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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
15章 救済者期I 終末の兆し編
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378話 痛み分け

ううむ。以前も書きましたがPCの電源が、何度もボタンを押さないと入らなくなる症状が再発して続いてます。電源ボタンの接触かなと外付けのボタンに替えても駄目。あとは、マザボ、電源、CPUの順ですかねえ。参ったなあ。

「では、提案致します」

 大広間に集う者達30人余りに向かい、半身で振り返る。


「目下、貴国と我が国との懸案はこの結晶です」

 ラグンヒルで得た巨大超獣が残した魔結晶を台座付きで出庫する。


 直径4ヤーデンもの球体は、周囲を圧するばかり。だが、得も言われぬ高貴さを放っており、羨望を含んだ吐息をいくつも生んだ。


「これが、巨大超獣の魔結晶か」

 ラグンヒルド陛下が身を乗り出した。

「御意」


「うぅむ。これは朕が目にした中で……いやこの世界で史上最大であろう。翻ればそれを手に入れるには相応の困難があった証左。正に我が国とミストリアの懸案と認める」

「はい」


「ラングレン卿が命を懸け勝ち取りし物を、朕が掠め取るわけには行かぬ」

「非礼ながら、私が陛下であったならば、同様に考えるに違いありません」


「であろう?」

「ですが、それは我が主クラウデウス6世とて同じことです」

「ふむ。それは、現状説明に過ぎぬのではないか?」

「ご明察にございます」


 やや失望が混じった溜息が広がる。


「ラグンヒルド陛下。提案を申し上げます」

「むう」

「ミストリアは、両国の痛み分けを所望致します」

「痛み分け?」


「少々お待ちを……」

 さっき出した魔結晶の右側に、およそ直径が半分程の珠玉を出庫した。


「なんと!」

「こちらは、やはり私が超獣を撃滅した折りの魔結晶であり、先の物には及びませんが、我が国が持つ最大の魔結晶にございます」


「うーむ。いずれも国の宝、これだけの大きさがあれば、我が王都を守るに十……うぅうううむ。それで?」


「我が国は、この左の結晶を引っ込める代わりに、右を進呈します」

「なんだと!」

「我が国は黙っておれば良かったものを、右を失うこととなった損。貴国は黙って居れば左が得られたものを、右となってしまった損。両国が損をし合うことで、痛み分けとし懸案を解消致します」


「ふっ、ふ、ふふ……ははは。これは小気味が良い。宰相如何か?」

 先程俺に問うた男が居住まいを正す。

「はっ! 流石はクラウデウス陛下、名案と存じます」

「で、あるな。ミストリアの提案、謹んで受諾しよう」


「感謝申し上げます」

 胸に手を当て、目礼する。

 要は国の面子の問題だ。名分が立つならば、対立する必要はないか。宰相閣下ではないが、流石だな。


「しかしだ! ミストリアが提案するならば、我が国からもしなくてはならぬ」

 むう?


「我が国は、ミストリア王国と安全保障特別条約締結を前提に、交渉を始めることとする」


 これは驚いた。何か難題を突きつけてくるかと思えば、逆だった。


 驚いたのは、周囲の者も同じようだ。

 広間が揺れるほどの響めきが上がり拍手も沸き起こった。しかし、満場一致とは言えないだろう。列侯の何割かは、眉を顰めている。


「朕の決定に不満の者も居よう。我が国民の気性は誇り高く、克己を旨とする。が、友誼を寄せてくれた他国には、友誼を持って返すが至当である。異を唱える者は、この場にて名乗り出よ!」


 半ば、いや8割方恫喝だな。

 打って変わって、広間は静まりかえった。


 巧みな論理展開だ。友誼を仇で返せと正面切って言える者は少ない。それも誇り高いと先に言われてはな。


「陛下。皆々賛同の意を示しております」

「うむ。では外務卿、法務卿には苦労掛けるが、ラングレン卿が帰られるまでに形にせよ!」

「「はっ!!」」


 それから、今度は万雷の拍手が広間を包んだ。


     †


 古式に則り、晩餐会が行われた。俺は王妃様、ローザは陛下とよく話し、よく呑んで、よく食べた。流石は国賓を持て成す宴だ。

 酒も料理も超一流なのだろう。まあ、俺にとってはローザの料理の方が旨いが。


 和やかな内に宴は終了し、王宮を引き上げ迎賓館に戻ってきた。

 ヘイズレク大使閣下も一緒だ。


 会議室に閣下と一級書記官ボルギとその随行、アストラ、パレビーも集まって来る。


「いやあ、大変なことになりましたな」

「確かに」

 その通りだ。

「魔結晶の件は、なんとかなるとは思っていましたが、まさか安全保障特別条約に飛び火するとは思いませんでした」

「その辺りは、ラグンヒルド王や列侯も、ラングレン閣下の神々しさに、押されたと言うところでしょう」

「ふふふ……真顔で言うものではないぞ」


 えっ?

 言い出したボルギとヘイズレク大使が顔を見合わせている。

「冗談ではありません。けして、閣下の人間性を否定しているわけではありませんが」

「そうです。今のお姿は、仰ることの強さというか説得力が弥増しています、それが全てはありませんが」


 漏洩抑制を作用させる。帰国したら封印だな。


「ああ……」


「とは言え、良い展開ではあります」

「まずは、閣下に祝辞を述べさせて戴きましょう」


「差し当たって、私が帰国するまでに条約の骨子を固めねばなりません。ついては閣下とこちらの大使館にも、手数を掛けることになりますが……」


 閣下はニヤリと嗤う。

「そのような苦労ならば、望むところ。買ってでもしますよ。なあ」

「はい」


「ところで、どのような方針に致しますか?」

 アストラが、身を乗り出してくる。


「うぅむ。ラグンヒルは何度か申し上げておりますように、気位の高さに問題があります。国王の意向はともかく、交渉の状況次第では白紙に戻ることもありえますぞ」


 この地に7年居る閣下の認識は正しいだろう。


「如何ですか? ラングレン閣下」

「クラトス、アガートと同じようにはいかないでしょうな。プロモスの水準を考えております」

「なるほどプロモスと同じですか、最恵国待遇ですな」

 ラグンヒル駐在の者も肯いた。


「彼の国の歴史は古く、ラグンヒルは仰ぎ見るとこがあるので、よろしいかと思います。押しつけにならぬように気を遣う必要があるかも知れませんが」

「では」

「閣下に同意致します」


「では。明日より、よろしくお願い致しますぞ」


     †


 居室に戻ると、ローザが待っていた。

 夜も更けているので、メイドも居ない。下がらせたのだろう。

 着替えて寛ぐ。


「どうぞ」

「ああ、ありがとう」

 お茶を出してくれた。


「どうした?」

 にこやかに笑っている。

「いえ。お疲れではありませんか?」

「少しはな。こっちに来い」

 ローザの手を牽いて、ソファの横に座らせる。


「ルークは元気にしているかな?」

「大丈夫でしょう。エストも居りますし、アリーが思う存分甘やかしていることでしょう」

「そうかも知れぬな」


「それにしても……」

「んん?」

「あなたの今日の姿を、ルークにも見せてやりたかったです」

「ふふっ」

「アリーにも、プリシラにも、レイナにも」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2021/07/03 誤字脱字訂正

2022/08/09 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

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