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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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248話 ラルフ 夜這いされる

全然関係ない話しですが。今年って平成が続いてたら何年?(正解は32年)……瞬間、不安になりました。

運転免許、更新いつだよ!って。再来年でした。

 無明の箭が、アリーを捕らえると、羽化するように身体が2つに分かれた。


───馬鹿ナ!


 濃い一方は床に倒れ、薄く剥がれた衣の如き光は、眸と光って凝集した。

 何者だ?


───神威モナシニ星ヲモ砕ク姿カ──


 ん?


「お(いた)は困るな。特務駐在員!」


 壁に掛けた鏡が刹那に輝くと、蒼白きウォーグが飛び出し床に降り立った

 

「セレナ!?」


───審査官ダト!


 セレナの眼の光が消え、巨体が音も無く床に横たわった。


───あーあ 折角依代(よりしろ)を用意してきたってのに ラルフ君の所為で不要になったよ

───まあ 昇華した(コザール)体相手の方が 楽で良いけどね


 この仄かな光球のことか

 第五階層──霊体。

 存在の多次元構造の概念を思い出す。


 倒れたセレナから豹頭の男が立ち上るように現れた。

 そしてローブから腕を突き出すと、霊体が凍り付くように止まった。

 また……忘れていた。頭の冷えが消えていく。


───輪廻抑制派に取り込まれたのかね?!


───ギギグ……コノ状況ヲ招来シタ者ガ 何ヲ言ウカ!!

───危険スギル イマ滅セネバ 手遅レニナルゾ!!


───問答無用と言うことか!


 豹頭が薄く嗤い、掌が宙を掃いた。

 何気なくも恐ろしい動作は、アリーから抜け出た霊体を拭い去るように消した。


 そして審査官も自身も薄くなっていった。

 代わりにゆらりと、セレナが立ち上がる。!!!


「うーん……この神獣。なかなか具合が良いね。おっと、そんなに恐い顔しないでよ、ラルフ君」


 セレナの声だが喋り口が流暢だ。

 ベッドを飛び降りる。


「あれ、わかんない? 僕だよ僕。ソー……」

「ああ。わかってますよ、ソーエル審査官」


 それどころじゃない。

 ローザを持ち上げベッドに降ろし、隣にアリーも横たえた。

 2人とも意識はないが、呼吸も脈も安定している。寝ているのと変わらない。


 いやいや、そうじゃない。ローザはともかく。


「アリーの意識は?! 人格は? 大丈夫なのか!」

 憑依の時に人格が壊されている可能性がある。


「おおぅ。珍しく狼狽えている! おもし……うぅぅん。ラルフ君が奇跡的に精緻に弾き出したからね。大丈夫! 人格の連続性は担保されているよ」


 ふぅぅぅ……。


「安心した?」

 ドS審査官は肝心なことを言わないことはあるが、これまで口にしたことに嘘はなかった。


「ええ、少し落ち着きました。それで。あれは、なんなんですか。駐在官とか言ってましたが!」


「ああ、アリーだっけ、その女の子が死んだ時に入り込んだ、天使だよ」

「はっ? 死んだ?」

「ああ、そうか。言ってなかったけ? 君達が8歳の頃、超獣昇華の気に当てられて、彼女は死んだんだよ。心臓麻痺だね」


 なっ、何を言っているんだ。

「そっ、そんな!」

「信じられないと思うけど。そこに彼が憑依して蘇生することで、今日までラルフ君を監視してきたんだ」

「いやいや、あの時は、確かにアリーは癲癇(てんかん)のように硬直していたが、呼吸はあった。ありありと憶えてます!」


「ふっ、知性補正+800%したとは言え、人間のくせによく憶えているものだ。そこまで言うなら確認しようか」

 そう言って手を振ると、ソーエル審査官の周りに細かな光の四辺がいくつも浮かぶ。


 浄玻璃(ジョー・ハリー)の鏡。


「ああ……ここだ」

 ひとつの四辺を爪の長い指で突いた。


「昇華の気を受けて、君が回復魔術を使った。この子は確かに呼吸しているねえ。だけど、その前には、君とアリーは離れていただろう。ああ、ここで心停止しているね」


 時間が巻き戻る光景が見えた。

 そこに俺は居ない。


 そうだ!

 俺とローザは領都(ソノール)に行っていて、シュテルン館を空けていた。

 昇華の前から気を何度か発していて……村に入る前にから、まずやられたローザは、俺が傍に居たから助けられたが。


 アリーは、もっと超獣の近くで……結局俺は救えていなかったのか。


 逆に、駐在員と言う天使は、俺を殺そうとはしたが、アリーを延命させてくれていたのか?


「つまり、あの時以降は、アリーはその駐在官に乗っ取られていたと言うことですか?」

 問うて、臓腑が熱くなった。


「いいや、それはない。干渉は極々僅かにしてきたと言っていた。彼は真面目すぎる程に真面目だからね。嘘はない」


「でも、その駐在官自体が思いっ切り天界法違反じゃないですか」

「ううぅ。まあ非常の事後処置……というか、高度な政治的判断というか……」

 セレナが、間抜けに首を傾げる。


「超法規的措置とでも?」

「ああ、それそれ!」


「この前の一件と関係あるんですか?」

「あぁぁ。まあね」

「命を狙われる程の?」

「いやあ。彼は君が生まれてすぐ、再輪廻を具申してきたからね」

「そんな前から俺を」

 再輪廻って! 結局死ぬんじゃないか。


「それだけ君は駐在官にとって、危険に見えたって事だよ」

「でも、なぜアリーに?」

「監視に都合が良いのと……君の精神が変な方向に病まないようにするためもある」


 うぅむ。


「もう疑問はないよね? ああぁ長く喋りすぎた。この部屋に居る君達の記憶は、数秒後には消えるから。安心して。じゃあね」


 声が消えていくと、意識に靄が掛かった。


   † † †


「……アリー! これは、何の真似かと聞いているのです!」

 寝室の魔灯が点いている。


 半身を起こしたローザと、ベッド手前4ヤーデンのところにアリーが寝間着のままで対峙している。


「何って、嫌だなあ。お姉ちゃん。夜這いに決まってるじゃん!」

「いや、夜這いというのは、対象が1人の時にすることですよ」

「だって、ずっと、お姉ちゃんが一緒に寝てるじゃないって、ラルちゃんが起きちゃったじゃない」


「起こしてしまいましたか。申し訳ありません」

「それはいいが……どうした?」


「いえ。アリーが」

「だってさぁ。側室になって何日も経つのに1回も呼ばれないし。だからね、実力行使っていうか。途中でお姉ちゃんが止めてるんじゃないかと」


「そもそも、俺が呼んでない」

「ええぇぇぇ」


「呼んでないが、まあ、いい。そこは寒いだろ、ベッドに入れ」

「やったぁ!」

「あなた!」


「眠い。灯りを消してくれ」

「はっ、はい」


 反対側から冷たいアリーが入って来た。身体を押し付けて来る。


「そう言うことは、明日ファフニール家に行ってからだ。大人しく寝ろ」

「えぇぇぇえ」


 反対から、ローザも身体を寄せてくる。

 ん? いつも温かいのに、なぜか冷たい。それに何か首元が朱かった……よう……。

 再び意識は途絶えた。



 うぅ……。

 朝か……。


 ベッドに居るのは、俺だけだ。

 えーと。夜具の右側を探ると温もりが残っている。

 やはり。

 いつも左にはローザが寝る。アリーがここに寝たのか。


「おはようございます」

 ローザだ。

 

「ああ……おはよう」

 起き上がると、いそいそと俺の着る服を用意している。

 なんだか元気な姿が見えて嬉しかった。

 嬉しい?

 いや、元気なのはいつものことだ。改めてなぜそう思ったか?


 どうも、変だ。

 辻褄に乱れはない。乱れはないが。この記憶の混濁は何だろう。

 昨夜は確かに酒を飲んだ。

 とは言え、乱れる体質でないことは、自分が良く知っている。


「アリーは? いつもなら惰眠を貪って居るはずだが」

 右に視線を向ける。


「はい。お邪魔にならぬように小一時間前に起こしました」

「そうか……」


「これからは……」

 ん?

「……かち合わぬよう、言って聞かせます」


「あっ、ああ……」

 なるべく、ローザの顔を見ないようにして着替えた。

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/03/14 ベッド手前4ダーデン→ヤーデン

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

2022/09/25 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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