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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
16章 救済者期II 新世界戦隊編
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401話 歓呼

新年、最初の投稿です。本年もよろしくお願い申し上げます。

 セロアニア公国首都セロアズ。

 宮殿大広間にて、ギヴン・セロアニア公爵殿下に対している。

 公爵と言っても、公国だから元首だ。細面だが血色が良く、顎髭も黒々していて立派な面相だ。

殿下の3男は地方領主をやっていたそうだが、巨大超獣の昇華に伴って亡くなったと訊いた。その男が、駐スパイラス大使にしてプロモス王国王女のクローソ殿下と縁談が進められていた、その人らしい。


 俺の横には、1番隊の面々も並んでいる。


「本日、セロアズを離れることとなり、殿下にご挨拶に罷り越しました」


【そうか、戦隊の方々は、帰還されるのだな……】


 殿下は呟くように語った。

 竜を撃滅できなかったからな。不安なのはわからないでもない。

 だが、いつまでもこの国に滞在する訳には行かない。


 今日は暇乞いだ。

 乞うと言っても形式だけで、公爵がその気になったとしても、新たな事態が発生しない限り、俺達を引き留めることはできない。


 殿下は、お付きの者に言葉を発した。

「殿下は、新世界戦隊の方々に感謝申し上げると、仰いました」


「ああ、ラルフェウス卿。当地の言葉で受け答えを頼む」

 サーザウンド卿だ。

「承りました」

【はっ! 公爵殿下。2日に渡り、ご饗応頂きまして感謝致します】


 今回は、かなり配慮頂いたようで、我が騎士団選抜隊員をはじめ、1番隊の従者達も篤くもてなして貰った。故に儀礼ではなく心からの感謝のはずだ。

 例の結社施設の件で、後ろ暗いところがあるのかとも思ったが。スードリ達が何も言ってこないところをみると、殿下と直接関係があるわけではないようだ。


【なんの! 我が国に現れた竜を。放置して居れば、いくつ都市が潰されたか分からぬ。竜を撃退してもらった恩、このギブン。生涯忘れぬ】

【ありがたく存じますが、それが新世界戦隊の任務にございます】


【ふうむ。わかった、連盟には一層協力致そう】

【ありがたく存じます】


【では、例の物を】

【はっ!】


 物?

 いや、饗応して貰っておいてなんだが、俺達に金品を渡すと連盟規約に引っ掛かるぞ。


 サーザウンド卿の方も見遣ってみると、彼も首を振った。初耳のようだ。

 一昨日も参内して、1番隊の3人と共に勲章と名誉男爵位を賜った。それで十分なのだが。殿下の横に立っているセロアニアの連盟職員を振り返ったが、平然としている。これは事前に根回しがあったと言うことか?


 やがて、一抱えある木箱を3つ持って来た。

 表面に装飾が彫られており、なかなかの豪華さだ。

 俺とサーザウンド卿、クレイオス卿の前に置かれた。


【こちらは、せめてもの礼だ】

【ああ……お心遣い痛みいりますが、ご存じの通り新世界戦隊隊員個人への金品贈与は、規定で禁じられております】


【もちろん承知して居る。ラルフェウス卿は、近くミストリアに戻られると聞いたが】

【はい】

 どういう意味だ?


【では、こちらは、我が国の特産工芸品だ。クラウデウス6世陛下へお渡し願いたい】

 むぅ。

【サーザウンド卿、クレイオス卿に於かれても、おふたりの国のそれぞれ元首へお渡し願いたい】


 ふむ。俺達個人への贈与ではないということか。それもあって、エミリオ卿の前には箱はないのだろう、彼の国の元首は公爵自身だからな。

 とはいえ、これは遠回しの賄賂という解釈も……そう思った時に、件の職員が進み出た。


【本件につきましては、連盟規約には反しないと認定致しました】

 まあ、そう言われてしまうと、俺に断る権限はない。


【承りました。ミストリア国王に渡します】

 魔収納へ入庫した。


【うむ。よろしく頼むぞ。では名残惜しいが、さらばだ】

【はっ! 失礼致します】


 王宮前庭で騎士団が勢揃いし、お出ましに成った殿下に敬礼を捧げてから、馬車に乗り込んだ


 軍楽隊が華々しく吹奏を始めると門が開き、馬車列は王宮の正門を出た。


「うわっ! 何、これ?!」

 アリーが唸ったのも無理はない。

 人、人、人だ!


 城門前広場をぐるりと、それから街道沿いに群衆が犇めいていた。

 万は超える規模だ

 俺達の馬車に向かって皆が必死に手を振り、歓声なのか怒号なのか判別不能な大音声が巻き起こる。表情一つ一つは笑顔だから前者と分かる。


「すごいねぇ」

「ああ」

 胸に迫るものがある。


 魔感応で人出の多さは感知していたが、ここまで熱狂的とは思っていなかった。


「でも、旦那様。応えてあげなくていいの? みんな、旦那様達を一目観に来たんだよ」

「そうだな」


 俺も馬車の中で手を振る。

 俺達は祭り上げられるべきではないが、これくらいは良いだろう。

 個人的な崇拝が過ぎれば、戦隊や連盟運営に支障を来しかねないからな。


 数百ヤーデン行進した後、国家間転送器にて教皇領へ帰還した。

 外に出ると数分前までの喧噪はなく、痩せた荒れ地のみが出迎えていた。


「はあぁ。明日にはミストリアか。まあ、館のおいしい料理は恋しいけど、旦那様が独占できなくなるなあ」


 一昨日見計らったように、本国(ミストリア)から、できるだけ早く帰国するよう要請が来た。

 各国政府は、自国民の戦隊員といえども、直接命令することはできない。

 例えばカストル卿へ同じように帰国を要請しても阻止される。しかし、俺は自由裁量権が認められており、総隊長の意向に依らず移動が可能である。それを念頭に置いた要請だ。


 何か本国で面倒なことが起こっている気がする。それとなく、アストラに問い合わせをしたところ、確かに外務省はじめ王宮が何やら動いているようだが、何に対してなのかは分からないと謝られた。

 プロモスのことでなければ良いのだが。


 アリー達を宿営へ返し、1番隊と共に戦隊本部へ向かう。

 揃って、総隊長と面談し遠征の報告を実施した。


「帰還致しました」

「一番隊の諸君、それにラルフェウス卿。ご苦労だった。皆無事で何よりだ。座ってくれ」


 皆が腰掛けると、サーザウンド卿が口火を切った。

「はっ! 報告致します。簡潔に申し上げますと、先に連絡の通り、派遣理由であります巨大超獣は不意に現れた竜のブレスで撃滅されました。その竜については、1番隊としては為す術はなかったのですが、ラルフェウス卿の手腕により撃退されました」

 相変わらず高潔だな。


「はっははは。そう卑下したものではないぞ」

「しかし、事実です」


「サーザウンド卿。そうかも知れぬが。誰が活躍したかは、意味はない」

「はっ?」

「それよりも、結果としてセロア公国の被害は最小限に抑えられた。仮に皆が奮戦、苦労したとして、被害が甚大であるよりはずっと良い」

「むう」

「そうでなければ、各国が最も優れた魔術師達を、戦隊に預けはしない」

 そういうことだ。冷徹と言えば冷徹。しかし筋の通った思考だな。


「承りました。では詳細を……」


 サーザウンド卿を中心に報告が実施され、その後いくつかの事項を聴取された。

 30分ほどで報告も終わり、1番隊の3人は退出した。


「こたびは、良くやってくれた」

「いえ、取り逃がしました」

「ふふふ……卿は己が偉業を分かって居ない。成竜と互角に闘えた人類なぞ居らぬのだぞ。そのうち、世界に知れ渡り、人類の希望となるだろう。それから1番隊のことだ。彼らの命を救ってくれたこと、改めて礼を言う。この通りだ」


 胸に手を当てて、深々と上体を倒した。

 改めてと言うのは、一昨日超長距離通信で礼を言われたことだ。


「恐縮です」

「何より卿が無事に帰ってきたことを嬉しく思うぞ」

「それで、ローゼンケッテの話、聞かせて貰おうか」

 この間、俺の暗殺未遂があったばかりだ。その一派だから気になって当然だ。


 目撃したことを漏れなく総隊長へ話した。


「ふむ。その最高幹部も、哀れというか、そこで死ぬことができて本望というべきか……」

 総隊長は、友愛結社といいつつ、特に中核部分の実態は宗教団体と断じていた。狂信的な活動と言い、地下の大空間と言い、否定するところはない。

 今後はどうなっていくかはわからないが。


 ノックがあり、若い従卒が入って来た。

「では行こう」

 総隊長室を出ると、バルサムが控えて居た。


「おお、バルサム殿だったな」

「はっ、はい」

 声を掛けられたのが意外だったのだろう、後に立ったバルサムが慌てて返事する。


「ラングレン卿を支えてくれて、感謝している。今後とも頼むぞ」

「勿体ない、お言葉」

「うむ。卿も同行せよ」

「はっ!」


 廊下を幾筋か進み、人気の無い地下へ降りた。

 さらに進んでいくと、ジュストコートを着込んだ身なりの良い壮年の男2人が待っていた。戦隊創設の宴で挨拶を受けた、連盟の職員だ。


 彼らの向こうには、廊下を塞ぐように鉄格子が填まっている。

 会釈してきたので、こちらも返す。


 1人が壁際に垂れていた綱を引っ張ると、遠くで鈍い鈴の音が聞こえた。すると奥から兵士ではあるが、少し制服の違う者達が出て来て、鉄格子を開けてくれた。


 突き当たりを折れると、巨人が使うのかと訝しむ程、高さ、幅共に大きい通路に出た。

 斜面を下るように進むと、重厚な扉の前に出た。


「開けてくれ」

「「はっ!」」

 連盟の職員が、扉の両端にある魔導具にそれぞれ手を翳すと、地響きを上げて扉が動き始めた。


 20秒も経ったろうか、3ヤーデン程開いて地響きが止んだ。


「なるほど。戦隊本部が、なぜここになったのか、不審に思っていましたが。こういうことなのですね」

「そういうことだ」


 差し渡し50ヤーデン程の大空間が待っていた。その天井を支えるように、太さ3ヤーデンを超える石柱が何本も立っている

 中に入っていくと、見える限りで大小合わせて10を超える魔結晶が、収納されていた。


「これらは、歴代の教皇猊下へ寄進された物だ。連盟に生かして使って欲しいとな、お譲り戴いた物だ」

 それを保管するために、地下にこの空間があるここ。元は廃修道院が戦隊本部となったというわけだ。連盟と言っても、盟主は存在しないからな。聖都に魔結晶を置いておくのは悪い選択ではないだろう。


 作ってから年月がそれなりに経ったであろう台座の前で、総隊長が止まった。台座の上には何も載っていない。


「ここに出庫すればよろしいですか?」

「うむ。頼むぞ」

「はっ!」


魔収納(インベントリ)──出庫】


 ギシッと台座が鳴り、真上に闇より黒い球体が現れた──


 低く響めきが上がった。


「むう。流石は巨大超獣の物だ。一番大きいようだ。しっかり保管を頼むぞ」

「はっ!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2022/01/08 公爵との会話を誰がしたか(ラルフがした)紛らわしかったので、追記

2022/01/15 誤字、誤記、少々追記

2022/01/31 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/20 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2022/10/15 誤字訂正(ID:1119008さん ありがとうございます)

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