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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
14章 英雄期II 賢者への途編
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338話 窮すれば通ず

窮すれば通ず……あるんですよねえ。偉い人に無理難題言われて、終わったぁ!って思いつつも続けてたら、救いの神(そのときは予算回して貰ったんですけど)が現れたりねえ。

 王都に戻られたら一度お会いしたい旨、大司教様より書状が届き、調整が付いたので、大聖堂に向かった。


 ただ、何の用でとは書いてなかったので、微妙な気分だ。

 支援戴いている回復魔術を使える神職派遣の件か、提供している回復薬の件のいずれかが分からなかったので、アリーとモーガンを両方連れて来た。


 何度か来た応接室に通され、若い助祭殿にお茶を出して貰ったが、アリーは落ち着かぬ様子だ。


「どうした、アリーもここに来るのは初めてではないのだろう?」

「あっ、はい。大聖堂はこの前も来ましたけど、応接室じゃなくて司教様の部屋とかですし」

 本当に緊張しているようで、言葉遣いが改まっている。


 司教……デイモス理事か。修学院を卒院しても、第一印象が強過ぎて、未だに脳内変換してしまう。


「ああ、そうだ。アリー。司教様がお越しになっても、俺のことを旦那様と呼ぶな。機嫌を損ねるからな」

「えっ? 今日は会いに来たのは大司教様じゃないの?」

「そうだが、よく来られるのだ」

 多分嫌味を言うために。


「ふーん。でも。司教様は、そんなに心が狭い人じゃないよ」

 司教にまで成った方だ。おそらく、そうだとは思うが。例外なのだろう、相手が俺の場合は。


「あっ!」

「えっ?」

「司教様だ。頼むぞ」


 10秒程経って、ノックがあり、扉が開くと司教様が入って来られた。

 立ち上がって、3人で礼をする。


「ようこそ、賢者殿……ん? 頭巾巫女殿も」

 立ち上がった俺とアリーの間を彼の視線が行き来した。

 表情が強張ってるぞ。


「お久しぶりです。司教様」

「先日はどうもありがとうございました。おかげで急な出動に間に合わせることが出来ました。ご尽力感謝します」

 アリーも続けて、口上を述べた。


「あっ、ああ。まあ、掛け給え」


 そう言ったきり黙ってしまった。

 何か俺に言いに来たのに、頭巾巫女であるアリーが一緒に居たので、当てが外れたのだ。まあ、用意してきた言葉が、アリーが居ると言い難いことだったのだろう?


 俺とアリーがソファーに座り、いつものようにモーガンが背後に立った。


「あのう」

 アリーが何か言い始めた。嫌な予感しかしない。


「何かね?」

「司教様は、もしかしたら誤解されているかも知れないので、申しておきたいことがあります」

 やめておけ。


「ほう。伺おう」

「はい。ご存じと思いますが、隣に座って居るラルフェウス・ラングレンは、私の夫です」

 司教の表情が、何度か入れ替わった。

 旦那様がだめで、夫ならば良いと言うことではないんだが。


「確かに、アリシア殿が、ラングレン卿の側室だということは知って居る」

「はい。ただ、そうなった経緯として新聞とかに書かれていることは、ほとんど嘘です」

「ん?」


「私が、正妻である姉と夫に頼んで側室にして貰ったんです。夫が女狂いとか女誑しとかは、誤りです」

「アリシア!」


「うむ、そうか。誤りか」

「はい」

 いやいや、司教は俺がアリーに言わせたと思って居るぞ。

 ほら。俺を睨んだ。


「世の中の評判はどうあれ、私はそのようには見ておらぬ」

「本当ですか!?」

「ただ、色々非常識な男だとは思っているがな」

「まぁ、司教様もですか。私もそう思いますし、事実です!」


 大きくアリーが肯いた。


「なっ、なんと……」

「ですので、司教様には、そんな夫を補って戴きますよう、是非ご支援をお願い致します」


「はっははは……これは参った。頭巾巫女殿には敵わぬ」


 ふむ。確かに天衣無縫というか、意外な外交手腕かも知れないな。アリーを見直す。


 数秒後、ノックがあって大司教様が入って来られた。


「ラルフェウス卿、よく来てくれた」

「大司教様。お久しゅうございます」

 俺と、アリーが立ち上がって挨拶する。


「掛けてくれ給え。さっき、笑い声が廊下まで響いていたが」

「ああ、笑っていたのは、私です」


「ほぅ、そうかね。デイモス司教が大声で笑うとは珍しい」

「失礼しました」

「いやいや。構わない」


 やっぱり普段からむすっとしているんだろう。


「ああ、話が逸れたが。ラルフェウス卿、この度は賢者の称号を得られたとか」

「はい。過分なことと存じます」


 大司教は、ニコッと笑った。

「そんなことはない。僅か1年余りで、3度超獣を撃滅されたのも快挙なのだろうが。こちらの、頭巾巫女ことアリシア殿を始めとした回復魔術師を連れ、さらに最近では無償で回復薬を配って、被災民を癒やしておられる。これは全世界を見ても例のないこと」


「それもこれも、大司教様、司教様、そして教団の皆様のご協力があったればこそにこざいます」

「確かに我らも協力はさせて戴いている。しかしな、考え、そして成し遂げた者の功績が一際大きいのだ。私はそう考えている」

「はっ!」


「実際に卿の騎士団と行動を共にした、教団の者達の評判がすこぶる良い。迅速に駆け付けられることで、被害が拡大する前に対応できてやりがいがあるそうだ」


 光神教団は救護であっても軍と一緒には活動しない。よって、どうしても、現場に駆け付けるのが遅れることになり、怪我を負った者の容態が悪化してしまう。助けられた者も助からなくなることもあるだろう。


「それは何よりです」

 彼らがやりがいを感じているなら、被災民にも良いことだ。


「それでだ」

 どうやら本題のようだ。


「先日のように、なかなか神職の斡旋ができぬようでは、心許ない」

「はい。急なお願いで、ご造作を掛けました」

 これは? 話の筋からして、何か優遇してくれるのか?


「それで、司教と話して反省したのだ。これまでのように、その場その場で応援の者を宛がうのではなく、抜本的に改善できるのではないかと」


 えっ?

 いやいや、デイモス司教の話ではそんな人材は居ないと言うことだったよな。


「とはいえ、人材が湧いて出て来るわけではない」

 ん? 結局何が言いたいんだ?


「先も言ったように事情を聴取したところ、全くの素人では困るが、必ずしも熟練者でなくても良いと言うことが分かった。ある面で、質より量ということだな」

 ふむふむ。


「ところで、我が国の教団には卿が在学していた修学院以外にも、神職養成機関がある。ご存じだろうか?」

「マルガレーテ学院のことでしょうか」


 王都から南に700ダーデン程の距離の都市、マルガレーテに有る実務神職の教育機関だ。

 対して修学院は王都にあって上級神職の養成機関だ。だが、マルガレーテ学院からも、司教も何人か輩出しており、教団が学歴だけを重視しているわけでないことが分かる。


「そうだ。そこには福祉学科があって、回復魔術、看護術がそれなり使える神職見習いが百数十人居る。彼らの必須就学単位として、騎士団と行動を共にさせることを考えている。熟練の者はこれまで通り……人数は増やすことは厳しいが、そちらも派遣しよう。どうだろうか」

「わあ!」

 すかさずアリーが反応した。思わず立ち上がったが、俺を振り返った。


「はっ、はあ。それは我々にとって願ってもないこと……ですが」

 アリーが、えっと言う顔になる。

 ただ1つ問題がある。

 マルガレーテが、王都から離れていることだ。


「ご懸念は、都市間転送所が使えるかどうかかな?」

「はい」

 相変わらず、この人は鋭い!

 同市は大都市なため都市間転送所はあるが、それが超獣対策特別職の分隊として使えるかどうか分からない。委員会に掛け合うか……。


「実は数日前にサフェールズ卿にお目に掛かったが。お頼み申したところ、前例はないが、使えるように善処するとお約束戴いた」

「内務卿が……」


 俺が立ち上がると、同時にアリーも立ち上がった。

「大司教様、司教様。何から何まで、「ありがとうございます!」」


「ふーむ。流石は夫婦。息が合っていらっしゃる。なあデイモス司教」

 特に計ったわけではないが、同時にお礼を申し上げ、礼をした。


「はい。大司教」


 司教の表情は、この部屋に入ってきた時とは打って変わって穏やかな笑顔だった。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/12/12 誤字、モーガンの記載追加、くどい表現、マルガレーテまで距離の2重記載訂正

2022/01/31 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/04/13 一部名前間違いローザ→アリー(ID:781272さん ありがとうございます)

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