3話 誕生!
序章まとめ投稿3話目です。
「フギャァァァーーーフギャフギャッッオギャー? …………?」
やぁぁぁ!
「オギャァァアンーーフギャオ? ………………」
「あらあら、来てみたら赤ちゃんが泣き止んだわ! お母さんですよ」
……へにゃぁあ。
「さっきまで泣いてたのに、ご機嫌になっているわ! 暗かったから恐かったのね、私の赤ちゃん!」
うふぅ。
「おっぱい飲む? ラルフちゃん?」
「ンンン」
「あら、要らないの?」
「アブブゥゥ」
「うーん。そうよね。ちょっと前にたくさん飲んだものね。じゃあ、おやすみなさい」
!
【シィーシィー!!】
「あら? 何?」
【シィーシィー!!!!】
「おしっこ? そうだわ! ご機嫌だったから、おむつを確認してなかったわ。ラルフちゃん! おしっこ出ましたかあ?」
へあぁぁ。
「あら? 本当におしっこだったのね。おむつ替えましょうねえ…………」
「はい。これで良しっと! あっちに戻らなくてよかったわ。それにしても、ラルフちゃんが私を呼んだ……生後3ヶ月の子が? そんなわけ……ないわよね」
ふにゃぁぁ。
「あらあら、今度は、本当におねむのようね。おやすみなさい!」
† † †
────見ましたか? 審査官!
────ああ、自分の泣き声がうるさいことに気が付いて、自分で泣き止んだね
────まあ……そのことも重要かも知れませんけど、それより!
────ん?
────見てらっしゃいましたよね。あの赤子、テレパシーを使いましたよ!
────そっ、そう? 母親も言ってたじゃない。親子の以心伝心ってやつ?
────審査官!
────うう
────生まれながらに神通力のプロトコルを持っている! どういうことですか?
────ああぁぁ。忘れた! 抹消するのコロッと忘れたよ
────むうぅぅ!
────あの星では、神通力じゃなくて魔術って呼ぶし!
────それが何か?
────わかった、わかりました! ……要監察対象にする?
────無論です!
────はぁぁ……
† † †
「おはよう! ラルフちゃん、起きたのう」
「アブゥ」
【マンマーー】
「あら、お腹すいたのね。おっぱい、ちょっと待ってね。はい、どうぞ」
もふぅもふぅ。マンマーー。
「あのう、奥様。よっ、良くおわかりですね……」
「何が?」
「いえ、赤ちゃんが、お腹すいたって。すぐお分かりになりましたよね?」
「あっ、ああ。なんとなくよ、なんとなく。マルタさんも、あるでしょう? 赤ちゃんがマンマーとか、シィーシィーとか教えてくれない? その、アリーちゃんとかも」
「えっ、いやあ。私は。赤ちゃんが泣いたら、お乳かな、おむつかな、それとも何かかなぁって、探りますけど」
「そっ、そうなの?」
「まあ、おむつの場合は、何となく泣き方が違うかなぁって気もしますけど。ラルフ様は、泣いてませんでしたね」
「そうねえ。ああ、おっぱい、よく飲んだわねえ。はい、とんとん」
げふっ!
「それにしても、ラルフ様は、全然泣きませんね」
「ええ。先月までは、良く泣いたのだけどね」
「そうなのですか。アリーと同じ月に生まれたのでしたね?」
「ええ」
「では、生まれてから4ヶ月ですか」
「そうそう。なので、乳母をお願いしたのだけど」
「なんだか、私は余り必要がないような……」
「まあ、そんなこと言わないで。その眠っているアリーちゃんはどうなのかしら? よく泣くの?」
「アリーは……」
「妹は、起きていればいつも泣いてます」
「そっ、そうなの? ローザちゃんだったわね」
「はい。奥様。ローザンヌです」
「あらぁ。何歳になったの?」
「4歳です。奥様」
「まあ。とてもしっかりしているのね。私のことは、おばちゃんで良いわよ」
「いえ奥様。ところでこの男の子……」
「ラルフェウスよ。あなたのお母さんが主人……いえ、この子の父親と従兄妹だから……」
「私の又従弟……」
「そう。その言葉、よく知っているわね。その子はあなたの又従弟よ。これから一緒に暮らすのだから、可愛がってあげてね」
「はい……奥様」
キャフ、キャフ!
「あら。ラルフはローザちゃんのこと気に入ったみたいよ」
「かわいい。うれしいです」
「ビッ、ビェェェェエエエエ!」
「ああ、アリー。起きたのね」
【ンンン!!】
「アリー、泣き止んで! ラルフェウス様が、うるさいと仰ってます」
「えっ?」
「アリー、泣き止んで!」
「ヒィフヒフヒ…………」
「まあ……泣き止んだわ!」
「ええ、この子は子守りがとても上手で」
「そう。偉いわね。そうだわ! ローザちゃん。今、ラルフの気持ちが分かったの?」
「奥様も分かりますよね」
「そうだけど……」
「ラルフェウス様のお世話を私にもやらせて下さい!」
† † †
────介入を! 再輪廻処置を具申します。審査官!
────再輪廻って、それは穏やかじゃないな
────よくあることです
────それ、監査官だとしても、天使が言うことじゃないよ!
────しかし、危険です。明らかにテレパシーを常用していますよ
────うーむ
────あれは、無意識に5大システムのプロトコルを使いこなしてますね
────そっ、そうかなあ?
────そうでなければ、赤子にテレパシーが使えるはずありません。
────うーむ
────本当にプロトコル抹消を、単純に忘れたんですよね?
────あっ、あぁ。他意はないよ他意は
────それに霊格ポイントが高過ぎる影響も出てきます
────そうかなあ……
────この星には魔術文化があるのです。怖ろしいことに発展しかねません
────あぁ、そうか……
────したがって、再輪廻処置を具申します。
────うーん。でも、さあ。そうなると長官承認を覆すことになるし
────それは……そうですが
────あのちっちゃな女の子も泣いちゃうよ、きっと
────しかし、介入は在住天体の公転半周期までしかできません。もう猶予が!
────北方天使界の輪廻抑制派も勢いづくだろうなあ
────うっ、ううむ
────わかった! こうしよう。
────はい?
────あの子に問題があるようなら、私が責任を持って処置するよ!
────ふーむ、審査官がそうまで仰るなら
皆様のご評価、ご感想が指針となります。
叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。
ぜひよろしくお願い致します。
Twitterもよろしく!
https://twitter.com/NittaUya