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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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257話 東奔西走

いやあ、花粉症の薬を飲み始めたんですが(今シーズン)。

睡魔が頻繁に。昨夜ふと気が付いたら寝落ちしてて、本文がーーーー居ない。

寝ながらキー押していたらしく、スクロールしてただけでした。

 切り出した石材を坑外に控えていた荷馬車の荷台に下ろし、城に戻ってきた。

 親父さんは、広間ではなく奥向きの食堂に居た。

 お袋さんと向かい合わせに座っている。


「ただいま戻りました」

「おお、ラルフ。到着早々に造作を掛けた。申し訳ないが、何時戻ってくるかわからなかったから先に食べているぞ」

「ああ、いえ。ご懸念なく」

 領主は忙しいからな。


「ラルフも食べなさい。誰か、食事の用意を!」

 お袋さんに会釈する。


「それで、ルフタ殿が言っていた問題の石は採取できそうか?」

「いえ。既に採取しまして、ルフタ殿が荷造りしております」

 ああ、状況を確認して戻ってきたと思われたのか。

「……そうか」

 親父さんは瞑目して、眉根を寄せた。

「ふーん。あの男が満足したのですか。さぞかし綺麗な石だったのでしょうね」

 お袋さんだ。


「ああ、そう言えば粉々になった石を持ってきたままでした。こんな感じです」

 10リンチ(9cm)程の欠片を出庫して見せる。


「ああ、佳い色だな」

「そうねえ。で、大きさはこんなものなの?」

「これが一番大きいぐらいですね」

「あーら、残念」

 ん?


「原石がこの大きさになっちゃうと、いくら綺麗でも使い途がないから、価値が付かないのよねえ」

「残念ながら、ルイーザの言う通りだ」

「ふふふ、お母さんも少しは勉強しているのよ」

「そうですか。結構大量にありますけど。そうだ。私が戴いても良いですかね。お駄賃と言うことで」

「あははは。子爵様のお駄賃には全く足らないと思うが。それでルフタ殿は?」


「作業が終われば、一度挨拶に来るそうですが、早速王都に戻って構想を固めると言っていました」

「はぁ、そう。帰るのですか。現金なものね。でも、これで清々するわ」

 お袋さんは相変わらず口が悪い。


「ふふ。でも、ご当家に良いことをすると言っていましたよ」

「と言うと?」

 思わせぶりに言うと、お袋さんは身を乗り出した。それを見た親父さんは、小さく首を振った。


「王都に戻ったら、国王陛下ならびに在都中の大貴族向けに石材の披露会をやってくれるそうです。恐らく陛下の発案だと思いますが。その折は父上を、王都に呼ぶそうです」

「おお、そうか」

 親父さんが破顔した横で。

「それが、ウチのためになると言うの?」


「なるさ。すぐには収入に繋がらないかも知れないが、エルメーダの大理石の評判は間違いなく上がる。これまでは王宮の竣工後のことだと思っていたが、早まりそうだな」

「その通りです。それに、もし陛下が気に入って下されば、箔が付きますよ」

 俺の方を向いて親父さんが肯いたとき、お袋さんはにやりと笑った。分かっていて訊いたのだろう。曲者だよな、お袋さんは。少しアリーと似てる。


「それでだ。ラルフ。エルメーダへは、ルフタ殿の件で来たのではないと言っていたが、本来の用件とは何だ?」

「父上に商売の話を持ってきました」


「ほぅ。我がエルメーダと商売すると言うことか?」

「はい。単刀直入に申し上げます。できますれば、この御領内に薬を作る工場を建てさせて欲しいのですが」

「薬の工場と言うと作る物は、例えばポーションとかか」

「比較的似ていますが、効き目が段違いです」


「ほぉ。ラルフがそう言うのだ、相当良い薬なのだな。詳しくは、クリス(家令)を入れて話すとして……」

 親父さんが顎に手を遣り、お袋さんが難しい顔をした。

「はい」

「なぜ、エルメーダなのだ? 確かに王都で作るのは難しいだろうが。ここまで来る間に、いくつも土地があるだろう。ここの領主が父だからか?」


「父上だからと言うのはもちろんあります。加えて、エルメーダにはこれがあります」


 テーブルの上のカップを手に取ると、その中では、小さな気泡が弾けていた。

「ん?」

「水です」

「水?」

「ラルフが、お茶に不向きと言っていた、ここの水のこと?」


「そうです。この水は、この辺りの石灰岩質土壌のおかげで、母上が仰ったように硬水です。その成分が当該の薬を作るのに都合が良いのです」


 親父さんは、少し考えてから肯いた。

「ラルフに迷惑が掛からぬのでなければ、話を聞こう」

 そっちを懸念していたのか、まったく頭が下がるなぁ。


「ああ、口出しするわけではないけれど、このエルメーダの周りだって、ポーション向けの薬草造りを生業としている者達が居るのよ。ラルフは知っている?」


 そう。山間部では林業と薬草栽培が盛んであることは、フアナさんの村に行く間で多く見ている。しかも、両方ともさほど儲かっては居ないようだ、特に後者は。その一因としては、製材業はあっても製薬業がほぼないからだ。薬草は専ら他領に売るための物となってしまっている。つまり重量辺りの付加価値が低い状態で売っているのだ。


「それも考えてあります。ですが、それは食事の後にまた」

 幾つも皿が運ばれてきたので、話を打ち切る。


     †


 食後に時間を貰って話し合った後、15時頃には王都館に帰還した。


「お帰りなさいませ」

 ローザとモーガンに出迎えられ、執務室に移動する。一応本館へ人を遣っておいた。


 以前は執務椅子に俺が座り、2人が立って聞くという形態だったが、今はソファに向かい合って座るのが通例になった。


「どうだ? ローザ、具合の方は」

「つわりも軽いですし順調です。お気持ちは嬉しいですが、妊娠は病気ではありませんよ」

「そうだな。すまん」


 確かに、お袋さんはソフィーを産む1月前までよく動いていた。


「親父殿は大事にさせよと仰るし、お袋殿は余り甘やかすなと仰っていたな。無論2人ともローザが身籠もったことを凄く喜んで居られたが」

「そうですか。では、先輩(お袋さん)の言うことを是非参考にさせて戴こうと思います」

 ローザがにっこり笑う。

 そもそも、ローザは俺の従者の停職を嫌がっていたのだ。とは言え、男爵以上の貴族は妻に仕事させないのが一般的だ。どちらかと言えば、これまでの方が異例だったわけで。さらに妊娠しても継続というのは外聞が悪い。


 モーガンは眼を細めて聞いているが、そろそろ話を本筋に戻そう。


「それでだ、その2人は王都にいらっしゃることになった。おそらく8月5日頃になるだろう」

「ご両親共ですか?」

「そうだ。王宮修理の石材を寄贈されることは話したな。まだ確定ではないが、その披露会をやることになるはずだ」

「披露会……王宮主催となりますか?」


 鋭いな。


「そうだな。これも推測だが、お二人は王宮から招待となるであろうから、宿泊は内郭内の宿舎になろう。とは言え、ここにも寄られることもあろう。モーガン、忙しいところ悪いが、そのつもりで居てくれ」

「承りました。念のために、お訊きしてもよろしいですか?」

「何だ?」


「時期的にファフニール家の宴と被ってくることもあるかと存じますが、ご両親のご出席を先様に図った方がよろしいでしょうか?」

「いや。対外的に、当家とエルメーダ=ラングレン家は別と扱われる。当方から、申し出る必要はない。宴のことは親父殿にも話したが、特に何も仰らなかった」

「承りました」


 モーガンも予想はしていたのだろう。軽く首肯した。まあ、ウチと実家の爵位が逆であれば、あるいはだが。


「次の話だ。ソフィーの件は、お袋殿が上京した時に話されることになった。あと、パルシェについては、当人が良ければ是非引き続きソフィー付きとして雇いたいと仰っていた。その交渉もお袋殿が直でされるそうだ」


「わかりました。考えにくいですが、当館での勤務を希望する場合は、引き続き雇いたいと思いますが」

 ふむ。信頼が厚いようだ。ただ希望する可能性は低いだろうがな。

「任せる」

「はい」


「それで本題だが。サラの薬の工場建設希望の件、親父殿、家令のクリストフに、説明した」

「はい。感触はいかがでしたか?」

「一言で言えば乗り気だった。親父殿は、エルメーダ郊外での建設協力は(やぶさ)かではないと仰った。逆にウチに不利なことが無いかを気にされていた」


「まあ。お義父様らしい」

「そうだな。それで、臨床試験開始の許可が下りたら、向こうで工場の候補地を探し始めてくれるそうだ」


 そう。工場以前に新薬販売許可の道程はまだまだ長い。今回は意向の基本線を確認したに過ぎない。


「そうですか。好意的な様子でようございました」

「そうだな。節目節目で、モーガンあるいはブリジットに交渉して貰うことになるだろう」

「承りました」


「むう。公館から誰か来たようだ。ニールスだな」


 数秒後にノックがあり、メイドが感知した通りの公館執事を連れてきた。


「失礼致します。御館様、お戻りと聞きましたので参りました。外務省より書状が参りましたので、ダノンがお越し頂きたいとのことです。公館執務室に居ります」

「分かった。こちらの話も大方終わったところだ。着替えをしたら行くと伝えてくれ」


     †


 公館に移動した。

「お帰りなさいませ。お疲れのところ、恐縮です」

 ダノンが立ち上がって会釈した。


「いや問題ない。それで?」

「こちらが、外務省からの書状です。同じ物が私にも届いております。15日に大使就任式を実施するとこのです」

 こう言った場合、貴族本人と登録した配下にも連絡を送るのが通例だ。要するに貴族本人は当てにならないと言うことだな。


「そうか」

 聞きながら、一応封を切って中を検める。

「特に異なる記載はないな……ということは、今月中に外国に行く可能性が出てきたな」


「でしょうな。それで、秘書候補の方は明後日面談でしたか」

「ああ。こちらの話を聞いて、判断したいそうだ」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/02/15 誤字訂正、細かく加筆

2020/02/18 お袋さんの口調を微妙に変更

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/18 誤字訂正(ID:1844825さん ありがとうございます)

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