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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
333/472

322話 友ができるとき(下)

今日投稿2話目です。


>で、書いていたら、長くなってしまいました。

>でもキリが悪いので2つに分けて、後半は今日中に投稿します(……在庫少ないんだけど)。

 足早に聖獣(セレナ)の前を通り過ぎ、2人をルークの部屋に案内する。


 次の間を通り抜けた、奥の部屋。真ん中に小さなベッドがあり、その向こうで待っていた者達が会釈する。


「乳母のエスト、その子のフラガだ」

「ああ、そうかぁ。乳母かあ。乳母も必要だよなあ」

 バロール殿もナディさんも、今初めて思い当たったという顔をしている。2人とも、平民として育って居るからな。乳母という存在になじみがないのだろう。わかるわかる。


「差し出がましいですが。もし、乳母がお要り用で、お心当たりがなければ、ご連絡下さい」

「おお、奥方、ありがたい……んん、まあ、ナディが自分で育てる気もするが」

 いや、あんたも手伝えよ!

 俺も偉そうなことを言えた義理ではない。まあ風呂に入れたりおしめを替えたりしてるだけだが。ローザが嫌がっているからなあ。


「むっ!」


 霊格値にはあまり頓着しない魔術師だが、魔力上限値には敏感といって良い。賢者とも成れば、その感知能力は尋常ではない。

 感知阻害を施した建物だが、部屋の中に進むと流石に気付いたようだ。

 バロール殿は、振り返って鋭い眼で俺を見た。


「どうぞ。息子の顔を見てやって下さい」

 やや固まった。

「あっああ。そうだな。ラルフの子だった。では、拝見」


 バロール殿が、ルークをのぞき込んだ刹那──

 赤子が突如火が付いたように泣き始めた。


「おおう!」

 バロール殿が、たじろいたように離れる。

 つつっとローザが進み出て、ルークを抱き上げた。


「ルーク。お客様に失礼ですよ。泣き止みなさい」

 おいおい。

 だが。その言葉が通じたのか、抱き上げられて機嫌が良くなったのか、あっと言う間にルークが泣き止んだ。


「なあ、ラルフ……」

「なんでしょう?」


「いや。あの子に凄く睨まれているんだが」

 あの子とは、壁際に立って居る子供だ。


「フラガ。ご苦労。この人は俺の客だ。悪い人じゃない」

「あい!」

 そう返事はしたが、何時になく眉が吊り上がった厳しい面持ちは、ほとんど緩和されなかった。ルークを泣かせたからだろう。


「悪い人って……」

「フラガは、乳兄弟の兄ですから、弟を守ろうとしているのです」

「そうかそうか。弟か! 悪かった。良い兄ちゃんだな」


 俺とバロール殿が、ルークの側から退くと、ナディさんが寄ってきた。


「まあ。なんて可愛い赤ちゃんなんでしょう」

「ナディさん、抱いてやって下さい」

「えっ!? よろしいのですか?」

「ええ」


 ルークがナディさんに渡る。堂に入った抱き方だ。

「慣れていらっしゃいますねえ」

「ええ、実家に居る頃は、弟や妹の世話をしてましたので」


 そうだな。

 俺が幼少期を過ごした村でも、農家であるなしに関わらず平民は親が忙しい。その上、子供が5、6人は平気で居る。兄姉は弟妹を子守して面倒を見るのが当たり前の光景だ。


「まあ。うちもラルフのところには遅れたが……そのう、子ができた」

 ほう。

 鑑定魔術は礼儀として使わないので、分からなかったが。懐妊されているのか。


「そうなのですか? おめでとうございます。ナディさん」

「おめでとうございます。ナディさん」


 そりゃあ、切実だ。ウチを偵察に来るわけだ。


「おい! 俺にも言えよ」

「あははは。おめでとうございます。バロール殿」


「ありがとう……ところで、ラルフ」

 小声になった。


「はい」

「なんか、奥方。感じが変わったな」


 まあ。気が付くよな。


「ああ、子供を産んだ直後の女性は、一際美しいと言いますからね」

 当然はぐらかす。

 何か、生温かい視線で見られた。


「まあ、俺が別に心配することもないか。ラルフが付いているのだからな」


 いつの間にか、ルークがローザの腕の中に戻っていた。

 ん? なんだ?

 ナディさんが、しきりに指で首元をなぞっている。どうかしたのか?

 その視線が向いているのは、バロール殿?


「あっ!」

 はっ?


「あぁ……うっかりして祝いの品を渡すのを失念していた。すまんすまん」

 さっきのナディさんの動作は、合図だったようだ。


 バロールは手にされていた魔導鞄から、大きな包みを出された。


「いやいや。バロール殿には、既に銀の食器を戴いております」

「そうです」

 ローザも肯く。


「ああ……あれはあれだ」

 意味不明な返事だな。

 ローザはルークをエストに渡し、代わりに包みを受け取った。


「重ね重ねありがとうございます」

 ローザの謝辞に合わせて、俺も胸に手を当てて頭を下げた。


「開けても、よろしいですか?」

「もちろん」

 壁際に居たメイドがすっと寄ってきて、ローザを手伝う。中から出て来たのは、布でできた物だ。何だろう?


涎掛(よだれかけ)!」

「まあぁ、これは! なんて可愛いでしょう! この刺繍の精緻なこと」

 珍しくローザがはしゃいでいる。落ち着き払っているが、まだ20歳だからな。


「そうだろう。ナディは刺繍が得意なのだ」

「えっ? これは、ナディさんが縫われたのですか?」

「ああ、いや。お恥ずかしい」

 ナディさんは、はにかんだ。


 そういうことか。生まれてすぐ贈られてきたのはバロール殿からのお祝いで、これはナディさんのお祝いということだ。


「すばらしいです。それに5枚も。あっ、ナディさんもお子さんが生まれるのに、こんなにたくさん戴いては……」

「いえいえ。生まれるのは、まだ半年以上先ですから。問題ありません」

「そうだわ! お茶の代わりに、刺繍を私に教えて下さい。ナディさん」


 ローザが手渡してくれた、贈り物を見た。

 確かに素晴らしい。

 これは草木。こっちは幾何学模様、これは……。


「我が家の紋章」

 楯の中に狼が居る意匠だ。


「ああ、俺が図案をナディに教えたんだ」

「ありがとうございます」


 和やかな対面が終わると、一頻り館を案内した。最後に再来()月の披露宴に招待されたので、公務で王都を離れていない限り出席を約束した。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/10/14 誤字、細々追記

2022/01/31 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/06 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2025/05/24 誤字訂正 (コペルHSさん ありがとうございます)

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