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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
4章 青年期I 上京編
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46話 合格だけど……

ああ、私も待たされるの苦手です。今日もとある窓口並びましたが、早くて良かった。

 えーと。何だろう、この間は。


 俺とアリーは、所長室というギルドの建物の最上階にある、余り趣味の良くない部屋に通された。

 ソファーセットに並んで座り、頬に古い刀傷のある厳ついおっさん、ギルドマスターと向かい合っている。

 その後に、秘書の女性が、別の机の椅子に座っている。


 それに雰囲気が重い。

 入ってきた時、そこに座って少し待てと言ったまま、ギルマスは黙り込んだ。

 30分以上無言だ。

 待たされることが大嫌いなアリーが、ピリピリしている。


 で。何待ちなのかと思っていたら、審査員の魔術師が入って来た。


「ああ、バルサム。ご苦労、座ってくれ」


 しかし、ギルマスは、何を始めるでもなく、またゆったりと茶を喫した。

 あれ?

 この人待ちでもないのか。


「あのう! ちょっといいですか!」

 とうとうアリーが切れた。言葉遣いが丁寧なときの方が、まずい状況だ。


「なんだ?」

「審査結果を聞いて、さっさと帰りたいんですけど!」

「あん? じゃあ、嬢ちゃんの方から、行くか」

「えっ?」

 怒りが不完全燃焼のまま、背もたれに上体を戻す。


「アリシア。新人(ルーキー)ランク1として、冒険者ギルドへの加入を認める。ああランク1とは、審査で採れるルーキーで最高位だ。萎れたサブーレ樹10本を、3分以内全て立ち直らせたからな」

 巫女ってそんな試験なのか。


「大したものだ。実績を積めば、すぐ初心者(ノービス)ランクに上がれる。ご苦労さん。窓口でギルドカードを受け取れ!」


 そう言って、ギルマスはカップを摘まむ。


「はあ……ども!」

 ニヒーっと俺に笑顔を見せる。


「で! ラルちゃんの方は?」

 頭痛て……。


「ラルちゃん? ああ、この兄ちゃんのことか。済まんな。兄ちゃんの方はまだだ! 嬢ちゃんは帰って貰って構わんが」


 むうとアリーが頬を膨らませる。

「ラルちゃんと、一緒に帰る!」

 だろうな。

 気の所為か、ギルマスも頭が痛そうな顔をした。


 しかし、俺の審査が終わっていないとはどういうことだ?

 俺は、バルサムさんを睨む。


 その時、扉がノックされた。

「失礼します。所長! 確認書です」


 むっ、あの封筒の紋章は!

 受け取ったギルマスは、封蝋を乱雑に千切り中身を取り出した。それを眺める。


「ふーん」

 そう言って、中身をバルサムさんに渡すと、中身を改めて眉を上げた。

「ラルフェウス君。君は神学生だったのか」

「はい」


 やはり、この封書は光神(アマダー)教会の物だ。俺の身分を照会したのか。


「そういうことだ、バルサム。ラ、ラル、フェ……」

 ギルマスが躓いた。俺の名前は初対面の人には読みづらいようだ。


「ラルフで結構です」

「ああ、すまん。ラルフの身分が特殊なのでな、教会へ問い合わせた。結果、学業に影響の出ない範囲でギルドの活動を認める……だそうだ」


 神学生というのは、主に神や光神教の教義や歴史について研究する神学者、その候補生だ。教会に所属する。

 労働を尊ぶ教義ゆえ、学業の拘束時間以外は就業可というのは調査済みだ。


「よって、ラルフ……ラルフェウス・ラングレン。新人(ルーキー)ランク1として、冒険者ギルドへの加入を認める」

 ギルマスが宣言した。アリーと同じだ。


「ありがとうございます」

 会釈した。


 ギルマスが続ける。

「その上で聞くが、スワレス伯爵領出身で神学生をしている君が、なぜ冒険者をする」

 遠慮のない質問だな。


「俺は、最終的には上級魔術師になろうと思っていますから」

 魔術師は、一般魔術師と上級魔術師に分かれている。

 後者は、限定解除された強度や規模の大きい上級攻撃魔術を使うための紋章を取得できる。それに、条件に依っては都市間転送を使うことも許される。実際とても重要だ。


 上級魔術師になれば、夢が叶う──


「なるほど。神学生は王都に入る名分か!」

 そう。神学者は王都に在住する、限られた資格の1つだ。神学生になる目的はそれだけではないが、ここで言うこともあるまい。

 それにしても、ギルマスが反射的に言うところを見ると、前例が有ったということか。


「それなら、士官学校魔術師養成科の方が早道ではないのか?」

 バルサムさんが結構熱い調子で、疑問をぶつけてきた。


 上級魔術師になるには国家試験に合格する必要があるのだが、受験資格として魔術師の実務経験が必須となっている。

 それも経験を積みましたという自薦では認められず。軍に入り推薦してもらうか、魔術師協会指定ギルドの推薦を貰う、事実上この2択だ。


 軍で推薦を貰うには、魔術師部隊での従軍期間2年以上が必要になるが、入隊自体が難関であり、ほとんどが士官学校卒業者しか入隊できない。

 これがバルサムさんの主張だ。士官学校3年と合わせて最短5年で受験資格が得られる。


「ああ、バルサムは、数年前まで軍に居たからな。だがまあ、確かに士官学校に入った方が、手取り足取り魔術を教えてくれる。無論王都にも入れる。ギルドで、推薦してやるには」


 期間だけなら、そうだ。それは知らないわけではない。


 前者がバルサムさんが言った道、後者はギルマスが言ったように俺が目指している道だ。


「兵隊さんなんて駄目ぇ!」

 アリーが俺の右腕に抱き付いた。


「「はぁ?」」

 ギルマスとバルサムが、アリーに顔で疑問を訴える。


「だって、魔術師が兵隊さんになったら、遠くへ行ったりして、一緒に暮らせなくなるかも知れないじゃない!」

「まあ、あながち間違っては居ないな。私もそうだったが、転々と遠征させられることは多い。魔術師は便利屋扱いされるからな、」

「でしょう! だから絶対駄目!」


「要するに、この嬢ちゃんの許可が出ないと」

「まあ、理由の1つです」

 遺憾ながら、その通りだ。まあアリーだけが反対しているわけではないのだが


「うーむ」

 バルサムは、こめかみを押さえた。


「いいじゃないか。ギルドにとっては、都合が良い」

「そうかも知れませんが、惜しいと思いまして」

 何か良く聞く言葉だ。


「そう言えば、バルサムは士官学校出身だったな」

 首肯した。


「今からでも間に合うってかじゃあ、もう一つだ! 兄ちゃん……は、流石に悪いか。ラルフ、なんであんなに魔術の発動が速いんだ?」

「所長!」

「なんだ、バルサム。お前も訊きたいだろうが」

「魔術の秘儀を尋ねるのは……だめです」


「俺も、お答えしかねます」

 まあ、初めて魔術使った時からああだったとか。

 言い辛いよな。

 いくら本当のことでも、口にすれば人間性を疑われる。


 あれ?

 珍しくアリーが会話に興味を持っている。固い話の時はいつも眠そうにしてるのにな。


「そうか、仕方ねえ……それにしても、あそこまで速いのは電光(ブリッツ・デ)バロール位のものだろう?」


 電光バロール……名前だけは聞いたことがある。


「まあ、速さだけなら」

「そりゃそうだ! ラルフは15歳、ヤツは賢者様だぞ! まずは上級魔術を学ばなければな」


 賢者とは、上級魔術師の内、国家が最上級と認めた者だが、明確な選考基準は不明だ。

「そうですな」


「まあとにかく。ラルフと嬢……アリシアは、とっととノービスになってランカーを目指してくれ。そうすりゃ、上級魔術師認定試験へも推薦できるってもんだ。期待してるぞ!」


「努力します」

「はぁい」

 おっ、素直に返事したな。


「ああ、それから。ルーキーやノービス2までは、どこかのパーティーかクランに入って活動するのが通例だが」

「クラン?」

 アリーが聞き返す


「ああ、パーティーは知っているな。いつも一緒に戦うメンバーだ。クランはもう少し人数が多いやつだ」

「ギルドと何が違うの?」

「ああ、ギルドは公的な物、登録冒険者のために動く機関だ。クランは、まあざっくり言えば、仲良し団体だな」

 本当にざっくりだな。

「ふーん」

 納得したよ。


「嬢ちゃんは、もう少し勉強した方が良いな」

「勉強は、ラルちゃんが専門だから!」

「それで良く、巫女(メディウム)になれたよな」

「それは……」

 アリーは、口を開けたまま止まった。


「……それは内緒。ふふふ」


 おっ、良く止まったな、偉いぞ……って、アリーは、なんで頭が弱い子の振りするんだ?


「で、どうする? なんなら斡旋するぞ」

「入ったら、アリーと別々になるんですよね」

「多分な!」


「じゃあ、駄目。ラルちゃんと2人でやりますから。心配ご無用です」

「まあ、ラルフが付いてれば大丈夫だと思うが……依頼を受けるようになれば、夜番の人数も必要だぞ。普通4人以上にはする」


「少し考えてみます」


     †


「どうだった?」

「受付でギルドカード、貰って行けって!」


 アリーは窓口に取り付いた。


「用意できてるわ。アリーさんはこっちで、ラルフ君はこっちね」


 サーシャさんは、カウンターに、縦6リンチ(5.4cm)、横10リンチ位(9cm)の金属板を2枚置いた。しかし、冒険者ギルド登録証カードとだけ刻印されているだけで、他には何も書かれていない。

「ああ、その丸の中に右人差し指で触って、それでカードの完成だから」

「ここ?」

 全体が銀色なのに、そこだけ金色だ。


 アリーが訊いて、サーシャが肯いたので、言われた通りにする。


 指を離すと……おおうっと横でアリーが叫んだ。

 俺のカードも酸が浸食していくように、じわーっと、丸の周り金色が広がって、数秒で全体に色が変わった。

 おお、すげー魔道具だ。こうなっていたのか。

 指を離すと銀色に戻ったが、その時には俺の名前、年齢に所属である王都東支部、職位である魔術師(ウイザード)、そして、新人ランク1と刻印されていた。

 本人が丸の部分を触ると金色に変わるが、他人が触っても色は変わらないらしい。


「はい。持って行って。なくさないでよ、再発行は高いからね。それと、まだお昼前だから、依頼やってみる? ああ、まだ新人だから常時募集の採集か、小禍(イビル)級魔獣までにしておけば。そこの掲示板に、群生地とかしっかり書いてあるから」


「分かりました。ありがとうございます」

「うん、期待してるわよ!」


明後日、明明後日の土日ですが、法事で出掛けますので投稿できない可能性大です。

ご容赦下さい。


皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/07/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2025/05/20 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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