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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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277話 ラルフ 凶悪になる

出すぎた杭は打たれないと言う名言(松下幸之助)が有るそうです。成ってみたいですねえ……。

「やっぱり!」

 皆が、旦那(ラルフ)様を攻撃しようとしている。

 開始の笛と同時に、旦那様の周りにいた出場者が、腕や杖を一斉に向けたのだ。


「何で?」

 なぜだか、旦那様は身動き1つしなかった。このままでは、集中攻撃を受けてしまう!


 そして、数秒後には現実となった。

 轟音が上がり、炎や何かの塊が輪の中心に殺到した。


 1発1発は、大したことない攻撃魔術でも、何十も束ねられては……。

 しかも間断なく、まるで仇でも討つように一気呵成だ。


 旦那様の周りは熱か蒸気か、半球状に白く煙っていて姿がみえなくなった。


「あぁぁ……」

 力なく声が吐息に変わりながら、私は腰を下ろした。

「班長!」

「気をしっかり持って下さい」


「はっ? 何が?」

「えっ?」

 10秒も、煙っていただろうか。誰とはなく旦那様に集中していた攻撃が途切れた。

 遠雷のような(こだま)が消えると、水を打ったように静かになった。

 攻撃をしていた魔術師達が、肩で息をしている。


 風が吹いて、旦那様が姿が……見えた!


 やっぱりだ。

 笛が吹かれる前と、何も変わっていない。

 あれしきの攻撃では、旦那様に傷一つ付けることは叶わない。


 まるで、何事もなかったよう……いや、有った!

 まずい──


「ふっふふ、あはっははは……」

 静けさを破ったのは、笑い声。無論その主は旦那様だ。


【ふっ、ふざけるな!!!】

 言葉は分からないが怒号が何度も飛び、再び攻撃が始まった。


     †


 やっぱり、俺に攻撃を集中してきたか。

 この規則では、強いやつ、目立つやつを先に倒した方が都合が良いからな。


 遅い。

 3秒以上経って、やっと火球が飛んできた。

 威力はそれなりだが。それも俺の1ヤーデン程手前で霧散した。反射的に光壁を張っていた。この程度、直撃してもどうということはない。

 しかし、来た来た!

 目の前が真っ白になる程、魔術が殺到してきた。

 爆発音がひっきりなしに起こる。

 

 10秒も経ったろうか。

 光が収まった。


 周り一面敵だらけ──

 腹の底から笑えてきた。


 呵々と声が出た。

 それが疳に障ったようだ、再び魔力の奔流が轟轟と飛来する。

 が、先程よりも短い秒数で、消え失せた。


 攻撃に参加した20人余りは、どいつもこいつも肩で息をしている。

 つまらん。

 さもしい戦術を採る輩は、実力も比例するらしい。


 さて、潮時か。

 俺が攻撃しなかったのには理由がある。けして余裕が有り余っていたからではない。


気尖(スピアー)!!】


 俺の放った衝撃波は、凄まじい破裂音を残し、全く敵のいない真上に向かって飛んで行った。


 ふむ。やっぱり強過ぎるか。直撃なら殺しかねん。

 最近は下級魔法ですら、この調子だ。精々魔力を絞らないとな。

 3発ほど空に撃って調整、これなら──


【|気尖!!】【|気尖!!】【|気尖!!】………………  


 腕を水平に突き出し、身体を捻りながら十連射すると、轟音は一繋がりに聞こえた。

 

 圧力波は、俺を中心にして爆発したように放射状に伸び、吸い込まれるように敵に命中していく。


 ある者は跳ね飛ばされるように円陣外に消え、またある者は後ろに居た者も巻き込んで転がっていった。


 遅れて砂煙が濛々と湧き立つ。

 1秒にも満たぬ時の狭間で13人もの選手が倒れ伏した。

 感知魔術に拠れば死人は居ない。まあ、あれだけ魔力を絞ったからな。それにしても他愛ない。


 ビィービィーと耳障りな音がしているので見下ろすと、首から提げた魔導具が明滅していた。

 ちぃ。もう俺の出番終わったようだ。


      †


「うわぁぁ……凶悪」

 隣にいたゼノビアが嘆息した。

 思わず彼女を睨みつける。


「あ、あぁぁ、失礼しました。かなり手加減されて、あの結果ですから、やっぱり御館様には超獣に立ち向かって戴かないと」

 ゼノビアがあたふたと言い訳した。でも旦那様が手加減しているのはわかったようだ。


 空に向けて撃ったのが、審判へ示威行為か、どうかわからないけど、流石に全力じゃないとわかるわよね。


 などと考えている内に、審判から予選勝ち抜け宣告されたようで、旦那様はとぼとぼと歩いて円陣の外へ出た。あちゃあ不満そうな顔してる。出迎えないと。


     †


「予選通過、おめでとう。あなた」

「「「おめでとうございます」」」

 競技場の外に出ると、アリー達が出迎えてくれた。


「ああ、ありがとう」

 答えた時、なぜかアリーが不審そう目付きをした。

「まだ予選は続いているが、皆は見なくて良いのか?」


「いやぁ、もう。御館様の魔術の後では……ああ、アクランに任せました」

 彼か。


「そんなことより……」

 アリーが俺の腕を取る。

「午後の本戦に備えて、どこかでお昼を食べましょうよ」

「そうしよう、皆も一緒に来い」

「「「はい!」」」


 返事が良いのには訳がある。

 宿の食事は余り皆の口には合わないようだ。宿の食事はエルフ向け高級料理なのだろう、野菜ばかりだからだ。味も上品で良いとは思うが、俺も含め皆若いからな。


 カゴメーヌにはエルフ以外の人間は結構居るのだから、肉料理を出す店もあるだろう。


     †


 昼過ぎ。

 円形闘技場に指定された時刻(13時半)に戻ると、素っ気ないというか、装飾が乏しい石壁の部屋に通された。そこには他の8人の男達が居た。俺が入って行くと一斉に視線が寄ってきた。睨み返すと、いずこかへ逸らされて行った。数対の視線を残して。


【では、空いている席にお掛け下さい。ああ、皆様。しばらくお待ち下さい。予選を通過された方が揃いましたので、実行委員長を呼んで参ります】


 俺を案内した係官が会釈して出ていった。


【けっ! 揃ったって言ったって、9人しか居ねーじゃねえか。俺達が汗まみれで戦っている間に、予選を免除された、お貴族様はきっと優雅に茶でも飲んでいるだろうよ】


 右端に座って居る男が毒づいた。魔術師にしては野卑で恰幅が良い。

 しかし、その発言には誰も乗らず、部屋は静かになった。

 ふむ。

 牽制し合っているのか、話し声はおろか咳きひとつ無い。知り合い一人もいないので、俺も黙り込む。


 5分程待っていると

 予選の審判陣を引き連れて、白い髭を蓄えたエルフが入って来た。


カルヴァリオ(聖君試練)実行委員長ミドガンです。予選を勝ち抜かれた皆様おめでとうございます。怪我人は出ましたが、今年は死者を出すことなく予選を終えることができました。ご協力に感謝します。では、本戦のあらましについて説明致します】

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/04/25 誤字脱字

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