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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
16章 救済者期II 新世界戦隊編
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404話 求婚するは我に在り

復讐するは我にありってフレーズ(映画題名,小説題名)の意味がよく分からなかったんですよねえ。我にあり=我こそが復讐するの強調かと思ってたら違ってましたね。おまえは復讐するな、我(神)がするって言う意味だったんですね。

 翌日。プロモス大使館を訪れた。


 今日は公式訪問ではなく私的な用件なので、私邸の方へ通された。10分程待たされたが、クローソ閣下が応接室に入って来られた。

 立ち上がって挨拶する。


「一別以来、ご無沙汰しました」

「ああ。ラルフェウス卿……皆は席を外してくれ」

 皆というのは、壁際にいた執事とメイド達だ。微妙な表情で部屋を辞していった。


「この度は、済まなかった。この通りだ」

 しっかりと謝られてしまった。


「ご母堂に申し上げた通り、(ゆる)せぬとあれば、大使を辞してプロモスで戻るつもりだ」

「閣下に(とが)はありません」

 辞めると言って、ある意味で俺を脅迫している以外は。


「確かに、悪いのは母王だ。何を考えているのだ? 私と……その、ラルフェウス卿が結婚すると、いっ、いや仮の話だ。仮の話だが、そうなったとしても、プロモスの賢者になってくれるわけではないのに」


 すっかり上気している。


「何度でも、きっぱりと断ってくれれば良い」

「断って欲しいのですか?」


 3度ばかり瞬いた。

「なっ、な、何を言っている?」

「私は求婚に参ったのですが」


「求婚……求婚?!【ばっ、馬鹿なことを言うなぁ!!】」

 途中から、プロモス語に戻った。

 顔が真っ赤だ。


「失礼致します!!」

 扉が開いて、執事達が駆け込んできた。主人が大声を出したのだから当然だ。

 おそらく俺が無作法でもしたと思ったのだろう。女性関係では評判が悪いからな。


「如何致しましたか?」

 しかし、俺と閣下は十分離れているので、異変を見出せなかったのだろう。


「なんでもない」

「しかし……」

「何でもないから、外してくれ!!」

「はい」


 俺を睨みながら、渋々部屋を辞していった。


「話を戻しますが、求婚と申しても閣下を正室には致しかねます。あくまで側室にということです」

「そんなことはわかっている。ローザ殿が……いっ、いやそういうことではなく、卿は正気か?」

「はい」


 しばらくぶりに氷のような視線が来た。

 初めて馬車で面談した時以来だな。


「もしや、クラウデウス陛下に強制されたのか? 母の所為で」

「いいえ。我が国王は、この件は私に任せると仰いました」


 ふぅっと閣下は溜息を吐いた。


「ならば、なぜ? カゴメーヌでは、断ったと訊いたぞ」

「はい。浅はかでした」

「浅…はか……ラルフェウス卿が言うとは思わなかった。ああいや、それはそれとして。なぜ、今は私に求婚する?」


「誤解のないように申し上げておきますが、3人の妻をそれぞれに求婚したのは、第一に女性として好きだったからです」

 閣下は、まるで頭が重くなったように、面を伏せた。


「妾もそうだというのか?」

「もちろんです」

 表情が、何度か入れ替わった。


「うっ、ぅぅぅ。しかし、4人……4人も、ず、ずいぶんではないか?」

「はい。私もそう考えて、浅はかにも断りしたのですが。帰国してから妻達に諭されました。その理由を嫌気するのは私ではなくて、閣下の方だと」

「むむむ……」


「ついては、求婚致します。お気に召さずば、閣下が断って下さい」


 顔色が赤から青くなり、普段の白さに戻った。

「もう一度訊く。本気なのだな?」

「はい」


「もし、私が求婚を受けたらどうする?」

「言うまでもありません。私の側室になって貰います」

「むぅぅ…………卿の求婚は理解した」

 眉根を寄せて渋い顔になった。


「無作法をお許し下さい。ご返答はゆっくりと待たせていただきます」

「あっ、ああ」

 どうやら、即答は無いようだ。当たり前だな。


「それでは、これで失礼致します」

 立ち上がる。


「えっ?! あっ、そうかそうだな」

 あからさまに挙動が不審だ。

 まあ突然求婚されたのだ、無理もない…………ないが、大使館の私邸の中を勝手に歩き回るわけにはいかないから、誰かを呼んでもらわねば困るのだが。


「あのう、執事の方を」

「あっ、そうか。済まない。誰かある! ラルフェウス卿がお帰りになる!」


     †


「お帰りなさいませ。随分早かったですね」


 アリーに出迎えられた。

 ローザは、身重になってから普段は離れで過ごすようになった。


 寝室に行って着替える。


「これでいいわ」

 上着を、着せてくれた。

「うむ」

「それで、クローソはなんて?」

「ああ、求婚については理解したそうだ」

 求婚することは、出掛ける前に言い渡してある。


「んん、理解? 返事じゃなくて? てっきり大喜びで、側室になりますって言うと思ったのに。生意気!」

 生意気って。年齢は、閣下の方がだいぶ上なのだが。


「相手は王族だ、余程のことでなければ、諾否、いずれも即答はしない」

「まあ、そうか」


「アリー、茶を貰えるか」

「ああ、淹れるのはわけないのだけど。ルアダン(大使付事務官)が、旦那様がお帰りになったら公館へ知らせて欲しいって。ノイシュが知らせに行っているけれど、何か用があると思うわ」


     †


 公館に向かうと、ダノンとバルサムが顔を揃えていた。

 会議室に入る。


「申し訳ありません。アストラ殿が王宮から戻られた後に伺おうと思っておりました」

「構わない。それで?」


「はい。外務省から使いが参り、ご帰国間もなくで恐縮ですが、ヴィノーラ御料地へ明後日までに、お越し願いたいと」

 その件だとは思っていたが、意外と早かったな。まあウチの家が納入している通信魔導具が普及しているからだが。

「明後日か」


「ただ会談される相手の詳細が分からなかったのと、御館様はしばらくお戻りにはならないだろうということで、アストラ殿は王宮へ情報収集へ向かわれました」


 御料地までは大した距離ではない。飛行魔術で行けば1時間も掛からないが……。


 公館のメイドが出してくれた、茶を喫する。

 やはり、本館で出してくれる物からは一段味が落ちるな。まあ、あっちはローザが鍛えているからな。

 それはともかく。


 30分程して、アストラが王宮から戻ってきた。


「遅くなりまして」

「ご苦労。イーズ帝国大使の件は?」

「残念ながら余り情報が得られませんでした。ファラム閣下は、特級魔導師としては古株で、尊崇を集めているぐらいです」


「うむ。まあいい。では、明早朝に出立するとして、随行はアストラ殿が考えるでしょうが、警備は如何致しましょうか?」

 馬車で移動ならばそうなるが。


「ああ、警備の団員は不要だ」

「御館様!」


 バルサムは不服そうだ。

「まあ待て。バルサム」

「しかし」

 聖都での襲撃の件が引っ掛かっているのだろう。


「目的地は国内で、しかも超獣が居るわけでもない」

「そうですが……団長」

「まずは、御館様の存念をお訊きしようではないか」

 ダノンは落ち着いたものだ。


「出発は明後日10時。警備はレプリーにさせる」

「レプリー……」


 皆、それがゴーレムであることは知っている。ここ数年で自律的なゴーレムの行動精度は上がっているので、警備程度は問題ない。

 バルサムの眉間には皺が寄っている。彼としては、騎士団の存在意義が薄れることも懸念しているに違いない。

 俺としては、自分の親衛隊ではなく、対超獣対策の人員だと思っている。その辺りに乖離があるが、達観しているダノンに言わせれば、矛盾はないらしい。


「相手が東洋の賢者であることを気にしているのだろうが、今回は大使案件であり特別職案件ではない。移動時間の観点から考えた結果だ」

「はあ……」


「そうですな。それに、余り大勢で押し掛ければ、相手を刺激することに繋がりかねぬ。バルサム自重せよ」

「わかりました」

 完全に納得しているわけではないだろうが、ダノンにそう言われては彼も引っ込まざるを得ない。


「アストラ」

「はっ!」

「大使随行は、アストラともう1人連れていく。人選は任せる。あとはアリーを同行させる」

「承りました」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

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訂正履歴

2022/01/29 イーズ帝国大使の記述を若干追加

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