表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
14章 英雄期II 賢者への途編
339/472

326話 ラルフ 裏を掻かれる

(追加)次の327話は、勝手ながら1日前倒しして11月3日水曜日に投稿します。

──────────────────────────────────────


最近余りやっていませんが、信長の野望とかのSLGとかが好きでしたねえ。何が好きかというと、戦術アルゴリズムの裏を掻くとこですかねえ。他国が攻め込んだとき留守を狙うとかねえ。なので自分の国が強大になってパワーゲームできるようになると、余り楽しくなくなって……。

 監察官と共に城外にある陸軍駐屯地を訪れ、司令官へ面談を申し込んだ。しかし、作戦中につき諸事繁忙という理由で断られた。監察官が粘ったが、作戦概要の提供も断られた。


 これについても、すぐに王都に問い合わせすると監察官は息巻いていた。

 いずれにしても間に合わないとダノンとは同意し、オリヴィエイトに連絡所を作らせて、俺とローザは先行した騎士団本隊の後を追った。


 俺とローザは出発が5時間は遅れたが、飛行魔術で昼過ぎには追い付いた。

 騎士団の車列は、領都から80ダーデン程進んだ所で午後3時に至り、夜営の準備に入った。


 設営が終わると、夕食の準備は当番に任せて、幹部と戦闘班が本部ゲルに詰めた。

 領都の状況を伝える。


「つまり、陸軍は超獣討伐の助けに成らないどころか、お館様の邪魔になる可能性が高いと言うことですか」

 ルーモルトが問うた横で、バルサムがいつもより3割増しの渋面を作る。


 邪魔になるならまだしも、わざと邪魔をして来る可能性すらある……が。陰に籠もる考えは止めておこう。


「そうだな」

「陸軍が出るなら騎士団も出すんですか?」

 調達補給班長(ペレアス)が心配そうに訊いてきた。


「いや、騎士団は予定通りだ」

「やはり、我々はディースで足止めですか?」

「トラクミル! その話を蒸し返すな……ああ、声を荒らげて済まん」


 バルサムが珍しく謝った。

 傲慢なやつという意味ではない。謝るような状況にはならない、よくできた人間だと言うことだ。まあ無表情でいつも不機嫌そうに見えるのは有るが。


「いえ。私こそ、申し訳ありません」


 それっきり皆黙り込んだ。


 バルサムと目が有った。

「お館様、お聞かせ下さい。如何なさいますか?」


 そう。これは超獣駆除の出動だ。

 作戦は、皆で論議ではなく、俺が立案する必要がある。


「使わないかも知れないが、ディース近辺のどこかに、砂で築山を作ってその周りに水堀を巡らす」


 ん?

 皆、釈然としない顔をしている。


「はぁぁ。また土木ですか?」

「ゼノビアさん」

 若い団員に窘められている。


「ご説明戴けますか?」


     †


 翌朝。

 予定を繰り上げて、早暁野営地を出立した俺達は、10時にはディースへ到達した。


 領都で訊いていた通り、ディースは小規模な城塞都市だ。

 川幅400ヤーデン(360m)程の中級河川の河岸段丘の上に築かれている。城壁は直径約200ヤーデンの概ね円形に築かれている。人口は2千人弱だそうだが、今3千余りに膨れ上がっている。差分は焼け出された避難民と軍人だ。


 既に光神教会の支援隊は到着しており、アリー達救護班は合流して活動を始めた。

 当地領主の子爵と先行していた国家危機対策委員会の監察官と面談した。


 当地の領主達は、思ったより危機感は持って居なかった。

 辺境伯軍と共に領都からの支援物資が既に入っているからだ。


 面談を終えて出て来ると、城壁外に宿営地ができあがりつつあった。その端にスードリが立っていた。

 本部ゲルに、バルサムとローザと共に入り、報告を受ける。


 スードリは、手作りだろう簡素な地図を広げた」


「超獣キュロスは、現在ここから北西20ダーデン程に。そして領都オリヴィエイトへほぼ最短経路を移動しております。その線上にはここディースはありません。最も近付くとみられる地点でも5ダーデン(4.5km)は離れています」


「つまり、ディースは安全と言うことですな」

「おそらくは」


「オリヴィエイトには?」

「昨日までの速度であれば、8日程で到達見込みだったのですが、数日早まる可能性が出てきました」


 超獣は結構歩みはゆっくりで、しかも動き続ける事なく、一日の半分位は止まっているとのことだった。だが、それは昨日までの話で、俺の魔導感知でも移動速度は速まっている。その所為で、今日出発を早めたのだ。


「陸軍の方は?」

「手の者に確認させております」

「うむ」


 陸軍は、領都から60ダーデン程離れた隘地周辺に陣地を構えている。超獣を迎え撃つ気なのだろう。そう昨日報告を受けた。



 本部ゲルから出ると、バルサムとトラクミルにローザが付いてくる。

 この辺りで良いか。

 15分ほどしばらく歩いて、行き着いたのは段丘の底。近寄ってみるとなかなかの川幅だ。流れは100ヤーデン程向こうだ。

 ここは緩やかに曲がった内側、川岸の州だ。


「下がっていてくれ」


「ここに、その築山を?」

「そのつもりだ」

「分かりました」


 3人が離れたところを見計らい。


隆起(エヒーロン)!!】

 地壁を改良した、準上級魔術。時間は掛かるが、効率良くかつ精緻に地形を変更できる。


 砂地だけあって、余り摩擦抵抗なく、高さ3ヤーデンの台形断面の小さな山ができあがった。直径は20ヤーデン程でその周囲は深さ1ヤーデン、幅4ヤーデン程の溝ができあがる。


硬化(アダマント)


 砂が白く変わり、堀の側面および底面を固めた。小山の内部も固まっているはずだ。


 ふう。一息付いていると、ローザ達が近寄ってきた。


「はぁぁ。まるでリフィジ山のようですね」

 バルサムが、しみじみ言う

「リフィジ山?」


「南方に有る成層火山だな」

「お館様。いらっしゃったことが?」

「いやない」


 答えつつ、築山を離れる。


「お館様、どちらへ?」

「ああ、すぐ戻る」


 水辺まで歩く。


魔収納(インベントリ):入庫】


 数秒後、大きな水柱が上がった。俺が川の水を大きく切り取ったので、そこに四方八方から一気に流れ込み、ちょうど真ん中で衝突したのだ。


 築山まで戻って川水をややゆっくりと出庫すると、水堀ができあがった。


「これで、できあがりですか?」

「ああ、この魔導器を埋め込めば完成だ」


「それは、昨夜作って見えた」

 肯く。

 ゲルで夜鍋して、魔石に刻印して作ったものだ。早朝に試運転も実施した。

 お陰で少し眠い。


 飛行魔術を行使して、築山上空まで移動すると魔導器を撃ち込んだ。砂埃が上がったが意図した深さに埋まった。


 できあがりだ。

 ん?

 バルサムの横に去ったはずの、スードリが居た。

 降下して、彼らに近付く。


「どうかしたか?」

「手の者から連絡があり、陸軍が移動しました」

「なんだと」

「昨日の夜半に、昨日まで居た陣地を引き払い、前進しました。このティラスト川の下流……右岸に700人程を配置して居ます」


「むう」

 思ったより超獣に近い。

 さっき見た地図の縮尺が合っているとして、その超獣が川に差し掛かるのは今日だ。意図は分からないが、結果として裏を掻かれたことになる。やはり昨日の内に偵察しておくべきだったか。


「そこに、妙な……得体の知れない黒い箱が有ったそうで」

「中身は?」

「分かりかねます。箱は一辺が3ヤーデンでしたが、それが3つありました」


「箱か……」

 気になるな。

「わかった。では行ってくる。これを使うことがあれば、指示通り頼むぞ」

「了解!」

「お気を付けて!」


 俺は軽く手を振ると、今度は高く舞い上がった。


 目まぐるしく、眼下の土地が流れてゆく。


 見えた! 超獣(キュロス)だ。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/10/31 誤字脱字

2020/11/01 陸軍陣地の位置の距離単位訂正 60ヤーデン→60ダーデン

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2025/05/24 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ