表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
最終章 救済者期III 終末編
462/472

432話 災厄V 極光と絆

絆って糸を半分って思ってたら違ってた。

 父上が、遠い地で戦っている。

 椅子がなくて、木箱に座ったフラガが僕の手を取る。僕を勇気づけようとしているのか、力が籠もっている。


 その後は、じりじりと状況が分からないまま、時間だけが過ぎていっていたのだけど。突如、目の前の魔導器が輝き始めた。そして、地下にある本体が唸りを上げる。


「スパイラス、魔導障壁緊急展開。繰り返す緊急展開!」

「ディアナ卿、どうした?」


 女の人の声が聞こえた数秒後。魔導器が眩き蒼い光の筋を放って、頭上で渦巻いていく。天井も屋根もまるでなくなったように透き通る。

 そうだった。この建物自体が魔導器って父上から聞いていた。そして、地下にある本体が稼働し始めた。


 渦巻いた無数の淡い光の襞が、星が瞬く夜空に広がっていく。


 なんて美しい。

 北の果ての地で見られる極光(オーロラ)とは、こんな光景なのかも知れない。

 僕は夢見る思いで見上げていた。


 だが、その思いは突然終わる。

 腹の底に、重い何かがのしかかってきた。


「ここに来るようだな」

 パロール卿がこっちを見た

 なにが? 竜?!


「腹を括れ、ルーク。ラルフが来るまで耐え抜くぞ!」

 なんて力強い!


「来たぞ!」

 空を覆わんばかりの黒い塊が見えた。

 あれが───

 竜がどんなものか知らないけれど、全身が総毛立った。


『全隊員に警告! (くろ)き竜は聖都上空から何処かへ転位した。厳重警戒。発見次第、報告願う』


「父上!」


 空に紅い焔が灯った。


「うぅぅ……」

 おぞましくも強烈な光が、空から真っ直ぐにこちらへ墜ちてくる。


 呑み込まれる───

 思わず目を瞑りかけた刹那、光の襞に当たって歪む。地響きと共に大きく城が揺れる。

 何が起こったのか? 

 分かることと言えば、まだ僕は生きていることだけだ。


「くぅ。なんて威力だ。これが成竜のブレスか。だが、ラルフの造ったこいつも負けちゃあいない」


 そうか。父上の魔導器が、障壁でブレスを弾いて僕らを守ってくれんだ。


「ルーク。また来るぞ!」

 バロールさんの叫びで身構える。


───再充填を開始します


 ぐぅぅぅ。

 躰全体から力が抜ける……魔力が吸われているんだ。

 その代わりに。魔導器が再び明るさを取り戻していく。

 そう。幼い僕が、直々に王宮に呼び出された理由。この巨大な王都(スパイラス)を覆い尽くす魔導障壁の動力源となるためだ。


 ハァハァハァ……

 こんなの初めてだ。躰が重い。


「ルーク様! この椅子ですね! この椅子が、ルーク様を!」

 フラガは、僕の腕を引っ張った。

 勘が良い。

 魔力充填機構である椅子が、僕から魔力を吸い尽くそうとしているのが分かるんだ。だが。


「離れろ! フラガ! これは僕の使命だ!」


───第2射来ます!


 くぅ……父上 父上───


     †


 ルーク?

 ミストリア王都か!?


『ミストリア王国スパイラスが、黎き竜の攻撃を受けた! 繰り返す……』

 ディアナ卿の声。


勇躍(リープ)!】

 真っ暗な空の高見から、一瞬で灯火目映い部屋の中へ!


「えっ? あなたぁ!」

 そこには、大きな眼をさらに見開いたクローソが居た。座って居る椅子から、跳ねたように立ち上がる。ここは、聖都内の宿舎だ。


「時間が無い。これから来る者を守れ!」

「はっ?」


「少し離れろ!」

 まだまだ問いたそうにしているクローソを手で制して、丹田に魔力を集め循環させる。

 我ながら、信じられない勢いで魔圧が上がる。


「行ってくる」


対滅生(エニヒレート)!!】


 魔術は、足下を揺らし轟音を上げる。

 気が遠くなり、音が消えた。


     †


 何とか……第2射を耐えきった。


「ぐぅぅ……」

 再びの魔力吸引を受けながら、隣の席にいる僚友の(ルーク)を見る。


───魔力充填速度低下 繰り返す 充填速度低下!


 くそぅ、充填が終わらない。

 さすがに初回と同じようには行かないか。

 この魔導器は、竜に対抗して障壁を張るのだが、ブレスが直撃し続けている間、魔力を消費する。魔力が空になった今は、また充填しなければならない。

 それが俺達の役目。


 だが。この仕組みは、そう何度も魔力充填することは想定していない。

 そもそも俺達の方が持たない。


 1ヶ月前。

 この魔導器を試験した時に、魔力充填をできる魔術師を選抜した。が、合格したのは、俺とグレゴリー卿のみ。1回の充填に耐えられたのは、この2人だけだったのだ。


 俺は、もっと多くの魔術師を並行させろと、ラルフに掛け合ったのだが。

『多ければ良いというものではありません。吸引される側の魔界強度が違いすぎると、逆流してしまいます。難題ですが……災厄(エゴゥー)までになんとかします』


 どうするのかと思ったが、これかよ! 

 ルークは、苦悶の相で身を揺らしながら耐えている。

 僅か6歳で。


 俺は、なんてことを許しているんだ。賢者と呼ばれ、いい気になっていた大人でも、この体たらくだ。

 並み居る上級魔術師でも耐えられなかったんだぞ!


 ルークの魔力量が高いのは認めよう。

 魔力消費耐性も強い。


 なんて餓鬼だ。

 だが、餓鬼が味わって良い責め苦ではない。


「はぁはぁはぁ……おっ、おい。そこのフラガと言ったか!」


「はっ、はい!」

 少しは歳が行った、少年が跳ね起きた。


「椅子から、ルークを引っぺがせ」

「はっ? でも……」


「だめだ、フラガ!」

「いいから、引っぺがせ! 後は俺と(じじぃ)がなんとかする! 早く引っぺがせ! おい! 聖獣、お前もなんとかしろ!」


 聖獣がゆっくりと立ち上がると、暴れるルークの服を咥え、引っ張り上げた。


───魔力充填速度 低下!


 それで良い。子供まで巻き込むことはない。


「はぁぁあああ」

 死ぬ気で魔力を振り絞る。


「だめだ、セレナ。僕を降ろせ! 父上と約束したんだ。この王都を護るって、約束ぅぅ……父上?」


 なんだ───

 不意に魔圧が高まり、肌が逆立つ。


 ルークの声音が途切れ、目映く光った。そして、弾けるように光の粒へ変わっていく。

 彼だけではなく、脇に居た少年も、聖獣も!


 何が起こっている?


 光の粒は無為に解れ、象っていた彼らの形は失われた。

 そして、再び凝縮していく。


 うっ!

 目も眩む閃きの後、人型に結実していた。


「ラルフ!」


 涼やかな面持ちの美男子が、白く魔晄を纏いながら不思議そうな顔で立っていた。


「おい。ラルフ?! ラルフだよな?」

 こいつのことだ。国家間転送が使えなくともなんとかするとは思っていたが。どうやったんだ? 


 ルークが居ない……セレナも、フラガも?!

 こいつが現れたのと関係あるのか。


「ふぅぅぅ。グレゴリー卿に、バロール卿……ここは王宮か」

「ああ、大丈夫か? お前は教皇領に居たんじゃないのか?」


 問いに答えず、ラルフは見上げた。

 いつもとは雰囲気が違う、まるで別人のようだ。


 このような状況にも拘わらず、微笑を湛えてさえいやがる。


───魔力充填速度 さらに低下……充填完了


 ラルフは、さも面白くないように、魔導器へ手を翳すと、警告音が突如途絶えた。

 一瞬かよ。


「おっ、おい」

 ラルフはこちら顧みもせず、ゆっくりと見上げた刹那、掻き消えた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/08/27 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます),少々表現変え

2022/09/24 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ