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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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251話 悲喜こもごも

最近、使っている言葉の語源が分からないことが度々あって。題目悲喜こもごも。

うん。悲喜はわかる。こもごも? こもごもって何だ。そう言う漢字にすると大体分かるんですねえ。

 ベッドに入って本を読んでいると、部屋に寝間着姿が入って来た。


「どうした、アリー。話が有るのか?」

 ベッドから出ようとすると、手で制された。

 扉を閉めると、部屋の中程まで来た。


「あっ、あのね。お姉ちゃんが……」

「ん?」


「お姉ちゃんが、今夜は自分の部屋で寝るって。それで……」

 顔が真っ赤だ。


「お姉ちゃんが……今夜は、私の番だって」


 アリーは顔を伏せた。

 俺は全てを理解した。


「そうか」

 夜具を捲って空けた。

 顔を上げたアリーは、にいっと笑うと滑り込んできた。


「暖かい……」


 本を閉じて、ベッド脇に置くと俺も横になった。


「ごめんな」

「ラ……旦那様が謝ることないよ。私はお嫁さんになれただけで幸せ」

 旦那様ねえ……。

 それはともかく、俺の思っていることが分かるようだ。


「俺は、ローザも好きだし、アリーも好きだ」

「わかってる。私もお姉ちゃんが好きだもん。お姉ちゃんが旦那様からの誘いを受けなかったのは、私を思ってのことだし」


「そう……なのか?」

「まあ、半分はメイド道? を拗らせてたからだけど」

「姉ちゃんは、私と旦那様をくっつけようとして、王都に来る時だって凄くがんばってたんだからね」


「うむ。今ならなんとなく分かる」

「うん。旦那様を軍に入れることなく、一緒に住めるようにしたのも。今日のためなんだから。お母さんが再婚するって決めた時に、2人して決めたんだ」


「ああ。2人とも大事にする」

「うん。でも、今は私だけね」

「ああ」


「じゃあ、よろしくお願いします……灯りを消してくれると嬉しいけれど」


   †


「おはようございます。アリーお姉様。何か良いことでも?」


 食堂へ行くと、この時間帯では珍しい人が居た。いや、最近この時間にいらっしゃることが増えたような気がする。お兄様の側室に成られて心を入れ替えたのかしら?

 ちょっと前まで、変な感じだったけど……いえ今朝も変だわ。


 とても機嫌が良いというか、何やら身を揉みながら、思い出し笑いをされているようで、少し気持ち悪い。


「ああ、おはよう。ソフィーさん」


 最近私の呼び方が、ソフィーちゃんからソフィーさんに変わり、ご自分の事も私と呼ぶようにされたのは、何か少し変だけれど良いことだと思う。お兄様に相応しい人になって戴かないと。


 椅子をパルが引いてくれて、腰掛けた。


「今日は朝からご機嫌ですね」


「分かる? それがねえ。聞いてよ、昨夜……」

「うっ、うぅぅーーーむ」


 随分とわざとらしい咳払いだわ。

 後ろを向くと、パルが口に拳を当てながら、凄い眼力でお姉様を睨み付けていた。

 パルは異常に勘が良い。

 きっと、教育上悪いことをお姉様が言うと察知したに違いないわ。

 私のことを第一に考えてくれるのは良いのだけど、考え物だわ。お姉様どころかお兄様まで睨んでいることがあるから。


「あっ、ああ……そうね。ソフィーさんは、まだ8歳だから、この話は早かったわね」


 何の話だろう。

 訊こう思ったとき、人影が2人入って来た。


 ふぁぁ、お兄様。今日も麗しい……。


「おはようございます。お兄様、お姉様」

 まだ食事が始まっていないから、立ち上がって挨拶する。


「ああ、おはよう。ソフィー、アリーも」

 なんだろう。お二人とも凄く嬉しそうだ。


「何かありましたか? お兄様」

「ああ、喜べ! ソフィーに甥か姪ができるぞ」


 はっ?


「うわぁぁ! 本当に? やったぁぁぁあ! お姉ちゃん。おめでとう!」

 館中に聞こえるような叫び声だ。アリーお姉様が椅子を蹴って飛び上がるように駆け寄っていく。


「おととと……大事に大事に」

「ありがとう。アリー」


「おめでとうございます」

「「おめでとうございます」」


 メイド達が次々祝辞を述べている。

 ああ、そうか。ローザお姉様が身籠もられたんだ。


 私も喜ぶべきなのに……作った笑顔は、きっとぎこちないだろう。


「おお。おめでとうございます。お兄様、ローザンヌお姉様。ああ、あのう。済みません。時間になったので、学校へ行って参ります」


 気が付くと、食堂を飛び出していた。

 階段を走って昇りきると、息が切れた。後から、どんどんと足音が付いて来た。


「お嬢様。どうぞ。お拭き下さい」

 ハンカチを差し出していた。

 ああ、私の頬は濡れているんだ。


「パルゥゥ……ああああ」

 抱き付くと優しく頭を撫でてくれた。


「お嬢様。もう泣いてはなりません。お部屋にお戻り下さい。お食事を厨房から取って参りますので」

「ううん。今朝はいらない……」

「それは、なりません。それに、お食事をされれば、少しは気も紛れます」


 見上げると、パルシェはとても優しい顔をしていた。


     †

 公館に行き、ダノンとバルサムに、ローザ懐妊を打ち明けた。


「なんと! そうですか! おめでとうございます」

「おめでとうございます」


 2人とも破顔した。


「うむ。ありがとう」

 ちなみにモーガン(家令)には、一番先に伝えてある。今頃は、ダンケルク家館に誰かを走らせていることだろう。


「いやあ、そうですか。御館様が子爵となられ、奥様ご懐妊とは。お目出度続きですなあ」


「うむ。まあ目出度いには間違いないが。ローザの公務は続けさせられなくなった。秘書と従者を用意しないとな」


「ふーむ。この状況を想定していなかったとは申しませんが、難題ですな。奥様程、御館様の意を汲むというのは……」

 ダノンが首を振る。


「ええ。奥様は実務もテキパキされるし、正直遠征先では女性団員の要でしたからな。小官としても助かりました。しかも、剣を取っては騎士団でも有数の強さという」

 ほう。バルサムが他人を褒めるか。


「同時に、あのお茶は御館様の癒やしでもあるわけで、余人には代えがたいですなあ」


 そうだ。

 ローザが居てくれて、館でも遠征先でも、不自由というものを感じたことは無い。


「それは俺が一番分かっては居るが。何も1人でローザの代わりをさせることはない」

「なるほど。恐縮ながら、何人かで機能別に分ければ、なんとかなりましょうか。しかし、こればかりは、公募でというわけには参りませんぞ」

「まだ従者の方は、なんとか成りましょうが、秘書の方は……」

「ああ、まだ楽観はできんが、モーガンが彼の長男を当たってくれるそうだ」


「それはなにより。しかし、人材が足りませんなぁ」

「公募がうまく行くと良いのですが」


「応募状況はどうだ?」

「はい。一般の応募も既に100件を超えております。後は貴族推薦も17件まで来ました。その内、有望?なのは10件です」


「おおぅ。結構応募があったな。特に貴族は」

 一般応募は玉石混淆だ。蓋を開けるまで分からない。

 その点、貴族推薦は粒ぞろいの人材ではあろうが、旧主家の思惑が問題となる。とは言え、その辺りで選り好みできる程、我が家の状況は良くないのだ。


「しかしながら。貴族の推薦は最後の最後まで辞退という危険性がありますから」

「ああ、前回もありましたな。当てにしていた人材が、本人ではなく主家から断られた例が」


 痛し痒しか。


「それはともかく、一次締め切りが3日後。そこから書類選考で5日程と見ております」

「そこから、2次選考か……」

「はっ! 基本は面接となります。最終的には御館様にご判定戴きますが、何とか来月の10日までに決めたいと思います」


 そうだな。7月ももうすぐ終わりだ。


「うむ。それで良い。よろしく頼むぞ」

「お任せ下さい」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


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訂正履歴

2020/02/22 誤字訂正(ID:209927さん ありがとうございます)

2022/01/30 誤字訂正,十日→10日(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/03 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/09/25 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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