表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
16章 救済者期II 新世界戦隊編
434/472

408話 神の見えざる手

と言えば、アダム・スミス「国富論」! 読んだことないけど、歴史の授業で暗記した!

ん? 原書では、「神の」は付いてない? マジで?

 俺は、空へ舞い上がった。

 それを認めたのだろう、高度200ヤーデン程(180m)に漂っていたイーズ帝国の特級魔導師(賢者相当)が、再び斜めに上昇を始めた。

 彼女を追っていくと、1500ヤーデン近くで差が詰まった。


 足下は御料地を離れ、平原に移っている。

 どうやら魔術行使で最悪地上に影響があっても、被害を最小限とする配慮をしてくれているらしい。


 同じ高度に対峙すると、それが合図となったように、ファラム閣下は急速に左旋回。

 速い! 突如彼女の姿が白く煙る───衝撃波だ!


衝撃波(エンペルスタ)!】


 反射的に打ち返し、初撃を貫き返したが、もうそこに姿はない。

 相手は、眼にも止まらぬ速さで下方へ。


 無数の火炎弾が宙に生じ、唸りを上げて迫り来る。狙いが甘い──むっ!

 指呼の距離で次々と爆発、爆風と閃光が押し寄せる。


 面で制圧する気か───


 ふん!

 魔界強度を上げて結界を強め、受け流す。

 しかし、光芒の所為で姿を見失う。


 上───


 間一髪で、降り注ぐ何かを避ける。

 氷礫と認識する間もなく、源が翻って薙ぎ払うように殺到。


 身を捻った刹那、再び衝撃波が襲う。

 変幻自在。

 速度と手数は厄介、流石は人間だ。こういう超獣とは会敵したことがない。


 ん?

 攻撃が突然止んだ。


 気付くと、ファラム閣下20ヤーデン程離れて漂っていた。


───汝、なぜ反撃せぬ?


 声じゃない、念話(テレパシー)だ。

 透き通る程に麗しい相貌を微かに上気させて、柳眉が逆立っている。


───これは、失礼した


 俺も念話で返す。


───汝……我を愚弄するか


 そういうつもりはないが。

 まあ、殺さないと言われているし、女性だからなあ。正直、攻撃しようという気が湧いてこない。


───ならば、本気を出させてやろう


 むっ!

 閣下が消えた。さっきも消えたが、今度は魔感応にも反応がない。


 火箭───

 直下!

 恐るべき火力、そして勢い。


───これを防ぐか。だがいつまで保つかな!?


 間一髪、結界が阻んだが……。


 再び姿が消え、再び火箭が襲う。

 厄介な!

 方向、勢い。

 それが毎回違う。しかも頻度が上がり、ほぼ同時に押し寄せる。


 有り得ない。

 魔術の顕在化位置を変えるのは不可能ではない。だが非効率だ!

 位置指定術式の重畳、遠隔照準のための集中。1撃ならばともかく、これほど手数を加えるには大いなる無駄が発生する。


 そういう俺も無駄だらけだ。

 絶え間なく飛んで来る、火箭を避けながら考えているからな。

 今やることではないのだが、何か引っ掛かるのだ。


 ファラム閣下の意図は何だ?

 この何十発もの魔術の内、一発でも当たれば良い?

 そうすれば回避できなくなり、連撃を喰らう? 所謂飽和攻撃か。

 余り良い戦術とは思えないが。ふふふ……敵と思わなければならないらしい


 正面から来た閃光を、首を振って避ける。

 ふむ。対人戦術と言うヤツか。超獣相手を前提として組み立てる俺の戦術にはないが。


───それそれ どうした!?


 むっ!

 なんて手数だ! 連撃の速度がさらに上がっていく。

 このように至近距離で発動されているにも拘わらず、術式すら見えぬ。

 瞬時に理解して対応、俺の異能が封じられ、より焦りを生む。


 くっ!

雷光殻(ブリッツヒューザ)!!】

 とうとう避けきれなくなり、自らを包み込む光の障壁結界を展開する。


 無様だ。

 自ら閉じ籠もるとは。超獣か俺は!


 火箭が球体の表面で無数に弾け飛ぶ。

 密度はともかく、信じられない程の発現位置操作量だ。


 世界は広い。

 魔力はさして投入されていないのだろうが、ここまで翻弄されるとは。

 魔術が発動している位置を見ているのに、どのような術式か見えないのは初めてだ───いや見えていないのか?


 眼を閉じ眉間に意識を。感応が研ぎ澄まされていく。

 そうか。見えていないのではない。


解除(ハールト):雷光殻】


 空を滑って腕を伸ばすと、肘から先が何処かに掻き消えた。力任せに引き寄せる。


 闇の壁が露見すると、俺の上腕に引き続き、女の細い腕と薄緑の衣がそこから突き出てきた。


【痛い! 痛いではないか】

 全身が現れると凶悪な魔界が消えていた。


【失礼致しました。再会を果たすことができ恐悦に存じます、ファラム閣下】

 掴んでいた右手首を離し、空中で略礼をする。


【むぅぅ、痣になったらどうするのだ?】

 麗しい眉根を寄せて、しきりに手首を摩っている。

 いや、閣下の火箭を受けたら、只では済まなかったと思うが。


【なぜ、我が亜空間から魔術を使っていると分かったのか?】

【見えなかった故、尋常ではない場所に潜まれていると】


 そう。

 魔術が発現した位置と見えていたのは、亜空間と繋がった場所だったのだ。術式も見えないわけだ、亜空間で発動しているのだからな。

 つまり、この賢者は、空間魔術の巧者だったいうわけだ。


【それだけで、我を引っ張り出せるはずはなかろう?!】

【さて。霊感の良さを親に感謝しておきましょう】


【ふん! まあよい。汝の力量はよく解った。国元における懸念は払拭された】

【勘だけで判断されてよろしいので?】


【魔術の威力は、汝の積んだ実績で認定済みだ。ただ懸念されたのは、ここだ】

 頭? 閣下は冠の側を指差した。


【魔術のみで、竜に対することはできぬ】

【竜には詳しいので?】

【西洋の者よりはな】


 それは興味深い。


【ともかく。汝は善く機転が利くと見える。故に西で起こる災厄は任せることにする】

 頭とはそういう意味か。


【信頼を得られたようで、うれしく存じます】


 眉が全体に持ち上がり、上機嫌の相になった。


【そのように、言葉を持って回らずともよい。我が肌に男が触れたのは久しぶりだ……】

 ん?


【褒美として、汝に我を姉と呼ぶことを許す】

【はぁ……】

 姉?


【ではな。夕餉の折りにまた話すとしよう、弟よ!】


 言葉が消えぬ内に、姿が見えなくなった。

 弟か……。


     †


「父上!」

 滝の側に降下すると、ルークとフラガが駆け寄ってきた。

 その後、ゆっくりとアリーも寄ってくる。


「御館様。魔術戦闘があったようでしたが、ご無事のご様子。よろしゅうございました」

「ああ、心配掛けたな」

「ぼっ、僕は心配なんかしていないよ。だって父上は強いもの」

「うむ」

 肯いて、ルークを抱き上げる。


「あら、そうだったかしら。父上、父上ぇぇって叫んでいる子供が居たわよね。ねえ、フラガ」

「さっ、さあ。私は何も……」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/02/19 誤字訂正

2022/08/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ