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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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281話 渡らざる橋

飯田線じゃありません(現地人か、鉄分濃い人しかわからないこと書くんじゃない>小生)。一条戻橋とかもありましたね、橋は日常に密接関わっていますねえ。(今日は不調です。済みません)

 カルヴァリオ(聖君試練)開始より1時間30分経過。

 ようやく下に続く階段を見付けた。

 結構掛かったな。まあ5箇所程袋小路に突き当たったからな。


 いままで、探知魔術に頼りすぎていたな。反省だ。

 第2層の床に着いた。

 見た目は上層とかわりないが、何か湿っている。


 少し進むと分岐があり、左に曲がる。

 

燈明(カンデラ)

 またもや薄暗くなってきたので、明るくする。


 一本道を100ヤーデンも進むと、またもや床や壁が岩壁の坑道に変わった。

 やっぱり、こっちが行き止まり、つまりはずれか。


 はずれを敢えて探査しているのには当然訳がある。

 ひとつ目は、辿り着いた行き止まりの一部に、書いてある古代エルフ語の文章が気になることだ。できるだけ多く見ておくに越したことはない。


 ふたつ目は、第5層に進むことができるのは、明日の6時以降だからだ。まだ14時間半もある。その前に、6時間半以内に第4層に進まないと失格になるが。なぜだか焦る気にならない。


 俺はこの迷宮を舐めているつもりはない。むしろ逆だ。

 違和感が多すぎて、何やら引っ掛かるのだ。


 魔力?

 右の壁──掌が反射的に遮る。

 射出された石筍は、掌の手前1リンチで速度を喪って虚しく足下に落下した。

 無論、魔術障壁が覆っている、素手で止めたら大怪我だ。


 その後も、一歩進むと左、次は右と石筍が飛来する。

 まあ中級冒険者でも油断しなければ避けられる……はずだ。嫌らしく頭、腰と高さを変えて来ているが。全身に巡らした魔障壁を破れはしない。


 ただ大分手前から行き止まりが見えているのだから、敢えて近付こうとする物好きは俺ぐらいのものだろう。今度は頭上から石筍が降ってきたが、全てはじき返した。


 壁前まで来たので、古代エルフ語の文章だけを読む。


「目に見ゆるばかりが、進む路とは限らず……ねえ」


 何やら古代の聖者達が交わす問答のようだな。戻りながら文章の意味を考えてみる。

 数分経ったが、さっぱりわからん。


 坑道が終わるところが見えてきた。もう灯りは要らないか。

解除(ハールト):燈明】


 ん? 光っている?

 暗くなって気が付いた。

 右端の板、その刻を告げる大きな魔石ではなく、その周りに鏤められた小石達がうっすらと光っているのだ。よく見ないとわからない程だが、隣の板と比べれば明らかだ。


 いつ光り始めたんだ?

 最初は光っていなかった。

 今より明るい広間ではあったが、受け取った時によく見たからな。間違いない。


 では、いつからだ?

 ふむ。

 大粒の魔石が消えたときも見た。その時に光っていたら相対的な明るさで気が付くはずだ。ということは光り始めたのは、ここ30分以内。


 他のは?

 残る板7つを確認すると、大粒魔石の周りに小粒魔石が鏤められている板は8枚中5枚。さらにもう1枚の板に小粒魔石達が光っていた。その板は大粒の魔石がまだ光っているので、気が付きにくい。


 ふむ。何かの条件が2つ満たされたのか?

 分からないが。まだ小粒魔石が光っていない板は3枚ある。これからは注意深く見ていれば光り始まる時が認識できるだろう。


     †


 その後、行き止まりにいくつか行き着いたが、罠があったところで、小粒の魔石がぼんやりと点灯した。

 どうやら、本当のはずれのもあるが、何かしら意味のある行き止まりもあるということらしい。


 そして、小粒魔石点灯の板が4つになった時に、第3層に降りる階段を見付けた。

 降りて進んで行くと、俺以外の選手と何人か擦れ違った。そこそこ追い付いたようだ。


 そう思っていると、大粒魔石がひとつ消えた。あと3時間でひとつ下の第4層に到達しなければならない。


 この層でも、いくつかの行き止まりに辿り着いたが、いずれも罠はなく、小粒魔石は新たに光ることはなかった。

 そこで、ある異変が起こった。


 選手がある場所で屯していたのだ。数十ヤーデン手前から、気配は感知していたが、そこへしか通路が残っていないので近付く。


 差し渡し20ヤーデン程の広めの空間に出た。

 そこに6人ばかり選手がいる。


【おお。やっぱり、あんたも来たか。遅かったな】

 ハーフエルフのリウドルフだ。

 エルフ貴族達も居た。


【ああ】

【見て見ろ。あの溝】


 リウドルフが指差す先に大きな溝が口を開けていた。

 それは部屋の中央で、端から端までを占めている。

 向こう岸までは10ヤーデン。溝の中はどこまでも暗く、深さは窺い知れない。


 なるほど。

 ここに居る者達は、向こう岸まで渡る術が思い付かずここで止まっているのか?

 だが大した距離じゃない。

 身体強化魔術を使えれば余裕だが、皆が二の足を踏むのは……。


【あれが邪魔しているのか?】

 溝の上空、天井を指差す。


 薄衣のような魔術障壁が、幾重にも天井から垂れ下がっている。

 溝を跳び越えんと放物線軌道を描けば、接触は避けられない。それぞれは微かな抵抗だろうが、何枚か通り抜ける内に速度が減殺され、向こう岸まで届かなくなると言う寸法だ。嫌らしい罠だな。


 リウドルフがにやっと笑った

【ふん。見ただけで気が付いたか。さっき飛んだやつが居たが、あれに引っ掛かって溝に落ちた。ああ、そうだ。アールブとか言ったな】


 ああ。

【なんだ、知ってるヤツか?】

【すこし絡んだだけだ】


【しかし、ここまで来て、こんな障壁が待っているとはな】

【だが毎年ここを突破している選手はいるのだろう?】

 何かここを突破する術はあるはずだ。


【そりゃあそうだが。そういや、ラルフ。行き止まりの路を全部回っているんだろ。ここ以外に、他に路はなかったのか?】

 リウドルフは、あわてて口を押さえた。


 だが、聞き咎めた者がいた。


【なんだと、聞き捨てならんな。どうなんだ、人族?】

 エルフ貴族達が他の選手を掻き分け、こちらにやって来た。

 あいも変わらず居丈高だ。


【気になるなら、自分で確かめれば良かろう!】

 当たり前に返す。


【なんだと、エゼルヴァルド卿に失礼であろう】

【まあまあ、ヒルディー殿。落ち着かれよ。抜け道を見付けているならば、ここに来るわけはない】

 ふむ、やはりこの男は要注意だな。


【なるほど、バーレイグ卿の言う通りだ】


【やはり、人族など使えぬわ! あっはははは!】

【確かに、ふははっはは……】

 エゼルヴァルド達の嘲弄に答えたわけではないが、俺は数歩前に出た。


【なんだ! 貴様、我らに手向かいするか!】

 ヒルディーとかいった、貴族が俺に杖を向ける。


 俺は罵声を無視して3人の前を通り抜け、溝の縁まで来た。しかし意に介さず、そのまま踏み出す。


【なっ!】

【馬鹿な! なぜ落ちぬのだ?!】


 俺は水平に移動する。ここで時を費やすのは無駄だからな


【飛行魔術だと!】

 バーレイグの声だ。


【飛行魔術? ミストリアの上級魔術師という噂は本当だったのか】

 存外、噂が伝わってきているようだ。


 溝の中程まで来ると、空間的な異常に気が付いた。

 といっても、俺を邪魔する物ではない。むしろ逆だ。


 異常……右下を見ると、魔術障壁が張られていた。溝の縁から対岸の縁まで繋がっている。

 橋か。

 あれだけの強度があれば、その上を歩いて渡ることが可能だろう。


 ふと脳裏に浮かんだ、古代エルフ文字の文章を口にしていた。

【目に見ゆるばかりが、進む路とは限らず】


 そういう意味か。

 やはり、あの文章は迷宮攻略の手掛かりらしい。


 そう考えて居る内に、大溝を渡りきった。

 床に降り立つと、向かって右側、壁にぽっかりと空いている通路の方へ向かう。流石にあの橋を教えてやる程、俺はお人好しではない。


【貴様! 1人だけ卑怯だぞ。戻って来い!】

 はあ?

 余りの言い分に思わず振り返る。ヒルディーとかいうやつだ。


【まあ、待て。戻ってきて、我らをそちらへ渡せば、褒美を取らすぞ】

 話にならん。

 こいつら、庶民は貴族の命令を聞いて当然とか思っていないか?


 そう言う、俺も今では貴族の一員だ。

 責務は果たしていこうとは思っているが、なんとなく身分というよりは職業という感覚だ。


【貴様! エゼルヴァルド卿を無視したな! …………グレデムド クリオス!】


 ヒルディーが杖を揮うと、拳大の氷塊が撃ち出された。  

 唸りを上げて飛来するが、罠の石筍の方が速い。無論その行方など撃った瞬間にわかる。


 なので、魔導障壁を張った。

 氷塊は俺の頭上の壁に当たり派手な破裂音がした。


【ははは! 慌てて魔導障壁を張りましたよ、当てるわけ無いのに。臆病なやつだ!】


 見えないのか?

 壁を壊して飛び散る、小石や礫を。俺の周りを避けて飛んでいるのだが。

 しかし、幸運なやつらだ。


 弾けた塵が、溝にまで飛び散ったからな。


【おい見ろ! おかしいぞ、あそこ。何もないところに、石が!】


 俺は、踵を返して昏い通路に歩を進めた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/05/16 誤字、細々訂正

2020/05/19 明日の8時以降だからだ→明日の6時以降だからだ

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

2025/05/06 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)

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