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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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272話 ラルフ 見限る?

追い込まれたら意識的に笑うことにしています(道義的に問題ある場合を除き)。特に何かのリーダーやってるときは効果的だと思ってます。

 博物館に行った翌朝。9時30分。


「閣下……」

 事務官が部屋に入ってきた。

「どうした? パレビー」

「それが、クラトス外務省から使者が来られております」


 今から王宮に参内して、外務大臣に会う予定になっているのだが。

 応接に向かい、使者と会う。

 中に入ると、使者が立ち上がり挨拶してきた。

 この前、大臣の後に立っていた男だ。


「ラングレン閣下。おっ、おはようございます」

 それには答えず、座れと手で指し、俺も遠慮なく座る。


「私、外務省の……」

 名乗ろうとしたのを手で止める。

「これより王宮へ向かわねばならぬ。手短にな」


「はっ、はい。そっ、それが……」

 この段階で何が起こったかは大体想像が付く。


 使者は、下を向いて喋り始めた。

「それが、侯爵マルグリットは、昨夜来俄に熱を出しまして……」

 目を上げて、俺の視線に気が付いたのだろう。


「じ、自宅にて伏せっております」


「ほう。それはそれは一大事。見舞いに伺わねばならぬ」

「そっ、それは平に。ラングレン閣下に、万一のことがあってはなりません。おっ、お気持ちだけ戴きます」

「そうか」


 俺の言葉で少し乗り切ったと思ったのだろう、ハンカチを取り出すと額を拭き始めた。


「それで? 外務卿は、いつご快癒されるのか?」

「いつ? いっ、い、いいえ、申し訳ありません。小官には分かりかねます」

 まるで治ると言う現象が起きるなどと考えもしなかった反応だ。どう考えても仮病だ。この男の、後ろめたい表情からしてもな。


「ふむ。では、外務卿より何か伝言は?」

「ご、ございません……ひっ!」

 いやいや、片口角を上げて笑っただけで、いい大人が脅えるなよ。


「そうか。それでは、外務卿にはくれぐれもお大事にとお伝え下され」


 俺が立ち上げると、恐々見上げてくる。


「アストラ、迎賓館を引き払う。用意せよ!」

「ひっ、引き払う? おぉ、お待ち下さい。閣下!」


「何を待てと言うのか。いつ本復されるのか分からないのだよな」

「はぅ、しばし、しば……」


 使者は何か言葉を紡ごうとして居たのだろうが、無視して応接室を出た。


     †


 事務官をプロモスへ先行させると、在クラトス大使館へ向かいウォーテル閣下と面談した。

 状況説明すると閣下も子供でもあるまいにと、外務卿に対して怒りだした。クラトスの外交を済ませる前にプロモスへ向かうと予定を説明すると、それは良いと意気投合した。最後には、精々脅しておくので存分にやれとまで言われてしまった。


 事務官パレビーを一足先にプロモスへ向かわせて迎賓館に戻ると、既に引き払う用意が進んでいた。


「閣下、ルーモルトとアクランが参りました」

「通せ」


「お忙しいところ、申し訳ありません。出立に当たり、ご指示を仰ぎに参りました」

「盗聴阻害は施してある。話せ!」

「はっ!」

 ルーモルトが、アクランを促した。が、彼は俺の手元を見ている。


「いえ、あの。御館様、魔術行使中に伺ってもよろしいのでしょうか?」


 流石は召喚系を得意とする魔術師なだけはある。

 確かに、俺はテーブルの上に5つの魔石を並べ、それぞれに不可視の細い魔光を浴びせている。彼にはそれが感じ取れているのだろう。


「構わん。既に術式作成の段階は終わっている。今は只の作業に過ぎん」


「はっ! お訊きしたいのは1点です。城外に駐機させている。ゴーレムをどうするかについてです。収納するのでしょうか?」


 ゴーレムは俺が召喚したが、現時点の管理はアクランに任せてある。

 笑みが大きくなる。


「ここに来たからには、意見が有るのだろう。それを述べよ!」


     †


 2時間後。


「どうしたの? 出発よ! アクラン。早く乗って」

「あっ、はい。ゼノビアさん」


 最近、見所があると思って眼を掛けている、若い新人君に元気がない。

 いや、さっきまでゴーレムの魔石交換をがんばっていたのだけど。それをやり終えて、疲れが出たのだろうか?


 先に馬車に乗り込み、手を牽いてやると、すっと乗り込んだ。

 間もなく馬車は走り始めた。

 車窓から差し込む陽光に照らされるアクランは、なかなか可愛い顔なのに、なぜか落ち込んでいる。折角国境まで、この馬車には2人きりだというのに。


 ああ、そうか!

「さっき副長代理と一緒に、御館様のところに行ったわよね。もしかして叱られた?」


 アクランは少し唸ると押し黙った。

 図星だったか。


「大丈夫だって。新人てのはね、叱られるのが仕事みたいなものよ。私だって副長に頻繁に叱られているでしょ……いや、それはともかく。叱られたくらいで、一々くよくよしない。元気出しなさい」

 ふう。私、良いこと言った……途中危なかったけど。


「あのう……御館様には、とても褒められました」

 なんだぁ。

 じゃあ、何よ?


「よっ、よかったじゃない。あまり人を褒めない御館様に褒められるなんて、凄いわ!」

「でも……」

「どうしたの?」

「僕って、どうなんでしょう?」


「なっ、何が?」

 男として魅力的かどうか? それとも私が、君のこと好きとか、嫌いとか?


「はい。御館様と比べると自信をなくしてしまって」

「ちょっ!」

 なんだ、そっちか! というか、そんなことかよ。


「僕が部屋に入ったとき、御館様は魔石に術式を刻んでいらしたんですが……凄いんです」

「アクランだって、あれ得意じゃない」


「そう思っていたんですが。僕は間違えないように、予め術式を紙に書いて、それを見ながら集中して集中して刻むのがやっとなのに……」


 ああ……。


「御館様と来たら、何も見ずに、しかも魔石5個も並行して刻んだだけじゃなく、僕の報告まで聞いて……褒めてくれて。それでいて、ゴーレムはきちんと動いたんです」


 そうか。それが、アクランが交換してた魔石か。しかし、あのゴーレムどうするんだろう。あんなところに置きっぱなしで。


 うっ! 一瞬油断したら、思い詰めたように眉根を寄せている。

 まあ、なんて健気なのだろう!


「うわっ! ゼッ、ゼノビアさん、なんです?」

 思わず抱き締めてしまっていた。


「あのね。私が、アクランより少し長くここに居る間に学んだ教訓、聞きたい?」

「きっ、き、聞きたいですけど。離して下さい」


「だーめ。御館様と比べては駄目よ! そんなことしたら、誰でも魔術師辞めたくなるから。私だってそうよ! 御館様はね、人間っていうか人族の格好をしているけど、違うの! 御館様という種類の生き物だから!」


「はぁ?」

「同じ人間だと思うから比べてしまうの! ほらっ! 男の癖に、あんなに綺麗でしょ! 不公平だと思わない? じゃなかった。御館様は、天使か何かと思っておけば良いのよ!」

 そうよ、そうに違いないわ! だから、憎たらしい副長の言った通りで癪だけど、御館様をしっかり守らなければならないわ。


「いやいや。そんな……」

「ふふふ。転送所まで、人間ができることをしましょ」


     †


 プロモス行きのため、クラトス内の都市間転送所の使用許可を予め取得してあったので、何の障害もなく一行は最寄りの都市まで移動した。

 そして2日掛けて街道を進み、何事も無くプロモス国境まで到達した。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/04/08 使者を振り切った場所は王宮ではなく迎賓館の誤り訂正、少々加筆

2021/09/11 誤字訂正

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