表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
336/472

閑話7 訪問

13章も今話で打ち止めです。次話から14章始めます。

「奥様。こちらです」


 王都西街区の住宅街で貸し切り馬車を降り、一本入った通りの路地に建つ、石造り7階建ての集合住宅前まで来た。

 メイドのイレーネが入り口に立つ屈強そうな警備員に話を付け、中に入った。中庭が有って進むと、身なりの良い老婆と擦れ違う。ここは民間の建物だが、官僚が多く入居しているそうだ。いくつかある建屋のひとつに入り、階段を昇って3階分昇ったところにある部屋。


 307号室、ここだわ。

 右手を伸ばして、ノックしようとしたイレーネを止める。


 自分で扉を3度叩いて少し待つと、中から開いた。


「ローザさん。お待ちしてまし……た」


 最後に少し間が有ったわね。4人で来たのが少し意外だったのだろう。


「ナディさん。こんにちは。大勢で押し掛けて済みません」

「いえいえ、どうぞ中へ、お入り下さい」


 差し渡し15ヤーデン程の部屋、居間のようね。

 この前館にナディさんが来た時に聞いた話では、バロール殿が新居を用意できるまで、ナディさんのために借りた部屋だそうだ。


「まあぁ!」

 右手の壁を目にして、思わず息を飲む。

 1.5ヤーデン角程のタペストリーが壁に掛かっている。


 向かい合う2羽の孔雀──

 思わず引き寄せられた。


 派手な雄と淑やかな雌だろう。

 素人目に見てもすばらしい。これはバロール殿とナディさんに違いない。

 


「はぁ……これも、ナディさんが作られたの?」

「あぁぁ。はい」


「はぁぁ。見事の一言だわ。ねえ。アリー」

 私の横で、食い入るように見ている。


「むぅ……確かに。これ、お1人で作ったんですか? どのくらい時間が掛かるんでしょう」

「はい。そうですね。1ヶ月くらいでしょうか。ああ、ではどうぞ、おすわ……いえ、お掛け下さい」


 ソファーは4脚分有るが、私とアリーが座り、2人のメイドは壁際に立った。


「ところで、アリー様と仰ると、この前仰っていた……」

「はい。妹です」


「ですよね。お顔が結構似てらっしゃいます」


 最近よく言われる。

 歳の差は昔から変わらないけど、比率は小さくなってきているし。少しはアリーも淑やかにするようになってきたからか。


「ナディさん。お姉ちゃんのお友達になってくれたそうで。ありがとうございます。ぜひ私とも仲良くして下さい」

「あっ、はい」


 よろしくと言いながら、ナディさんと握手している。本当にこの子は、友達を作るのに積極的よねえ。


「そう言えば。以前、館にお伺いした時、ローザさんはスワレス伯爵領ご出身と聞きましたが、アリーさんもご一緒に王都に来られたのですか?」


「はい。旦那様とお姉ちゃんと一緒に」

「旦那様? ご結婚されているんですか」


 まあそう言う話になるわよね。


「はい。先月会ったでしょう。ラルフェウス・ラングレン」

「えっ?」


 ナディさんは、私の顔を見た。仕方なく肯く。

「それはどういう?」

「ああ。お姉ちゃんが本妻で、私が第一側室なの」


「へえ。それはまた……」

 声をなくして、私の顔を見た。

 明らかにナディさんが引いている。


「やっぱり貴族は、お妾……側室を持たれるんですね」

 思いっ切り気を使っているわ。

 釈明しないと、そう思った時。


「ああ、旦那様はお姉ちゃん一途だったから、お姉ちゃんと協力して長ーい時間を掛けてね説得したのよ。私から迫って迫って……」

 アリーが先に説明した。

「そうね」


「はぁぁ、アリーさんから迫ったのですか。なっ、なるほど。危うくラングレン様を酷い人と誤解しかけました」


 良かったわ、分かってくれて。


「で、もう1人側室をね……増やそうかと」

「えっ!?」


「もう、アリーたら」

 驚いているナディさんは、良い人だけど。アリーはすぐ人に心を許すんだから。


「済みません。ナディさん、今の話は他言無用で」

「もっ、もちろんです。絶対言いません。ああ、失礼しました、お茶の準備を……」


 ナディさんは立ち上って廊下に向かい、それをイレーネがお手伝いをと言って追いかけていった。


 お湯が沸いて用意が調い、ナディさんがお茶を淹れ始めた。

 そのやり方を、しっかりと見る。

 ちらっと、アリーの方を見ると顔を顰めている。


「どっ、どうぞ」


 注がれたカップを摘まみ、まず水色を見る。少し薄いわね。鼻の下で薫らせて、一口喫する。


「ふーむ」

「いかがでしょう?」

「そうね。少し蒸らし時間が足りませんね」


「ちょ、ちょっと、お姉ちゃん。折角淹れてくれたのに、なんてこと言うのよ」

「ああ。いえ。アリー様。良いのです。ローザさんは、お茶の師匠なのですから」


「お茶の師匠……また?」

「また?」

「ああ、ウチにサラって人が居て、お姉ちゃんを師匠って呼んでたの。長刀(なぎなた)のだけど」

「長刀……ですか? アリー様」

「アリーったら」


「お姉ちゃんは、お淑やかそうに見えるでしょ。だけど、ウチの騎士団でも長刀じゃあ最強に近いのよ。ああ、私に様は要らないから」


「あっ、はい。アリーさん」

 

「えーと。ではお茶が冷めない間に、良いですか? ナディさん」

 メモ帳とペンを出した。


「前回、うちの館で基本はお教えしましたが、自分で淹れたお茶を飲んでみてどうでした?」

「確かに仰った通りです。自分でも飲んでみて、少し薄いと思いました」


 味が分かるのは、改善に繋がるから良いことだわ。


「では、解説しましょう。この茶葉ですけど」

「はい」

「一芯二葉の良い茶葉を使って戴いて嬉しいけれど、大きな葉っぱの場合は抽出されるまでに時間が掛かるから。少し長めに蒸らします……ここで難しいのは、季節によって冷め方が変わることです。この差を少しでも小さくするために、ポットを予めお湯で温めるか、蔽い(コジー)を被せておくと蒸らしている内も保温出来ます。では私が淹れてみましょう」


 10分後、頃合いの蒸らし具合になったお茶を、カップに注いだ。


「どうぞ」

 ナディさんとアリーにカップを差し出す。

 2人が喫する。


「おおぅ」

「やっぱりローザさんのお茶はおいしいです。流石です」

「うーん。間違いない。でも同じ茶葉で。こうなるかぁ」

 アリーが眉間に皺を寄せる。


「はぁ。アリーには結構仕込んだんですけどねえ。ムラが有って」

「やっぱり性格が……」

「回復魔術を使う時の真剣さが有れば……」

「ううう。面目ない」


「ふふふ」

 ナディさんが笑っていた。

「姉妹仲がよろしくて、羨ましいです」


 その後、ナディ師匠に数時間刺繍を教えて貰ってから館に帰った。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2010/10/21 誤字、少々加筆

2022/08/06 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2025/05/06 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ