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天界バイトで全言語能力ゲットした俺最強!  作者: 新田 勇弥
12章 青年期IX 国外無双編
248/472

241話 3人の誓い

明日はいろいろあってネットに繋げられない可能性がありますので、前倒しで投稿します。

(明日の投稿はありません)


それはともかく。

3人の誓いと言えば桃園の誓いが余りにも有名ですが、あれって演義だよな。史実?創作?



「どうかなさいましたか?」


 通信魔導具の部屋を出ると、廊下にローザが控えて居た。

 俺の顔をじっと見ている。どうやら、表情が尋常でなかったようだ。


「ア……」

 思い留まる。ここでは話す内容ではないな。


「トラクミル! 来てくれ」


 少し遠くに控えてきた、魔術師系団員を呼ぶ。


「なんでしょうか?」

「俺の部屋に、アリシア班長を出頭させよ!」

「はっ!」

 軽く敬礼すると、彼は小走りに去って行った。


「アリーが何か?」

 少し心配そうだ。

「うむ。部屋で話そう」


 5分後。


「アリシア、入りまぁす!」

音響(ソノ)結界(シーマ)!】


「ああ、ここに座れ!」

 俺とローザが座るソファの対面を指差す。

 のんきに近付いて来たが、俺の()の怒りを察したのだろう、表情が強ばり(おのの)いていく。


「なっ、なんだか恐いんですけど」

 そう言いながら、座った。


「アリシア。あなた、お姉ちゃんに何か言うことがあるでしょう!」

 うわぁ。かなり怒っているな。


「えっ、えぇぇえ、えぇ??」

 アリーがこの世で1番恐ろしいもの。言うまでもなく、横の息の荒い人物(ローザ)だ。突如目が泳ぎだした。


「今日は、何日だ? アリー」

「えっ、今日は……15日よね。だから?」


 ん?

 もしかして、状況が本当に分かっていないのか?

 

「ファフニール家との猶子縁組のことが官報に掲載されているのよ!」

 猶子とは、相続権は認めない戸籍編入をいう。


「あっ! あぁ……そうか、そういうことになるんだ。うぅぅ……」

 早くも涙目だ。

 官報に載ることが分かってなかったのか?


「だから、どういうことなの!」

「うぅわあ! お姉ちゃん、そんなに怒らないでよ。お姉ちゃんだって……」

「そう。私もダンケルク家の猶子になりました。それ自体が悪いとは言いません! でも、周りに諮ってやったのは見ていたでしょ!」


「う……うん。あっ、でも。お母さんは手紙で了解済みだ……よ」

 彼女たちの実母にして俺の義母、マルティナさんのことだ。しかし、この釈明は……。


「そう……じゃあ、どうして、私と旦那様に黙っていたの!!!」

 怒れる女性に対しては、油を注ぐ行為だ


「ヒィ!」

 アリーがガタガタ震えだした。

 そう怒りの核心はここ。それも主に後者だろうな。


「だ、だだ、だって、話したら反対されるって、おば様が……」

「おば様? ファフニール夫人がそうしろと!?」


 震えるにしては、大きい動作で姉の問いに何度も肯く。

「ご、ごめんなさい……」


 アリーが狼狽えながら謝ると、ローザは瞑目して深い溜息を吐いた。

 ローザの怒っているのは事実だろうが、半分は俺を宥めているのだ。俺が決定的に怒ることを避けるために。


 アリーが涙目でこっちを見た。


「ラルちゃんも、怒ってる?」

「ああぁ……聞いた時は頭に来ていたがな」

 実際ローザが怒り燃え盛り始めて、俺の方はほぼ鎮火した。


「黙っていたことは許せないとこもあるが、アリーが自分の戸籍をどうしようと、俺に口出しする権利はないと思い直した」


「うぅぅ……」

 アリーには、怒りをぶつけるより突き放す方が効く。俺限定だが。


「どうして、おば様の子になろうと思ったか訊かないの?」

「その方が、側室になった時に俺のためになると考えた。そして、アリーの立場も良くなるとか、唆された」


「うっ!」

 唸って首を折る。図星だな。

 そして、気に入らないことは多々あれども、間違ってはいない。


「それで、猶子の件は、ファフニール夫人から持ちかけられたのだよな?」

「うん」


 まあ、あちらにその気がなければ、始まらないからな。あの人は何が狙いだ?


「で……あのう。側室の件は……?」

 上目遣いで見てきた。


「破棄して欲しいのか?」

 ブンブンと首を振る。


「そうか。今回は大目に見る」

「よかったあ」


「よかったあ……じゃありません、しっかり反省なさい」

「はい」


「ならば、アリーは俺の妻に成るのだな? この前アリーにも都合があると言っていたがこのことなんだな?」

「はい」

「もうひとつ。正室は、ローザンヌだ。それで良いな?」

「はい。私、アリシアはラルフェウス・ラングレンの妻に成ります。正室はお姉ちゃんと認めます。それと、猶子縁組みの件はラルちゃんに任せます」


「ああ。わかった。ローザはどうだ?」

「はい。旦那様に従います。ただし、今後このようなことがあれば……アリー、良く憶えておくことね」

 ローザが睨み付けると、アリーは震え上がって、うんうんと何度も肯いた。


「では」

 左手を差し出す。

「3人の意思が揃った。ローザ、手を乗せろ」

「はい」

「次、アリー」

「はい」

 3つの手の上に俺も右手を重ねる。

 肯くと、さらにローザが手を乗せ、アリーも乗せた。


「3人の契りだ!」

「はい!」

「はい!」


 手と手に堅く力が籠もり、互いを見つめ合った。

 ようやくローザが笑うと、安心したのだろう、代わりにアリーが大粒の涙をいくつも零した。

 幼子のように何時までも泣き止まない妹の頭を撫でながら、2人は下がっていった。


 モーガンを呼び、これまでの経緯と、アリーが側室になったことを伝える。


「承りました。まずはお喜び申し上げます。家令としては円満に収まり、嬉しい限りです」

「うむ」

 顔には出さないが、気を揉んでいたようだ。


「つきましては、この後の御指図を仰ぎたく」

「うむ。まずは王都へ帰り次第、ファフニール家に出向いて、側室にしたことを報告する」

 既に法的には、アリーの実家だからな。


「はい」

「それで、何か物言いを付けてくるようであれば、猶子の件は破棄させる」

「はい。ですが、それは考え難うございます」

 既に答えが用意されていたようだな。

 確かに猶子縁組の前提は側室になることだ。官報に出たことが覆れば、貴族としてはかなりの恥辱だ。故に、この段階で壊すようなことをする可能性は低い。


「そうだな。では何か言い出すとすれば何時か?」

「はい。アリー様がお子様を、特に男児をご出産された時かと」

 同意見だ。


「それは、ダンケルク家も同じか?」

 笑ってみせる。


「そうですな。十分に警戒が必要かと思います。ただローザンヌ様は正室ですので、ファフニール家との位置付けはやや異なるかと」


 ふむ。旧主家もばっさりか。それだけ俺に心から仕えていると取るべきか。


「わかった。侯爵家の話が首尾よく行けば、側室の件を公表しなければならないだろう」

 大きく肯いた。

「はい。猶子とはいえ、お家柄がお家柄ですので。また御館様の狙いからしても広く知れ渡る方が効果的かと」


「そういうことだ。公表の上、宴を催す必要がある。猶子の件が巷の記憶から消えない時期で、日時、参列者については任せる」

 この男は信頼に足る。


「お任せ下さい。速やかに計画をまとめて報告致します。あと、差し出がましいかと存じますが、ダンケルク家とはどのように?」


「ああ、義母上に取ってみれば面白かろうはずはない。これまでの恩もある故すぐさま宥めに行きたいところだが、今後を考えると余り(おもね)るのも良くない」


「では、まずは私から状況を注進し、御館様の苦しいお心持ちをお伝えしておきます」

「そうか。頼むぞ」

「はっ!」

お読み頂き感謝致します。

ブクマもありがとうございます。

誤字報告戴いている方々、助かっております。


また皆様のご評価、ご感想が指針となります。

叱咤激励、御賛辞関わらずお待ちしています。

ぜひよろしくお願い致します。


Twitterもよろしく!

https://twitter.com/NittaUya


訂正履歴

2020/02/16 誤字訂正(ID:1523989さん ありがとうございます)

2021/09/11 誤字訂正

2022/01/30 誤字訂正(ID:1897697さん ありがとうございます)

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