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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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250話 交換条件

新製品の発売で、新聞と技術系雑誌の取材を受けたことがありますが。

後者の記者さんは、詳しかったですね。と、思ったら他社製品との比較記事になってた(汗)。

 ファフニール家からは、一般の事務処理に秀でた人材を数人貸して貰えることになった。が、一番欲しかった有職故実に詳しく外交に向いた人物というのは、流石に一朝一夕に融通して貰えるという話にはならなかった。


 状況を総合して、一般の職員を新たに雇う必要に迫られ、公募を出した。

 数日後。


「それで、その客が公募に必要だというのか? バルサム」

「はい。この方法が一番早いと思います。お気に召さないようで申し訳ありません」

 バルサムは謝っているが、全く悪びれていない。確信を持ってやっているのだ。


「気に入らないと言っても、もう先方は来ているのだろう?」

「はい。第2応接です」

「分かった」

 俺より、後ろのローザの機嫌が傾き掛けてきたので承認をする。


 応接に入ると、男女それぞれ1人が待っていた。


「お待たせした」

 2人は立ち上がって、挨拶してきた。


「スパイラス新報の記者カタリナです。お久しぶりです。ラングレン子爵様」

 そこそこ美しく、若い女の方が言ったので、後ろのローザの放射熱が少し増えた。


「もう1年になるかな」

「はい。憶えておいて下さり光栄です。それで、こちらは絵師のサブレーです」

 挨拶してきた20歳代の男は、40リンチ四方の小さい画板を抱えている。そして鞄から新聞を取り出した。

「こちらは昨日の新聞ですが。こちらのような様式で子爵様の肖像を描かせて戴き、掲載させて戴きたく。無論できあがりはご覧に入れます。いかがでしょうか?」

 線描で描かれた、男の肖像だ。


「これは、あなたが描いたのか?」

「はい。そうですが」


「ほう、そうか。中々達者なものだ。描いて構わないぞ」

「ありがとうございます」

「では、掛けたまえ」

「ありがとうございます」


 座ると早速サブレーの筆が動き始めた。


「先日は、子爵へご陞爵おめでとうございます」

 鷹揚に肯く。


「ところで。失礼ながら、後ろの方はもしかして。夫人の?」

「うむ。ローザ、自己紹介を」

「はい。秘書官兼首席従者で、妻のローザンヌと申します」


「えっ、夫人がですか? あっ、ああ、済みません」

 カタリナが途中で肘でサブレーを小突いた。


「ええと。まず最初に、確認させて戴きます。子爵様は、当年で16歳、スワレス伯爵領ご出身で…………」



 王都に来た時期や冒険者や学歴など細々したことを、正確に並べられたので、肯定した。


「……なるほど。それで冒険者ギルドと魔術師協会の推薦を受けて、上級魔術師の試験に合格されたわけですね。軍に入ることなく超獣対策特別職に就任されたのは、どういう理由からでしょうか?」


 まあ、彼らからしたら外せないところだろう。訊いてくることは想定していた。

 問題は素直には答えられないことだ。

 軍に入ることをローザとアリーに反対されたから、選択肢から外したというのは、外聞が悪すぎる上に、間違いなく更なる誤解の種になる。


「それまでにご支援戴いた方々の期待に応えるためだ」

「なるほど……期待に応えるためっと」

 女記者は、手帳に俺が答えた通りに書きながら、質問をしてくる。


「ギルドとか協会を慮って……つまり、軍と上級魔術師は必ずしも一体ではないということでしょうか?」

 誘導成功だ。俺を支援してくれたのはそれだけではない。ローザ達も含まれるしな。


「上級魔術師が軍に所属する利点は、様々な軍事的支援が得られることだ。したがって国によっては分けられていないところもある」

「我が国ではできると?」

「うむ。それに先日、私と騎士団はアガート王国に出動した。過去に聞いたことがあるかな?」

 カタリナはサブレーを見たが首を振った。


「いいえ、ございません」

「私も知る限りはない。それは、隣国に軍を派遣するとなると、いくつもの制約があるからだ」

「ああぁ、なるほど。それができたのは、子爵様が軍人ではないからということでしょうか?」

「うむ」

「ほぅ! 先のことを見通していらっしゃったしたのですね」


「そうだな。私ではなく、国王陛下始め国のご意向だが」

「ああ。はあ。そういうことですか。少々お待ち下さい。しっかり書いておかないと……」


 ふむ。記者という職業も案外大変のようだ。


「お待たせしました。ただ、我が国の上級魔術師は多すぎると、言っている識者も何名か居ります。他国に派遣できるのはその証左だと。それに関してはどうお考えですか?」


 確かにスパイラス新報は、俺と騎士団の活躍を賞賛する反面、それ以外の特別職は減らしても良いのではないかと言う論陣を張っている。


「多いか少ないかは、私が答える立場にはない。ただ1つ言っておきたいのは、貴紙に書かれていた統計の解釈だ」

「はっ、はあ。当紙の記事ですか?」


「1ヶ月前だが」

 6月5日の第4面の中段とか言うと、根に持って居たと思われるだろうから、敢えて濁す。

「はい」

深緋連隊(サカラート)の1年辺り平均出動期間が75日と書かれていた」

 上級魔術師のみの統計ならもっと短いだろうが。


「ああ、読んだ気がします。それが間違いだと?」


「私が統計を取ったわけではないから、知る由もないが。その日数だけを以て判断するのは、危ういと考える」

「はあ……」


 まだピンと来ていないようだ。


「その新聞を見せて貰って良いか」

 さっきサブレーが見本に見せた昨日の新聞だ。紙2枚を折った8面をバサバサと捲り。記事を見付けた。広げて、指差す。


「ああ、私が一昨日書いた記事……ですが、これが?」

 カタリナが眼を見開く。

 

「文字数。1852文字。ざっと3分足らずで読めるだろうが、あなたがこの記事を書くのに掛かった時間は3分かね?」


「1852文字って今数えたんですか? ああ、いやそんなことより、もちろん、そんな短時間では書けません。原稿を書くだけで2時間以上、取材を入れればもっと膨大な時間が掛かります。つまり子爵様が仰りたいのは、出動している期間だけが働いている時間だけではないということですね?」


 肯く。


「分かりました。確かにその通りですね。申し伝えます」

 ふむ、素直だな。


「しかし……」

 ん?


「それが伝わらないのは、どのような活動をされているか、一般の者に知らされていないからです。是非騎士団の取材の許可を!」

 そう来たか。只では起き上がらないという事だな。


「その件は、改めて騎士団長の許可を得て下さい」

 すかさずローザが答えた。なかなか凄みがある。


「わっ、わかりました。それでは、大変恐縮ながら子爵様の私生活に関する質問をさせて戴きます。失礼がありましたら。申し訳ありません。当紙読者の関心の最も高いところですのでご容赦下さい。先頃、新たにファフニール侯爵家のお嬢様を側室にされたと聞きましたが」

「その通りだ」


「おめでとうございます」

「ああ」

「そのお嬢様というのも、つい最近ファフニール家の猶子に入られたばかりと聞いておりますが。よろしければ、その経緯をお知らせ願いたいのですが。もちろん、その方の前身の情報につきましては。当紙で書くことはございません」


「ああ、このローザの妹だ」

「えぇぇぇ、本当ですか?」


「はい。私の実の妹です」

「ええっと、確か奥様は、ダンケルク子爵家の……やはり猶子でしたよね」

「はい」


「2人とも私から見れば、はとこでな」

「はとこ?」

「私の父、エルメーダ領主の従妹の子にあたる。幼い頃から一緒に育った」

「では、幼馴染み同士でご結婚されたのですか。それはそれは素敵な話ですね」

 なぜか眼を輝かしている。


「あぁぁ! 奥様のお顔は、どこかでお見かけしたような気がしていたんですが」

 突如、カタリナが興奮し始めた。

「あの時に、子爵様と一緒に居た巫女……あれは奥様の妹殿だったのですね。ああ、雰囲気は違うけれど、よく似てらっしゃる。うーむ。書けないのは残念です」

「うっ、うぅぅん!」

 サブレーがわざとらしく咳払いした。

「あっ、ああ。失礼致しました。それで…………」


 その後も俺の好きな食べ物やら趣味などを散々色々と聞かれ、あっという間に30分程経った。


「えーと。用意してきました質問には、全てお答え戴きました。感謝致します。それで……当紙の取材を受けて戴くには、交換条件があるとご仲介戴いた……ああ、バルサムさんからお聞きしております。それも当紙にとっても利益になる内容とのことでしたが」


「うむ。それについては……」


   † † †


 朝食の席に着いていると、公館付執事のヘミングが本館へ珍しくやって来た。


「御館様。お食事中のところ失礼致します。本日付のスパイラス新報を持って参りました」

 ああ、そうか。あれから2日経ったのだな。


「4面に、御館様の記事がございます。内容は予定通りですが。どうぞご覧下さい」

「そうか。ダノンもヘミングも忙しくなるが、よろしく頼むぞ」

「お任せ下さい。では失礼致します」

 機嫌良さそうに、辞して行った。


 4面な。2枚捲って、記事を見付ける。

 一瞬眺めて内容を確認する。

 しっかり、騎士団から依頼した求人公募の件がそのまま掲載されていた。あとは、ローザもアリーのことも詳しくは書いていない。中々律儀なものだ。取材を受けた時間と俺の私生活の情報の対価として相応しいかどうか分からないが。


 そこまで考えて、待ち構えているローザに渡す。


「どの辺りにありまし……ああ、あった! むう、この肖像。何か感じが……」

「ははは。絵から、版に起こす段階で少し変わると言っていたではないか」

「そうですが……一昨日の絵はもっと男前でした! これでは旦那様の容貌がきちんと伝わりません」


お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/02/22 誤字訂正(ID:209927さん ありがとうございます)

2021/09/11 誤字訂正

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/08/01 誤字訂正(ID:1346548さん ありがとうございます)

2022/09/25 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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