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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
14章 英雄期II 賢者への途編
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339話 賢者の初仕事

ラルフもこの話で言われてますが、小生も良く物好きと言われます。まあ小説書いてる段階で、お察しですが。

 4月になった。

 今日は、俺が賢者になって、公的な初仕事だ。内郭南地区にある、国家危機対策委員会の本拠に来た。内務省の庁舎の中にある。


 通されたのは、差し渡し15ヤーデン程の会議室。予定の時刻より15分ほど早く着いたので、誰も居ない。


 真ん中に幅広のテーブルが5角形に並べられていた。

「お名前のあるところにお掛けになってお待ち下さい。では失礼致します」

 会釈に会釈で返すと、案内してくれた係官は辞して行った。


 ふむ。名前のあるところね。テーブルの上に書類と名札が乗っている。

 ここか。手前の席に賢者ラルフェウス・ラングレンと書かれた名札がある。


 腰掛けて奥を見ると、名札には総裁ケルヴィム・バルドゥと書かれている。

 その左には賢者ディアナ・ルーナス、右は賢者グレゴリー・ベリアル、俺の隣は賢者バロール・ディオニシウスだ。


 そう。今日は月1回の賢者会議だ。

 公務でない限り、極力出席を求められている。


 おっ。


「失礼致します」

 テーブル上に置かれていた、今日の議題が書かれた紙資料を読んでいると、5分程して扉が開いた。さっきの係官に続いて、バロール卿が入って来られた。


「おお。おはよう! ラルフ早いな」

「おはようございます」


「ん? あっ、そうか」

「えっ?」

 どかっと隣の席に座った。


「ああ、いや。テーブルが5角形だったからな。そうだよな。ラルフが加わったからな」

「先月までは?」

「4角形だった」

「そういうことですか。ちなみに、ディアナ卿は出席されるのですか?」


「ああ……あいつは滅多に来ない」

「そうですか」


「そうだ、昨日モーガン殿ともう2人がウチに来たぞ」

「聞いてますが。今日、午後に報告を受けることになって居ります」


「そうか。それにしても、モーガン殿もモーガン殿だが、あの男……ああレクター殿も上品な物腰に似合わず頼りになる男だな」

「ええ。なかなかの人物でしょう」


「ああ。なんか、フォルキ……うちの家令となった男だが、モーガン殿と知り合いだと言っていた」

「ほう。それは奇遇ですね」

「以前、モーガン殿が別の家の執事だった頃に会ったことがあるそうだ」

「ええ。義母の亡夫に仕えていたと聞いています。ウチにはその線で来て貰いました」

「そういうことか……何しろよろしく頼む」

「はい」


 俺とバロール卿は、同時に後ろを振り返ると、扉が開いてバルドゥ総裁にグレゴリー卿と2人の委員が入って来られた。


 彼らは無言で着席すると、委員が少し離れた机に座り軽く咳払いした。彼が司会らしい。


「少し定刻前ですが、出席予定の方が揃いましたので、4月度賢者会議こと超獣対策上席特別職連絡会議を始めさせて戴きます」


 やはり、ディアナ()卿は欠席か。


「始めに。総裁、よろしくお願い致します」

「うむ。今月より、新たにラルフェウス卿を、この会議に迎えることになりました。よろしくお願い致します」

「はい。こちらこそ」


「念のために申すと、賢者会議は1ヶ月に1回、国王陛下のご意向説明、前月の状況確認と情報共有、国外の情報紹介を主体する会議です」


 国外。大使をやっている身としては、有益だ。中々入ってこない情報だからな。

 肯いておく。


「お一人は、なかなか出席されないが、各位はできる限り出席して下さい。それから、陛下からですが。賢者が増えたこともあり、万全の超獣対策体制を築くよう、ご用命戴いていますので、各位には協力願いたい。以上です」


「ありがとうございます。では、お手元の資料に従って会議を進めます。まず、超獣の情報です。現在現認された個体はなく、新規出現の情報の報告は入っておりません」


 別途聞いた話では、対応が必要な超獣が存在している場合は、応援派遣の要否、出動する特別職人選についての助言が求められるらしい。今月度は不要なので議事が飛ばされる。


「続きまして、3月度の超獣対策活動についての意見交換です。先月の出動は1件、超獣382-1、通称キュロスでした。なお分類は新規出動、現地はグルモア辺境伯領、先任はこちらにいらっしゃるラルフェウス卿です」


 軽く会釈する。


「時系列ですが。資料に拠りますと、現地での超獣現認は、2月28日。以降、指名出動申請が3月1日。同日委員会の審議開始、国王陛下への奏請が3月3日、同日綸旨発布、翌4日伝達完了となりました」


 ふむ。委員会も王宮も思ったより迅速だな。


「これに対して、出動は7日王都出立、同日領都到着、8日に超獣との直接対応開始の上撃滅されました。応援出動はなくなり、監察官による撃滅確認認定は10日、王都帰還が23日でした。ここまでで、何がご意見がありますでしょうか」


「ラルフェウス卿の行動はとても早いですな。どうですか。グレゴリー卿」

 総裁に促され、腕を組んで肯いていた壮年の男が眼を開いた。


「結果として、超獣の対策が早期に完了することは、現地にとっては望ましいこと。ただ、敢えて言えば。早ければ良いというものではないと存ずる」


「同感です。拙速は不測の事態を招きやすく、その志向は厳に慎むべきと存じます」


 俺の同意に、4人がこっちを見た。

 バロール卿は、何か言い掛けた口を閉じて憮然とする。


「であろうな。とはいえ、駐留連隊の兵達を救うためには致し方なかったというところだな」


「バロール卿は如何に?」

「小職は、悪くない対応だったと思うが」

 ああ。さっきは俺を庇おうとしてくれていたのか。悪いことをしたな。


「それよりも、その経緯のなかで、陸軍が特別職の命令を無視したことが、余程問題と考えるが?」

「その件は、次の議題で討議します。ここにいらっしゃる方は、既に映像魔導具をご覧になっていますが、それについてはいかがでしょう?」


「賢者の称号を授かるに相応しい素晴らしい戦い振りと考える」

 今度は、バロール卿が機先を制したな。

 軽く会釈を返すと、横を向いて俺に見せるように少し口角を上げた。


「グレゴリー卿はいかがか?」

「異論はないが……あの光の槍は気になる。上級魔術公開写本集を調べたが、該当する魔術の記載は見つからなかった」


 上級魔術公開写本は、古代エルフの喪われた魔術が書かれた書籍だ。ただし、公開されていると言っても術式、呪文は部分的に隠蔽されており、一般の魔術師は発動出来ない。それで、上級魔術師となると限定が解除されて、完全な状態を読むことができる。王立図書館の禁帯出書庫にある。


 ただし、実用的に発動する魔術は、またその一部でしかない。


魔 晄 槍(ルーゲン・ランツァ)は、小職が独自に編みだしたものですから、写本にはありません。必要とあれば、いくつかありますので委員会に術式を提供します」


「おい、ラルフ! ……じゃなかったラルフェウス卿。良いのか?」

「はい。構いません」


「流石は理論魔術学博士、感服しました」

 グレゴリー卿のしてやったりとの声音に、バロール卿はやや不満そうに顔を背けた。


 議事は、陸軍の命令無視に移ったが、委員会からの抗議に対して、参謀本部より陳謝を受けたこと。命令無視は、本部の意向とは正反対で、駐留連隊のバズイット参謀長を中心とする一派が勝手にやったこと。今後は、再発防止に努めるとの約束があったとのことだ。


「したがいまして、本件に関しましては、国王陛下の信任を受けております、憲兵連隊を擁する近衛師団に預けて居ります。また、この件に対しまして、委員会としては参謀本部は神妙なる対応をされて居ると見ております」


 国家危機対策委員会には、軍を捜査する実力はないので、これ以上の追及は困難だ。黒衣連隊を含めた近衛師団に期待する他はない。


「よろしいでしょうか、バロール卿」

「面従腹背ということもある、引き続き警戒されるがよろしいだろう。ラルフェウス卿は如何に」

「異存ありません」


「承りました。議事録に記載致します。他にご意見がなければ、次の議題に移ります。よろしいですか? では、国外の動向について情報を提供致します。光神暦382年になってより、我が国で起こっている超獣出現頻度減少が他国でも見られます。しかし、個体の大型化傾向が見られます」


───ん?


 どうした?

 憑依しているゲドが反応した。


───昔 似たような話を聞いた ただ それだけだ


 ふむ。


 その後、会議は小1時間程続き、説明を聞いたり、少しばかり討議をした。


「本日の議事は以上です。議事録につきましては、明後日までにお手元にお届け致します。では、以上をもちまして、4月度賢者会議を終わります。ありがとうございました」


 その言葉で、グレゴリー卿はすくっと立ち上がると、書類を手にして会議室を出て行った。


「ラルフェウス卿」

 総裁だ。

「はい」

「こちらを」

 ほう。

 歩み寄って受け取ったミスリルを伸した薄板には、特別許可証と刻印されている。


「申請のあった、王宮資料館書庫の入室特別許可が下りた。本日より利用可能になったのでこれを渡しておく。既に資料館側へは伝達されているので、一度行ってみると良いだろう」

 賢者になれば許可が下りると聞いたので申請したのだ。

「ありがとうございます」


 肯いた総裁が席を立たれた。


「ラルフ」

「なんです? バロール卿」

「書庫を自分で使うのか?」


 王宮資料館は、ミストリア建国以来の様々な資料となる文物や書籍が収蔵されている。王立図書館との違いは、王室や政権に都合の悪い物も収蔵されていることだ。利用者は、王宮南苑に入ることが許された者だけに限られる。


「はい」

「目録を見て、司書に閲覧申請を出せば読めるのは知ってるだろう?」

「ええ、使ったことがありますよ」

 確かに司書さんに申請を出すと15分から30分ぐらいで、揃えて持って来てくれる。問題は、収蔵品の全てが目録に載っているわけではないことだ。


「バロール卿は書庫へは?」

「いいや、賢者になった時に閲覧室まで行った1度きりだ。王立図書館で十分だからな。それに、閲覧室が少し黴臭かったろう。書庫はもっと臭いと聞くぞ」

 確かに魔術関連は、王立図書館も充実しているからな。それと閲覧室でもそこそこ匂った。綺麗に掃除が行き届いていたから、あの扉の奥から漂ってきたのは間違いない。


「それが良いじゃないですか」

 古書の臭いは嫌いじゃない。

「うへぇえ、物好きだな」

「よく言われます」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/12/16 誤字訂正

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2025/05/24 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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