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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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288話 表彰式

表彰式とか交歓会とかは、まあ良いんですけど。なんか嫌なのは、表彰状の表彰理由の文言を被表彰者に書けとか言われることですかね。大人に成って技術系だと、表彰者が内容をしっかり把握できていないてのがままあって……

 迷宮から地上に戻った4時間後、俺は王宮の大広間に居た。

 それだけ時間があれば一旦宿舎に戻りたかったのだが。

 控えの部屋に通されて、しばらくお待ち下さいと言われただけだったので、そんなに待たされるとは思わなかった。それに部屋の外には、兵が2人扉の脇を固めているのが魔導感知で分かる。実質軟禁されていたも同様だった。


 ようやく今から30分程前になって、大会委員会主催の式典が始まると言われた。その時に礼服の貸衣装を持って来たが、いつものように衣装は魔収納に何種類か入れてあるので自分の礼服に着替えた。

 そして、10分前に会場である大広間へ案内されたのだ。まあ過ぎたことを言っても仕方ないが、どういう理由でそうなったのかは知りたいところだ。


 広間の奥には2段の舞台があり、下段に委員会の者達と、やはり礼服に着替えたエゼルヴァルドが昂然と胸を張って並んでいる。礼服は仕立ても良く高級そうで、体型にもぴったり合っている。彼も予め礼服を用意していたのだろうか? それはともかく、彼の胸にも百合の花が飾られている。俺のと違って普通の造花だが。


 段の下には本戦出場者が並んでおり、真ん中辺りにリウドルフが居た。無事帰還できたようでなによりだ。少し離れたところにヒルディーとバーレイグも居るところを見ると彼らも表彰されるようだ。


 さらに後方右側には、招待されたのだろう着飾ったアリーにやはり礼服姿のアストラがいる。俺と目が合うと、嬉しそうに手を振っている。状況は伝わっているようだ。


 横の扉が開き、武官が入って来た。

 ようやく式典が始まるようだ。

 その後は、威厳のある文官が続く。見知った外務大臣テッサロス卿が含まれているところを見るとプロモスの閣僚達だろう。段上に並んだ。


【これより、光神暦381年カルヴァリオ(聖君試練)の結果報告ならび優秀出場者表彰式を執り行います。エレニュクス・プレイアス・ラメーシア・デ・プロモス女王陛下御入来!】


 ここに来てすぐ練習させられた通り、下段と段下の者が跪く。


 先日お目に掛かった陛下が、ゆっくりと段上に上がり、仮設玉座にご着座された。

 それを見計らって立ち上がる。


【実行委員長より、大会経過を報告致します】


 2人隣に居た男が硬い表情で前に出て、拡声魔導器の前に立つと会釈した。


【謹んで報告致します。まずは本大会の後援を戴きました女王陛下ならびに……】

 まずは女王と次々に来賓の名を読んで礼を述べ、報告が始まった。

 予選経過、本戦出場12人、2日目進出者7人の紹介があった。


【……2日間の試練にて負傷者は出ましたが、死者は発生致しませんでした。聖君レヴェック陛下の思し召しと存じます。以上で経過報告を終了致します】


 委員長は、再び会釈すると列に戻った。


【それでは、今大会の被表彰者をご紹介致します。表彰対象は、試練克服者1人……】


 会場がざわついた。

 もしかして、今まで結果が告知されていなかったのか。


【そして、入賞者1人でございます。まず、試練克服者。ラルフェウス・ラングレン子爵様】

 一歩前に出て会釈する。

 今度はざわめきが上がった。

 先程は単純な驚きだったが、俺が紹介されて半分は落胆だったな。


【女王陛下の御前にございます。ご静粛に!】

 司会の声にやっと静まる。


【続きまして、入賞者。エゼルヴァルド・メルヴリクト子爵様】

 呼ばれた男は、一歩前に出て会釈した。


【それでは表彰式に移ります。試練克服者、白百合捧呈。陛下、ご準備願います。克服者の証である水晶白百合を女王陛下に捧呈戴きます】


「はっ!」


 俺はゆっくりと前に出ると、胸に付けた水晶細工の造花を外して陛下の前に進み出る。

【捧呈致します】


 片脚を引くと、両手を揃え頭上に掲げる。


【克服者よ、殊勝なり!】


 俺の手から、陛下が百合を摘まみ上げた。

 そして、そのままの姿勢でしばらく待つと、打って変わってずしりと重みのある物を乗せられる。

 掲げたまま2歩3歩下がり手に掴む。


 鞘に入った剣だ。

【ありがたき幸せ】


 顔の前に携え、振り返って招待客に見せると大広間が拍手で包まれた。


     †


 エゼルヴァルトや本戦出場者も表彰され、式典が終わった。

 そのまま15分程で交歓会が始まるそうだ。よって皆は、交歓会会場に移動しているのだが、俺は控え室に入った。宴の途中で呼び込まれる演出だそうだ。

 まもなく、広間に来ていたアリー達が合流してきた。


 アリーが隣の椅子に座って、俺の手を取る。


「お疲れ様、あなた」

「うむ」

「どこも怪我してない?」

「ああ、大丈夫だ」

「そう、良かった」


 目が少し潤んでる。頭を撫でる。


「閣下、試練を克服された由。おめでとうございます」

 アストラが前に来て礼をする。


「交渉で有利になるといいがな」

「はい。閣下に稼いで戴いた得点を活かせるよう、皆と一緒に努力致します」


 うむ。俺だけが外交しているわけではない。

 クラトスと違って、プロモスでの交渉の主役は彼らだ。外交官としての俺は、彼らが縦横に働けるようにするのが役割だ。


「頼むぞ」

「はっ! それで、あのう……」


「ああ、これか」

 拝領した剣を渡す。


「こっ、これは勿体ない」

 アストラは、式典で俺がやったように、一度押し戴くとしげしげと見始めた。


「ああ、さっき女王様にもらったやつね。よく分からないけど、良い物なのかな?」

「さあな」

 鑑定魔術によれば、細工は細かいが、ミスリルの拵えにミスリル鋼の剣身だ。それほど高価そうでもないし、魔導具でもなさそうなので余り興味を持てない。


「確か、聖君レヴェックが使って居た短剣、抜かずのパスガノンを模した物ですね。(つば)(さや)が紙縒りで結ばれています。造りもそうですが、これも伝承通りです」


 抜かず?

 確かに委員長から、鞘から抜かないで下さいと言われたが。


「伝承とは?」

「はい。聖君、罠に嵌まり大勢の伏兵に囲まれたそうですが。そのときに帯剣を折ってしまい、懐剣として持っていたパスガノンを使って切り抜けたのです。後にそのことを省みて、懐剣を使うような戦いはしないと誓って封印したとのことで」


「ほう」

 わからないでもないが、矛盾があるな。


「でも、未練よね」

「奥様?」

「だって、懐剣を使わないと誓ったんだったら、封印じゃなくてきっぱり捨てれば良いんじゃない?」

「はっ、はぁ……」

 アストラが、目を瞬かせた。


「えっ。何?」

 頭を撫でてやると、アリーがこっちを向いた。

「俺と考え方が似てきたなと」

「そりゃあ、夫婦だもの」


 アストラが強張っているので、この辺にしておこうか。

 おっ!

 ノックだ。入って来たのは、ジョスラント大使と取り巻きに一等書記官のユーリンだ。


 大使は大股でこちらに歩いて来た。不機嫌そうに。


「ラングレン卿! 大変なことをしてくれたな!」

「はて?」


「プロモスの貴族達は、【ラングレン卿に面子を潰された】と怒っている。そのような単純なことが、なぜわからないのだ?」

 反論する気にもならんが、鬱陶しくなってきた。


 ジョスラント大使の凄い剣幕にも意に介さず、立ち上がり足を退いて略礼する。


「なっ、なんの真似だ?」

 視線が自分に向いていないことに気が付いたのだろう、ジョスラントは振り返った。


「こっ、これは」

「ジョスラントと申したな。そのように恥知らずな我が国の貴族とは誰なのか。訊かせてみよ?」

 ラーツェン語だ。言い逃れできないようするためか。


「あぁああぅああ……しっ、失礼致します」

 あたふたと礼をすると、ジョスラントは慌ただしく退室していった。


「まあ、訊かなくても、大体想像は付くが……」

「我が国の大使が、とんだ粗相を。お詫び申し上げます」


「構わぬ。それより、ここに来たのは母上より伝言があるからじゃ」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/06/10 誤字訂正、出だしの文章順序、くどい表現変更。

2020/06/12 誤字訂正(ID:118201さん ありがとうございます)

2021/02/16 誤字訂正(ID:2013298さん ありがとうございます)

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

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