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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
最終章 救済者期III 終末編
450/472

420話 超過勤務

小生、残業は嫌いで(好き嫌いではやってないよね)、深夜残業なんかは……執筆くらいしかしません(仕事ちゃう)

 海岸線の色を手掛かりに探索を続け、おおよそ600ダーデンの範囲で飛行しては見たが。


『お館様、もう終わりにして下さい』

 通信魔導具から、パルシェの声が聞こえてきた。


『パル、何を言うのです!』

『しかし、お嬢様の様子は、あちらには見えておりません、お館様! お嬢様は息も絶え絶えにございます』


 ふむ。


「んんん。何か言ったか?」

 手を伸ばして、魔導具を引っかき回す。

 向こうにはガリガリと異音が届いたはずだ。


「魔導具の調子があまり良くない。今日はこれまでとしよう」


『わかり……ましたぁぁ。ふぅぅ』

『お嬢様!』

『お兄様、また明日。よろしくお願い致します』

「良く聞こえない。帰投する」


 魔導具の鈍い輝きが失せ、通信が切れた。

 ソフィーは魔力切れだな。


 無理もない。

 俺は飛んでいるだけだが、妹は集中しながら刻々と送られてくる映像を見続け、自らが視た託宣と照合しているのだ。疲労が蓄積して……まだ13歳だからな。

 機先を制すことができればと思ったが。


     †


「では行ってくる」

「もう止めは致しません。が、夜分です。十分気を付けて下さい」


 ふふふ。キツい顔だ。


 クローソは、思っていることがすぐ顔に出る。初めて会った頃は、その視線が氷のように見えたが、今では内に強烈な炎が渦巻いているのが実感できる。

 真に俺のことを心配しているのが伝わってくる。

 それが、近しい者には顔に出ているのがわかる。


 夕食前後で作業をやっていた時から、俺が出掛けるのを反対していたのだが、俺が聞き入れないので、先程まで半ば怒り、半ば呆れていた。


 実年齢は妻達の中で一番上だが、精神年齢は一番幼いのかも知れない。

 いや、一番善人なのだろう。


 その艶やかな頬を撫でる。


「ああ、クローソを泣かせないように気を付けるよ」

「もう! 行ってらっしゃいませ」


 宿舎の灯が失せ、目の前が真っ暗になった。

 飛行魔術ではなく、転位魔術での移動だ。宿舎から200ダーデン程離れた地点というか、海岸の上空に居る。


 見下ろすと、夜の帳が降りて星明かりのみが岩礁を照らしている。肉眼ではほぼ見えないが、魔導感知がありありと起伏を伝えてくる。

 垂直に降下してゴロゴロとした岩場に降り立った。

 ソフィーは、神託で見えた光景の場所は確定できなかったが、それなりに似ているという地点を4箇所挙げた。ここはそのひとつだ。


穿(エッド・)(グラーベ)!】


 腕を向けた先、岩盤に穴を穿()じり、そこへ魔石に魔導式を刻んだ魔導具を埋め込んだ。

 夕食前後でやっていたのは、この魔導具の作製だ。


 あとは……


氷晶(クリオス)

 氷柱が海上に生まれると、冷気が辺りを圧する。

中断(ハールト)氷晶(クリオス)


 よし、よし。反応したな。魔導具が魔圧の高まりを発報した。これで巨大超獣の感知が可能のはずだ。

 もう、ここには用はない。次だ!


 その夜は、4箇所とそれらを繋ぐ地点に、いくつか魔導具を埋め込んだ。


      †


 まあ!

 あんな所に居るわ。

 朝食のあと、姿が見えないと思ったら、旦那様は砂浜に面した庭の一角に建つ東屋に居た。妻……じゃなかった。秘書に黙って、姿を消さないで貰いたいんだけど。


 傍らにまで近付いた。なのに、全く反応がない。

 旦那様のこと、私が一歩庭に出た段階で気が付いているはずなのに。憎たらしいわねえ。

 潮風を緩く浴びながら、東屋でうたた寝という態。そんなわけはないわ!


「えーと」

 なんか、間抜けな声掛けになった。


「ん?」

「旦那様は、何をしているのかしら?」

 不満が声に乗ってしまった。

「は?」


「いや。この場所で、安楽椅子に座ってのんびりしているようにしか見えないけれど」

「ああ、そうだが」


 いやいやいや。

「それだったら、夜中に出掛ける必要なんてなかったでしょう!」

 私があれだけ心配したのに。


「そうだな」

「そっ……」

 反省の色がないわね。


「なんだ。昨夜子作りをできなかったら怒っているのか?」

 なっ!

 言うに事欠いて、なんてことを言うのよ。


「そっ、そういうことじゃなくて!」

 顔が熱くなった。


「必要がなかったのは、あくまで結果論だ。現在までに超獣が現れないとは限らないからな」

「はぁぁぁ。プリシラさんが。言っていたことが分かったわ!」

「ほう。何と言っていた?」

「旦那様は、けして手を抜かない。自分の身がどうなろうとも。だから妻たる者は……」

「妻たる者は……なんだ?」


「内緒! それはともかく、旦那……御館様のご予定は、入っておりませんが、おやすみになるなら……あれ?」

 んん?

 何だろう? 違和感というかなんだか気持ちが悪い。背筋を冷たい物が駆け上ってくる。


「クローソ。自分の口を手で押さえろ」

「どうして?」

 今はそれどころじゃない。

「良いから」

「分かったわよ」

「よし。では、ゆっくりと後ろを向け」

 はっ?

 何を言っているのかしらと思いつつも、言う通りに振り返る。


「なんなの?」

 館しか見えないが。


「2階の右から2つ目の窓だ」

 右から2つ目?


 むわっ!

 なんで?

 手を振っている旦那様が居た。

 ああ。言う通り口を押さえてなければ、大声を出すところだった。

 どういうことよ?


「えぇ!? じゃあ、この旦那様は?」

「ああ、それはレプリー6だ」

 レプ……ぇええ? ゴーレム?!

 アリーさんが言っていた、旦那様が刺客に刺されると思ったらという、あれだ! 影武者だ!

 まじまじと良く見直す。

 うわぁ。よくできている。旦那様そっくりだ。いや、どことなく違和感がなくもないけれど。5ヤーデン離れていたら絶対わからない。


 初めて見たわ───いや、初めてでは無いのかも。今までも何度か騙されていたのかも知れないわ。


「はぁぁぁ……それはそれとして、なぜここに、これを?」

「俺は、静養するために、ここへ来たことになっているからな」

 安楽椅子に座った動く人形が、旦那様の口調のまま喋る。

 静養する姿を、周りの者に見せる必要があるということか。


 まあ、そうだけれども。

「それで本物の旦那様は、そこで何やっているの?」

「……魔導具造りだな」


 相変わらずだわね。

 普段、王族や貴族の当主は働かない。

 だが、旦那様は起きている間、なにかしら働いている。モーガンですら全く頭が下がりますと、言っていたぐらいだしね。


「ええと。じゃあ、私もそちらへ行って、お茶でも淹れるわ」

「ああ、それには及ばん。しばらくそこで、そいつと語らっているフリをしてくれ」


 なっ!

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2022/06/04 魔力切れが誰か明記。細々訂正。

2022/08/20 魔導具の記載修正(kurokenさん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本文中の 『腕を向けた先、岩盤に穴を穿じり、そこへ魔石に魔導式を刻んだ魔導具を埋め込んだ。  夕食前後で作業していたのは、この魔導具を埋め込んだ。』 の部分ですが、最後のところは 『…
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