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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
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299話 学問所

君主制下の初等教育機関って、当然ですが君主にとっての都合の良い人材の養成機関なんですよねえ。現代人から考えると、ちょっと忌避感がありますが。そこを通らないと後々に繋がらないのもそうかなあと思います。

 職員室を出て、お袋さんの後をついていく。


「あの扉の向こうが教室です。人数が少ないので、今のところは皆ここに居ます」

 ふーむ。学年とかないのか。


「では、ラルフはここで待っていて。私が呼んだら入って来なさい」

 肯いておく。声を出したら、ソフィーに気付かれそうだ。


 お袋さんが、教室へ入って行った。

 聴覚を強化する。


「「「所長先生、こんにちは」」」

「はい。こんにちは。遅くなってごめんなさい。さて、今日の5限目は、貴族論の予定でしたが、急遽変更して特別講師をお呼びしました」


「先生。講師とは、どなたなのです?」

「ふふふ。入って来たら、みんなが驚く高名な方です」

 おいおい。


「えぇぇぇえ」

「ジョシュアさん。静かになさい、お嫁のもらい手がなくなりますよ」

「あっ、はい」


「では、お呼びしましょう。お入り下さい」


 聴覚強化と魔界障壁を切って中に入る。


「皆さん、こんにちは」


 入って行くと、皆ポカンとした顔だ。俺の顔など知らないからな。


「おぉぉ、お兄様!」


 後方の席から声が上がり、ソフィーがふらつきながら立ち上がった。その横に、パルシェが、すかさず寄って支える。

 だから睨むなって。


「「「えぇぇええええ!」」」

 教室に喚声が上がる。


「先生! ソフィア様のお兄様というと……」

「その通り。特別講師とはソフィアの兄、我が息子にして子爵のラルフェウス・ラングレン殿です」

 大きく肯くと今度は響めいた。俺の名前は知っているようだ。


 教室を見渡すと、男子5人は聞いていた通りだが、女子は4人だ。1人休みか?

 待てよ。パルシェの机にも何やら本と帳面が乗っているが、まさか彼女も生徒と言うことではないよな?

 他の生徒は、上はざっと10歳前後、下は6歳ぐらい。基礎学校相当だな。


「はいはい、静かに。静かに!!」

 お袋さんの声で、静まった。

 でも全然落ち着きがないな。身体が揺れているし、かなり興奮した様子で息が荒い。どうしたんだ?


「えぇぇ、講師殿には人生訓を語って戴こうと思いましたが……」


 待て! 人生訓なんか語れないぞ! 俺は16歳だ。


「……聞く体勢にはなっていないようなので。みんなが質問して、講師殿に答えて貰いましょう」

 悪い顔してるな、お袋さん。


「では質問のある人!」

「「「はい!」」」


 ソフィーとパルシェ以外の者の手が、一斉に挙がる。


「では。ジョシュアさん」

 ソフィーと同じ、8歳ぐらいの子が立ち上がる。


「あぁ……あのう。子爵様初めまして、ジョシュア・デニールと申します。よろしくお願い致します」

 デニール。

 ああ、前にこの城に来たときに、お袋さんの周りに居たご夫人方の娘か。准男爵で確かに少し垂れた目が似てる気がする。

 かなり上気してるが、大丈夫か。


「ああ、よろしく」

「はぁぁ、はい。おかあさまに聞いていた通り……」

 顔が真っ赤だ。


「あーー、ジョシュアさん。お見合いではないのですよ。質問はないのですか?」


「えっ? ああ。あります、あります」

「では、はやくなさい」

「はい。ぇっ、ええと。侯爵様と子爵様のお姫様を奥様とされたと聞いておりますが。本当でしょうか」


 姫ではないが。


「確かに。ローザンヌはダンケルク子爵家、アリシアはファフニール侯爵家だ」

「ふぁぁあ、凄い!」


 お袋さんは、溜息を吐いた。

「では。他の人……ヘルモート君」


 一番年長そうな男子だ。


「はい。子爵様は、上級魔術師と成られ、超獣を斃されたと訊いておりますが、超獣は強いのでしょうか?」

 容姿も整って賢そうだし、言葉遣いもしっかりしているな。

 要注意だ!


「うむ。結論から言えば超獣は強い。我がミストリアには選りすぐりの上級魔術職が16人居るが、彼らが命を懸けて戦うのが超獣だ。私が最初に超獣を見たのは、ちょうどみんなの歳頃に近い8歳だった。知っているか分からないが、インゴート村というところに現れた」


「知っています。お隣のスワレス伯爵御領内です」

 別の子が声を上げる。


「そうか。その時、私は隣の村に居たのだ。それで超獣がただただ地面を這って数十ダーデン動いただけで、300人余りの人間が亡くなった。それだけ強い」


「では、昔の御領主様達は強かったのですね」

「そうだな。私も尊敬している」


 おおと響めいた。

 彼らにとっては郷土の英雄なのだろう。


「では、マルセル君」

「はい! ぼっ、僕はこんなに痩せていますが、子爵様の騎士団に入れるでしょうか?」


「そうだな。私も君の歳頃には、かなり痩せて……ああ今も痩せて居るがな。ははは。騎士団には、腕っ節が強い者、魔術が使える者、賢くて学問で皆を支える者、交渉が上手い者、色んな団員が居るのだが、それぞれ必要だ。人よりも何か優れたところがあれば、団員になれる……かも知れない」


「えぇぇ」

 反応が微妙だ。


「では、こうしよう! 私が上級魔術師となった歳と同じ15歳になって、まだその気が有れば、男爵様に申し出よ。試験をしよう。よって、今は合格できるように、まずは学問を修め、身体を鍛えるように」

「「「はい!」」」

 いい返事だ。


「えぇ、それは困るわね。ソロネさんに怒られるじゃない。ふーん、まあいいわ。次! エタルドさん」


「はい。子爵様の魔術はとても凄いと聞きました。是非私達にお見せ下さい」

「僕も見たい!」

「私も見たいです」

「お願いします!」


「わかった。だが教室の中で魔術を使うと、危険だ。それに、所長先生に叱られるので、外に出よう」

 お袋さんが笑いながら肯いた。外に皆が出る。


「では、魔術を見せよう。ソフィア、兄の元に」

「はい」


 一層眼力を込めているパルシェを振り切って、いそいそとソフィーが寄ってきた。


「えっ? お兄様」

 ソフィーを横抱きに抱え上げる。


光翼鵬(アーヴァ・ガルダ)!】


「とっ、飛んだぁぁ……」


 子供達の声を後に、空に舞い上がった。

 見る間に高度を100ヤーデン程とって、城を見下ろす。

 下に向かって、手を振る。


「お兄様……」

「どうだ、ソフィー寒くないか?」


「寒くはあり……いえ、やっぱり寒いです」

 ソフィーは、ぎゅっと抱き付いてきた。


「急に来て悪かったな」

「良いのです、お兄様は風なのです」

 ん?


「何物にも囚われないで下さい」

 大人びたことを言う。


「そうか。ではそろそろ皆も満足したことだろう。降りよう」

「あぁぁ、お兄様、もう少しこのままで……」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/07/22 僅かに加筆

2021/09/11 誤字訂正

2022/01/31 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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