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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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268話 作戦開始!

放置や丸投げは話にならず。かといって、余り干渉しすぎてはいつまでも育たない。部下や後進に仕事を任せると言うのは難しいようですね。

 先頭の指揮車と呼ばれる馬車内部──


『……持って来た全兵装の使用を許可する。ただし、団則を遵守せよ!』


 よし、出番だ!

「了解! 戦闘班は先行します」

 少し声が震える。

 御館様との通信が切れた。

 今回の出動では戦闘はないと言われていたが、誰も気は抜いていない。

「聞こえたか?」

「はい」

「はい。ルーモルト副長代理」

 少しゼノビアが顔を顰めた。


「時間が無い。御館様より委譲された指揮権を発動する。移動時の異変対応作戦案3を用いる。戦闘車両は先行。その他車両は減速。1ダーデン先で隊列を再編成する。アクラン!」

「はい!」

「作戦案3では、アクランの操機魔術が中心になる。頼むぞ」

「了解!」

「がんばろうね。アクラン」

「はい」


 ふーんと鼻から長い息を吐いた。

 普段は子供子供しているが、非常時は頼りになる。魔術師だからか賢い。かなり使える新人だ。しかし、ゼノビアのアクラン贔屓が強くなってるなあ。御館様が救護班長を側室にされてから、拍車が掛かっている。


「では、配置につけ」


 大使御座車より先行した我々は、石畳の道を外れて少し広まった草叢に停車すると、2台の荷台を開いた。


「……ディッセ エルクェスタ ゼッ 起動(モータレ)ゴーレム!!」

 アクランが持った杖が眸と光る!


 キン!

 甲高い音と共に、積載していた大型ゴーレムの眼に光が宿った。

 ブフゥゥ……。

 まるで生き物のように息を吐き、身動ぐと前足で床を掻く。そして、荷台の端に渡された板を器用に踏んで、大地にゴーレム馬が降り立った。


 騎乗ではない大型馬。彼らは、馬車を牽いている馬と違う。単に体高(肩までの高さ)が3ヤーデンと大きいだけでなく、魔石を眉間から角のように生やしている。

 故に、皆はユニコーン(ゴーレム)と呼んでいる。翼はないが。


 それらを操るのはアクランの魔術だ。優雅に杖を揺らすと、大きく腕を揮う。

 通り掛かりの者達が、遠巻きにして見物を始めている。


「ふぅー。あと2頭」

「アクラン、焦らないで。ゆっくりで良いのよ」

 隣でゼノビアが、声を掛ける。


「大丈夫です! 御館様が、この仔達の魔石に予め魔力を充填してくれていますから。僕の消費は最小限で済みます」

 そうなのだろうが、それでも大したものだ。あの(・・)副長(バルサム)が筋が良いと褒めているしな。


 手際よく、あっと言う間に5機を起動した。やるものだ。

 杖を振りながらユニコーンたちを先導していく。


「ゼノビア! 撤収作業を手伝うぞ」

「あっ、はい!」


 一瞬呆けたようだったが、命令に従ってゴーレム馬を降ろした馬車を再び走れるように準備し始めた。周囲に目を配りつつ、板を荷台に戻す。


 数分後。

 何度も訓練した成果が出て、隊列の組み直しが最短時間で完了した。

 空になった馬車に、ゼノビアたち魔術師系団員が乗り込んでいく。

 

「班長代理。準備完了しました」

「了解」

 指揮車にアクランと一緒に乗り込み、設えられた高い御者台に座る。

 後ろを見ると、後続の車列が近付いて来た。


「よし! 出発。御座車と間隔を保って会敵地点まで進行!」


 命令一下、アクランの杖が輝くと、ユニコーン群が錐状に並び、軛に繋がれたように間隔を保って駆け始めた。


 指揮車も続くと、歩様が駈歩に変わり見る間に速度が上がっていく。


 5分も走ると、車列が1繋がりとなった。


「よしよし」


 風が顔を(そよ)ぎ、心は躍る。

 下を見ると、小さな台が設えられ、そこに3つの円い窓が見える。計器と言うそうだ。

 どのような仕組みかは分からないが、一番右は速度を示す。その針が指すは時速40ダーデン。訓練通りだ。


 往来は疎らで、少ない徒の者も路肩に寄ってくれているので、進行に問題はない。

 そろそろだ。


『総員、敵襲に備えよ!』


 おお……

 尖端をひた走るユニコーンの角が金色に輝きだした。

 アクランの魔術が第2段階に移行したようだ


『前方に感あり、最大展開!』


 魔導通信からアクランの声が聞こえた刹那。200ヤーデン向こう、往還路脇の草むらが盛り上がった。

 擬装した伏兵──


 槍?

 敵はまちまちな出で立ちだが動きは揃っている。

 長い槍の石突きを地面にぶつけ、穂先を斜めに持ち上げ、こちらに向けた。


 我々の馬車を串刺しにする気だ。

 あれでは槍ではなく、地面と喧嘩することになる。思いっ切り分が悪い。


「構うな、突っ切れ!」

 しかし、私は強行突破を命じた。


 たちまち距離は縮まり、衝突まであと数十ヤーデンと迫ったとき、敵兵の顔が見えた。


 無表情?

 大きな馬が疾駆して来る寸前で、なんの不安や恐怖も覚えることがないのか?

 違和感が膝から背筋を駆け上がる。


 先頭のユニコーンがぶつかった。

 いや、その数ヤーデン前──槍が右に逸れた。兵も見えない壁に押しのけられるように、路肩へ飛ばされて行く。


 よし!

 目論見通りだ。腹が熱くなる。

 ユニコーンがこじ開けた狭間を、指揮車も続いて速度を通り抜ける。


 後ろを振り返り、後続を見守る。早く、早く抜けろ! 焦燥感でじりじりと来たが、実際には10秒と掛からなかったはずだ──御座車も、車列全体が抜けた!


 よーーし。第1段階は成功だ!

 首筋を抜けていく風を、初めて冷たく感じた。


 引き続き追撃を警戒──


     †


「くっ! あれを突破するか!」


 少し離れた高台の茂みに潜む、ローブ姿の男が呟いた。


「流石は上級魔術師というところか。だが、次の手はどうかな? 準備を! ……おい、どうした?」


 異変に気が付いたのだろう、あたふたと辺りを窺うが、仲間からの応答はない。

 魔力を感じたのだろう、男はビクッと身を強張らせる。


「なっ。何者だぁうぇぁぅぅ……」

 見えない敵に杖を振りかぶったが、相好が弛緩して腕がだらりと降りた。


 別の方向から気配が現れる。5つの影が跪いた。

「ご苦労! 撤収するぞ」

「あちらに5人、その下に4人寝てますが、よろしいので?」

「掃除する者達が居る。御館様に届けるのは、この者のみで良い」


     †


 襲撃地点から数ダーデン過ぎた頃。通信が入る。


『御館様! 囲みを突破しました。敵の追撃はありません。作戦成功です』

「ルーモルト。それに、皆良くやってくれた。総括は今日の目的地に着いてからにする。第一種旅装に戻せ」

「了解!」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/03/25 誤字脱字、細々修正

2020/03/26 誤字、くどい表現修正

2022/08/03 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)


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