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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
4章 青年期I 上京編
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45話 ギルド入会試験(審査官サイド)

ええぇ! こんなやり方してんの?! って、時たま言われます。

大体絵というか作図をしてるときか、変態的なスクリプトやマクロ書いてるときが多いですが。

── 時系列はやや遡り 視点を転ずる ──


「バルサムさぁん」


 ぱたぱたと特徴的な足音と共に、甲高い声が聞こえてきた。

 

「ああ、バルサムさん。ここでしたか」

「何かな? サーシャ君」

 冒険者に人気が高い受付嬢が、執務室に入ってきた。


「お仕事です!」

「仕事? 仕事は今もしているが……」

「ああ、済みません。魔術師の新人審査です」


 この娘は、私の仕事が新人審査だけと曲解しているようだ。

 魔術師が必要な依頼の割り振り、パーティ、クラン間の調整、報酬の評価とやることは多いのだが。


「ああ、そういえば。さっき受付の魔道具が、共鳴していたな」

 新人候補の能力を受付で読み取られると、こちらにも転送されてくる。

「また新人の資料見ないで、試験するつもりですか?」

 見たら、つまらないだろう。

 数秒無言で過ごしたら、焦れたようだ。


「ここに申請書の写しと、評価用紙を置いて行きますので。お願いします」

「ロビーに居るのか? この作業にキリが付いたら行く。どんな顔のヤツだ?」

「ヤツじゃないです。可愛い男の子ですよ。ああ、この前みたいに無茶させないで下さいね! では! 次は巫女、巫女」


 サーシャ君は、慌ただしく出て行った。


     †


「ラルフェウス・ラングレン!」

「はい」


 名前を読み上げると、ロビーの長椅子に座っていた少年が返事をした。

 白いローブを着た、ひょろっとした体型だ。体型のことで、人のことをとやかく言う資格はないが。


 顔を上げて、目が合う。

 ほう。

 男と判っていたが……これが、可愛い?

 若い娘(サーシャ)の言うことは、よく分からない。

 キラキラと良く輝く金髪、苦労知らずそうな白い肌、整った顔の造作。まあそこだけ見れれば、かわいいのかも知れんが……それらを意識の外に追いやる物がある。


 眼だ。

 鋭い。いや私が名前を呼んでから、一層鋭くなった。

 魔術師に最も必要な知性も垣間見せている。


「審査する場所まで案内する。付いて来てくれ」


 被験者を通すべき、魔術師訓練室を素通りする。

 いつもここで、藁束の動かない的へ向かって、対象者が得意とする魔術を撃ってもらうのだが。

 今日は相応しくない。

 彼を見ているとそう思える。なぜだか、期待できるのだ。

 その予感に基づき、さらに奥の多目的室に入る。


 振り返って審査対象を視る。

「それでは。魔術師の登録審査を行う」

「はい」

 返事と共に俺を睨んだ。


「私は審査員のバルサムだ」


 なかなか勝ち気そうな少年だな。

 だからといって、緊張して堅くなっているわけではない。

 ありあまる闘志が、少しずつ漏れ出しているといった風情だ。

 私が君の相手をするわけではないのだが。

 さて、条件をどうするか。


『無茶はさせないで下さいね!』

 受付嬢の言葉が、頭を過ぎる。

 ふふん。別に無茶ではないさ。おそらく彼にとってはな──


「審査方法の説明の前に!」


 ਡਕਕਠਯ(ガースー) ਟਏਲਲੳਸ(テルース) ਵਯਅਪਠਜਥਲਚਞ(ダートーレス) ਗਡਖਢ(ヒューゴ) ਏਥਢਙ (イデッサ) ਏਸ()  <<召喚(サモナ) ゴーレム!!>>


 詠唱の終わりと共に、挙げた腕に魔力が通り抜ける。


 私の得意な魔術、土属性魔術で審査しよう。オーク型。弓兵、槍兵、剣闘士の3体を召喚した。


「このオークと戦って貰う。安心してくれ。君を殺すようなダメージは与えないし、そうなる前に判定で、審査は終了になる。万一の場合でも、回復魔術を持ったかんなぎもいるしな。それで制限時間は10分、まあオークを全て戦闘不能にしたら、終わりだが」


 20人の槍兵より、1人の魔術師ウイザード

 100人の槍兵より、1人の上級魔術師アーク・ウイザード


 よく言われることだ。だがこう続く。

 ただし、100ヤーデン(90m)離れし時──


 そのような距離は、この部屋のどこにもない。精々1/5だ。

 魔術師にとっては、まさに死地だ。


 彼は、一瞬目を見開いたが、この圧倒的に不利な状況でも動揺を見せない。ならば、こちらも掛け金を積むとしよう。


「ただし、回避能力を見たいから、開始直後の10秒は攻撃しないこと! たとえ攻撃が当たっても無効にさせて貰う」


 肯いたな。

 これで、彼の勝利は100に1つもなくなったが──その平然とした表情が、実力通りか見定めよう。


「じゃあ、始めて、いいかな?」

「はい」


 上等だ。

 まずは10秒間恐怖を感じてもらおう。感じることができたらの話だが。

 オーク3体の視覚と同調!


「では、はじめ!」


 やれ!

 奥に居る弓兵から弩を放たせる。ゴーレム自身よりも脆い矢だ。当たっても死なん! 当たり所によっては、脈なしと見切る。


 が。避けた!

 不意を突いたはずなのに、平然と避けた。

 しかも最小限の動きで──見切っている。


 呪文詠唱の暇を与えなければ、どう対応するか。


 第2擊。

 左前衛のさらに左にさっと移動し、弓兵の死角に入った。闘い慣れてる……しかし、弓兵を回り込ませて撃つ!


 また避けた!

 加速術式──いや、魔力の高まりがない……体術か?

 まま、滑らかに無駄のない動きで、避けていく。


 槍兵の突きも、薙ぎも、まるで当たらない。

 槍と弩の間断ない攻撃を、嬉々として避け続けている。

 これでも魔術師か! 軽業師の如く跳び、舞踏家の如く翻し、攻撃を掻い潜る。

 時間が……。


「10!」

 彼は、反撃禁止時間の終わりを宣言した。その誠実さは、命取りだ。

 撃て!

 

 彼は宙を舞った。

 生成りの白いローブが風を孕んで翻る。


 何!

 その腕の先から飛(つぶて)──


 視界の一部が奪われる。視界同調していたゴーレムが機能停止したことを意味する。

 馬鹿な! 弓兵をやられた。

 少年はさっき喋った。あれで詠唱が途切れたはず!? なのに礫が


 大きく跳び上がるのは悪手。弓兵の代償を支払わせる。


 無防備な着地時を逃さず、槍を突き出す……手応えがなく空を切ったと理解する間もなく、眼前に白い何かが過ぎった。


 視界がまた1つ消え──

 残る剣闘士に突撃させるを命ずる間もなく、鈍い音と共にあらぬ方向が視界を占める。最後に天井を見た直後。全て消え失せた。


 自身の視覚が蘇ると、大の字になったオーク剣闘士に無数のひびが入り。その向こう──強化土壁がめりこんでいるのが見えた。さっきの鈍い音はこれか。


 何が起こった?

 部屋を見回すが、3体のゴーレムは土塊に還っている。

 審査のはずが、ムキになって戦ってしまった。


 手を見せて、彼を止める。


 チッ!

 彼は舌打ちして、忌々しそうに自らの膝を手で払った。白いトラウザーが土で汚れている。

 と言うことは、2体目が最後に見た白い物は、あの膝なのか?

 クレイと言えども、ゴーレムを膝蹴りで……自己硬化魔術を使った? あの時間で?


 この部屋に来たときの、予感が正しいことを思い知った。


「これで審査を終了する……結果は、追って受付担当より知らせるので、ロビーで待っていてくれ!」

 ようやく、いつもの科白を絞り出した。


「ありがとうございました」

 数秒前の動きにも拘わらず、呼吸一つ乱れがない。


 神妙に会釈すると、彼は多目的室を後にした。


 ふぅっと、思わず息を吐き、試験を反芻する。


 ラルフェウスと言ったか。反撃禁止の10秒間を終えてから、ものの数秒でやられた。

 信じられない。

 魔術の発動には時間が必要だ。常識中の常識。


 3頭のオークもどきに、それぞれ別の魔術を使ったのは間違いない。

 彼は呪文を詠唱していたか? いや、していないだろう。

 無詠唱発動とでもいうのか。


 いつもは一顧だにしない、水晶玉が読み取った資料を見る。

 ──魔力上限値986……だと。

 

 凄まじく高い。

 無論、私が審査した魔術師の中では、ずば抜けて高い。

 賢者と呼ばれる最高位の術者でも、彼より高い者が居るのかすら分からない。

 だが、真に恐るべきは魔術発動の速さ。

 そして下級魔術にして、あの威力。だが安定度を見るに、全力には程遠い軽い魔圧しか印加していないに違いない。魔束が通りやすい体質か。体術も申し分ない。

 私が現役であれば、数倍する嫉妬に駆られていたに違いない。


 評価結果を記入し始めた。


 惜しいな。


     †


「バルサムさん。ここでしたか」

「どうした? サーシャ君」

 地面を均し終わった時に、件の受付嬢が入ってきた。


「ああ、所長(ギルドマスター)が、お呼びです。あっちに居ないので探しました。えーと、彼は?」

 顔に険がある……なぜだ?


「あっ、ああ。ロビーに戻るよう言ったが」


「……あの、大丈夫なんですよね?」

「何がだ?」

「ああ、いえ。結構です」

 踵を返し掛けた。


「待ち給え。これを!」

 サーシャを呼び止めつつ、私は審査結果通知書の判定欄に印を付けた。

 そんなことは、不要ではあろうが。


     †


「ただいまっと」

 ロビーにアリーが戻って来た。


「あれ、ラルちゃんの番は? まだなの? 遅いね」

「はっ? ああ……俺はもう、終わった」

「へえ。そうなんだ……っで、どうだった? 聞くまでもないか」


「だな」

「ふーん。あっ、サーシャさんだ」


 さっき行った通路から、俺達を受付した人が近寄って来た。

 今、総合受付の窓口には、別人が座っている。


「あっ、居た居た! ちょっと付いてきてくれる」


「はあ、はい」

皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2022/07/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
[一言] 二人の髪色が描写されたのって前話と今話が初めてですかね? ある程度キャラがはっきりしてきたら、早めのタイミングで外見描写があると読み進めやすくて助かります。
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