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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
16章 救済者期II 新世界戦隊編
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399話 ブレスのゆくえ

おお、本編がキリ番話にリーチ。

そう言えば、「私、気になります!」とか言うアニメがありましたね。

好奇心は大事です。

 成竜が滅ぼした巨大超獣の魔結晶については、俺とサーザウンド卿の間で譲り合いというか押し付け合いになったが、結局俺が預かることになった。俺が一番近い場所に居たからだ。

 話はまとまり、皆で地上に降りた。


「酷いものだ」

 息吹(ブレス)が引き起きした、地の惨状を目の当たりにする。


 巨大超獣が居た地点は、まるで活火山の火口のようになっている。直径70ヤーデン程は黒と赤の斑に融け溶岩が見えている。その周りも爆風を受けて、表土が吹き飛び、未だ灼熱を持ちながら白い蒸気を上げている。


 そこから、赤黒い帯が北西に向け伸びている。幅数十ヤーデンで見渡す限り続いている

 息吹を放った時、成竜が首を振ったためにできた痕跡だ。


 皆はただ押し黙って、憂鬱な視線を向けた。


 数分後。

「そういえば、ラルフェウス卿にお告げがなければ、こちらに来られることもなかったはず。その方に我らが感謝していると、お伝え願いたい」

「了解です」


「では残務は、公国軍に任せるとして。これで我々の任務は完了だ。陣地に帰投しよう」


「ああ……私は、この息吹が灼いた大地の先に行って来ようかと」

 気になるからな。


「この先ですか? 住民の避難は終わっておりますが」

「そうなのだが」

「よろしい。では、エミリオ卿を伴われると良い。我ら戦隊の者には、私有地内に立ち入ることが許されているが、そこはやはり……公国軍人が立ち会う方が良いからな」

「よろしいのですか?」

「無論です」


「では小官もお供を……」

「ああ、クレイオス卿にはやって貰うことがある。帰投するぞ!」

「……はっ!」

 残念そうだな。


 サーザウンド卿達と別れた俺とエミリオ卿は、地を灼いた痕跡を辿り北西を飛ぶ。


 敵は斃したので、差し当たって急ぐ必要はない。

 それなりの飛行速度だが、彼は良く付いて来ている。セロアニア公国は小国でもあり、上級魔術師も3人しか居ないそうだが、エミリオ卿ならばミストリアでも十分中核と成る実力が有ると見える。まあ戦隊に選出が受理されているのだから、当然か。


 一旦、彼を意識の外に追い出し、下を見る。

 始点では、ブレスの熱線を浴びた帯内は温度が高過ぎ、樹木は燃え上がることなく蒸発していた。熱線を浴びていなくとも周辺では所々火の手が上がりかけていたので、降下して消火した。これだけでも来て良かった。

 それから移動に伴って衝撃波の痕跡自体も幅が狭まってきた。遂には途切れ途切れとなり、浴びた熱量にムラが出てきた。酷いところは完全に燃え切ってしまっているが、マシなところでは炭化しているものは幹が残るようになってきた。ようやく終端が見えてきたのだ。振り返れば、ざっと20ダーデンというところか。


 むう。

 吹き飛ばされた木々と土石が積もっていたが、明らかな人工物が見えた。


 地表に降り立つ。

 やはり建築物だ。今となっては、だったというべきか。


 屋根がどこかへ吹き飛び、壁という壁が崩れた惨憺たる有り様だ。

 規模からしてウチの公館と本館を足した物より倍以上大きい。まるで堂宇を連ねた教会のような感じだ。まあ、ほぼ全壊状態なので、あくまで想像の範囲だ。


 ここは、上空に竜が転位してくる前、気になった方角とよく一致している。


「こんな辺鄙な場所に、これほど大きな建物が……」

 エミリオ卿が呟いた。同意見だが、彼が知らないのは不自然だ。

 確かにプロマニスという小都市、上空から見ただけだが、そこからも30ダーデンは離れている。辺鄙と言えば辺鄙な場所だ。回りには森林と原野ばっかりで、農地も近くには無い。


「どういうことか?」

「ああいえ。この館のことは報告を受けておりません。とはいえ、避難は済んでいるはずですが……」

 歯切れが悪い。


「規模から言えば、大貴族の邸宅、別荘かも知れないが。あるいは何か宗教的な施設が相当する気がするが。それもないのか?」


「はぁ……当地の領主、プロマーズ伯爵の城は、プロマニスに在ります。別荘も西に湖沼が点在する地域にあるはずです。宗教施設ですか。少なくとも光神教では聞いたことが……」

「ふむ」

 では、ここは何だということになるが、エミリオ卿すら知らないとは。


「しかし、この建物。つい先程までは健全に建っていたように見えますが。そこの木材の割れ目が真新しいですから」

「確かにな」


 彼の言う通りだろう。

 それにしては幸いと言うべきかも知れないが、人間の遺体は見受けられない。それなりの熱は受けていただろうが、焼け死ぬとしても痕跡残さず消え失せる程ではない。ならばエミリオ卿の言った通り、避難が済んでいたと考えるべきか。


 北へ歩き出すと、付いてきた。

「そちらは……煙?」


 再び飛行魔術を使い、煙の元に近付くと木立が開けた場所があり、瓦礫の山が燃えていた。


 振り返ると、ブレスの痕跡がこちらに向かって伸びている。途切れ途切れになった末端がここか。


「まるで、狙ったようだな」

「はい?」

 数ヤーデン離れた宙に、エミリオ卿が浮かんでいる。


「とにかく消火します」

「いや。私がやろう。それからあの瓦礫をどかそう、その下に微かに生命反応がある」

「真ですか? 小官には感じられませんが、人命第一です。遠慮無くやって下さい」


 ふむ。ミストリアのどこぞの役所とは、段違いに柔軟だな。


「では遠慮無く」


冥凍波(ゲファレン)!】【魔収納(インベントリ)!】


 音も無く、地面が露出した。

「おお。あんなにあった瓦礫が一気に……無くなりました」

 一般人じゃないんだ、それほど驚くことでもないだろうに。


「あそこにまとめておくぞ」

 斜面を下った少し開けた場所に、さっき入庫したしたものを一切合切出庫しておく。


「あのう、キッチリ分別されていますが……」


 木材、土、石、その他と4つの山ができていた。移動させるにも再利用するにも分別しておくと都合が良い。特別職になってから5年余り、いくつもの被災現場を渡り歩いたので無意識にやっていた。もう冷却しきって湯気すら上げていない


「それよりあそこだ」

「穴? 下に続く階段が有りますね」

「生命反応は、あの下だ」

「では、助けにいかねば……」


「残念ながら生きているとは限らないが」


 この反応の微弱さを考えると、生存の確率は低い。

 亡くなってからも、1日程度はこの程度の微弱な生命反応がある。まあ、状況から言えば、生きている方が僥倖だ。


「それでもです」


 ぽっかり口を開けた階段脇に降り立つ。


「私は下に行くが、エミリオ卿はどうされる?」

「同行させて貰います」

「そうか」


魔灯(イルミナル)


 俺には不要だが、灯りを点ける。

 階段を降りていくと、たちまち瓦礫で行く手が阻まれる。

 それでも、魔収納を使って、道を開けてまた進む。完全には塞がっていないものの、歩行困難なところがいくつもあったが、その度に撤去して進む。


 下からそこそこ熱気が揚がってきた。


「大丈夫か?」

「はい」


 上級魔術師だ。この程度大丈夫だろうが。

 しかし、下へ行くほど暑くなっている。


【冥凍波】


 最小限の冷却魔術を使って下っていく。


 最初壁がしっかり整備されていたが、途中から自然石というか、鍾乳洞に変わった。

 これなら、岩盤を貫通させて脇道を明けた方が楽だったが。まあ、うちの土地ではないしな。


 崩れないよう細かく魔術を駆使しつつ、10分も掛かって行き着いた場所にはもう下はなかった。代わりに水平に先がある。


「ここは、なんですか?」

 エミリオ卿の言う通り、そこは大空間だった。差し渡し40ヤーデン、高さ20ヤーデン程の洞窟だ。まるで広間のようだ。


「さて。わからないな。生命反応は、あの中だ」

 広間の中央。

 珍しい形の小屋があると言うか、その小屋以外には何も無い。


「暑いですね」

 床から輻射熱が放射されてくる。全体を冷却できなくもないが、それを下げるには、気温が氷点下になる。生命反応の状況を見てからでなければ、迂闊なことはできない。


 小屋に近寄ると、紋章が浮き彫りで刻まれていた。


「薔薇……」

薔薇(ローゼン)の鎖(・ケッテ)! と言うことは、ここは!」

 間違いなく、同結社の拠点。しかも、行政当局にも知られていなかった、秘密の場所に違いない。


「その辺りの詮議は後にしよう」

「そっ、そうですね」


 扉を開けると、一部屋しかない小屋の中が顕わになった。床の敷物の上に、藍色のローブを纏った人間が倒れ伏していた。


 魔感応によれば、完全に死亡している。

 とはいえ、確認はしないとな。

 中に入って近寄る。


「ああ、ラルフ君。ちょっと待ってくれ」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2021/12/18 ブレス被害の表現を一部変更

2022/08/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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