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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
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247話 御祓(みそぎ)

1週間2回投稿のペースに戻したいと思います。


御祓と言えば、お正月の時分には各地で催しが実施されますが。白衣を着て大勢で海や川に入ったり、あれは大変そうですよねえ。

 慌てて公館執務室に戻る。ソフィーの部屋で思いの外時間が経った。


 夕方までに、何通か手紙を書かなければならない。今日のスワレス伯爵領便で持って行って貰いたいからな


 まずは、親父殿宛てだが、それが届く前にスワレス伯爵領ソノールを経由するわけだから、伯爵様にも同時に送る必要がある。


 伯爵様には、喜びとお世話になり感謝しておりますで良い。そちらは、早々に書き上げた。

 しかし、親父殿には配慮が必要だ。なにせ、親父殿は男爵に成ったばかりだ。そこで、俺がその上の爵位、子爵を賜ったというのは、微妙だ。


 親父殿のことだ、俺の心配など笑い飛ばすとは思うが、油断は禁物だ。

 なにせ幼児の頃読んだ歴史書や偉人の伝記には、父親が活躍する息子に嫉妬して御家騒動になった例が書かれてあった。それもひとつやふたつではない。


 人の心はままならぬものだ。


 俺は尊敬する親父殿には嫌われたくない。

 結局文章を一〇通り程脳内で吟味して、とりあえず便箋に書いたのが2通。


「お茶を淹れ直しましょう」

 隣に座って居たローザが立ち上がる。


「あぁ。ローザ」

「はい」

「お茶も飲みたいが、親父殿に送る手紙の文章に迷っていてな。これと、これ。どっちが良いと思う?」

 2枚の便箋を差し出す。


「私に訊いておられるのですか?」

 怪訝な顔をした。


「ああ。どうにも決めかねてな。ローザは俺の秘書だろう。協力してくれ」

「もちろんです!」


 ローザはなぜかとても嬉しそうに微笑むと、再び席に着いて読み始める。

 5分経過。

 読み終わって、唸り始めた。


「どうだ?」

「旦那様は、御義父様に随分お気を使ってらっしゃいますね」

「ああ」


「率直に申し上げて。どちらも文面は概ね同じかと存じます」


 うーむ。これは手厳しい。

 まあ書いているのは、俺1人だ。意向から外れた分は、書く前に脳内で弾いているのだから、ある意味当然なのだが。


「御義父様の事ですから、どちらをお出しになっても、お喜びになると思いますが、()いて選ぶとすると……」

「どっちだ!」


「私は、こちらが好きです」

「そうか……好きと言ったな、理由は?」

「こちらは、喜びを先に感謝を後に書かれています。あちらはその逆です」

「ふむ」

 その通り。


「親と言うのは、子供がずっと子供でいるのと、巣立って行くのが両方喜べるものなのです」

「それで」

「巣立った子に対し、残された親が微笑ましく思えるのは、喜びを先に書かれることでしょう」


「まだまだ、子供だなあと思える方が良いと?」

「はい。まだこの子にしてやることがあると思う方がうれしいかと」

 言うことは分かる。そうかも知れない。ただ……。


「ひとつ聞いて良いか? ローザは、なぜそこまで親のことが分かるんだ?」

「あら、お忘れですか? つい1年前まで。私、親をやっていましたのよ」


 あぁ、俺とアリーの親も同然だった……それで、好き(・・)か。


「そうだな、うん。では、親にして、妻にして、有能なる秘書殿のご意見通り、こちらを送付しよう」

「まあ、モーガンの意見は聞かなくて良いのですか?」


「こんな恥ずかしいこと、ローザ以外に話せるものか」


     †


 ん!

 動かない。


 自室で就寝した記憶が蘇る。

 寝台の上だ。


 覚醒していないのか、呼吸しているが、手足びくともは動かない。

 金縛りってやつか。


 動かないが、気配は分かる。左にはローザ横たわり寝息を立てている。


 む!

 扉は開いていないというのに、気配が入って来た。

 魔力の増大!

 魔束の尖りが、孤を描いた──


 刺される!


 目は開くと、夜具が舞い上がっていた。

 曲者に覆い被さり勢いが止まる。


 魔灯が点った。


「なんの真似ですか!? アリシア!」 


「ふふふ……」

 アリーの声だが、そうは思えない程、低く響く。


「大人しく寝ていれば、生かしておいたものを! 致し方ない、その男と共に、地獄に送ってやろう」

「出会え! 曲者だ、出会え! あなた! あなた! 起きて下さい!」


「ははは、もう起きてるさ。神力で押さえているから動けないだけだ」

「まあ、説明ありがと───」


 ガシ!

 ローザの拳が、アリーの頬を捕らえた。

 が、微動だにせず、逆に手首を掴む。


「手癖が悪い」

 ガッ!

「脚もか、この姉は!」

 ローザの体重の乗った蹴りが、胴に入っても全く効いていない。


「旦那様を襲った段階で、姉でもなければ、妹でも……ぐっ」

「そうかい」

 アリーの手がローザの喉笛を掴み、頭上に持ち上げていく。


閃光(ゼノン)……くぅ。魔術が発動しない。神力と言ったな。


「ふっ!」

 アリーの顔が、見たことのない面持ちでこちらを見た。


「無駄無駄無駄。妻ガ終ワレバ、スグ後ヲ追ワシテヤル」


 何者だ? 間違いなくアリーだが。人格は別人だ。

 ソフィーの警告!?


 どこにそんな力があるのか。アリーの腕が真っ直ぐ伸び、ローザが宙吊りになった。

 ローザは膝を盛んに繰り出して、抵抗しているが、アリーはびくともしない。


 このままでは、まずい!


「ハハハ、ソコデ妻ガ、側室ニ(クビ)ラレルトコロヲ見テイロ!」


 動け!

 動け! 動くんだ!

 閨で妻が殺されるのを見ているだけか!


 脳梁を冷気が吹き抜けていく。


「ナッ! 神威の縛鎖ガ キサマ、ナゼ ウゴケル!」


 ローザが、床に落ちた。

 ぐったりはしているが、息はある。


 寝台から降りると、アリーが引き攣り、肩を上下させている。


「ハァァァアアア!! ディーバ・ランケア」


 瞬時にアリーの腕に光が渦巻き、押し寄せた。


「キ、効カヌダト! ……ゾーン カ?!」


 数リンチ手前で、粒子となって霧散していく。


「アリーから出て行って貰おうか!」


祓 魔(エクソオルキス)!!!】

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/01/12 誤字訂正(ID:118201 様ありがとうございます。)

2020/07/05 スワルス→スワレス

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