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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
331/472

320話 千客万来

何か、家に客があんまり来ない時と一杯来る時と波が大きいんですけど。なんでですかね。

 翌日。ダンケルク家を訪問したお袋さんは、3時頃にはエルメーダに帰って行った。義母上(マルタ)は残って、しばらくローザの世話とエストに乳母の指南をしてくれるそうだ。


 さらに次の日。

 予告されていた王宮からの使者が来ると先触れがあり、本館のホールで待ち構えている。


 なんだと!

「旦那様?」


擬人装(マスケラーレ) (レヴォルブ)】【擬人装改】


 思わず振り返った勢いが不自然だったからか、ルークが寝る籐籠の脇に控えたローザがギョッとした。反対側に伏せていたセレナも上体を立ち上げた。


「ああいや……」


「お着きです」

 王宮から差し向けられた白亜の馬車が、敷地内に入ってきた。

 ぎりっ──

 我知らず奥歯を噛み締めた。


 御者が降りて扉を開く。致し方ない。

 俺は跪いた。


「国王陛下、御名代にございます」


 使者は、音もなく床に降り立つと、離れ1階のホールへすたすたと入ってきた。


「やあ。ラルフェウス卿。久しぶりだね」

 使者は少女の風体をしていた。


 賢者(セイジ)ディアナ──


 国王陛下の名代として使者に来たのは、以前(ソフィー)を密かに調査に来た女だった。

 興味があるのかないのか、ちらちらと室内を見回したあと、ふと止まった。


 眼が合い、戦慄が背筋を駆け上がる。

 時空魔術を発動したのか?!

 ローザやモーガン、そして執事達も凍り付いたように動かない。

 

 いつの間に? 2度目だが……精妙に過ぎる魔術だ。


「ほう。動ける者が卿以外に居るとはな……」

 聖獣として霊格を高めたセレナがゆっくりと立ち上がり、猛った形相を術者に向ける。


 そして、もう1人はルークだ。

 籐の籠の中で、ジタバタと手脚を動かしている。


「これは驚いた。卿の子だから尋常ではないとは思っていたが、末恐ろしいとはこのことだ」


「で。何しに来た?」

 この魔術は無害だ。だが怒りが消えることはない。


「前にも言ったが、私は卿の先達なのだがね」

 10歳代の見た目をしているが、何倍も生きているだろう。


「無礼は赦そう。卿の息子を見せて欲しい。侍従長に報告しないといけないのだ」

「侍従長?」

「この前、王宮の執務室で陛下と一緒に会ったであろう?」


「賢者が、なぜ侍従の使い走りをしている?」

「言っておくが、今日は陛下に頼まれてきたのだ」

 今日は、か……


「陛下……使者というのは本当なのか?」

「無論だ」

 渋い顔で肯いた。どうやら嘘ではないようだ


「わかった」

解除(ハールト):擬人装改】


 魔力はともかく、霊格値はそう簡単に見えない。しかし、この賢者ならと思って咄嗟に擬装したが、陛下の使者であるなら致し方ない。

 ルークを指す。使者ならば危害は加えないだろう。


「ふん。小細工を」

 さて、ローザの方の擬装は見抜かれては居ないようだが。


 賢者が一歩踏み出した時、セレナが喉を鳴らした。


「ラルフの 子に 何かしたら 殺す」

「了解だ、聖獣殿。さぁて、お顔をはい・け……なんだ、これは?」


 俺の子を見て、何を言う?! 改めて、失礼なやつだ。


 だが。膝を付いて俺を見上げたディアナは、醜悪なほど顔を引き攣らせていた。再び無言でルークを厳しい形相で見つめた。


 ふむ。その射貫くような視線を、感じ取ったか取らぬか。俺の子は、機嫌良さそうに声を上げて、産着に包まれた腕を動かしている。


 ディアナは、やがて立ち上がって俺を睨み付けた。


「説明してもらおうか! この3つの聖印のことを」


「聖印? 聖印とは何だ?」

「とぼけるな! この赤子の額に刻まれているだろう。見えないのか?」

 館で見えているのは、俺以外には居ないが。


「見えてはいるが、聖印と呼ぶことを知らなかっただけだ」


 聖獣が光の渦と化して消えた後、ルークの額に光の紋章が残った。普段、肉眼では見えないが、俺が近付くとほんのり光る。


「ひとつは、そこに居る聖獣殿として、もうひとつはイーリス殿……最後のはまさか」


 まあ、プロモスの聖獣のことは報告してある。賢者である彼女の耳にも届いていることだろう。


「卿は何者だ?」

上級(アーク・)魔術師(ウィザード)だ」


 ディアナは舌打ちすると、馬車の前に戻った。


「子爵ラングレン卿。国王クラウデウス6世陛下の祝辞を伝える」


 世界は宣言と共に、再び時の歩みを取り戻した。


     †


「婿殿、それは本当なのですか」


 使者が来た4日後、俺はダンケルクの館へ呼び出された。

 横にはローザも座って、この館の女主人に向かい合っている。


「真です。もしそのような事がありましたら、一番に義母上のお耳に入れます」


「そうなのですか?」

 なおも疑わしそうな表情で、ローザに視線を向ける。


「本当です、お義母様。確かに王宮よりご使者が来られ、国王陛下よりご祝辞を戴きました。しかし、この新聞に書かれているようなことは、ございませんでした」


 ローザは、あのとき固まっていたけどな。


 ちなみに新聞記事とは、第7王女クリスティナ様とルークの縁談の話だ。もちろん王宮というか侍従が市中に撒いた流言だ。既にかなり尾ひれが付いているが。


 最初それを報じたのは一紙だったが、昨日には大なり小なり記事として扱っていた。

 彼らの流言の流布は、かなりの成功と言えよう。流石だ。


「ローザさんが、そう言うなら。そうなのでしょう。婿殿は役目柄、本当のことを言えないことも有りますからね」

 鋭いな。


「ははは。昨日今日出来た貴族家に、王族の降嫁など有り得ませんよ」

「常識で言えば、そうでしょうけれど。他ならぬ婿殿ですし。私も祖母ですから、日頃疎遠になって居た方からも問い合わせがあって、大変だったのですよ」

「災難でしたな。ウチにも、いくつか来ましたし、新聞もいくつか取材申し込みがありました」


「ほう!」

 何か期待してるが。

「無論、事実無根ということで、取材は断りましたが。誰がそのような嘘を。全く腹が立ちます」


「そうですか、分かりました」


     †


 本館玄関前に、辻馬車が横付けになった。


「いらっしゃい、バロール殿」

「いらっしゃいませ」

 客人が降りてきた。

 上級魔術師にして、賢者のバロール・ディオニシウス子爵だ。


「よっ! 博士。久しぶりだな……ああ、これは、奥方。こんにちは」

 にやっと笑っていたが、ローザを見て表情が締まった。


 ルークに対する流言が記事になった時に、学位を取得したことを、おまけで報道された。黙っていたのが気に入らなかったのか、少し前から俺をからかって偶にそう呼ぶ。


「お元気そうで」

「ああ」


 彼は、振り返ると同行者の手を牽いて下ろした。


 降りてきたのは女性だ。ほっそりと痩せた姿、年の頃は見た目30歳位でバロール殿と同じぐらいの齢だろう。

 軽く会釈しあう。


「では、中へどうぞ」


 ホールを右に折れて、元に戻った応接室に入った。


「奥方。この度は、おめでとうございます」


 そう。7日前にバロール殿から書状が届き、息子誕生のお祝い方々、館を訪問したいと書いてあったので、承諾して今日を迎えた。


「ありがとうございます」

「ありがとうございます。バロール様」


「あっ、ああ、こちらは。婚約者のナディ、ああナディスだ」

「初めまして。し、子爵様、奥様。ナディスと申します」


 ぎごちなくスカートを軽く持ち上げて挨拶した。

 なかなか整った容貌だが、緊張しているのだろう、少し強張った表情だ。


「初めまして。ラルフェウス・ラングレンと申します。バロール殿には、上級魔術師に成ってから、お引き立てて頂いています。こちらは妻のローザンヌです」

「ローザとお呼び下さい」


「はっ、はい」

「どうぞ、お掛け下さい」

 ソファーを勧める。


「あっ、あ、あのう。実は……私は平民なのです。このように立派な椅子に座るなど、畏れ多いです」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/10/10 ローザに行使した魔術の記載追加

2021/09/04 脱字訂正(ID:1562693さん ありがとうございます)

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