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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
15章 救済者期I 終末の兆し編
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355話 ラルフ 振り回される

人を振り回す人居ますよねえ……。

 クローソ殿下の信任状捧呈式と条約調印式が終わった。


 大使事務所に戻って、昼になったので魔収納で館から持参した料理を皆に振る舞った。酒はなしだったが、喜びを分かち合った。その後は仕事が溜まっていたので、執務を始めた。それから無心で書類をやっつけていると、扉がノックされた。


「失礼します」

「ん? パレビー、どうした?」

 彼は食事会の後、公館へ戻ったはずだ。


「一大事です。クローソ殿下が、今から30分ほど前に本館へお越しになりました」

「なんだと!」

 もちろん、そんな予定はない。


「それで?」

「ローザンヌ奥様とモーガン殿が対応されています。奥様からできるだけ早く、お戻り戴ければとの伝言です」


 それはそうだろう。

 顔見知りとはいえ、相手は一国の王女で大使だ。


「分かった。先に戻って、俺は15分程でこちらを出ると伝えてくれ」


 事務を中断し、首席秘書官のアストラを呼ぶ。


「何かありましたか?」

「パレビーによると、クローソ殿下がウチの館にお越しになっているそうだ」

「はっ? 今ですか?」


「悪いが(外務)省へ言って、できれば外務卿、あるいは秘書官に告げてくれ。とりあえず、個人的な友誼の範囲で持て成しをするが、別途ご指示があれば伺いたい旨を伝えてくれ」


 問題はないと思うが、報告は必要だ。テルヴィル卿は大丈夫だと思うが、着任早々殿下が何か企んでおり、俺がそれに一枚噛んでいると邪推されては不本意なことになる。


「承りました。ご指示の有無に拘わらず、ご連絡致します」

 アストラは足早に部屋を辞して行った。さて、俺も戻るとしよう。


     †


 30分かからずに、館に戻った。


 門外に人集りがある。プロモス大使館で見る警備員の制服だ。殿下の護衛なのだろう。ここは大使館ではないので、武器は持っていないが。


 辻馬車を降りて門まで行く。


【なんだ貴様! ただいま、取り込み中だ! 近付くな! と言っても、どうせ通じないだろうが】

 そう言いながら、身振り手振りで通さないぞとがんばっている。パレビーを先に帰したのに、話が伝わっていないようだ。


【私は、この館の主、ラルフェウス・ラングレンだ。通せ!】

【なんだ、話せるのか! いや逆に怪しいな! さっきも、この館の者だと言って来たやつが居たが、そう都合良くプロモス語を話せるやつが何人も居るか? とにかく隊長が来るまで待て!】


 そうか。パレビーはここで足止めを喰っていたのか。

 そうこうしていたら、離れから兵が走って出てきた。

【おい! 待て、待て!】

【隊長殿! また怪しい者が来ました】

【馬鹿者! その方は我が国の男爵様だ!】

【はっ? ええ?】


 ああ、あれは……顔見知りだった。


【早くお通しせよ!】

【はっ!】

 ようやく人垣が割れた。


【ラルフェウス様、お帰りなさいませ】

【ベスター殿。お久しぶりです。ところで、なぜ我が館へ?】


【ああ……済みません。姫様が突如行くと仰いまして。ご迷惑をお掛けします。姫様は、突き当たりの建屋にいらっしゃいます。私はここを護らないとなりませんので。では!】

 殿下の思い付きか!

 手を振って別れると、庭を突っ切って離れに入る。


【そちらは、こちらの主人です!】

 中に入ると、プロモスの警備兵がまた寄ってきたが、パレビーの叫びで止まって会釈して来た。

 無視して通り過ぎる。


「出迎えが遅れ、申し訳ありません。殿下は、ルーク様のお部屋です」

「ああ、ご苦労」


 魔感応で分かっては居るが、なぜそこに居る?

 階段を昇って2階に至り、そこにもプロモス人が居たが、パレビーの顔を見て道を空ける。


【クローソ殿下!】

 部屋に入ると、殿下が床に座ってルークを膝に抱いていた。

 彼の金色の髪を撫でながら、いつも少し冷たくさえ見える殿下の顔が、今日は柔らかい。


「とうさま……」

「おう! ラルフ殿。早かったな」


 プロモス語ではなくラーツェン語が返って来た。そこのソファーに座って居るローザとアリーに分かるようにするためだろう。だが、ルークには分からないので、微妙な面持ちだ。何かエリスちゃんに抱き付かれている時に似ているな。


「ようこそ、我が館へ。しかし、何用でございましょう?」


「なんだ! 他人行儀だな。用がないと来てはいけないのか?」

「1ヶ月前であればよかったのですが。今や我らは国の代表でもあります。その辺りをご配慮戴きたく存じます」


「ラングレン卿、申し訳ない」

 謝ったのは横で立っていた男だ。

 殿下は、ルークの頭を撫でながら明後日の方を向いている。


「メディナ殿。お久しぶりです」

 前回王都に来た時は外交団副使だったが、今回は秘書官になったようだ。


「なあ、ルーク殿。そなたの父は冷たいだろう。1年前程から文も寄こさぬのだぞ」

 自分の名前以外は意味の分からないルークは、どう対応したものかと目が泳いでる。普通の2歳児なら、泣き喚きそうなものだが。自分を抱えているのが王女と分かっているのだろう。


「殿下、主人は……」

「知っておる! 爺が妾の縁談の障りになるので、手紙を控えてくれと頼んだろう?」


 なんだ、わかっているじゃないか。

 俺の浮名は国外にも流れているらしいからな。そんなやつと未婚の姫が繋がりを持っているというのは、側近にとっては気を揉む事態だろう。


「さて、ラルフ殿も戻られたことであるし。場所を変えるとしよう。それっ。ルーク殿。悪かったなあ」

 殿下は、ルークの両脇に手に入れて彼を降ろした。


「ルーク、ご挨拶を!」

「クローソ殿下、ご機嫌よう」

 脚を引いて挨拶した。


「おお、ちゃんと挨拶出来るのか。可愛いなぁ。連れて帰りたいぐらいじゃ。大きくなっても、くれぐれも父上のように憎たらしくならないようにな!」


 1階に降りて、客間に入る。

 メイドが4人分の茶を出して、下がって行った。


「ひとつお訊きしても?」

「何じゃ?」

「なぜ殿下が、駐在大使に成られたのでしょうか?」


「ふぅむ。妾がミストリアへ来ては迷惑か? ああ冗談じゃ。縁談が破談になったから、暇になってな」

「はっ?」

 知らない振りをしておく。


「まあ正確に言えば、婚約が整う前に亡くなったから破談でもないか」

 亡くなった?


「それは……なんとも」

 言葉が出ない。


「ああ。気にするでない。一度も会ったこともない相手だ。妾は何も思っては居らぬ」

「そうですか」

「本当じゃ、本当。辛気臭い顔をするでない」


「わかりました。ではそろそろ……」

「むっ」

「我が館にお越しになった理由を仰って下さい」


「メディナ!」

「はっ!」

 秘書官が寄ってきて、持参の鞄から封書を出した。


「母上からの親書。そなた宛じゃ」

 俺の目の前に置く。


「女王陛下からですか」

 殿下は鷹揚に肯いた。

「すぐ読んでくれ」


 正直なところ、読みたくはないが、致し方ない。

 封書を持ち上げ、封を切った。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/03/03 誤字訂正、僅かに加筆

2022/09/23 誤字訂正(ID:288175さん ありがとうございます)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白くて更新が早くてありがたいです。 [気になる点] クローソ殿下の護衛、他国の重鎮の家にいきなり乗り込んできた上にそこの主人を誰何するって、問題ありすぎませんか。その後の描写も合わせると…
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