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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
311/472

300話 ラルフ 暗躍する

祝!本編300話到達!!

いやあ、主人公赤子スタートだと長編になりますよね(汗)

お読み戴いて感謝です!


 ここか?

 煌々と月が輝く夜空を背にし、遙か眼下を見下ろす。

 ルタールの丘から距離が離れているが、製薬工場建設候補地の場所はここで良いらしい。


 俺が学問所に行っている間にゲドとサラは視察し、現地を気に入ったと言うので、俺も見に来たのだ。


───うむ その露天掘りの坑を降りてもらいたい


 直径200ヤーデン程か。綺麗な円錐形の大穴が地に穿たれている。以前にも近辺を飛行して目にはしていたが、真上に来ると、そのでかさが際だつ。


 分かった。

 自由落下にて縦坑へ突入すると、急減速し音も無く底に降り立つ。


───そこの横坑から中へ入れるようになっている


光輝(ルーメン)


 ふむ。

 ゲドの声に順うと、大きな板戸が見えた。

 しかし、彼の姿はない。俺に憑依しているのだ。


 作ってから長い年月が経ったのだろう、ずいぶん劣化して、板の継ぎ目に大きな隙間ができている。

解錠(デブロキェ)


 大きな青銅の錠前が一人手に外れ、地面に落ちた。

 端を掴んで引っ張ると、耳障りな音を立てて板戸が開く。


───御館は華奢な割に力が強いな


 そうか?


───幼い頃に身体強化魔術を常用し続けると 断面積辺りの筋力が上がると言うが


 ふむ。

 歩いて、横坑を進む。

 坑壁を見ると、人為的に掘ったところと、元から洞窟として存在していた所がまだらに混在してる。おおよそ数十年前に拡張したのだろう。


───御館程顕著な例は知らないが 古代エルフの人体実験で結果が出ている


 ほう。

 ゲドは、何かを申し入れたいようだ。


───ただ相当な危険もある それに第2次性徴が起こる前でなければ 効果がない

───そのような時期に 常用に足る魔力を持つ 子供などほとんどいないからな


 悪いが結論から言ってくれ。


───そうか……では

───生まれ来る子に 魔術を行使するのは奨められぬ

───いくら魔力上限が高くてもな


「ははは……」

 思わず声が出た。


 そんな気はない。

 霊格値が分与されているが、別に俺が意図的にやっているわけではない。


───それを聞いて 少し気が楽になった だが……


 なんだ?


───御館の影響力は 後天的にも大きいからな


 は? 


───魔力を与えていた聖獣のセレナは言うに及ばず

───あの嬢ちゃんの霊感も 御館の影響に思えるがな


 ソフィーには何もしていない。


───遺伝子が近いから共鳴したのではないか?

───あのパルシェとかいうメイドも その辺りが引っ掛かっているとか


 本能的にか?

 憶測の域を出ないな。

 それで、ここをどっちだ?


───ああ 左に行ってくれ 


 1分も進むと、突然目の前が開けた。


───気に入ったと言うのは ここだ


 差し渡し50ヤーデン程もある大きな空間に出た。縦坑からそんなに遠くはない。


 天井も高いな。

 ここは、人間が掘った坑道ではなく、元々洞穴だったようだ。1箇所上に向かって、直径3ヤーデン程の縦坑が開いている。今は何かで塞がれているが、地表まで繋がっていそうだ。


 なるほど。

 十分だな。王都館地下から運んできた実験室の魔導設備を、全部配置しても十分余る広さがある。

 それに、微かに水音が聞こえてくる。クリストフが言っていたように地下水脈も近く通っているようだ。


 なにより、魔導設備の機密を護るのに地下というのは都合がいい。通気もおそらく、縦坑を貫通させ……まあ、魔術を使わなくても十分なはずだ。


 ふーむ、ある程度風化してる。堅牢とは聞いていたが多少は強度面に難があるな。

 手を入れるべきだな。


───そこは 御館に掛かれば朝飯前であろう 男爵殿に許可も貰っておったしな


『いずれそなたの物になる』

 親父さんの言葉が脳裏で(こだま)した。


───信頼を得ているな 良い親子だ


 善いのは親父さんだ。


───まあ 私としてはどちらでもいいが

───それより 機密保護という意味では 男爵領政府の人間も過信は禁物だが


 余り考えたくはないが、ゲドの言う通りだ。今ここに来ているのも、ある意味その一環だ。根本対策を考えないと。


 だが今は。ささっと済ませて帰ろう、ローザが起きる前に。


     †


「おはようございます。旦那様」

 ローザに起こされた。

「あぁぁ、おはよう」


 7時か。


 カーテンを開けると一気に陽光が差し込んできた。

 エルメーダ城南郭にある俺の部屋は、気分が良い。


「随分お疲れのご様子ですが、どこへ行ってらっしゃったのですか?」


「なんだ、起きていたのか?」

 ローザが寝付くまで、出掛けるのを待ったのだが。


「いえ。お腹の子に障りますので、居らっしゃらないのは気が付きましたけど、寝ました」


「そうか。ああ、ゲドとサラが言っていた工場予定地に行ってきた」

「へぇ、そうなのですか。でも何も深夜に行く必要が……はぁ。そのお顔は、必要があると言うことなのですね。せめてご自愛下さいませ」


 ローザには隠し事はできないな。結構俺は無表情で通っているのだが。


「入りますよぅ」

「どうぞ」


 アリーが部屋に入って来た。

「はいはい。お姉様、お着替え手伝いますよ」


 アリーもか。

 自分で着替えるんだけどなあ。そうすると悲しそうな顔をするから、任せるが。


「旦那様、寝不足?」

 ローザが不機嫌そうに肯いている。


「4時間は寝た」

「いや威張った顔で言われても」


     †


 朝食を摂り、馬車に乗る。

 俺の他は、アリー、サラ、ゲド、モーガンが乗る。それを先行する5騎。4騎は兵だが、1騎は本家の家令クリストフだ。


 露天掘りの大縦坑に続く路が、ゆるゆると台地を登り始めて10分。

 その結構手間で、徐行に変わった。


 御者台に続く、窓が開いた。

「よく分かりませんが。先行の騎馬が止まりました。ん? あれ? そう言えば」


「どうしたの、サラっち!」

 アリーが訊き返す。


「いやあ……昨日は馬車だったんで……でも、やっぱり流石にこれだけ長い土塀を見落とすはずは」

「土塀って、それのこと?」

 右の車窓一杯に広がっている物を指差す。高さは馬車の屋根を超えている。


「ええ。アリー様、そうです。道端から3ヤーデンも開いていませんから」

「サラ、止めてくれ」

「あっ、はい」


 制動が掛かって、少し平らな部分で止まる。



「むぅ。男爵家の方々の馬が止まりました」


 クリストフが間近に寄って下馬したようだ。


「モーガン、扉を開けてくれ」

「はっ!」


 モーガンが扉を開けて降りると、そこへクリストフが駆け付けてきた。興奮しているのか顔が真っ赤だ。


「おっ、お恐れながら。この土塀を築かれたのは、子爵様にございますな?」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/7/25 誤字訂正(ID:118201さん ありがとうございます)、表現変更(刻む→穿つ等)

2025/05/06 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)


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