23話 見知らぬ闖入者!
闖入者は「ちんにゅうしゃ」と読みます。
前後の関係で読めるけど、書けと言われると門構えを書いてハテ?となりますね。
お詫び
本投稿で、2重に貼り付けしてしまい、内容が良く判らなくなっていました。
申し訳ありませんでした。(2018/01/21 9:14訂正)
ramsy様 ご指摘ありがとうございました。
大声で喚く、でっかい男子が入ってきた。
「ラングレンだ、ラングレンは居るか?!」
立ち上がる。
「ラングレンは、僕ですが!」
彼が一歩踏み出したら、きゃーと扉の周りに居た子達が逃げた。
背が高く、横幅もでかい、基礎学校生なんだろうけど、見た目は大人顔負けだ。
声や形相からして、ものすごく怒っている。
「ああ、確かにお前だ」
そう言われても、僕は知らないぞ。
ダンダンと床を踏み鳴らして、こっちへ来る。
僕の周りに居た子達が、わーっと蜘蛛の子を散らすように離れていく。
「ラルちゃんに何の用?!」
アリー……相変わらず、怖い物知らずだな。流石に髭は生えてないし。
それにしても、どうして立ちはだかる?
ああ、あれか。
『姉は弟を庇うものよ!』ってときたま言ってる。その数倍『弟は姉を敬うものよ!』とも言っているけど。
まあ味方が0ではないのは良いけれど。取り敢えず、話がややこしくなるというか、火に油を注ぎまくってるので、やめて欲しい。
「何だ、このガキは!」
うんうん、そう思うよな。
「あんたこそ、何……なっ、なに、ラルちゃん。なんで引っ張るの、ちょっと……」
腕を掴んで、下がらせる。
「僕に何の御用ですか?」
そう、恨まれる覚えはこれっぽっちもない。
目の前まで来た。並ぶと、僕より頭1つ背が高い。横は2人分以上だな。
「貴様、俺のローザンヌとイチャイチャ、一緒に登校してただろう!」
はぁ?
「はぁぁぁ?」
後から思いっきり奇声を浴びる。
「うるっせー」
「アリー、ちょっと遠くへ行ってて!」
「もう分かったわよ」
教室の真ん中に、僕とデカい男子だけが向かい合う。級友達は壁際まで下がって遠巻きになった。
入学2日目で、とんだ騒ぎになったなあ……。
理不尽な理由だけど理解はしたよ、同意は一切できないけどね
「一緒に登校したら、どうだというのです?」
おうおう。眼を剥いた。
「1年生のくせにぃ生意気な。こうだぁー」
ブンと右拳が弧を描いて飛んで来る。
そこかしこで、女子の悲鳴が上がる。
心配だったら必要ないって。あんな大振り、食らう方がどうかしてる。
「何ぃ? どこに行った」
小振りの丸太ような腕を掻い潜ると、キョロキョロし始めた。
「後ろに居ますけど」
「この野郎!!」
おっ、今度は腰が入った悪くない正拳突き。が、いかんせん遅い。
当たったら痛そうではあるけど。難なく上体を翻してやり過ごす。
2撃、3撃と拳撃を何度か避けてると、相手の顔は真っ赤になって、息もハアハアと荒くなってきた。
「ちょこまかとぉおお」
蹴りも織り混ざって飛んでくるけど、魔獣との対峙を思えば脅威にすら思えない。
派手な登場の割には、緩い攻撃だなあ。
別に諍いが好きじゃないけど、これはこれで興醒めだ。
なのに、彼が腕や脚を揮う度に周りがうるさい。
どうして、こんなしょっぱい争いを、怖がったり、興奮してるんだろう?
謎だ。
まさか、僕がやられるとか思ってないよね。
ああ。そうか。
みんなは獣とか、魔獣とかと戦ったことないのか。
僕だって最初は……少しは……ああ、思う存分、魔術が使えるって、わくわくしてんだっけ。
しかし、この男子。力だけは大人並みにありそうだけど、当たらなければ意味ないよ。
こっちから痛めつけるのは容易いけど、学校でそこまでやるのは、よろしくないよなぁ、きっと。相手は同じ基礎学校生だし。
とは言え、少しお仕置きも必要……だよな。
「うぐっ!」
考えてたら、殴ろうと伸びてきた手首を咄嗟に掴んでしまった。
まあ良いか。このままひねり上げて……あれ?
「うわっ! 痛たたった!」
思いの外、簡単に捻りきった。なんだ、この太い腕は見てくれだけなのか!
こっちは、身体強化魔術だって使ってないのに。見かけ倒しだなあ。
「こっ、このおう!」
振り解きに来たもう一方の腕も捕って、腹の前に搾り上げる。
「さっき、聞き捨てならないことを言いましたね。ローザは、あなたの物じゃありませんよ!」
「なっ、何? よっ、よせ! やめろ! ぐあっ! わっ、分かった」
いや、まだ分かってないよね。
相手の両肘がぶち当たるまで、ねじりきると、肘を曲げていく。
「よっ、よせ! やめろ。 悪かった、俺が悪かったから」
喚く彼の足先が、床から浮く。
「もっ、持ち上げたぁぁあ」
息を飲んでいた同級生達が、また叫び始めた
へえ。体重131ダパルダ(96kg)か。何、食べたらこんなにデカくなるのかな。うっ、羨ましくは無いけど……ガリガリな身としては、ちょっとだけ訊いてみたい。
「いっ……痛だだだだ」
ああ地味に痛いだろうなあ。
全体重が、ひねり上げた腕に掛かって居るねえ。
もちろん僕の腕にも、同じ重量が掛かっているけど、どうということは無い。もっと重い河原の岩を、ぶん投げているし。
さて、男の悲鳴を聞き続ける趣味は無いから、この辺にしておこう。
「本当に分かりましたか?」
涙目になって、ブンブン肯いてる。
頭上まで持ち上げるのはやめておこう。
手を離すと、足から落ちた。
自分を支え切れなかったのか、へたり込んだ。
おっと、彼の腕に僕の手形がくっきり付いてる。これじゃあ、誰にやられたか丸わかりになるな。
【治癒 改 !!】
掛け捨ての、回復魔術を発動──これで大袈裟な痣は残らないだろう。
「何の騒ぎだ!?」
トリエステ先生が叫びながら入って来た。
自然と、僕と乱入してきた男子を見る。
「ラルフ? 何があった」
「ああ、バシェットさんは、ウチの家族と知り合いだったようで、僕に挨拶に来られたんです」
名前はさっき腕を捕ったときに、情報が流れ込んできた。
「知り合い?」
「5年1組のローザンヌさんです」
「挨拶? そうなのか? バシェット」
「あっ、はっ、はい!」
「そうか……とにかく、上級生が下級生の教室にむやみに来るな。もうすぐ休み時間が終わる、教室に戻りなさい」
バシェットが立ち上がって、会釈すると扉へ向かった。
ふうと息を吐いた先生が、僕を睨んだ。
あれ?
「では、ラルフ君。付いて来なさい」
†
なんだか、トリエステ先生の表情は厳しく、どこへ行くのか訊く雰囲気じゃない。
「どうした? ラルフ」
「いえ……」
なんとなく視線を外して窓ガラスの方を見た。そうしたら、窓の中の先生もこっちを見た。
「ああ、済まん、済まん。私は去年まで軍人でな。その所為だろう普段から表情が硬いとよく言われるが、別に怒っているわけではない」
「へえ。なんでまた。先生に……」
「ん? ああ。ここだけの話にしてくれよ。校長先生と従兄弟なんだ。それで体育教師が不足していると、誘われてな」
「そうだったんですね」
何かもっと事情がありそうだけど……詮索はやめよう。
「それにしても、何があったかは知らないが、バシェットには良い薬だろう」
はっ?
「あんなに蒼い顔しているのは、初めて見たぞ。力だけは、そこらの大人より強いことを鼻に掛けていてな。6年生はおろか、隣にある中等学校の誰にも負けたことはないとかな」
うわっ。やっぱりこの先生に見透かされてた。
ああ、叱るつもりは無いようだ
それはともかく。誰にも中等学生にも負けたことない? あの程度で? まさかあ。バシェットのはったりに違いない。
「少々のヤンチャに、とやかく言う気は無いが。弱い者虐めだけはしないようにね」
おお、話せる先生だ。
「もちろんです」
「ふむ。良い返事だ」
トリエステ先生は僅かに笑ったが、すぐ無表情を通り越した。
廊下を結構歩いて別棟の校舎に来た。この先にあるのは、校長室だ。
入学早々、校長先生に呼び出しを喰らうとか。
さっきの騒ぎとは関係ないのなら、理由はなんだ?。
先生が立ち止まった。校長室の扉をノックしてから、開けてくれた。
「ラルフェウス君を連れて参りました……さあ、入りなさい」
「失礼します」
中に入ると、大人3人がソファに座っていた。
「えっ! お父さん……それにダノンさんまで」
なんで?
司祭様が手招きした。
「ああラルフ君、待っていたよ。ここへ座りなさい」
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訂正履歴
2018/01/21 二重貼りしていました(申し訳ありませんでした)
2021/11/21 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)
2022/09/24 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)
2025/05/03 誤字訂正 (ferouさん ありがとうございます)




