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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
15章 救済者期I 終末の兆し編
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379話 取材が暴くこと

身近な人に、意外な貌があるって知ってびっくりすることがあります。ただ人見る目が無いのではという説も有りますが。(PCの件は活動報告をご参照下さい)

「おはようございます」

「おはよう」


 迎賓館の応接室に、スパイラス新報の記者2人を向かえ入れて、取材を受ける。


「早朝から、ありがとうございます」

 まだ8時にはなっていない。

 俺の歓迎行事が詰まっていて、その間隙を縫って設定しているから致し方ないと言うか、逆に申し訳ない。


「どうぞ」

「失礼致します」

 ウラニアと言った新人記者の方は、恐々腰掛けた。

 ソファーが見るからに高級品だからな、気持ちは分かる。


「昨日は、ラグンヒルの名誉男爵の叙爵を受けたそうで、おめでとうございます」

「ありがとう」

「これで、国内の子爵の他、プロモスの名誉男爵でもあらせられ、大変ご出世ですが。どのようなご心境でしょうか?」


「カタリナさん。あなたとは、俺が無位の学生兼冒険者だったころからの付き合いだ。そんなに言葉に(おもんばか)ることはない」

「ありがとうございます。そうですね。実は身分が変わられましたので、くれぐれも粗相のないように言われております。しかし、子爵様のお人柄はお変わりになりませんね」

「そうか?」


「はい。背負う物が遙かに重くなったにもかかわらず、見習いたいものです」

 見習う……か。

「実は、カタリナさん、7月で副編集長になったんです」

「ウラニア! 余計なこと言わない」

「ほう」

「子爵様のお陰で、我が社の部数が3倍になって、その功労で」

「もう、ウラニアったら」


「それは、おめでとう」

「とっ、とんでもないです。でも、ありがとうございます」


「お祝いしたいが、今は時間がない。話を戻して……心持ちだったか。大変名誉なことと思っている。他国から爵位を頂くということは、その国のために何らかの貢献出来たということだからな」

 半分位は本心だ。


 ウラニアは、胸に抱えていた画帳に、なにやら描き始めた。


「巨大魔結晶のことは、当地の外務省から発表されていますが。別の魔結晶を贈り、ラグンヒルと我が国が少しずつ損をしあう、痛み分けでしたか? それで下手をすれば国際問題に発展しかけた所を収められた。素晴らしい考えです」

「そうだろう。我らが国王陛下のご発案だ」

「「えっ?」」


 2人とも、目を丸くしている。

「そうなのですか? 子爵様の発案ではなく」

「ああ。もちろん」

 聖典の年代記にある話を元にされたのだろうが、実際の政治に使われることが尊いのだ。


「それは重要ですね、しかも興味深い」

「うむ。間違っても私の発案とは書いてくれるなよ」

「はい。そういえば、確かに超獣の魔結晶は国宝相当ですから、例え子爵様が入手されたと言っても、勝手には」

「もちろんだ」

「なるほど」


「では次に……」


 10分も質問に応答していると、ノックがあった。


「失礼致しますよ」

 ローザとメイドが、盆の上に茶器を載せて入って来た。

 まもなく茶を淹れ始めたが、あからさまにウラニアが落ち着かなくなった。お茶の連載を持って居ると言っていたが。


 数分経ってローザがこちらへやって来た。


「どうぞ」

「ああ、奥様。勿体ないです」

「いえいえ」

「では、取材は一旦休止としよう」

「すみません」


 俺の所にも一客置かれたので、持ち上げて喫する。


「うわっ!!」

「ちょっと! ウラニア」

「いいや、これ! カタリナさん。お茶を飲んで下さい」

「言われなくても頂くわよ…………ふぅぅ。おいしい。凄くおいしいわ。こんなおいしいのは初めてかも」

「でしょ!」

 確かにいつものとは一味違う。


「こちらの水がよろしいからでしょう。迎賓館に置いてあった茶葉も最高級ですしね」

「なるほど、水と茶葉ですか……」

「カタリナさん。騙されないで下さい。あっ! いや、嘘は仰っていません。確かに茶葉はレーレック島の高原一番茶ですけど、このおいしさはそれだけでは出ません。奥様の淹れ方が素晴らしいからです。湯の温度、蒸らし時間……」


「ウラニアのいつもの蘊蓄が始まったわ」

 ふむ。いつも、こうなのか?


「うふふ。お褒めに与って嬉しいわ」

 ローザが俺の横に座った。


 すると、ウラニアは眉間に皺を寄せて目を閉じた。

「王都にある喫茶マルドゥーのエレイン嬢、ファンセス伯爵家のメイド長バシーナ女史、王宮執事ドミニア氏の3人。その人達がミストリア3茶匠と言われていますが」


「ん?」

「ああ、子爵様。茶を淹れる名人を番付として表した最高峰3人です」

「それが、3茶匠か?」

「はい」


 ふむ。知らなかった。

 伯爵家は無理そうだが。喫茶マルドゥーか、一度行ってみるか。そう頭を過ぎった時、ローザは俺を冷ややかに見ていた。


「でも、その3人を越える茶匠が存在するいう噂もあるのですよ。まあ、ここ数年の話ですが」

「ほう」

「あくまで噂です。それが誰なのかすら分かりませんし」


 若い方の記者は震え始めた。

「ちょ、ちょっと。大丈夫? ウラニア」

「私は、エレイン嬢の淹れてくれたマルドゥーのお茶の甘みと渋みの加減が好きで。それ以上、つまり薔薇の茶匠なんて存在しないと思っていました。」


 薔薇?


「ですが、たった今。考えを改めました。いらっしゃいました。ここに!」


「ウラニア。ここって、どういうこと?」

「わかりませんか?」

「はあ? えっ、まさか……奥様が薔薇の茶匠ってこと? あっ……薔薇(ローザ)!」


「カタリナさん。ウラニアさん。何を思い付いたかは知らないけれど。王都ラングレン家はね、新興の貴族でしょ。謂れのない妬みを受けることが多々有るのよ」

 知らぬ間に苦労掛けているらしい。


「奥様。私達は何も思いついていません」

「えっ? いや、カタリナさん! さっき……」

「ウラニア!!」

「はっ、はい!」

 ウラニアは、弾かれたように腰を上げると、直立不動の体勢となった。スパイラス新報社は軍隊式のようだ。


「あなた。お茶を淹れるとき、一体何を考えているの?」

「えっ? いっ、いやぁ、それはもちろん。少しでも飲む人に喜んでもらおうと……」

「新聞も一緒でしょ!」

「はぁ……」

「スパイラス新報社是 第3訓!」

「だっ、第3訓。新聞は社会の公器。記事で悪人以外を苦しめてはならない……はっ! そうでした。私、ウラニアは、お茶を頂いて……なっ、何も思い付きませんでした!」


 んん?


「結構。奥様、お聞きの通りです」

「はい」

 ローザは、穏やかな笑みを浮かべて肯いた。

 つまり、ローザの事は記事にしないと言うことか。


「なかなか、立派な社是だな」

「はい。第17訓まで、ございますが。ウラニアに暗誦させましょうか」

「いや、それには及ばぬ」

「分かりました。ウラニア。もういいわよ」

「はっ、はい」

 腰掛けると、深く息を吐いた。


「それでは、取材を再開させて下さい。昨晩は奥様も、式典や晩餐会に出席されたのですよね。いかがだったでしょうか?」


「そうね……」

 ローザは艶冶(えんや)に微笑み、語り始めた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2021/07/10 細かに訂正

2021/09/11 文章に不正な多重部分があり削除(ID:442694さん ありがとうございます)

2022/02/16 誤字訂正(ID:1907347さん ありがとうございます)

2022/08/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/08/19 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

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