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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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282話 焔を制する者は

焔を制する者は……と書いて、なんか中華料理ぽいことに気付いた。

【あれは……反則ではないのですか?】


 母上(女王陛下)は、大きな鏡を見ながら首を傾げた。そこには迷宮の広間を俯瞰する映像が映し出されている。


【分かりかねますが、ヒルディー選手の胸の魔導具は黄色止まりでした。したがって、あの魔術は威嚇であり、失格に達する程ではなかったと判定されたということかと】


 事前に委員会の者からそのような説明を受けた。

 確かに紅いとまでは言えない色だったわ。


 しかし、これをいつまで視ているつもりだろう。

 母上をはじめ、この広間に集った者達は、興味深そうに大きな魔導鏡に映る光景を見続けている。


 まあ私と母上は、時々小休止しながら茶を喫したりしているが。


【そうですか…………あの方にも困ったものです】


 ん? あの方?

 誰のことかしら? 母上が敬称を付けるとすれば、亡くなった御先代くらいのものだけど?


【ああ、ようやく橋に気が付いたようですな】

 橋ですって?

 私は、魔導鏡に目を凝らす。


【おお、本当だ。渡り始めましたな】


 迷宮の広間を分かつ、大きな溝。

 その深さは、底知れぬ。

 なのに、なぜか空中に降り立ち、少しずつ溝の中程に向け歩み始めた。


 なんと! あそこに、不可視の橋があるらしい。


 なるほど。

 その橋の上に、小石や塵が積もっていた。さっきエゼルヴァルドの同行者が撃った魔術で、壁から散った物らしい。

 今渡っている者はそれに気付いたのだろう。


 あと5ヤーデン、3ヤーデン……ついに渡りきった。

 その男が魔導鏡に大きく映し出された。


【ハーフエルフですな】


 誰かの言葉通り、そう見える。

 大溝の手前に屯した者達に、野卑な容貌の男が腕を上げている。

 広間には歓呼の声が響いていることだろう、ここには届かないが。


 すると、何やら諍いがあったように見えるが、エゼルヴァルドを先頭にぞろぞろと、橋を渡り始めた。


【例年ですと、気が付くのにもう少し時間が掛かるのですがな】

【左様、左様。時間切れまで気が付かぬ年や、無謀にも飛び越そうとして半数が溝に落ちた年もありましたな。いずれにしても今年は退屈せずに済みそうですな】


【それにしても……】

【んん?】

【あのミストリアの者が、飛行魔術を使えるとは……】

【我が国の歴代上級魔術師でも片手でも満たないのだが】


 そうなのか。

 ふむ。彼らも少しはラルフを認めたようだわ。

 先程、ラルフが溝に落ちず渡ったときには、皆響めいたものね。


【まあ飛べたからと言って、それが超獣に優る決定打とは成りませんが】


 ん?

 列侯の賞賛の中、憎々しい表情を隠さない者が居た

 ヘルテイト少将……。


     †


 迷宮第3層。

 曲がり角の手前で、足が止まった。

 この先に何か居る。


光壁(オーラ)


 角を曲がるや否や、半透明の魔術障壁が、高速で飛来した猛烈な炎を遮った。

 その炎越しに敵魔獣が見えた。デミ・サラマンダーだ。

 1.5ヤーデン程もある火蜥蜴の亜目が大口を開けて火焔を噴き出し続けている。


「ここで熱魔術使うんじゃない」

 無意味な怨嗟を口にしつつ、最近覚えた上級魔術を思い浮かべる。


焔雷遷移(フォンゼーベック)!!】


 右腕を伸ばした斜め前方に、紫に昏く光る拳大の珠が浮かんだ。掌を前に翳すと、珠が同期して動いた。


 ふむ。

 珠が焔を吸い込み始めた。バチバチと蒼白い稲妻を時折放ちながら、珠が徐々に大きくなっていく。


 実戦では初めて使ったがうまく行っているようだ。焔だけではなく、周りの熱を奪いながら冷気すら漂わし始める。


 俺は再び歩き始め、デミ・サラマンダーに近付いていくと、鞭打つような打撃音を上げながら魔珠から床に向けて眩い電弧(アーク)を頻繁に飛ばす。熱電変換して有り余る電力を放電しているのだ。


 やつは自らが吐く焔が吸い込まれるのに驚いたのだろう、火力を増したように見えた。が、何の効果も出すことは無く、全ては紫の魔珠に吸い込まれていく。


 やがて焔の湧口まで魔珠が到達すると、瞬く間に火蜥蜴は白い霜に覆われた。数秒も経たぬ間の甲高い音と共に弾け飛んだ。

 魔獣の体温すら奪って氷結させた挙げ句、僅かな衝撃で崩壊させたらしい。


 腕を降ろすと魔珠は床の中に消えた。この魔術はなかなか使えそうだな。


 既に見えている突き当たりまで歩くと、書かれている古代エルフ語を読む。


「焔を制す者は全てを制す……」


 またしても意味不明な文章だ。

 不可視の橋の手掛かりは結局不用だったしな。

 視線を降ろすと消えていた魔石の縁に鏤められた小魔石達が眸と光っていた。4箇所目だ。


 背後に気配──


【リウドルフ!】

 声の先には、誰もいない。

 が、数秒後通路の角から、ハーフエルフが姿を現す。


【バレたか。いやはや、すげーなラルフは。全く勝てる気がしねえ……魔術ではな】


【何の用だ?】

【用? ああいや。さっきの大溝の礼を言いたくてな】

 とってつけたような返事だ。


【礼ならば、氷塊を撃った貴族に言うべきだろう】


【は! 冗談じゃない。誰があんなやつらに。それより、あんたが言った目に見ゆるばかりがっていう手掛かりがなければ、あの魔橋に気が付くのが遅くなってたさ】


 ふむ。本当に良い耳をしている。

 20ヤーデンも離れた俺の呟きが聞こえるんだからな。


【130ヤーデン戻って右に曲がれば、下の階に行けるぞ】


【知ってるさ。1度第4層まで行って、あんたが居なかったから戻ってきたんだからな】

【物好きだな】


【教えてくれ! 古代エルフ語の文章は、あの魔橋のことだったのか?】

【答えてどうする。リウドルフには読めないんだろう】


【それはそうだが。おかしいだろ、さっきのサラマンダーのような強い魔獣が守っているのは、袋小路ばかりだ。ラルフ、あんたは何を知っているんだ?】


 鋭いところもあるじゃないか。

【答えてやる義務はないな】


 擦れ違うと追いすがるように追いかけてきた。


    †


 数分も歩くと、通路の先に下に続く階段が見えてきた。


 かなり広い空間だった。向こうの壁までは、ざっと100ヤーデン程あるようだ。その間は、整然と等間隔に1ヤーデン強の石柱が立ち並んで天井を支えている。


 それに沿って進んで居ると、やがて壁に突き当たった。

 切石を積み上げた無骨な擁壁。左──


 人間の気配にそちらを向くと、篝火が焚かれた側に3人が居た。エルフ貴族達だ。

 どうやら食事の準備をしているようだ。と言っても魔導鞄に入っている食物を出すだけだが。


【随分遅かったな。我らより10分も先行したにも拘わらず】

 エゼルヴァルドが嫌みを言ってきたが、そのまま通り過ぎる。


【貴様!】

【まあ待て。人間族など、話しかける価値もないわ!】


 10ヤーデンも進むと、目当ての物が見つかった。

 重厚そうな青銅の扉が閉じている。


【この先、第5層。扉が開くまで待て】

 そう大書されている。


【実行委員会の係員が言っていた通りだな】

 扉の上方の壁に、いくつもの孔が空いており、そこに燈明が点っている。

 その数、11。その左に消えた燈明が5つある。


 リウドルフの言った通り、全ての燈明が消えた時、つまり明日の6時に扉が開くのだろう。

 横目で見ながら歩き続ける。

 運営委員会の係員はやはりいない。説明通りだ。首から提げた魔導具様々だ。



【ところで、ラルフ。どこまで行くんだ?】

【いつまで付いてくるんだ?】


【へっへへ。何かあんたに付いていくと、得になる気がするからな】


 睨み付けるが、全く意に介す兆しがない。

 左に曲がって柱を回り込む

光学迷彩(アオゥラト)


【おっ、おい。ちょっと! どこ行きやがった!】

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/05/20 誤字、サラマンダーの表記統一

2020/05/21 リウドルフを撒く僅かな表記を追加

2022/08/03 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2025/05/06 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)


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