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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
13章 英雄期I 血脈相承編
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298話 母という人

息子にとって、母ってのは、女親という側面しか見えてなくて、意外にどんな人間かって知らない。特に若い頃は見ないようにしているところがある気がします。

「そうか。もう元締め……バロック殿に薬草を頼んだのか」

「はい」


「相変わらず手回しが良い。では、クリス説明せよ」

「はっ!」


 エルメーダ城の応接室に、親父さんと家令クリストフ、我が方はモーガンに、サラ、魔収納から取り出したゴーレム・ガルが向かい合っている


「新薬の臨床経過は順調とのこと、お喜び申し上げます。ではご依頼のありました、工場の予定地について説明致します。こちらの地図をご覧下さい。第1候補ですが、ルタールと申しまして、場所はこちらです」

 クリストフが、地図の一点を指した。


「ここエルメーダより、4ダーデン(3.6km)程南東にございます。立地としては勾配の緩い台地となります。なお、この敷地は、現在は我がラングレン家の私有地にございます」


 ああ、あそこか。ガスパル家の借財のカタとして差し押さえられたというより、無理矢理担保として、押し付けて完済としてしまった場所。

 ゴロゴロと岩が点在し、資産価値は無いも同然。親父さんが領主就任後、商人に泣き付かれて、本来の返済額の半額で買い上げたと聞いている。


「地盤は石灰岩で、堅牢です。30年程前までは石灰岩を切り出す露天掘りの鉱山がありましたが、現在は廃鉱になっております。広さは凡そ80レーカー(32ha)ほどです」


 横にいるモーガンの眉間に皺が寄る。

「お訊きしてもよろしいでしょうか?」

「何でしょう。モーガン殿」


「当方と致しましては、貴領の水を利用することを目的としております。しかしながら、同地につきましては、メルディス川から2ダーデン。その支流にしても、候補地からざっと、1ダーデン程離れておりますが」


 つまり、水の手が利用しづらいと抗議しているのだ。硬水の継続的入手が我々の第一優先事項だからな。


「仰る通りですが。水につきましては、問題ないと考えております」

「と仰いますと?」

「実は、モーガン殿が示されました、この支流ですが。地図上ではここが源になって居りますが。ここからは地下水脈となって居りまして。その先は、ルタールの廃鉱山に繋がっております」


 ほう。

 確かに方向は合っているな。


「ふむ。つまりルタールの地下に水脈があると言うことでしょうか?」

「その通りです」


「ほう、地下水脈か。硬度が高そうだな」

「ここの土壌だとそうですね」


 親父さんと、クリストフがゲドの会話に視線を向ける。


「ああ、この男は、うちの技術顧問のゲドネスです」

「よろしくお願いします」


「ゲドネス殿。よしなに」


 クリストフがまじまじと見ている。

 改良はしているがゴーレムの違和感か。それとも、目立たないようにエルフの特徴を抑えて人族に寄せて居るが、ハーフエルフ程度に見える所を気にしているのかも知れない。


「父上」

「何かな」

「工場を設置するに当たっては、整地やら地盤の強化などが必要になってくると思いますが」

「そうか。結構時間が掛かりそうだな」

「ついては、私共でやってもよろしいでしょうか」

「ラルフがか?」

「はい。もちろん契約は……」

「あはははっは」


 突如親父さんが笑った。

「水臭いことを言うな。いずれそなたの物になる。我が私有地であれば、ラルフの好きにすると良い。私やクリスの承認を待つまでもない。良いな、クリス!」

「はっ!」


 うーむ。全幅の信頼を寄せられているというのも、却って気が引けるものだな。期待にも応えねばな。


「ああ、クリス。続きを」

「失礼致しました。次の候補地は……」


 廃鉱跡という所に、ゲドが気に入ったらしく、あとで見に行くことになった。親父さんの従者と共に。


     †


 話し合いはモーガンに任せ、お袋さんに連れられて御殿を出た。


 生徒を驚かせたいと言うので、勘の良いソフィーに気付かれないよう、かなり厳重に魔界強度を抑えて城の西曲輪に入った。


 エルメーダの城。

 今ではそう呼んでいるが、親父さんが領主就任前は館と呼ばれていた。それは、今の御殿がある南曲輪区画のみしか使って居なかったからだ。

 実は、ミストリア建国時において、エルメーダは国土の辺縁に位置し、メルディスの畔ということもあって、比較的交通の便も良く要衝の土地であった。軍事的な拠点として、ここ西曲輪をふくむ4つの区画を備えたなかなかの城郭だったそうだ。


 しかし、建国から時代を経るに順って国土が広がっていき、王都遷都に至ってエルメーダの地政学上の価値が大幅に下がってしまった。それからは国軍の駐屯も廃止され、国王直轄地から、戦功あった地方貴族に褒美として下げ渡されることになった。

 それ以前は結構人口もあったようだが、行政機能が現在のスワレス伯爵領都ソノールや、バズイット伯爵領バズイールに集約されていったことに伴い、山勝ちな地勢が祟り平地の多い両都市に流出していったそうだ。


 俺の6代前の先祖が、男爵となりエルメーダに入った頃には、破却はされていないものの南曲輪を除いては木々が生い茂り、御殿も壁を除いて崩れてしまっていたようだ。それを、ご先祖達が営々と整備してきたそうだが、ガスパルの一族が領主となってからは、また荒れるに任せるようになってしまったらしい。

 土地など、人の手が入らなくなって、荒れ始めれば、あっという間に自然に戻ってしまうのだ。


「ねえ、ラルフ」

 考え事をしながら歩いてると、先導したお袋さんが振り返った。


「はい」

「気持ちの良い場所になったでしょ、ここ」

「はぁ」

 まばらに木立があるが、城内としては広々とした場所だ。土地だけはあるからな。


「生返事ね」

「すみません」

「まあいいわ。前は、ここが嫌いでねえ」

「は?」


「今だから言うけど。私、エルメーダの城に入って幻滅していたのよ……ああ、あの人(親父さん)には言わないでよ」

 そうなのか。あの頃は、領主夫人になって張り切っていると見ていたのだが。


「でも、瓦礫や草に埋まったここをラルフが整地して、瓦礫を全部綺麗にしてくれたお陰で、誇りが持てるようになったの」


 確かに、ここ西曲輪と東曲輪は、俺が魔術を駆使して整備した。魔収納魔術を使えば大した労力は要らないからな。ガスパル家が、見栄を張って、それなりに整備していた南曲輪はともかく、ここはかなり酷かったからなあ。しかし、あの時の状況では親父さんは城の整備などに金を使うなど考えられなかった。やるとしても、町や領地への投資の後回しになって、10年先だったことだろう。


「そういうものですか」

「勘違いしないでね」

「はっ?」

「綺麗になったから、誇りを持ったわけではないのよ。ラルフが綺麗にしてくれたからよ。まあ、そのぅ……ありがとうね。ラルフ」

「はい」


 少し笑いながら答えると、お袋さんは、そっぽを向いた。


「本当は、北曲輪も更地にして王宮のような庭園が作りたかったけど」

 樹齢の長い樹木が多かったので、親父と図ってほぼそのままにしたがご不満のようだ。

「ああこれも、内緒だからね」

 肯くと、うろんな目線を向けてきた。


「着いた。ここが、学問所よ」

「はい」


 ああこれか。

 見覚えのある古びた石造りの館だ。高祖父の頃に建てたらしい。大きさとしては、ざっと俺の王都本館程度だ。俺が見たというか、この辺りを片付けた時には、壁と屋根が一部崩れかかっていたが。補修したのだな。


 玄関を入り、廊下を歩く。

 ほう。石灰岩の壁に、大理石の床だ。大した価値はないと思うが、よく磨いて手入れされているようで、歩いて居ると気分が良い。


「ここは職員室よ」

「はあ」

 中に男女1人ずつが座っている。


「叔父上!」

 リノン・パロミデス。お袋さんの末弟で考古学者のはずだが。なぜここに居る?


「いやあ、ラルフ君……じゃなかった、子爵様」

 あたふたしだした。


「ラルフでいいですよ、甥なんですから」

「いやいや。そういうわけには。私は平民だからね。じゃ、じゃあ、ラルフ殿で」


 平民。デボン伯父貴が准男爵(パロミデス)家を継いだから、間違っては居ないが。


「はい。そうか! 叔父上は、学問所の教諭になったのですか?」

「あっ、ああ……そうなんだ」

 なぜか少しバツが悪そうだ。


「お父様が領主に成られたときに、リノン……先生はラングレン男爵領に点在する遺跡の発掘許可が欲しいて言ってきたのだけど。交換条件で教諭になって貰ったの。歴史と地理を担当して貰っているわ」

 可哀想に。お袋さんに引き摺られているのだろう。


「ああいや、ラルフ殿。そんな顔しなくとも大丈夫だ。ちゃんと報酬は貰ってるし。遺跡を発掘するにも先立つ物が要るからねえ」


 そうだな。

 発掘するときは、作業員や罠回避の斥候役、用心棒などなど。冒険者ギルドにたくさん依頼が出るとサーシャさんが言っていたな。逆に言えば発掘には金が掛かると言うことだ。


 叔父上も根っから学究肌だからなあ。金儲けは巧いとは思えない。

 金のない学者は、首がないのと同じ!

 エリザ先生がそう言っていたが。間違っては居ない。自分の望む研究ができる学者は、研究費を稼ぐことができる学者だということだ。希に研究費の方が寄ってくる幸せな学者も存在はするそうだが。


「はい」

「そうよ。いくら弟でも、道楽ばっかりしてる男にお嫁さんなんか、お世話できないわよ」

「姉さん!」

「所長よ!」

「ああ……そうでした。所長」


 大変だなあ。

 ああ、リノン叔父は俺の10歳上、26歳だ。

 でも、もし結婚したいなら、悪いことは言わないから、お袋さんになんか頼らず自分で探すことをお奨めします。

 そう心の中で警告したが、伝わっただろうか? 無理かな。


「そして、こちらがエーダイン・パピオーヌ先生。語学担当兼主任教諭をお願いしています」

「初めまして、子爵様」


 背が高く痩せており、顔付きが厳しそうな感じだ。彼女がお袋さんの手紙に書いてあった優秀な教師なのだろう。


「初めまして。ソフィアのこと、よろしくお願い致します。ところで、パピオーヌというと」

「はい。宮廷男爵の娘です」

 男爵は先の国立王都大学の学長だったと聞いたことがある。有名な学者一族だ。


「ほう。それは、それは」

「あら、ラルフ知っているの?」

「いえ、男爵と会ったことはありませんが。有名なので」

「そうなの。伯爵様にお世話戴いてね、ご縁があったの。ああ、エーダインさん。仕事に戻って戴いて構わないわ」

「はい。所長」

 伯爵とは無論スワレス伯爵様のことだ。


 会釈すると、席に戻っていった。

 その時、鐘が鳴った。


「もう2時だわ! はやく、教室に行かないと」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/07/18 言い回しの変更等、加筆。

2020/09/15 誤字脱字(ID:1797755さん ありがとうございます)

2021/02/16 時刻間違い10時→2時(ID:2013298さん ありがとうございます)

2022/01/31 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2025/05/06 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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