437話 災厄X ラルフの誇り
明日も投稿します!
追伸
予告しておりましたが、新作「異世界にコピペされたので剣豪冒険者として生きてゆく_だが魔法処女に回り込まれてしまった」の連載を開始しました。
https://ncode.syosetu.com/n6470hv/
末尾にリンクがあります。是非お読み下さい。
『おおぅ。ラルフェウス卿。無事かね?』
総隊長殿へ魔導通信を実施している。
第一声がこれか。俺のことを気に掛けていただいているようだ。
「はっ! 先程まで……」
『待て待て。まずは卿の無事を喜ばせてくれ……よかった。本当に良かった』
「ありがとうございます」
『それに、卿が無事ならば、すなわち全人類にとっても善き結果を得られたはずだ。報告を聞く前でもそれは分かる』
「ははは……これは参りました。先程までミストリア王宮にて、報告しておりました。遅くなりまして、申し訳ありません」
『いや。随分簡潔だったが、第一報は貰って居る。こちらの観測筋……でも、卿の言ったとおり、成竜の脅威は去ったとの見解で一致している、まずはそれで十分だ。それに、被害地での説明が優先されるのは当然だ。それで、クラウデウス陛下はお喜びであったかな?』
「はい。別途書状をもって、特定安全保障連盟と新世界戦隊へ謝辞を送ると仰りました。また、私が総隊長殿に通信するであろうから、それに際してはよくよく陛下が深く感謝を述べていたと、伝えるように申し付かっております」
『そうかね。それは何よりだ。どちらかと言えば、こちらがお礼を申し上げなければ成らない気がするが。では報告を聞こう』
「はい」
それから、映像魔導具で見せた部分を除いて、王宮で説明した通りを説明した。
まあ、こちらの方は、災厄は回避できたとの認識が共有できていたので、説明は容易だった。
『そうか。あの兵器発動は、こちらでも察知した。そこで、駐屯地へ詰問使を差し向けたのだが。あちらの回答としては国家機密の一点張りでな。ただ駐屯地内が騒がしくなっているとは報告を受けていたのだが、何を血迷ったものか』
流石に反応が早い。
『では、レガリア軍に対しては、国家間転送所が使えなくなっている線で攻めてみるとしよう。まだあそこの使用権はこちらにあるからな。概ね状況は理解できた。いずれ書面でも報告を貰うことになるが、急ぐことはない』
「はい。ああ、それで閣下に1つお願いがあります」
『ん。私にできることかね?』
「ええ。実は私がミストリアに転位した術式は特殊でして」
『ああいや。その術式公開には及ばない。どのみち卿以外に使える者は居ないだろうしな』
「そうかも知れません。ただ、お願いはそうではなくて、術の代償として息子がそちらへ行っておりますので、保護をお願い致します」
『それは……また特殊な術式だな。ああいや、訊かぬと言ったからには訊かぬが。ふぅむ。それで、ご子息はどこにいるのか? 卿の宿舎かね?』
「はい。先程、バルサムから連絡がありました」
『分かった。すぐ手の者を向かわせよう』
†
「父上!」
『ルーク。バルサムからも聞いているが、無事のようだな。なによりだ』
僕達が、聖都に飛ばされてきてから、1時間半ぐらい経って魔導通信が来た。
「はい。僕もフラガも、セレナも。無事です、元気です」
『そうか。バロール卿が、ルークは王宮ではだいぶ苦しんでいたと言って居られたが』
「はあ、確かにあの時は……」
フラガに心配を掛けてしまった。
壁際を見ると、彼もこっちを見ている。
それでも、やはりフラガは凄い。
僕は予めこういうことがあるかも知れないと、そう父上から教えて貰っていたけれど。フラガは知らなかったはずだ。それでも驚かなかったし、ここが聖都だと分かっても、どこであろうともルーク様にお仕えするのみです、そう答えていた。本当に肝が太い。
『そうか。お前にも随分負担を掛けたな。父を赦してくれ』
「そんな、父上……僕は、父上の子です! 何ということもありません。それより、災厄を回避されたとのこと、おめでとうございます。僕もうれしいです」
『うむ。ルークのお陰だ。国王陛下も、ルークに感謝していると仰った』
「陛下が!」
『うむ。しかし、ルークだけで頑張れたわけではない。フラガ。助かったぞ。それにすまなかったな。巻き込んでしまったようだ』
「お館様ぁぁ」
ああ、気丈なフラガが嗚咽している。
『セレナもな、ルークを頼むぞ』
「ワフッ!」
セレナは、嬉しそうに頭を上げて頷き、また腹這いになった。
「ああ父上。バロール卿は、僕にとても良くして下さいました」
『そうか、次に会ったら、良く礼を言っておく』
危ない危ない。ちゃんと言っておかないと。
通信魔導具の前から下がる。
「お兄様!」
『おお。ソフィーもそこに居るのか』
「はい」
『ああ……よくやってくれた。ルークとソフィーは俺の誇りだ』
父上……。
「お兄様……ソフィアはうれしゅう存じます」
ああ、いつも気丈な姉様が涙ぐんでいる。
「旦那様、旦那様聞こえますか?」
『ああ、聞こえているぞ、クローソ』
「ご無事でなにより。突然旦那様が消えて、ルーク達がやって来たから、びっくりしたのですよ!」
『ああ、すまなかった。クローソにも心配掛けたな』
「心配……心配なんかしてません。ソフィアさんが、『お兄様は、お勝ちになります。何の心配もありません』っていうから、私も信じていました」
『ははは。そうか』
「ところで……旦那様は何時こちらへ来られるの?」
『ああ、転送所が使えるようになるには、おそらく数日掛かるだろう……魔導器の魔力が枯渇しただろうからな』
「ううむ」
「なぜ、そんなことになったの? そもそも、すぐ旦那様が世界各国へ転送できるようにしてあったのではなくて?」
クローソさんは、いつも大胆に訊くなあ。
『それは……秘密だ。俺がそちらに行くまでは、バルサムの指示に順うように。また連絡する』
†
「おかえりなさいませ。お館様」
「うむ」
王都館に戻ると、モーガンといつもの半数にも満たないが家人達が迎えてくれた。
そのまま、執務室に入る。
「先程俄にご使者が来られ、お館様が王都へお戻りになったとの連絡を戴きましたが驚きました。またこたびは、任務を果たされたとのこと。衷心よりお喜び申し上げます」
彼らにも用意があるだろうから、使者を頼んだ。
「うむ。モーガンが家内をしっかり治めてくれているからこそできることだ。心から感謝している」
「いえ、そのような」
「それと気になっているだろうから先に伝えるが、王宮へ行ったルークとフラガ、そしてセレナはしばらく帰ってこない」
「はぁ。ご一緒でないので案じておりましたが、それは……」
モーガンの表情が動いた。
彼は、ルークの傅役だ。ほぼ自分の孫のように慈しみ、また厳しく躾けている。心配なことだろう。
「彼らは教皇領聖都に居る。さきほど、クローソとソフィア、それにバルサム達と一緒に居ることは通信にて確認した。しかしだ。機密にて口外無用だが。現在教皇領の国家間転送が使えない状況にある。よって、しばらく戻って来られない」
「はぁ……」
少し肩が落ちた。
「使えるようになれば、俺が迎えに行く」
「承りました」
少し安堵したようだ。だがこれも言っておかないとな。
「それと、我が城外の事業所だが」
「はい」
「竜の攻撃を受け、被害を受けている。ざっと見たところでは騎士団宿舎の半分以上が土に埋まってしまっていたぞ」
「そっ、そうなのですか……わかりました。疎開令にて、あそこには誰も居ないのは幸いでした。城門が開き次第、確認に参ります」
「うぅむ、それがな、1人残っていたぞ」
「真ですか?!」
驚くのも無理はない。
「いや。全員が疎開したとの報告を受けております。ラトルトは、全区画……ああいえ、研究棟の最高機密区画を除いて確認……まさか」
「ああ。そこだ。地下にサラが残っていた」
「サラスヴァーダ殿……はっ。あのう、お言葉では、無事のように聞こえましたが」
「ああ、無事だ。サラはどうも日付の認識が希薄のようだ。得難い人物だからな。誰か心利く者を補助に付けてくれ。彼女の生活が破綻しないようにな。無論未婚だから、女性にしてくれ」
「承りました。並行してしっかり叱っておきます」
「ああ、俺もさっきも叱ったが、どうも効き目が薄い。たぶん、モーガンもそうなるだろう。そこで、ローザにやらせるのはどうか?」
「おお、ローザンヌ奥様であれば。効き目があるでしょう」
「わかった。次に会った時に言っておく」
「よろしくお願い致します」
「うむ。話が逸れた。明日の午後3時からになるが、事業所で合同現場検証をやるので、モーガンも同席してくれ」
「承りました……が。合同とは?」
「うむ。(特定安全保障)連盟と軍務省、それに財務省だ」
「財務省ですか」
「ああ」
お読み頂き感謝致します。
ブクマもありがとうございます。
誤字報告戴いている方々、助かっております。
また皆様のご評価、ご感想が指針となります。
叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。
ぜひよろしくお願い致します。
Twitterもよろしく!
https://twitter.com/NittaUya
訂正履歴
2022/09/17 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)、ラルフの口調調整
2022/09/24 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)
2025/05/11 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)




