通り過ぎ、瞬きながら粒子に昇華した。

 

 来た!

 左右から殺到する2頭を、跳び上がって間一髪躱し──


氷礫(ヘイル)!!】


 無数の氷弾を、真下へ射出!

 交錯するヤツらの頭上から降り注いだ飛礫が、瞬時に霧散させた。


 死骸がなくなり、魔導鞄に魔結晶が5つ入った。

 魔獣は、死して魔結晶をのこすのだ。


 身体を動かしながら魔術を発動し、魔獣を斃す。それが、俺のやり方になっている。

 気分が良いし、身体も鍛えられるから、好んでやっている面もあるが、元はと言えば、俺が1人で戦闘するから必要に迫られた結果だ。


 やはり、ギルマスが言ったように、もう1人2人仲間を増やした方が良いんだろうな。俺が攻撃に専念した方が、早く斃せるし。


 しかし、そうするには問題が1つある。俺が午前中修学院に通うことだ。仲間が、その間何をしているかと言うことになる。俺がいないところで狩りをする? 休んでる?

 いずれにしても、それを許してくれる人間でないとなあ。居るのかなあ。


「凄いね!」


 高い声に振り返ると、魔術を放つ時、違和感を感じた方向……暮れゆく夕日を背にした人影があった。近寄ってくる。

 見たこともない装束、キラキラと輝く滑らかな布地。


 逆光から外れた顔が見えた。

 アリーじゃない。


「なっ!」

 頭を見て息を飲む。


 豹!?

 豹の頭が人の胴に乗っている。獣人?


 さらに頭の上にも何か浮かんでいる。光の輪だと?


「やあ、久しぶり! **じゃなかった。こちらでは、ラルフェウス・ラングレンと言う名前だったね」

 喋った!

 それより、なぜ俺の名前を知っている?


「あっ、あんたは誰だ!?」

 そう問いながらも、どこかで見たことがある……気がするのだ。いやそんなはずはない。魔獣とも獣人とも付かない存在など、会ったことがあるはずがない。


「いやだな、僕だよ。ほら、15年前まで」

 僕? 何か引っかかるが……。


「馬鹿を言うな、俺は15歳だ!」

「そうだよ。君の生まれる前だからね。随分長いことを待っていたよ。当該星の平均成年年齢まで接触禁止だからね」


 何言っているんだ? 接触禁止?


「あれ? 本当に憶えてない? ふーーむ。バックドアが開かないのか? ちとグレーだが仕方ないか……」


 何を言っているんだ、こいつは。


「僕だよ、僕! ソーエル審査官、ドゥエスヤマテンテガルマスタ………………」


 電撃が走った──


 俺は、なぜ忘れて居たんだ?

 ドS審査官のことを!

 その長い名前を聞き終わる前に、意識が遠のいた。


     †     †


「ラルフ君、ラルフ君!」


 うわっ!

 眼を開けたら、豹頭が目の前にあった。


 天使は、はっきりとした星幽体(アストラル)の形が見えるが、下を向いて見える俺の形は、朦朧としてしまっている。よーく見ると上半身はうっすらとあるが、下半身は下に行くほど透けている。以前よりは見える。生者だから、多少生命力が反映されるらしい。


「ここは、天界福祉庁××銀河支部じゃないですか。あれ? 輪廻したのに憶えてる……ああっ! バックドアって、このことですか?」


 豹頭なのに、ギクッと言う顔をしたように見えた。

「まあ、深く考えないように」

 都合の悪いことらしい。

 しかし、それ以前に……。

「審査官! 生者をここに入れるのは、服務規程違反ですよね!」

「ははは。いやあ、記憶が甦ったようでよかったよ」


「上級審査官にチクりますよ」

「ぁははは……。嫌だな。ラルフ君! 天使の僕が違反なんかする訳ないだろう!」

 豹なのに引き攣ってる。


「現に俺を連れ込んでるじゃないですか!」


「うーん。そうなんだけどね。服務規程の16条を言ってみて?」

「はっ? 16条? ああ、福祉庁職員は、生者を天界に……」


「ああ、ごめん。2項の方」

「2項? ただし、次の場合は、その限りに非ず。長官が特別に許可した場合,職員補助として臨時雇用した場合……って、まさか!」


「流石ぁあ! 良く憶えてるね。その通りだよ! 雇用した場合は、例外で許可される」

「俺は、同意しませんよ! 労使とも同意のない雇用契約は成立しません!」


「いやあ。そこで、相談なんだけどね!」

 って、おい! 事後承諾させようって腹か!


「絶対嫌です! 違法な手続きの場合、契約は無効です」

「うん。そうだね! ……ラルフ君は霊格が高いから。天使なのに思わず言いくるめられそうになっちゃったよ。人間ぐらいだと一溜まりも無いよな」


「はい?」

「ああ、他人が君に思わず期待したり、好意を持ったり、説得されやすかったりするのってさ……」


 うっ。それは心当たりがある。

 なぜ、みんな俺に良くしてくれるのだろう、期待するのだろうと。


「……それって、君の人柄もあるけれど。天界で働いたことで身に着けた霊格値。それが高いお陰なんだよ!」


 そっ、そうだったのか。

 入学前の適性検査からこっち、ずっと謎だったんだよな。いや、俺以上に教会の神父様や助祭様の方が、よっぽど不思議がって居たけど。

 

 6歳にして霊格5400ポイントなんて異常値は、生前にやった天界バイトの報酬だったわけだ。記憶が戻って納得する。その後も年50ポイントペースで増えて、今や5900ポイントまで増えている。


「ですが、お断りです!」

 だからといって、あんな目に遭うのは、懲り懲りだ!


「もう! ラルフ君は強情だな! 君と僕の仲じゃないか」

 詐欺師と被害者?


「嫌です!」

「18年前のことがトラウマになっているんだろうけど、大丈夫! 大丈夫! 死者には無いけど、生者には拘束上限時間がある。それは、ラルフ君だって知ってるだろう」


「所属天体の平均日の4倍まででしたね。でも御免です。上級審査官のところへ行って、帰らして貰います」

「もちろん只とは言わないって!」


 金か!

 実のところ、凄く金は欲しい。思いっきり借金しているからな。

 痛いところを突いてきたな。

 さっきまで、ギルド支部を出た足で魔獣を狩っていたのも、手っ取り早く金を儲けるためだ。


 反射的に足が……いや足は存在しないような気もするが、とにかく止まった。恐る恐る振り返る。


「金ですか?」

「いやだなぁ。天界にお金なんて無いから、あげられない決まってる。臨時雇用の場合は、霊格ポイントは割り増しで上限で10倍付けられるけどね……ああ、待って待って、魔術! 報酬は魔術の呪文でどう! ちゃんと使えるように魔力パラメータも増強するからさあ」


     †


 結局、転生前にやっていた,バイトを再びやることになった。

 金には成らないが、より強力な魔術の呪文を手に入れれば、効率よく魔獣を狩ることができる。結果として儲けることができるからだ。


 服務規程で天界から下界に戻る時には、また記憶を消されるが……大丈夫らしい。


『裏技があるから!』

 だそうだ。


「はい。次の方どうぞ!」


 亡者が入って来た。

 見慣れた姿形は、白っぽいもわっとした人魂だ。


 えーと。####さんは、享年47歳。生前はザムエル星系か。パーシー語って、また超マイナーな言語じゃないか。まあ、俺に回ってくるのは、こんなのばっかりだ。


「ああ、####さん。お疲れ様です。えーと」

 ザムエル-パーシー語で話しかける。


 そう! ここでは亡者の言語で話さねばならない。

 そうしないと、話が通じないからな。


 机の上のジョー・ハリー天使が開発したオーブに霊力を込めると、周りの空間に無数の映像枠が浮かび上がる。 1000件程度のトピックが、自動抽出される。

 これで亡者の47年の生涯を振り返ることができる。

 慣れた手順で、次々と見定め、生前の行状を判じていく……ああ。


「……XX年YY月に3人、翌月に2人殺しましたね。これで霊格ポイントが-65ポイントとなり……。通算の霊格ポイントは-121です。よって地獄レベル2行きとなります。異議がある場合は、本審査で正審査官に申請下さい。予備審査は以上です、お疲れ様でした」


 亡者に地獄行きを予告する時は、心が暗くなるが、仕事は楽に済む。

 基本的に凶暴性は喪われているから、すんなりお帰り戴けるしな。


「次の方どうぞ!」


 …………………

 ……………

 ………

 …



 どぁぁぁああ。疲れた。気が遠くなりそうだ!

 言っては見たが。

 そんなことを、思える内は大して疲れてない。転生前は人格が摩滅して、機械に埋没していたからな。


「次の方どうぞ! ……あれ? 次の方ぁあ!」

 何で入ってこない?


「ああ、ラルフ君」

 おっと。亡者の代わりにドS審査官が部屋に入ってきた。 


「なんです?」

「96時間経ったよ! と言っても、因果律を落としているから、君の第2723星系第2惑星では時間は経ってないけれど」


 そうなのか。30時間過ぎた頃から、記憶が曖昧だ。


「いや、流石だね。昔取った杵柄とはこのことだね。3250人も処理するとは……(ぼそぼそ)なんというワーカーホリック」

「はい?」

 後の方が聞こえなかった。


「いや、何でもない。下界に送っていくよ。規定通り、ここに来た時の5.4×10の-44乗秒後へ送り届けることになるから」


「ああ、そうだ! 報酬は?」

「大丈夫。霊格ポイントは生者雇用割り増しと特殊言語手当が付いて……」

「いや。霊格値は、どうでも良いです。それより……」

「魔術も左腕に払っておいたから!」

「左腕?」


皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2019/09/07 誤字訂正(ID:512799さん ありがとうございます)

2022/10/07 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 確かにな、好きな人のためにならない事ばかりするのは(治癒以外)、振られて当然。欲しいのはローザだけでしょ本音は。あとジャガーマンは何故しばかれない?
[良い点] 全体的にバランスがよく読みやすい。 テンポも良くて次が読みたくなります。 [気になる点] アリシアのわがままっぷりに腹が立つ。 前世の記憶持ちだったらまだ許せると思うが、 記憶のない主人公…
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