表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
最終章 救済者期III 終末編
448/472

418話 予知夢

小説と関係ないですが、突然踵を痛め、歩くと激痛が……でも歩かないとならないし。

「どうだ、気分は?」

 ベッドに横たわったソフィーの傍らに座る。

 早春の朝。

 柔らかな陽が、薄いカーテンを透かして入って来ている。


 サザール遺跡から帰ってきた夜、妹は熱を出した。幸いにも高熱とまではいかない程度だった。


「お兄様。ご迷惑を掛けました。パル、起こして」

「ああ、そのまま寝ていなさい」

「はい」


 我が妹ながら、恐ろしくかわいい。丸い額へ……。


「熱は下がっております」

 後ろから声が掛かった。パルシェだ。

「それはよかった」

 途中まで、伸ばした手を引っ込める。


「ありがとうございました。お兄様自ら癒やして下さり、ソフィアは幸せです」

 アリーには及ばないが、俺も回復系魔術を使える。同行の騎士団の中にも同様の魔術師は居るが、昨晩は知らせが俺に入ったので加療した。


「はっはは。少し熱を出したぐらいで大袈裟だな」

 目の端にパルシェが見えた。


「それと、パルが昨夜乱暴を働いた由、私からお詫び致します」

「お嬢様!」


 乱暴。

 夕食を摂り、さて寝ようかと思っていた11時。寝室の外が騒がしい雰囲気となった。壁の向こうに意識を飛ばすと、部屋の前でバルサムとパルシェが言い争って居ると感知した。


『旦那様。どうしたの?』

『パルシェが来ている』

 立ち上がり、扉まで歩く。


『どうした?』

 扉を開けると、感知した通りパルシェが居たが、血相が変わっている。


『お館様!』

『お館様。お休みの所、申し訳ありません。いや、あちらでパルシェ殿が、衛士を突き飛ばしまして』

 ふむ。それを受けてバルサムが押し留めていたと。


 考えられる理由はひとつだ。

『パルシェ。ソフィアに何か有ったのか?』

『はっ、はい。そっ、それが、お熱を出されまして。お薬をお飲み戴いたのですが……』

 下がらないと。

 普段の剛毅さが嘘のように狼狽えている。言葉遣いが変……それは、前からか。


『なぜ、それを先に言わないのか!』

 バルサムにも言っていなかったらしい。おそらく衛士にも告げなかったので、制止されたのだろう。


『行くぞ』


 その後、ソフィアの部屋を急いで訪れ、回復魔術を使った。さらになぜか魔力が消耗していたので、少々譲るとしばらくして症状が安静に戻った。徐々に熱が下がってきたので、夜半には引き上げた。


「ふむ。我が宿営を守る衛士を突き飛ばしたのだ。相応の罰を! そういう声もある」

 パルシェの顔が強張り、ソフィーは何度か瞬いた。


「今後は、こういうことのないように気を付けてくれ。用件は相手に伝わらなければ意味がないぞ」


「えっ! お赦し戴けるのですか? お兄様」

「ソフィーを思ってのことだからな。それにもう罰は十分に受けたようだし」


「はっ? いえ。私は罰など受けては……」

「そうかな? あの狼狽えようは尋常ではなかった。心労いかばかりかと、バルサムが言っていたぞ」

 吊り上がった眉が、垂直に見えたと言っていた部分は省く。

 それに熱が下がってきた時の、脱力ぷりはそのまま気絶するのではないかと思えたしな。


「そっ、それは……」

「ごめんね、パル! 心配掛けて」

「いいえ、お嬢様」

 抱き合っている姿は、本当の姉妹のようだ。


「ではな」

 小さく告げて、部屋を出た。


     †


 数日後。

 窓から差し込む朝の陽光が徐々に強くなりつつあるのを感じつつ、食堂に入るとソフィー達が居た。


「おはようございます。お兄様。クローソさん」

 いつも向けてくる柔らかな笑顔はなく、真剣な顔付きだ。


「おはよう」

「おはよう。ソフィーさん」


 席に着く。


「ご朝食後に、お耳に入れたいことがあるのですが」

「それは構わないが、ソフィーはもう食べたのか?」


 彼女の前には、皿が並んでいない。


「それが……お嬢様は、食べたくないと仰られて」

「パル!」

 ふむ。パルシェから、話しかけてきたか。


「では、兄も食べるのは止めよう」

「えっ?」

 クローソへ一瞬目を向けて、ソフィーに向かい合う。


「何か、夢でお告げがあったのか?」

「申し訳ありません。やはり、お食事の後にお目に掛かるべきでした」

「問題ない。話してみよ」


「はい。ここから、西の端の国。海辺の場所に、大きな白い夷狄が現れるとのお告げを授かりました」


 夷狄───


「白……で間違いないか?」

「はい」


 ふぅむ。(くろ)き竜、つまりは成竜ではないようだな。

 海に西の端の国か。

 大陸の西の端はケプロプス連邦だ。だが、その先もなくはない。ケープロ海峡を挟んで群島国家マリネルダ王国がある。そこか?


「ねえ、ソフィーさん。それが何時のことか分からないかしら?」

 右を見遣ると、クローソがテーブルに広げられたナプキンに、ケプロプス、マリネルダ、白、超獣と書き込んでいる。

 ふむ。


「何時……」

 予言やお告げの類いでは、時期の特定というのが最も難しい事項だ。

 ソフィーは、美しい手を自らの額に翳した。

 細い躰が小刻みに揺れ始める。

 

「今日、明日ではないようですが、さほど遠くない時期に現れると思えます。3、4日の内……ファァア」

「お嬢様!」

 フラッと横に倒れ掛かったが、控えて居たパルシェが受け止めた。


 ふむ。

 立ち上がって、彼女達の横に行く。

 顔が白く、唇が紫になっている。気を喪ったか。


「お館様」

 ソフィーに腕を伸ばした。

 数秒の後に、顔色が戻ってきた。


「お嬢様は、大丈夫なのですか?」

「お告げの解読には、多量の魔力(マナ)を使うようだ。心配するな。もう充填した」

「はあ……」


「それから、同じような状態になったら、これを飲ませよ」

 魔収納から、籠に入ったアンプルを12本出した。


「こちらは?」

「うむ、ササンテとは製法を変えたポーションだ。常用させるな。ソフィーには1本のみを渡して、他はパルシェが管理せよ」


「常用が駄目とは、お嬢様に危険なのでは?」

「パル……」

「お嬢様! 気が付かれましたか」

「お兄様が、そのような物を私に飲ませるわけはありません。ありがとうございます」

「はい。お部屋に参りましょう」

 軽々とソフィーを抱き上げると、片腕で支え、籠に腕を通して持ち上げた。


「失礼致します」

「はあ、すごいわね。ソフィーさんも、パルシェも」

「ああ、食事を持って来てくれ!」


「あなた、バルサムさんを呼ばれた方が」

「私ならば、こちらに」

 扉の前に居た。


「うむ、明日には出動することになりそうだ。詳細は本部に行ってから決める」

「承りました」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/05/21 無意味な改行訂正、少々加筆。

2022/08/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/08/20 竜の表記統一

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ